完全ノーマーク!中国大陸からの衝撃
発売からわずか4日で1,000万本の大ヒットを記録し、一部ではGOTY大本命かとも囁かれる黒神話:悟空(Black Myth: Wukong)。しかしながら今まで実績の少ない中国発の完全新規タイトルという事で、興味はあれど未だ手を出しかねている方も少なくないのではないかと思います。
そういう私も今月になってようやくプレイし始めたのですが、結論から言うとこのゲーム、確かに評判にたがわぬ面白さがあります。
ソウルライクの醍醐味はそのままに、遊びやすさと適度な難易度が絶妙で、気づいたら平日でもついついスキマ時間で遊んでしまう程ハマってしまいました。(在宅ワークなので…)
そのようなわけで個人的に満足度高めの黒神話:悟空ですが、本日はその魅力について主に私がこれまで遊んできた過去のソウルシリーズとの比較を中心としつつ、長所も欠点も感じたままに本音レビューしてみたいと思います。
※ ゲームの楽しみを損なわないよう充分注意していますが、記事の性質上黒神話:悟空のゲーム本編についての若干のネタバレを含みます。未プレイの方は事前にご了承ください。
黒神話:悟空ってどんなゲーム?
"ちょうどいい"難易度のソウルライク
まずはざっくりとですが、黒神話悟空が一体どんなゲームなのかについてご説明します。
冒頭で触れたように、黒神話:悟空はソウルライクに属するゲームです。
ソウルライクの定義は曖昧ですが、個人的には大雑把に以下のような特徴を持つゲームだと認識しています(当てはまらない場合も多々ありますが…)。
・三人称のアクションRPG
・全体的に高難易度の傾向
・死に覚えゲー(= ド⚪︎クエのようにレベルを上げるだけではクリアできない。何度も死んで、プレイヤー自身のスキルが成長することを求められる)
・立体的で複雑に入り組んだマップ構造
・全体的に殺伐とした世界観
・敵を倒すと得られる経験値でレベルアップしたり、アイテムを購入できる
・明らかに説明不足な多くを語らないミステリアスな世界観
などなど…
中でも目立つのは、やはり高難易度という点でしょうか。
元々、ソウルシリーズの原点であるデモンズソウルがその難易度の高さで話題となった経緯があり、現在でもソウルシリーズといえば高難易度、コアゲーマー向けというイメージが根強くあるのではないかと思います。
で、翻って黒神話:悟空はどうなのか。
結論から言うと、黒神話:悟空は本家ソウルシリーズ、およびその最新作のエルデンリングと比較してもかなり易しめのゲームです。
回避(ソウルシリーズでいうローリング)の判定はかなり甘めだし、エルデンリングのような強烈なディレイや初見殺し技も(私が今まで体験した中では)ほぼなし。
実際、エルデンリングなんかでは最初のボスにすら平気で数十回以上のリトライを要した私ですら、黒神話:悟空の場合は初見~数戦のリトライで大方のボスを撃破できています。
とはいえ決して歯ごたえが無いという事はありません。
ボスは油断しているとあっというまにこちらの体力を削ってくるし、動きをよく見て観察しなければ反撃のタイミングを掴むこともできません。
体感し、観察して、実践するというソウルライクの基本を踏まえつつ、状況に応じた神通力やアイテムを駆使することでやっと打ち勝てる(けどソウルシリーズの様に負けすぎて心が折れそうになるレベルまではギリギリいかない)という絶妙なバランス調整がなされていると感じました。
とにかくプレイが快適
本作をプレイして強く感じたもう1つのことがプレイの快適さです。
本作の操作系統はシンプルかつ洗練されていて、まさに必要十分といった感じ。
大して本家ソウルシリーズでは、アイテムスロットや魔法スロットの切り替え、武器の切り替えなど操作が煩雑で戦闘中に頭がこんがらがることしばしばでした。(その分とれる戦術の幅が広いともいえますが)
その点、黒神話:悟空の戦闘に関する要素は極めてシンプルにまとまっているので回避と反撃という立ち回りの基本により深く集中することができます。
またシステム面で言うと、装備品の購入、強化、休憩、クラフト、ファストトラベルなどの主要機能のほとんどが祠(ソウルシリーズでいうかがり火)にまとまっているのも余計な煩雑さがなくてGOOD。
道中の脇道や探索要素が少ないのも、その時との時でなにをやればいいか明確であるという点でプレイヤーの負担が少ないと好意的に捉えることができるかもしれません。
コアなソウルシリーズファン様に武器の特性や攻略順などあれこれ考えて自分だけのプレイを極めたいという方には若干物足りなく感じる可能性もありますが、大方の一般的なプレイヤーにとっては黒神話:悟空のライトなソウルライク感が丁度良く感じるのではないでしょうか。
疑問 : PS5向けのパッケージ版はないの?
現在(2024/09/29)時点では、PS5向けのパッケージ版は発売されておらず、発売予定も未定です。
現時点での対応プラットフォームはMicrosoft Windows(Steam・Epic Games Store・WeGame)・PlayStation 5(ダウンロード版のみ)。
私はPS5のダウンロード版をプレイしています。
最先プラットフォームで繰り広げられる西遊記ワールド!
ここまでで、本作がソウルライクの系譜を汲む作品であることと、そのゲーム性について触れてきました。
続いては、本作の最大の個性となっている「西遊記」の要素に触れてみましょう。
主人公はあの孫悟空 … ではない!
『黒神話:悟空』は、中国古典小説の「四大奇書」の一つである『西遊記』を題材とし、中国神話を背景にしたアクションRPGだ。
プレイヤーは「天命人」となり、輝かしくも古い伝説に隠された真相を究明するため、険しくも不思議な旅に出かけることとなる。
道中、天命人は数多くの強敵や好敵手と出会うだろう。降伏が許されない壮大な戦いの中で、豪快に戦闘を繰り広げる。
天命人は棍術に加えて、異なる法術・天賦・武器・装備などを自在に組み合わせ、自身の戦闘スタイルに最適な必勝法を見つけ出すことができる。
念のために説明しておくと、本作のストーリーは原作西遊記の完結後の物語です。
なので、皆さんもよく知る「三蔵法師が、孫悟空、猪八戒、沙悟浄を連れて天竺へ〜」というあのお話をゲーム内で追体験するわけではありません。
そちらの孫悟空はオープニングで花果山の大岩に封印されてしまいます。
プレイヤーは同じく花果山で生まれた天命人という無名のお猿を操作して、各地に散らばった孫悟空の聖遺物を集めることになるのです。
ふんだんに盛り込まれた西遊記のエッセンス
本作では、中国大陸の雄大な自然が最新プラットフォームの高精細なグラフィックで再現されています。
道中で出てくる敵は犬人間や蛇人間などの妖怪たち。
また、道中のボスとして原作西遊記に登場した有名妖怪たちと闘う事もあります。
倒した敵の情報は影神図(モンスター図鑑的な)に登録されるのですが、その内容が1つ1つ故事のようになっていて、読み物として面白いのもポイント。水墨画風の挿絵も風情がありますね。
西遊記の事をあまり知らないという人も、影神図を読むことで原作の物語や人間関係を自然と補完することができるのが嬉しいですね。
他にも世界観の徹底という面で言えば例えばソウルライクでお約束の何度死んでも復活できるシステムが毛を使った分身による反魂術だと理屈づけられていたり、ファストトラベルが縮地になっていたりと逐一丁寧に西遊記ナイズされているのも既存のソウルシリーズファンからすると面白さを感じるポイントです。
ソウルライク最大の醍醐味!バトル編
軽快爽快!"棍"を使いこなせ!
黒神話:悟空には、ソウルライク最大の醍醐味である戦闘をさらに楽しくするユニークな要素が導入されています。
天命人は原作悟空のイメージ通り、"棍"を振るって戦うのですが、中でも特に重要な要素が「棍勢」です。
棍勢とは、通常攻撃よりも強力な打撃(強攻撃)を出すために必要なゲージのこと。
強攻撃はその威力もさることながら、敵の体制を崩しにも使えるなど、戦闘を有利に進める上では欠かすことのできない要素となっています。
棍勢は敵に攻撃を当てたり、ボタンを押し続けてチャージすることで溜められるのですが、実は攻撃をジャストタイミングで回避することによっても溜めることができます。
このジャスト回避による溜めというのが面白い要素で、回避をうまく決めることでより強烈な反撃に繋がるという本作独自のスピード感ある戦闘に繋がっています。
ソウルシリーズのパリィと違いジャスト回避成功後も敵の動きは止まらないので、相手の位置や動きから反撃のチャンスなのか、それともまだ回避が必要かを見極める必要はありますが、それもまた駆け引きとしての面白さがあります。
他にもジャンプ攻撃で相手の攻撃を回避しつつ強攻撃につなげたり、スキルを挙げることで強攻撃自体に相手の攻撃に対するカウンター性能が備わったりと"棍"の戦闘はその見た目以上の奥深さがあり、理想的な立ち回りがハマったときは痺れるような爽快感があります。
こればかりは一度体験してその妙味を味わってみてもらいたいですね。
西遊記ならでは!神通力でバトルを優位に
ソウルシリーズにおける「魔法」に相当する要素として、黒神話:悟空には神力ゲージを消費して発動する「神通力」が存在しています。
相手の動きを一定時間拘束する定身術や姿を消して敵の攻撃を回避しつつ反撃する気行術などの神通力は使いこなすことで戦闘を大幅に有利にしてくれるものです。
そうした神通力の中でも、特に私が面白いと思ったのが「変化の術」です。
これは、特定のボスを倒すことでそのボスの姿を借りて戦えるようになるというもので、ボスごとに異なる長所、短所があります。
時間制限ありとはいえ、ボスをそのまま自分で操作できるシステムは本家ソウルシリーズにもなかったと思うので、かなり斬新な試みといえるのではないでしょうか。
スキルツリーで最強を目指せ
本作ではオープンワールドゲーでお馴染みのスキルツリーも採用されています。(逆に本家ソウルシリーズではスキルツリーは採用された例がないですね)
スキルツリーは幾つかの項目に分かれており、主人公の体力、スタミナといったスペック面のほか、メインウェポンとなる棍棒術、そして先に紹介した法術や変身術までスキルツリーから好きに選んで成長させることが可能です。
しかもこのスキルツリー、ゲーム開始当初から何度でも無料で振り直しが可能です。
今の戦法ではどうしても勝てないボスがいる場合や、いつもと違った戦法で気分転換したい時など気軽に振り直しができるのは評価点ですね。
ここはイマイチかも?
ここまでプラス評価中心にレビューしてきましたが、当ブログは正直がモットーなので、私がイマイチだと感じた点についても率直にお話ししておきます。
戦略性、自由度の低さ
本作はシンプルで遊びやすい反面、戦略的な自由度は狭めです。
エルデンリングと比べると、探索要素やマップ構造、取れる戦術の幅広さ、武器防具の豊富さ、攻略順の自由度、どれを取っても遠く及びません。
また、これは個人的に意外だったのですが、本作には隠密という概念がなく、道中の敵を背後から忍び寄って暗殺したりすることもできません。
エルデンリングやソウルシリーズでは、立体感ある複雑なマップと巧妙に配置された敵をどう潜り抜けるかという探索の面白さがありましたが本作にそういう要素は期待しない方がいいでしょう。
これらの欠点を鑑みると、
マップがない
これはちょっと驚いたんですが、黒神話:悟空には探索中のエリアマップもなければ画面端のミニマップもありません。
幸い(?)マップ構造は単純なのでそうそう迷うことはないのですが、これはなんで実装しなかったのかちょっと不思議ではあります。
固有名詞を覚えるのが少し大変
中国を舞台にしたゲームという事で、人名や各種システムの名称が全体的に聞きなれない感じなので慣れないうちはちょっと戸惑うかもしれません。
私などはそこそこプレイしていても「虚実撃」ってなんだったっけ…となりがちだったり(笑)
総評 こんな人におすすめ!
以上、黒神話:悟空について、私の視点からレビューをお送りしました。
最後に黒神話:悟空のプレイをお勧めする人と、しない人を書いてみます。
こんな人にお勧め
- そこその難易度で気楽に遊べるソウルライクをお求めの方
- ソウルライクに興味はあるけど、難しすぎるゲームは挫折しそうで心配という方
- 西遊記や中国の文化に興味がある方
こんな人はやめたほうがいいかも?
- ゲームは難しければ難しいほど燃えるという方
- ダークソウル、エルデンリング並みの自由度が無いと嫌だという方
- 中国文化に興味がない、苦手な方
本作のゲーム性を一言で纏めると、「ゲーマーでなくてもとっつきやすい、万人向けのソウルライク」といったところでしょうか。
最初は中国初のゲームという事で、どんなぶっ飛んだ内容なのかと若干不安もありましたが、ふたを開けてみると驚くほどオーソドックスと言うか、癖のない優等生的ソウルライクでした。
開発元のGame Science社は本作が初のAAAタイトルという事で、その点を考えればこの完成度の高さは驚くべきものがあるかと思います。
今後、同社がさらに意欲的な挑戦を続けることで、日本や欧米圏だけでない、新たな文化圏からの遊びの選択肢をユーザーが享受できるように成ればこれほどうれしいことはないですね。
余談... ポリコレについて
正直触れるべきか迷ったのですが、本作と絡んで何かと取り沙汰されてる話題なので一応。
Sweet Baby Inc. はゲーム業界で大きな存在感を放っています。同社は現在および今後の多くのゲームの開発に影響を与えていますが、Black Myth Wukong の
開発者は同社との協力に同意しませんでした。中国メディアのプレスリリースによると、 Game Scienceは、同社が700万ドルという信じられない高額を要求したため、同社の指示に従うことを拒否した。この提案に同意した場合、ゲームに強制的な包括性が加わり、開発者から創造の自由が奪われることになる。
中国メディアのプレスリリースによると、 Game Scienceは、同社が700万ドルという信じられない高額を要求したため、同社の指示に従うことを拒否した。この提案に同意した場合、ゲームに強制的な包括性が加わり、開発者から創造の自由が奪われることになる。
ポリコレの是非はさておき、スイートベイビーなる組織が本当にこんなことをしているなら、それまでポリコレに興味がなかった人たちにまで悪感情を持たれることになることは確実であって、結局はそれで自分たちの首を絞める結果にしかならないのではないでしょうか。
正義のためならば手段を選ばないというのであれば傲慢だし、元々そんな信念すらなくて、ただ金儲けの手段としてポリコレを利用しているだけならば、それはもはやただの社会悪でしょう。
将来的にポリコレが今より過激になって、クリエイターの自由な発想が潰されるようなことが起こらないことを願っています。