伏線が凄すぎる。SCP-5145『I Buried The Sun(私は太陽を葬った)』の翻訳&解説

SCP

はじめに

どうも、daimaです。
本日は140を超えるup voteを獲得していながら
現時点ではまだ日本語未翻訳である
SCP-5145 「I Buried the Sun(私は太陽を葬った)」
独自訳と考察をお送りします。

SCP-5145 - SCP Foundation

本報告書の主人公は要注意団体と繋がって
財団への背信行為を行っていたとある博士。

彼が財団に捕らえられ、
罰として終了処分(=死刑)を受ける代わりに
Surrealistics(超現実部門)の一員となり、
人工知能の手引きでとある実験に参加した一部始終を描くお話です。

なぜ彼は財団を裏切ったのか、
そして超現実部門の実験の目的は何なのか。

それは報告書を読み進めるうちに明らかになるでしょう。
それではどうぞ。

SCP-5145『I Buried The Sun(私は太陽を葬った)』の訳文

やぁこんにちは!
私の名前はsalvador.aic。
オリエンテーションのお手伝いを致します。
あなたの人事ファイルを手短に確認させてください...

過失致死罪と敵対的集団との共謀で有罪判決を受けたあなたは
終了措置を受けるよりも超現実部門※に移籍する選択をしました。
素晴らしい判断です!
(※参考:http://scpdsandbox.wikidot.com/reference:foundation-departments)

超現実部門での任務に備えるために
あなたの理性のパラダイムを再構築することが重要です。

この音は不快かもしれませんが ご心配なく!
これはとても簡単な手続きです。
あなたの腕に挿入されている静脈注射と
あなたの目の前に置かれているファイルにはお気づきでしょう。

これからあなたがしなくてはならない事は、
これらの文書に記載されている異常の説明を
SCP報告書の形式で書き写すことです。

あなたが件のアノマリーの正しい理解に達するまで、
私は各試みの間にあなたに供給される不可知論薬の投与量を調整します。
これは、あなたの理性のパラダイムが正しく再調整されていることを示すものです。

それでは頑張りましょう!

合理的配列:A=A
オリエンテーションの種類:志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価:8
色: 緑
歯:はい
投薬量の調整...

アイテム番号: SCP-5145
オブジェクトクラス Keter

特別収容プロトコル
SCP-5145は現在、現場22にある携帯型の緊急保持セルに格納されています。最近、個人的な損失を被った職員は、常に SCP-5145 から少なくとも 50m 離れていなければなりません。心理カウンセリングは、SCP-5145 に割り当てられた要員がその影響を受けやすくならないように、定期的に実施されます。

説明
SCP-5145は不明瞭な人型の形状をした実体のない存在であり、常に地上から1メートルの位置を浮遊しています。
最初の出現以来SCP-5145は元の位置から移動していませんが、自身の周囲50メートルまでの範囲内に物理的な力を行使することが可能です。
この力は、以上の影響を受けやすい人物が数秒で消失する黒い小さく不明瞭な塊によって一瞬にしてバラバラに切断されるといった形を取ります。

SCP-5145によって殺害された対象に関する情報分析の結果は、標的が感情的な苦痛の度合いに基づいて選択されていたことを示唆しています。これまでにニュートラルな情緒状態にある人物が殺害された例はなく、殺害された者は全員、最近個人的な損失を認識していました。

うーん.........
初めての試みならこんなものでしょうが、
これもかなりひどいものですね。

これには私たちの友人が
何をしているかについては書かれていますが、
その方法や理由については
何も書かれていないではないですか!
理解しろ、理解しろ、理解しろ!
それこそが超現実部門の要なのだから。

でも私はあなたを信じています。
私たちはあなたのことを考えて、
このアノマリーを選んだのですよ。

気を取り直して頑張りましょう!

合理的配列 : A=C
オリエンテーションの種類 : 志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価 : 31
色: 青
歯:はい
投薬量の調整...

アイテム番号: SCP-5145
オブジェクトクラス Keter

特別収容プロトコル
気温が氷点下である場合、サイト-010では暖房が必要となります。
SCP-5145 はサイト-010 に保管してください。
SCP-5145 はサイト-010 にある遮蔽されたチャンバーに保管され、1 日 に2 、3 回給餌されます。
チャンバーの遮蔽板は強力な材料で構成されます。

"シーイング・アイ"の要求に従うこと。
シーイング・アイ に従わない者は 超現実部門に配属されるか焼却されるものとする。
SCP-5145が終了された場合 暖房が必要となります。葬儀は行われません。

説明
SCP-5145は8歳の少女であり、
サイト010内の地下6フィートに位置している
遮蔽されたチェンバー内部に収容されています。

SCP-5145の感情状態は太陽と直接リンクしています。
感情的な苦痛は太陽の光を遮蔽し、
感情的な興奮は最大300人の
Dクラス職員を全滅させることが可能な
強烈な太陽フレアを発生させます。

サイト010には
巨大な自由浮遊型エネルギーキャノン
(以下、SCP-5145-1またはシーイング・アイ)が向けられています。

シーイング・アイは定期的に周囲の生物にテレパシー要求を放ちます。
この要求は可変的で、状況によって大きく変化します。
SCP-5145がシーイング・アイの要求に即座に従わなかった場合、
シーイングアイはSCP-5145を射殺し、その後太陽は消失します。

正直に申し上げると、私にはこのバージョンで
あなたが何を言っているのかがよくわかりません。
でも心配しないでください、これはよくあることです。

初めてこのレベルの不可知論に曝露した者は
記憶が現在の認識と少しずつごちゃ混ぜになってしまうことがよくあります。
ですがそれは何も恐れることではありません。とてもクールなことなのです。

残念ながら、これは件のアノマリーとは
無関係な内容になってしまいましたが、
いずれは必ずたどり着けるでしょう。

引き続き、頑張りましょう!

理性的配列:A=E
オリエンテーションの種類:志願者
スーパーバイザー:SALVADOR.AIC
評価: -6
色: ベージュ
歯:はい
投薬量の調整...

商品番号: SCP-5145

オブジェクトクラス。Zenzizenzizenzic

特別収容プロトコル
SCP-5145 は現在、サイト 22 のポータブル緊急保持セル内に格納されています。
SCP-5145-1 は現在、SCP-5145 の中に格納されています。
SCP-5145-2 は、SCP-5145-1の中に格納されています。
連日、極度の精神的苦痛を受けている個人がSCP-5145、SCP-5145-1、および SCP-5145-2 に提供されます。
細断に続いて、何もすることはありません。

連日黒い封筒がSite-010に届きます。
これらはいかなる状況下でも開封してはいけません。

説明
SCP-5145は恒久的に地上1メートルの地点に浮かび続ける人型の論理的ギャップです。
論理的ギャップの内部には8歳の少女(以下SCP-5145-1)が見えます。
その少女の空っぽの左眼窩の中にはにこやかなほほ笑みを浮かべた男(以下、SCP-5145-2と呼ぶ)が見えます。

SCP-5145-2は毎日、米国郵政公社を利用して黒い封筒をサイト010に郵送します。
これらの封筒に同封されている要求が24時間以内に満たされない場合、SCP-5145-2はSCP-5145-1の眼窩から抜け出そうとします。
これにより、SCP-5145-1 は死亡し、SCP-5145 は破壊され、不可避的な論理崩壊のカスケードが発生します。
これは、Kクラスシナリオの一因となり、多くの場合、その後の太陽の破壊をもたらします。

しかし、これらの封筒に記載されている指示にはcan should won'tcan絶対に従うことができません。

ふむ、これは有望ですね!

私が先に言ったように、
あなたはまだあなたの個人的な経験のいくつかを
実際のアノマリーと混同させていますが、
それはあなたに必要なコンテキストを与えています
この調子で続けてください。
もしあなたが認識の混乱に苦しんでいるのだとしても心配は無用です。
警備員がそれを綺麗に拭い去ってくれます。
あなたが集中する必要があるのは、あなたの現在の思考システムです。

これは言うなれば線路を向け直すようなものです。気軽にトライできる楽しい体験ですよ!

合理的配列:A=N
オリエンテーションの種類:志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価:10003
色: 赤
歯:はい
投薬量の調整...

アイテム番号: SCP-5145

オブジェクトクラス。keter

特別収容プロトコル
SCP-5145を正方形に近づけてはいけません。
円形を用意します。

説明
SCP-5145は正方形の世界の中にある丸い穴です。
こうした論理的ギャップにとって世界の角はあまりにも鋭すぎるため破砕は避けられません。
私がここで言う「世界」とは、泣いている人のことを指していますが、泣いていない人は別です。
世界の丸い穴に正方形を無理やりねじ込むことはできません。それは当然の結果です。

どこかの部屋で二人の人間が話をしていました。
今はまだ太陽は輝き続けています。

<ログ開始>

[データ削除済み]:[データ削除済み]

シーイング・アイ:全ては上手くいくだろう。話は変わるがおまえの娘はとても勇敢だった。

[データ削除済み]:[データ削除済み]

シーイング・アイ:さっきも言ったが全ては上手くいくだろう。私たちが要求したものは持っているか?

(沈黙。[データを取り出す]黒い封筒をテーブルの上にスライドさせる。シーイングアイはそれを受け取り、それを開く。)

ザ・シーイング・アイ:おまえは極めて愚かな過ちを犯した。

[データ削除済み]:[データ削除済み]

シーイング・アイ:これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だこれは空だ これは空だこれは空だ。

[データ削除済み]:[データ削除済み]

シー・アイ。これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だこれは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ。

[データ削除済み]: やめてくれ。

CI: これは空だ

(銃声)

<終了ログ>

友よ、あなたの義務と罪悪感をごちゃ混ぜにしてはいけません。
私たちは、あなたの経験があなたの認識を彩ることを望んでいるのです。
それらを汚すようなことはしないでください。

擦り傷は大出血よりも常に好ましい。

もう一度やりなさい。

合理的配列:A=Y
オリエンテーションの種類:志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価:9
カラー:サルコリン
歯:いいえ
投薬量の調整...

アイテム番号: SCP

オブジェクトクラス。食器洗い機

特別収容プロトコル
SCPは学校へ行く為に起床し、朝食を食べさせられます
SCPは学校から迎えられ、昼食を食べさせられます。
SCPは公園に行きます。
SCPはお気に入りのアニメを見ます。
SCPは夜には寝かしつけられます。
SCPはクローゼットの中にモンスターが隠れていないことを教えられます。

黒い封筒を満たします。

説明
黒い封筒は紙と糊でできています。
それは飢えた口を備え、知性を渇望しています。
それは飢えた口を備え、、あなたがアクセス可能な知性を渇望しています。
それは太陽に銃口を向けています。

職員は黒い封筒の飢えた口の中に頭を挿入し、このように発生することを許可します。
太陽の誕生日ケーキには8本のロウソクがあり、それらはパン屋の獣に突き刺さっています。
黒い封筒は9本目のロウソクを絞め殺しています。
封筒はその為の手を持っています。

もうすぐ日が暮れる。あなたは料理をしなくてはならない。

彼らについて心配しないでください!
彼らは読んだり、考えたりするのに必要ではありません。
警備員がすぐに彼らをあなたから取り除きます。

不快な思いをさせてしまいましたが、少なくともあなたの忍耐力の程度を知ることができました。
試みが大部分の一貫性を失ったのは残念でしたが、もう少しです。

もうすぐ全てが終わります。
超現実部門の一員として、あなたが泣く理由などないことに気づくことでしょう。

合理的配列:B=A
オリエンテーションの種類:志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価: +0/-0
色: 白
歯:いいえ
投薬量の調整...

商品番号: SCP-5145

オブジェクトクラス。ユークリッド

特別収容プロトコル
SCP-5145はSite-⌘に移され、私のオフィスとなる部屋に置かれます。
私はSCP-5145 の近くで 1 日 9 時間以上過ごすことになります。
私のオフィスには窓を設置しません。
私のオフィスには写真を置きません。
私のオフィスには封筒を置きません。

私は今後決してSite-⌘を離れてはいけません。

説明
SCP-5145は、一般的な感情を執拗に否定し続けたことで生まれた
論理的ギャップの物理的な帰結です。
サイト-22における非実在的な感情の衝突が数年の間に蓄積され、
自然発生的にSCP-5145を生み出しました。

SCP-5145は感情の欠落によって生じた存在であるため、
適切な感情でそのギャップを埋めることによって永続的に自己を破壊しようとします。
しかし、感情の大部分はSCP-5145に対して適切ではなく、それが果たされることはありません。
この不協和音の結果として反動が生じ、不快な感情を生成する能力を破壊してしまいます。

理性のパラダイムを再調整することによって、
感情発生器はSCP-5145を封じ込めるのに適した形に
整形された感情プロファイルを備えて準備されます。
この封じ込めは一時的なものであり、定期的に補充する必要があります。
けっこうじゃないか。

SCP-5145の論理的ギャップの内部に片目の死体が見える。
それは私を見上げて、微笑む。

太陽が沈んでいく。

よくやった、博士。
そしてようこそ超現実部門へ。

考察

とりあえず、以上が全文です。

「太陽」や「片目のない少女」。「黒い封筒」など
印象的なモチーフがいくつも出てきましたが
一度目を通しただけでこれらが何を意味しているのか
十分に理解出来た方は少ないのではないでしょうか。

それでは引き続き、
ディスカッションやredditの考察を踏まえて
私が「こういうことだったのではないか」と考えた
内容を順を追って解説してみたいと思います。

まずは結論から

まず結論から述べるとSCP-5145は
無理に抑圧された感情から生まれた異常現象です。

通常の場合、精神的に成熟した人間は
たとえその人が社会生活を営む上で
不快な事や気に入らないことに出くわしても
他者の前ではネガティブな感情を抑えて
普段通りにふるまうことが可能です。

しかしそれにも限度というものはあり、
長期間にわたって自分の感情を抑え込み続けていると
鬱や感情の鈍化といった
深刻な問題を引き起こす原因となることは良く知られています。

そしてSCP-5145はこうした気分障害と同じように
サイト-22内部で発生した抑圧が長期に渡って蓄積された結果生じた
抑圧された感情の集合体とでも呼ぶべきアノマリーだったのです。

つまりSCP-5145は抑圧された感情のギャップそのものであり、
自身の不安定さから解放された真空空間に空気が流れ込むように
常に近くの人間の感情を利用しようとしますが
普通の人間の感情はSCP-5145のギャップを埋めるのに最適な形状をしていないため
大抵は円形の穴に四角形を無理やり捩じ込もうとするような行為となり、
その摩擦の結果としてSCP-5145の影響を受けた人は
不快な感情を感じる情緒機能を破壊されてしまいます。

そのようなわけで実害がありながらも実体がないため
物理的に取り除くことができないSCP-5145に頭を悩ませた財団は
「SCP-5145のギャップを埋められる感情パターンの人間がいないなら
誰かの感情パターンを人為的にSCP-5145のギャップに適合するように作り変えて
そいつにSCP-5145のお守り役をさせればいいじゃない」
という結論に達します。

そしてそのお守り役として白羽の矢が立ったのが
偶然同じタイミングで反逆罪で起訴されていた
主人公の博士だったのです。

特別収容プロトコル
SCP-5145はSite-⌘に移され、私のオフィスとなる部屋に置かれます。
私はSCP-5145 の近くで 1 日 9 時間以上過ごすことになります。
私のオフィスには窓を設置しません。
私のオフィスには写真を置きません。
私のオフィスには封筒を置きません。

私は今後決してサイト-⌘を離れてはいけません。

かくしてSCP-5145を封じ込めるための
「感情発生器」に改造された彼は
残りの一生全てを交換可能な
アノマリー封じ込め用の部品として
サイト-⌘で暮らすことを余儀なくされたのでした。

しかし、報告書に記されているように
これはあくまでも一時凌ぎの対策でしかなく
もし博士の「耐用期限」が過ぎれば
また別の誰かを感情発生器に改造する必要が出てくるでしょう。

…というのが私の解釈の大枠です。
ですがこれだけではまだまだ説明が不十分ですね。

引き続き、個別の要素についてさらに詳しく見ていきましょう。

博士の過去について

スパイ行為という最大の背信行為を働き、
その後取引によって自ら実験材料となる道を選んだ博士。

彼は一体なぜ財団を裏切り、
そして博士という立場からおおよそ予想はついていたであろうに
なぜあのような非人道的な実験の材料となる道を選んだのか。

その理由は最後まではっきりとは明かされませんでしたが
考察の材料は報告書の中にたくさん見つけることができます。

まず、彼が通じていたという敵対団体についてですが、
これは要注意団体の一つ「カオス・インサージェンシー」であると考えてほぼ間違いないでしょう。

そう考える最大の根拠は以下の部分。

シーイング・アイ:これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だこれは空だ これは空だこれは空だ。

[データ削除済み][データ削除済み]

シー・アイ。これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だこれは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ これは空だ。

[データ削除済み]: やめてくれ。

CI: これは空だ

会話の相手の名称が
シーイング・アイ(seeing-eye)→シー・アイ(see-eye)→CIと
だんだん短くなっていますが
そのうち最後のCIの二文字に着目すると
これがカオス・インサージェンシー(chaos-insurgency)の頭文字にピッタリ符合します。

カオス・インサージェンシーは元々財団の一部であり、
手段を問わず任務を遂行する影のような存在でしたが
ある時財団から離反独立し、
以後財団と敵対する関係となったというバックグラウンドがあり、
今回の「財団にスパイを送り込んだ敵対的組織」
という役回りにも違和感なく当てはまります。

少女の正体

次に報告書中に何度も出てくる左目のない少女ですが
これは主人公の博士の娘であると推測されます。

そして次の下りからは、
カオス・インサージェンシーが博士にスパイ行為を続けさせるために
娘の存在を脅迫のネタとしていたことが窺えます。

サイト010には
巨大な自由浮遊型エネルギーキャノン
(以下、SCP-5145-1またはシーイング・アイ)が向けられています。

シーイング・アイは定期的に周囲の生物にテレパシー要求を放ちます。
この要求は可変的で、状況によって大きく変化します。
SCP-5145がシーイング・アイの要求に即座に従わなかった場合、
シーイングアイはSCP-5145を射殺し、その後太陽は消失します。

先ほど示した「シーイング・アイ=カオス・インサージェンシー」から
これは「博士がカオス・インサージェンシーの命令に従わなければ
娘が殺される」
状況を暗示しているものと思われます。

太陽の誕生日ケーキには8本のロウソクがあり、それらはパン屋の獣に突き刺さっています。
黒い封筒は9本目のロウソクを絞め殺しています。
封筒はその為の手を持っています。

8本のロウソクというのは少女の年齢(8歳)と符合し、
これはカオス・インサージェンシーによる具体的な脅しの内容
(命令に従わなければ9歳の誕生日が来る前に娘を殺す)
を表しているのでしょう。

また娘と同様に頻繁に登場する「黒い封筒(black envelope)」ですが
これは黒い(black) + 封筒(mail)で
blackmail(脅迫)を連想させるダブルミーニングになっています。

ザ・シーイング・アイ:おまえは非常に愚かな過ちを犯した。

4番目の報告書内の上記記述からは
長年の裏切りによる良心の呵責からか、
博士がとうとうある時
カオス・インサージェンシーの
命令に背いたことが読み取れます。

[データ削除済み]: やめてくれ。

CI: これは空だ

(銃声)

しかし、二重の裏切りの代償はあまりにも大きいものでした。

この行為の結果、博士の娘は殺されてしまいます。

そしてそればかりか
その後彼の裏切りは財団の知る所となり
彼は起訴され、報告書の状況へと繋がっていきます。

SCP-5145の感情状態は太陽と直接リンクしています。
感情的な苦痛は太陽の光を遮蔽し、
感情的な興奮は最大300人の
Dクラス職員を全滅させることが可能な
強烈な太陽フレアを発生させます。

ちなにこれは深読みかもしれませんが
報告書の2番目のバージョンからは
Dクラス職員の部分を置き換えて読むことで、
彼が娘の死後、カオス・インサージェンシーへの
復讐に走った可能性が読み取れるようにも思えます。

そしてもし彼が復讐に走り、騒ぎを起こしたために
彼の裏切りが財団に露呈したのだとすれば
これはもう形容しようのない悲劇だと言わざるを得ませんね。

実験時のステータスの解釈

この報告書の中で、もう一つ興味深いのが
各報告書の頭に記載されているカルテのようなステータス情報です。

合理的配列:A=A
オリエンテーションの種類:志願者
監督者:SALVADOR.AIC
評価 : 8
色: 緑
歯:はい
投薬量の調整...

全6回の実験のすべてに
これらのステータスが記載されているのですが
その内容は各実験間で少しづつ異なっています。

第一回 第一回 第二回 第三回 第四回 第五回 第六回
合理的配列 A=A A=C A=E A=N A=Y B=A
オリエンテーションの種類 志願者 志願者 志願者 志願者 志願者 志願者
監督者 SALVADOR.AIC SALVADOR.AIC SALVADOR.AIC SALVADOR.AIC SALVADOR.AIC SALVADOR.AIC
レーティング 8 31 -6 10003 9 +0/-0
カラー ベージュ サルコリン
あり あり あり あり なし なし

この中で実験間で変化のある項目は
「合理的配列(RATIONAL ALIGNMENT)」「評価(RATING)」「色(COLOR)」「歯(TEETH)」の4つ。

「合理的配列」4は被験者の理性のパラダイム(rational paradigm)を
表すものだと思われます。
最初の実験でA=Aとなっているのは
被験者がまだ正常な理性状態であることを示しているのでしょう。

その後実験が進むにつれA=C、A=Eと
どんどんアルファベットがずれていき
最終的にはB=Aという風に
左辺のアルファベットがAからBに変化しています。

これは被験者(博士)の理性が今までとは明確に
異なった状態にシフトしたことを示しているように思えます。

次に「評価」ですが、
私はこれが被験者の理性の状態が目標にどれだけ近づいているかの指標
ではないかと考えています。

+0/-0が目標数値で、それより低すぎても高すぎてもNGみたいに。

続いて「色」。
報告書内では緑>青>ベージュ>赤>サルコリン>白の順で変化していますが、
これは被験者の感情状態を色で表しているのではないでしょうか。

これについてはさほど強い根拠があるわけではないのですが、
例えば娘の死についての記憶が最も強く出ている
第四回目の報告書のカラーは一般的に
苦痛や怒りの意味を持つ赤になっています。

また、色については
ゴールである最後の報告書の色が白であり、
ベージュやサルコリンなど
白に近い薄い色の報告書ほど
salvador.aicが良い評価を与えているのも興味深い点です。

最後に「歯」
これは第四回目以前はあり(yes)
第五回目と第六回目がなし(no)となっていることから
薬の副作用で被験者の歯が抜け落ちたと考えるのが自然なように思えますが
別の解釈として夢占いで「歯が抜け落ちる夢」が強いストレスと関係しているように
これもまた被験者の心理状態を表す
バロメーターの一種なのかもしれません。

まとめ

SCP-5145の独自訳と考察、いかがでしたでしょうか。

主人公の悲劇的な過去、
中々正体の見えてこないアノマリー、
赤ペン先生チックなAIとのやりとり、
超現実部門の思惑などの要素が複雑に絡み合う
なかなかに凝った構成の報告書でしたね。

しかしこのアノマリー、地味に怖いのが
感情の抑圧という現代社会ならば
どこでも見られる条件によって生じたという事です。

ということは別に今回の例に限らず
長期にわたって強い感情の抑圧が生じる場さえあれば
どこでもこのアノマリーは生じ得るのかもしれません。

ですのでもしあなたが
人間関係のストレスをため込んでいて、
なおかつアノマリーに感情機能を破壊されたくないならば
旅行に行ったり、身近な人に自分の気持ちを吐き出すなどして
定期的なガス抜きをしておくことを強くお勧めいたします。

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