SCP財団最悪の敵『緋色の王』のすべて。

SCP

はじめに

緋色の王。

それはSCP財団世界における包括的な敵対者であり、
他の数多のアノマリーとは一線を画する極めて強大な存在です。

しかしながらその全容は謎に包まれており、
財団でもO-5などごく一部の
限られたメンバーにしかその存在は知られていません。

本日はそんな緋色の王について、
関連する報告書、taleを読み解きながら
その起源、能力、目的について
可能な限り詳細な解説を試みてみたいと思います。

それではいってみましょう。

『緋色の王』とは

緋色の王と旧き神々

緋色の王について知る前に
"旧き神々"と呼ばれる存在について
抑えておくと理解がしやすくなります。

旧き神々とはSCP財団の世界における旧支配者であり、
世界の創造者、あるいは破壊者として
サーキズムや壊れた神の教会などの伝承にその名が残る、
文字通り神にも等しい存在です。

メカネやヤルダバオートなど
錚々たる面子が名を連ねる旧き神々の中でも
緋色の王はしばしば格別の存在として扱われ、
絞首刑の王モロクなどの一部の旧き神々は
緋色の王に従う下位の存在として描かれます。

多くの神々が王のしもべへと堕ちた。
ファクトリーの軋む機械はすべてを消費し、その愚かな力を血と鉄へと傾かせた
絞首台の王、吊られた王は、内から木の知恵を引き裂いた。
多くの顔を持つ王子は定命の者の意志を歪ませ、角を持つモロクは彼らの恥辱を連れてくる。
名前を消されたより多くのものもまた奉仕している。
王の多くの定命のしもべは、生きた人形で彼の血統の確立を再現した。

『塵と血』より

多くの報告書やtaleにおいて
緋色の王はあらゆる創造物の破壊と征服を目的とする冷酷な君主です。

その力はSCP財団の世界においても最上位に位置するとされ、
もし緋色の王が地上に降臨した場合、
財団ですらその暴虐を止める手立ては一切ないものと見られています。

緋色の王に関連する報告書、tale

緋色の王の起源や実態については諸説あり、
どれが真実であるかを断定する術は今のところ存在しません。

それを踏まえつつ、
緋色の王の名が登場する報告書、taleの中から
特に重要性が高いと思われるものをみていきます。

SCP-231 - 特別職員要件

いいえ、哀れな少女を悲惨な状況から解放するという選択肢はありません。

彼女への薬物投与もです。

処置110-モントークが機能するためには彼女が何が起こっているか理解している必要があります。

SCP-231 - SCP財団

SCP-231はその胎内に緋色の王の子(SCP-██)を宿した
7人の女性たち(SCP-231-1〜SCP-231-7)の総称です。

"緋色の王の子ら"と名乗る
カルト教団によって誘拐され、
閉じ込められていた彼女らは、
警察が同教団の倉庫を襲撃した際に発見され
身柄を保護されました。

しかし、救出から24時間後に
SCP-231-1が陣痛を起こし、
その3分後に最初のSCP-██を出産。

その際に、詳細は不明ですが
大規模な災害が発生し、
100名を超える犠牲者が出る事態となっています(コーンウォール事件)。

この事案を受け、
本アノマリーの存在を認知した財団は
速やかに回収作戦中を決行。

その結果、回収中に死亡したSCP-231-1を除く
残り6名を財団施設内に移送することに成功しますが
その収容にはある大きな問題が伴いました。

それは、回収された
残りのSCP-231が次々にSCP-██を出産し、
その度に財団に多大な被害が発生したことです。

そんな中、財団にとっての唯一の対抗手段は
モントーク博士が発案した、
SCP-231-7の出産を抑制するための手順である
"処置110-モントーク"でした。

処置110-モントークの詳細は明かされていませんが、
報告書中の描写からしてレ○プや拷問などの
残忍な暴力行為を含むものであると推測され、
そのあまりの残忍さから
中には良心の呵責に耐えきれず自殺する職員まで出るほどでしたが
それ以外に有効と思われる手立てがないこともあり、
財団はこれを正式な収容プロトコルとして採用しています。

処置110-モントークは少なくとも24時間に1度Dクラス職員によって実施されます。
処置110-モントークの実施中、少なくとも1名のセキュリティクリアランス4/231人員は処置を随時監視しなければなりませんが、SCP-231-7の声があまりに悲惨であれば音声を切っても構いません。
処置後、全てのDクラス職員は自身の留置房に戻らねばならず、さもなければ首輪の爆弾が爆破されます。

以上がSCP-231の概要です。

緋色の王という概念の原型を定めた報告書であり、
ここで登場した"緋色の王の子ら"や"処置110-モントーク"などの語句は
他の報告書やtaleでも頻繁に見かけるので
SCP財団の基礎知識の一つとしてぜひ押さえておきたいですね。

SCP-2317 - 異世界への扉

SCP-2317 - SCP財団

特別収容プロトコル: 無意味。

こちらはSCP-231で名前が登場した
緋色の王の存在をさらに突き詰めた報告書です。

報告書を開くと7つのタブ(反復)があり、
タブを読み進めるごとに報告書の内容が上書きされて
隠されていた真相が明らかになっていく構成となっています。

詳細は既に別の記事で解説しているので
今回は要点だけ簡潔におさらいしておきましょう。

まず結論から述べてしまうと、
SCP-2317の正体は財団の基底世界とは異なる次元に広がる
塩の荒野の地下深くに封印された緋色の王の実体です。

「世界を貪る者」の別名を持ち、
全長200kmにも及ぶこの実体は、
財団が入手した古文書の記述から
およそ紀元前1894年に
Erikeshなる秘術者の集団によって捕えられ、
獄につながれたらしいことが判明しています。

しかしながら、報告書記載の最新時点で
7つの封印のうち6つが既に壊れてしまっており、
封印をかけ直す手段もとうに失われてしまっているため
緋色の王の復活は秒読みの段階(財団の予想によれば30年以内)にあります。

この絶望的な状況の中、
真実が明るみに出ることで
職員の間に絶望感やパニックが
蔓延することを恐れたO-5評議会は
他の職員に対しある嘘をつくことを決定します。

それは反復5で説明のあった
220-カラバサス手続という
儀式的な収容プロトコルの存在。

実際のところ、
220-カラバサス手続は
緋色の王を封じ込める上で
くその役にも立たないのですが、
O-5は職員に対してそれが真実だと信じ込ませることで
「これさえやっておけばとりあえずは大丈夫だ」
という仮初の安心感を与える道を選んだのでした。

とはいえ…
それは一時凌ぎに過ぎず、
何も知らない一般職員たちが
無意味な儀式を懸命に続けている裏で
人類滅亡のカウントダウンは刻々と進み続けている…
というのが大まかですが本報告書の骨子です。

SCP-231と並んで
この報告書の内容がのちの緋色の王関連の報告書、taleに
多大な影響を及ぼしているので
こちらもしっかり押さえておきたいところです。

SCP-001 (タフトの提案)

緋色の王は神性ではない、博士。
緋色の王とは思想だ。

タフトの提言 - SCP財団

緋色の王を主題とした
SCP-001報告書の一つ。

モントーク博士("処置110-モントーク"の発案者)と
PoI-3172(緋色の王の復活を目論む団体の元リーダー)の間の
インタビューを通じて緋色の王の正体に迫る構成となっています。

この報告書で緋色の王は
実体を持たない、抽象的な、
一つのアイディアとして描写されています。


PoI-3172: あらゆる文化を通じて、あらゆる街、民族、文明で、君は緋色の王の概念に出会ってきた。

いつも同じだ。
燃える王冠と何か古風な女性性への恐れに根ざしたエトスを纏った赤い皇帝。
彼はいつも同じだ。
全てを消費する恐ろしい怪物。
だがとても理解しやすい。

強姦と火と古い血の儀式で満たされた、闇の巨大な悪なるもの。
こんなものが奥底に隠されたものだと言っても、気味が悪くはないだろう?
君自身が私に語ったように、君はもっと偉大でもっと幽かな怪物たちを見てきた。
だがいつも、いつもそこには消えない恐怖と、その後ろに立つこの隠された、だが見ればとてもシンプルなものだけがある。

より具体的にいうと緋色の王とは
科学技術や合理主義に代表される文明的な世界と
神話や迷信、部族社会に代表される非文明的な世界の
対立を体現する存在であると定義され、
それによって生じる軋轢が
緋色の王の復活の呼び水となることが示唆されています。

そして、科学技術でアノマリーを解明しようとする
SCP財団の活動自体が文明vs非文明の対立の構図であり、
ひいては緋色の王の復活を助長しているという結論に辿り着いたモントーク博士は
O-5に財団の活動方針の大幅な転換を提案しますが
投票の結果これは否決されてしまいます。

その後、代替案として
緋色の王が無害であると職員に信じ込ませて
これを弱体化させる計画が実行されたわけですが、
それが全く無駄な試みであったことは
SCP-2317報告書の項で述べた通りです。

ある者は果てしない夜に生まれる

そこで、あることを思いついたんだ。
僕たちが生き残る唯一の方法は、一つになること。
僕たちは個々の性質を犠牲にして融合しなければならないんだ。

一つの存在、多くのものから作られた一つの子供、神経と針金で繋がれた狂気の心。
僕たちは一緒にいる方が強いから。

ある者は果てしない夜に生まれる - SCP財団

未来の日付の子供の行方不明者広告が
不特定の牛乳パックに出現※し、
予告された日時になるとその子供が
神隠しの様に忽然と消えてしまうという
SCP-3553事例の犠牲者の一人、
ジェイコブ・モントーク少年(14)の日記という体裁で書かれたtale。
(※1990年代のアメリカで実際にあったスタイルの広告)

このtaleの中でジェイコブを含む子供たちは
誘拐先の暗黒の空間に浮かぶ影のような存在として描写され、
続いて彼らがそこで想像した"夢"の内容は
現実世界へと反映されることが示されます。

例えばある子供が見た
古い伝説に出てくる巨大な「うなぎ」の夢が
SCP-3000になったり、
別の子供が見た死ねない男の夢が
SCP-1440になったりといった具合に、
このtaleではいくつかのアノマリーが
彼らの想像から生まれた産物であったと定義されているのです。

ただ、子供たちの存在はとても不安定なものであり、
想像することをやめたり、
子供たち同士で記憶の交換をすることをやめたりすると
存在がすり減っていって、
やがて闇の中へと呑まれて消滅してしまいます。

ジェイコブが思いを寄せていた
グルヤという少女もついに消滅してしまい、
そのことをきっかけにジェイコブは
他の子供たちに生き残る最後の方法として
全員の精神を一つに融合することを提案します。

この提案には反対意見もあったものの
最終的には実行され、すべての子供たちは
溶け合った一つの大きな精神となりました。

それから彼らは
数千年を軽く超える時間の中を存在し続け、
次第に神などの高度な概念についての夢を見るようになりました。

特に3994年3月19日の日記には
夢の一つとしてSCP-231のことが書かれており、
それはすなわち緋色の王もまた
ジェイコブを含む子供たちの集合意識の見た
夢の産物であったということを意味しています。

その後、どれだけの時間
ジェイコブたちの精神が存在し続けたかは定かではありませんが
最後の一つ前の日記のタイトルが
「宇宙の熱的死だ。東部標準時の午後3時。」
となっていることからすると、
実際に宇宙が熱的死を迎えるのに必要な時間と
同じだけの時間を耐え抜いた可能性もあります。

もっともそれが本当に
ジェイコブたちにとって幸福な事であったかは分からず、
日記の最後には混濁した記憶の中で
全てが闇へと帰っていくという記述を残しながら本taleは幕を閉じています。

もうすぐだ。もうすぐ終わる。
そうすれば、僕はもう生きている必要はない。
僕は盗まれた子供である必要はない。
半分記憶された現実を何千年も夢見てい?。
それはいずれにせよ無に無駄になるだろう。

嗚呼、闇、闇、闇。全てが闇へと入っていく。

ちなみに最初の方で
気になった方もおられると思うので補足しておくと
このtaleの主人公のフルネームは
ジェイコブ・モントークであり、
処置-110のロバート・モントーク博士とは同姓の別人であると思われます。
(緋色の王への言及もあるので意図的だとは思いますが)

プロジェクト・パラゴン

SCP-████から回収された残存情報は
ダエーワの歴史と文化についてかなりの情報を明らかにしており、
その中には レックス・サングイナス(Rex Sanguinus)
- “緋色の王” - として知られる実体との関係を示す歴史も含まれています。

プロジェクト・パラゴンハブ - SCP財団

SCP-6765 - SCP Foundation

SCP世界の壮大な叙事詩を綴るプロジェクト・パラゴンハブでは
緋色の王はもともと最初の人間 — アダム・エル・アセムが支配する
アウダパウパドポリスという都市の市民の一人であったとしています。

彼はそこで自らの血を使い、
子孫となるダエーバイト人ために
アルカイック写本と呼ばれる年代記(SCP-140)を書き上げました。

アセムが敗北しアウダパウパドポリスが破壊された後
王はダエーワ文明から崇拝されるようになり、
その家長や君主たちは自らを
緋色の王の直系の子孫であると信じていました。

しかし時が経つにつれて王への信仰は薄れてき、
アジダハカの女王シネウィスは「蛇の手」と呼ばれる独自の教団を立ち上げ、
あらゆる知識の象徴である「蛇」を崇拝するようになります。

これに嫉妬した緋色の王は自分を裏切った者たちに戦争を仕掛け、
7人の妻を呼び寄せて協力させました。

シネウィスの側にはラフェニルド、アガサ、モロスという
他のダーエバイト人の偉大な君主が加わりましたが
その戦いは長く激しいもので、
世界は神のあらゆる怒りと腐敗に包まれました。

長い戦いの末、緋色の王は聖者ステラという名の
ジャーヒの戦士のハンマーの一撃の元に倒されることとなり、
モロスは彼に恐ろしい魔法をかけ、再び地の底に縛り付けました。

緋色の王は封じ込められる直前に
大地の恵みを受ける全ての者たちの名を呪い、
いつか花嫁たちが再び生まれ、
彼の7人の息子が世界に種を蒔いたなら
我々全員に対して最後の残虐な報復を行うであろうと誓ったのでした。

ひとりっきりで怯えてろ

我々が悍ましいことをしていると多くの人々が考え続ける限り、怪物も我々が悍ましいことをしていると信じ続けるだろう。
象徴には力が宿るのだよ、博士。

ひとりっきりで怯えてろ - SCP財団

処置110-モントークを題材としたtale。

ネタバラシは控えておきますが、
詳細が不明で残虐であるというイメージだけが先行している
処置110-モントークの特性を逆手に取った秀逸なtaleとなっています。

SCP-6140 - 真の帝国

緋色の王は存在しなかった。
緋色の王の神話はSCP-140-Aによる作り話。
エプテム・アンソア2の統率力を軽視し、ダエーバイトの母権性を西洋の父権性に寄せたいという思いから。

SCP-6140 - SCP財団

この報告書では、実は緋色の王は
最初から存在などしていなかったという
衝撃的な結論を出しています。

どうしてそうなったかについては、
実によくできた内容ですので
実際の報告書をお読みになって
確かめていただければと思います。

帰宅の頃に

こうして最終決戦が始まった。
天国から降臨し、地獄から這い上がった神々とその全ての軍勢が互いに戦争をしかけた。
星々は憎しみに燃え上がった。

万物は激烈な負荷により崩壊した。
どの世界も例外はなく、どの天体も免れはしなかった。

道は引き裂かれた。
図書館は焼け落ちた。
神々は玉座から投げ落とされ、大地は打ちのめされ破壊された。
億万の戦線で血の激流が各所のあらゆる物へと降り注いだ。

王がイェソドを自身の玉座とすると、万物は灰燼に帰した。

帰宅の頃に - SCP財団

そして私は神を求めた ハブのこのtaleでは、
ダエーバイト文明によって召喚された緋色の王が
原生で暴れまわるという最悪のシナリオが描かれています。

tale内にて語られるところによると、
緋色の王はレヴィアタンや上位悪魔を従えてメギドの穴から這い出し、
全ての生命に対する侵攻を開始。

人類はそれに対し古代の守護神と共に立ち向かい、
さらに緋色の王の魂を狙う死神の三兄弟が解き放った
死者の軍勢(SCP-1440を参照)や
天国と地獄からそれぞれ出現した他の神々も参戦しますが
緋色の王はそれらのことごとくを蹴散らし万物を灰燼へと帰していきます。

あらゆる生命、星々が星々が暗黒に呑み込まれて行く中、
最後に残された希望である「36人の聖人」は古来の宿命に従い、
緋色の王の防壁を消滅させることに成功。

さらに王を滅ぼす7人の戦士が
目や心臓などを順番に槍で突き刺していき、
最後の戦士、イザベル・ワンダーエンターテイメント五世が
頭蓋骨を突き刺してこれを殺害しました。

その後、王の死体は地獄へと沈んでいき、
彼の魂は三兄弟のものとなったとされています。

結論、緋色の王とは何者だったのか?

繰り返しになりますが
緋色の王に関する情報は非常に錯綜しており
そのどれが真実であるかを断定することはできません。

それを踏まえてあえて
最大公約数的な共通認識らしきものを定義するなら
「SCP財団が総力を上げても相手になら無いほど強大な、
この世の生命全てに対する強い憎しみを持つ古代の支配者」
といったところでしょうか。

一方でメタ的な面から見ると
緋色の王(と他の旧き神々)の素晴らしい点は
そういった単純なイメージ云々ではなく
SCP財団ですらなすすべもない絶対者として存在することで、
SCP財団の世界に観念的、時間的な
深みを与えたところにあるのではないかと思います。

実際、緋色の王という名が出ただけで
読んでいる側も警戒度が一気にMAXに上がりますし、
先にご紹介したプロジェクト・パラゴンみたいな
壮大な話を展開する際にも
旧き神々のような存在は欠かせ無いでしょうからね。

緋色の王、そして旧記神々は
今後もSCP財団の物語における
最も魅力的なフレーバーの一つとして
君臨し続けることでしょう。

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