- はじめに
- ガチで面白いSCP報告書50選
- SCP-3844-JP - とっても強くて孤独なドラゴン
- SCP-1775-JP - グレートブッシュドッグ王国入国審査場
- SCP-3096-JP - 残夢の断頭台
- SCP-3228-JP - draft(4)
- SCP-1527-JP - 委託のフレーバー
- SCP-5443 - 終焉をもたらす邪神? 何体か捕まえたよ
- SCP-1406-JP - 安息の灯
- SCP-3211-JP - トイレの(致命的な)詰まり
- SCP-2513-JP - せめて、財団らしく
- SCP-065-jp - きょうからぼくはそうり大じん
- SCP-2903-JP - ナグファルの戦士達
- SCP-7992 - SCP-7992はゴリラです
- SCP-6502 - ハーウィック墓地
- SCP-2312-JP - 水は流れて子は産まれ
- SCP-2222-JP - 灯
- SCP-2844-JP - 認知的不協和
- 続きはこちら!
- SCPに興味があるなら以下の記事もおすすめ!
はじめに
この前メールで当ブログの読者様より
「最近SCPの記事少ないね」といったお便りをいただきまして、
そういえば最近書けてなかったなぁと
そんなこともあり、本日はちょっと久しぶりに
SCP報告書の特集をお送りします。
選出基準はシンプルに面白さだけ!
全体的に日本支部の報告書が多めですかね。
それではいってみましょう。
ガチで面白いSCP報告書50選
SCP-3844-JP - とっても強くて孤独なドラゴン
SCP-3844-JPに
指定されているのは
イタリアのドロミーティ山地に棲まう
一匹のドラゴンです。
ただでさえ魑魅魍魎の
跋扈する財団世界ですから、
今さらドラゴンの
1匹や2匹出てきたところで
さして驚きもしませんが
驚くべきはそのデカさ。
なんと73m以上、
ビルに換算すると
地上17階建てに匹敵する
巨躯の持ち主だというのだから驚きです。
このくらいのサイズになると
もはや鼻息だけで
人が殺せてしまうレベル。
これほどの圧倒的な怪物に対し
財団は一体どのように
立ち向かうのでしょうか…?
実はSCP-3844-JPはずっと
人間と友達になりたいと思っていた。
しかし、中世の頃に一度、
近くの人間の集落に向けて
「挨拶」の言葉を述べたところ、
その吐息で多くの人間が吹き飛んで
死んでしまった経験がトラウマになっており、
それ以来イタリアの山脈の奥地の洞窟に引きこもって
人間が自分と対等に話し合えるほど
強くなる時をずっと待ち続けていた。
それから数百年の時が流れ、
SCP-3844-JPの洞窟にSCP財団の職員がやってきた。
最初に洞窟に入った職員は
SCP-3844-JPの吐息に
吹き飛ばされて死んでしまったが
後続の職員は耐衝撃スーツを装備していたため
これに耐えることができた。
これを見たSCP-3844-JPは
「ついに自分と対等に
話し合える人間が現れた」と思い、
今度こそ人間を友として迎え入れるべく
喜んで洞窟の外へと姿を表した。
…その結果、SCP-3844-JPの爆発的な吐息を
間近で受けた財団の研究拠点は一瞬にして壊滅。
これに深く心を痛めたSCP-3844-JPは
再び洞窟の奥へと引きこもってしまう。
この一連の事件を経て財団は最終的に
これ以上の干渉は不必要な
リスクを増大させるだけだと結論づける。
SCP-3844-JPは財団よりずっとうまく
自分を「収容」していた、というオチだった。
SCP-1775-JP - グレートブッシュドッグ王国入国審査場
SCP-1775-JPに
指定されているのは
外見上は異常の見られない
1頭のヤブイヌです。
しかしこのヤブイヌ、人語を解する上に
「グレートブッシュドッグ王国」なる
謎の王国への入国審査をしてくるとのこと。
これに対し財団が
いくつかの実験を行ったところ…?
報告書にはDクラス職員と
複数種類の犬を被験者とした
実験記録が掲載されている。
8回目までの実験において
Dクラス職員を用いた場合には
入国の理由が不正確であるとか
狂犬病予防接種歴がないなどの理由で
入国審査が通ることはなかったが、
犬を用いた場合には全ての審査が通り、
その後に対象(犬)が消失することが確認できた。
そんな中、
9回目の実験である事件が起きる。
その回の被験者となっていたDクラス職員が
突如として「自分は財団のイヌだ」
「財団にとって都合の良い実験動物だ」とSCP-1775-JPに訴え出し、
あまつさえグレートブッシュドッグ王国への
亡命を懇願しだしたのだ。
この事態に対し、財団側はあわてて
Dクラスを取り押さえようとしたものの、
しばしの間を置いて状況を察したSCP-1775-JPが
何かを閃いたかのように目を見開く動作を見せると、
次の瞬間にはDクラス職員の姿が忽然と消えていた。
その後財団はDクラスが本当に
グレートブッシュドッグ王国へ亡命したものと見て
SCP-1775-JPに返還を要求し続けているが
SCP-1775-JPは以下の理由を根拠にそれを拒否している。
・SCP財団はイヌを含む動物を、非倫理的実験に用いていること。
・D-13441が重罪を犯した経歴は認められるものの、日本国の司法に則って釈放されていること。
・亡命者の取り扱いに関する議論はグレートブッシュドッグ王国と日本国の間でされるべきものであること。
その後の経過は記されてないが、
グレートブッシュドッグ王国が
人(犬?)権を尊重する国家である限り、
財団側の要求が通ることはないだろう。
SCP-3096-JP - 残夢の断頭台
SCP-3096-JPに
指定されているのは
日本国内で発生する
異常な人体切断現象です。
犠牲者は全て頸部から上が
完全に切断された状態で
自室内から発見されており、
凶器や第三者の痕跡は
一切発見されていないとのこと。
また、発見された犠牲者には共通して
以下のような特徴が確認されています。
- 遺体は常に、室内のいずれかの壁面に頸部の切断面を密着させ、跪いた姿勢か突っ伏した姿勢で見つかっていること
- 頭部とは別に、両手首から先が切断されていた例もあったこと
- いずれの場合も遺体の切断部位は発見されていないこと
- 生前の全被害者が後頸部に鋭利な刃物を用いた一撃を受けていること
コ○ン君でも迷宮入りしそうなこの難事件、
果たして財団は解決することができるのでしょうか…?
SCP-3096-JPの正体は、
"生活環境が類似する男性"に夢を見せ、
誘導した上で殺害、捕食する肉食のアノマリー。
SCP-3096-JPはまず、
複数日にわたってターゲットに
1人の魅力的な女性が
窓辺に佇んでいる夢を見せる。
この夢を繰り返し見せられるうち、
ターゲットは段々と夢の
登場人物である女性に心を奪われていく。
やがてターゲットが
十分に夢に魅せられたと判断すると、
SCP-3096-JPは今度は
その女性が窓から墜落する夢を見せる。
これに驚いたターゲットが目を覚ますと、
そこには夢で見たあの窓が実在している。
しかし、この窓の正体は
SCP-3096-JPの口が擬態したものあり、
ターゲットがこの窓から身を乗り出して
外を覗き込もうとした瞬間に
噛み付くように切断して捕食してしまう罠となっている。
これまでの被害者は皆この罠にはまって命を落としたが、
ある男性は直前で危険を察知し、
窓の外を覗かずにその場から逃げ出したため生存することができた。
財団はこの男性へのインタビューを通じて初めて
SCP-3096-JPの真の性質を知ることができたのだった。
SCP-3228-JP - draft(4)
SCP-3228-JPは建造物の一種ですが
その詳細については不明な点が多く、
現在調査が進行中です。
ここも今後
何らかの進展があり次第
追記、拡充していく予定です。
SCP-3228-JPは自身に対する何かを
完了させた対象を死に至らしめるアノマリー。
報告書には実際にSCP-3228-JPの竣工、
SCP-3228-JP報告書の完成、
SCP-3228-JPに関する詩の完成などが
異常性発現のトリガーとなったことが記載されている。
報告書末尾の"SCP-3228-JP付帯文書-1"を開いても
ずっとloading状態で先に進まないのはバグや手抜きではなく、
これ自体が報告書を完成させないことによって
SCP-3228-JPを安全に収容するための措置となっている。
SCP-1527-JP - 委託のフレーバー
SCP-1527-JPに
指定されているのは
ウォーターサーバーを改造して
製造されたと考えられる機械です。
その内部には
活動中の人間の大脳が接続されており、
任意の溶剤を投入することで
摂取したものに鮮烈なイメージを想起させる
異常なフレーバーを生成することができます。
報告書中の記述によればSCP-1527-JPの作成には
通常にはあり得ない生物の研究開発を行う要注意団体
「日本生類創研(以下 日生研)」が関与しているようですが…。
SCP-1527-JP内部の大脳の主は
要注意団体 Are We Cool Yet?(以下AWCY)の
元メンバー、森本 彩香。
AWCYに所属していた当時の森本は
自分の中に次々と湧き起こってくるアイディアを
思うように作品に昇華することができずに苦しんでおり、
ある日とうとうAWCY側からも
才能無しとして除名処分を受けてしまう。
処分を受けた森本は
自分に足りない技量を補う手段として、
自らの脳内にあるアイディアだけを
他人の脳内に直接送り込み、
作品制作の過程自体は他人に委託するという方法を思いつく。
その後森本は、この計画を現実のものとするため
AWCYと繋がりのある日生研へと相談を持ちかけたのだが、
そこの研究室室長を名乗る斎藤なる人物から
「手間を省くため」称して独自の代替案を提案される。
提案していただいた「自分のイメージを他者に委託する」方法は当研究所の技術で十分可能です。
しかし1度や2度ではなく、複数回、それも新たなアイデアが生まれるたびにこちらの研究所までご足労いただき、処置を行うことは非常に手間です。
ですのでこちらとしては脳を身体と分離し、アイデアを生産することに特化した機器の一部となることで、森本様が新たな人生を迎えるというプランを提案いたします。
この狂った提案を
森本が受け入れた結果
誕生したのがSCP-1527-JPだった。
その後、完成したSCP-1527-JPは
生前(?)の森本の意向通り
日生研からAWCYのサロンへと贈呈されたのだが
間も無く返却の憂き目に遭ってしまう。
その理由は財団が応酬した
ある文章の中に書かれていた。
先日僕らのサロンに送られてきた
大仰な機械は返却させてもらった。日本生類創研、
彼らだって一応はお得意様だから
そんなことしたくはなかったが、
あんなものを持ってこられても困るんだよ。
君は自分の技術が悪いことは
自覚しているだろうが、
アイデアの段階から既に
チープでありきたりなものだった。アイデアは誰彼構わず
降りてくるわけではない。物事を深く観察し、熟考し、
ある繊細な光に気付くことが
できるようになったものだけが、
それを脳裏に浮かべることができる。だが君はその努力をしなかった。
君はいつまでも無知蒙昧に、
大雑把な何かを手に取って、
それを素晴らしいものだと勘違いしていた。だから君は除名されたんだ。
そして君はあの機械を送ってきた。
試してみたが、本当に酷いものだった。アレから受け取ったイメージは、
君が以前から構想してたものにも増して俗っぽくなっていた。きついことを言うようだが、
アレではやはり君を
クビにしたことは正しかったと思う。僕らは、僕らの自己研鑽の場において
君のような凡人に興味はない。
ただ、君の情熱を無下にするのも、
やはり芸術家としては失格だ。
だから1つアドバイスを送ろう。
君は少々内向的過ぎる。先ずはその足で外に出て、
目で見て耳で聞いて、
世界にある美しい様々を見つめ直してみるべきだ。そうしてその1つ1つを手に取り、
よく観察してみたまえ。彼らから学び取れるものは
決して少なくないだろう。そして最後に君の手で、
学んだことを少しずつ形にするんだ。焦る必要はない。
もし君が真に自分だけのアートを
手に入れたときが来れば、我々は君を歓迎しよう。
言ってることは的確だと思うが、
今や機械に繋がれた脳だけの
存在となってしまった森本にとって
これ以上皮肉なアドバイスもないだろう…
SCP-5443 - 終焉をもたらす邪神? 何体か捕まえたよ
SCP-5443に
指定されているのは
ミイラ化した皮膚を持ち、
火炎を操作する力を持つ
5000歳超のヒト型実体です。
フランスで発見され収容されたSCP-5443は
ある「強大な悪鬼」の存在を警告します。
SCP-5443: 残された時間は極めて少なく、我々は備えなければならない。私は救うためにここにいる。どうか時間を無駄にしないでくれ。
リー管理官: ええ、もちろんです。我々は皆時間がありません。我々に知らせたいこととは何ですか?
SCP-5443: 巨悪が迫りつつある…
リー管理官: あー、その巨悪について教えてくれませんか?
SCP-5443: 世界の幼年期、まだ人々が星辰に隠された秘密を知らなかった頃、ある強大な悪鬼がその心に全ての生きとし生けるものへの憎しみを刻んだ。我が砕身と数多の犠牲により悪鬼は大地深くへと封じ込められたが、息絶えたわけではない。私同様1000年の時をかけて悪鬼は備えていた。天界を震わし、大地を支配すべく、戦いを始めるのだ!
SCP-5443: それらは6の腕を持ち、そのすべてに込められた恐るべき力で恐るべき所業を為すのだ。そのそれぞれが武具を持つ。鎌と槍だ。その名は… 言うことができない。口にすることも憚られるのだ。
SCP-5443曰く、
彼はこの悪鬼から人々を守るために
1000年の時をかけて
己を鍛え続けていたとのこと。
それほどの脅威ともなれば
世界の正常性維持を至上命題とする財団にとっても
決して無視できない脅威かと思われるのですが、
その割にインタビューを担当した
管理官の反応はいまいち緊張感に欠けていて…?
SCP-5443が警告していた「悪鬼」は
実はとっくの昔に財団が収容済みだった。
しかも収容時に発生した被害は
負傷者若干名、死者なしという
ごく小規模なものであり、
それゆえに「悪鬼」の脅威を力説するSCP-5443と
「あの程度のアノマリーで何を大げさな…」とでも
言いたそうな財団側の担当者との間で
強烈な温度差が生じていたというわけだった。
SCP-5443: 「2000年1月1日… 地面から出現する… 溶岩と氷点下」、うむ、間違いない… 「負傷者若干名、死者はなし」。
リー管理官の貧乏ゆすり以外に音はない。
SCP-5443: スクラントン… 現実錨? これはレオザーンの深淵の書に記された究極の魔術か?
リー管理官: いえ、それがただの箱を特別な箱にしているんです。すみません、本当に急がないといけないので。お時間をいただきありがとうございました。残りの質問にはマリーが答えてくれますので。ああそれからマリー、彼が収容下の、あー、カラプティを見たいそうなら、そう書いておいてくれ。私が許可を出しておこう。
リー管理官が去る足音。次席研究員パブロ・マリーが入室する。
パブロ・マリー次席研究員: 大丈夫ですか?
SCP-5443: うん? 私は… うん?
報告書の記載内容によれば
この事実を聞かされたSCP-5443はその後
「鍛錬の動機を失った」と述べ、
大人しく財団に収容され続けているらしい。
共感性羞恥というかなんというか、
読んでいてここまでアノマリーに同情したくなる報告書も
なかなか珍しいのではないだろうか。
SCP-1406-JP - 安息の灯
SCP-1406-JPに
指定されているのは
起源不明のオイルランプです。
主な異常性として
外部からの燃料を必要とせず
燃焼する性質があるほか、
半径3kmほどにある
自身以外の明かりに
負の影響を与えることが確認されています。
要するに、周囲の光源の明るさを奪って
自分だけが光り輝くランプのようなものです。
また、SCP-1406-JPを視認した場合に
恐怖、不安、焦燥、緊張といった
ネガティブな感情が増大することも報告されています。
SCP-1406-JPの真の脅威は
人々を暗闇の中へと閉じ込め、
強烈な疑心暗鬼と
恐怖心を掻き立てる点にある。
財団がSCP-1406-JPを発見するきっかけとなった
ある山村の事例では、多くの村民が
SCP-1406-JPの影響下に晒された結果、
大規模な暴動や山火事へとつながり
村民の大部分が焼死する結果となった。
生き残りの1人はインタビューの中で、
SCP-1406-JPが生み出した暗闇の中で
人々が安心感を得ようと必死に火を起こし始めたこと、
近くのものを「何でも」手当たり次第に
火を投げ込むようになったことが語られている。
██氏: そんな中、まず騒ぎだしたのは婆さん連中だったと思う。
暗い、怖い、よく見えないからもっと火を焚けとな。確かに火持ちは奇妙なほど悪くて、気づけば焚火はすっかり小さくなっていた。
だがそれにしたって大げさだろうと最初の内はみんなで宥めすかしていたんだが、そのうち同じようなことを言う奴が増えてきた。
やがて焚き木が次々と炎の中に突っ込まれ、焚き火の数が増えて、大きくなって……あとはその繰り返しだ。それが焚き火なんて域を超えた頃には、誰もそんなこと気にしちゃいなかった。いつの間にか村中の人間が集まって、みんながみんな火を大きくすることだけに執着していた。
仕方がないんだ。誰だってあんな暗闇の中、一人きりなんて耐えられない。██博士: 一人? 広場には多くの住民が集まっていたはずでは?
██氏: そんなのは頼れる明かりがあって、辺りを見渡せられるから言える理屈だよ、先生。
周囲は暗くてロクに見えやしない。
隣にいた連中は残らず暗闇に消えちまった。
そこにいるのは自分一人で……いいや、確実に一人ってならまだ良い。
でも、実際はそれすらわからないんだ。聞こえてくる息遣い、視界の端をよぎる影、得体の知れない何かの気配……ここはどこで、そこにはいったい何がいる?暗がりの中じゃ確かなことなんて何もない。
だからまずは、何にも優先して十分な明かりが必要なんだ。
馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないが、あのとき俺たちはそう信じてた。██博士: 少なくとも、あなたはそのように考えたと。
██氏: ああそうだ。なにせ気がつけばそんな有様だ。
俺は一刻も早く家族を見つけないといけなかった。
とにかく必死で、少しでも辺りを見通せるように、俺は……[顔を歪める]そうだ……俺には明かりが必要だった!
息子は歩き始めたばかり、家内は身重だったんだぞ!
必死になって何が悪い!
██氏: 日が落ちる。夜が来る。
けれど、街に明かりは灯らない。
ただそれだけのことが、あんなにも恐ろしいとは。
夜が、あんなにも長いとは……。██博士: 十分です、██さん。
今のあなたには、休息が必要だ。ナース、頼む。██氏: よせ、違うんだ聞いてくれ。
あの夜は本当に暗くて、手元だってロクに見えなかったから……
なあ先生、俺はあの夜、いったい何を炎に投げ込んだんだ?
もう今となっちゃわからない。
わからないから……夢に見るんだ……。[投与された薬剤の効果によって、対象は鎮静化する]
事件の最中、自分が何を
焚火に投げ込んだか覚えていないという██氏。
彼を含む村人たちは
ほんの少し先も見えない暗闇の中で
手近にあって簡単に持ち上げられるものなら
きっとなんでも焚火に放り込んだのだろう。
そう、例えば小さな子供のような…
SCP-3211-JP - トイレの(致命的な)詰まり
SCP-3211-JPに
指定されているのは
SCP-3211-JP-A,-B,-Cの
三つの要素からなる
1組の異常事象です。
SCP-3211-JP-Aは
かつてAO-2640Z-JPと指定されていた
洋式トイレ個室。
SCP-3211-JP-Bは
アジア系若年女性の姿をした
クラスC霊的実体。
SCP-3211-JP-Cは
サイト-81AMに勤務していた
27歳の日本人男性であるD-2778。
一見無関係そうなこの三者が
一体どのような致命的な事態を
引き起こしたというのでしょうか…?
SCP-3211-JP-Aには、
接近した人物にそこで排泄をしたいという
強迫観念を植え付ける異常性があり、
SCP-3211-JP-Bには
周囲で大きな物音を立てるなど
何らかの刺激を与えた場合に
対象の生理的活動を停止させる異常性があった。
この両者の異常性に
偶然にも同時に曝露してしまったSCP-3211-JP-Cは
その結果、疲労や死亡の兆候を一切見せないまま
永遠にSCP-3211-JP-Aのドアを
ノックし続ける存在となってしまったのであった…
SCP-2513-JP - せめて、財団らしく
どこかで見た覚えのある
メタタイトルが目を惹くこちらの報告書ですが
肝心の内容もそれに劣らないくらい
興味深いものとなっています。
SCP-2513-JPに指定されているのは
ヒトが死亡した際に
非常に低い確率で発生するある現象です。
その現象とは、対象となった人物の前に
知覚可能性な実体(SCP-2513-JP-a)が出現し、
死ぬ前に最後の願いを1つだけ叶えてくれるという、
例えるなら死亡時限定のランプの魔神のようなもの。
ただし叶えられる願いには限界があるらしく
報告書中には「死者を蘇生してほしい」
「人類を救ってほしい」といった願いが
SCP-2513-JP-aに拒否されたことが記載されています。
加えて、SCP-2513-JP-aの願いには
3分間のタイムリミットがあるとのことで、
ただでさえ不可解な状況に混乱しているであろう対象が
相当に焦らされるであろうことは想像に難くありません。
…と、ここまでの説明で既に
勘の良い方はこの報告書に
ある決定的な矛盾が含まれていることに
お気づきになったかもしれません。
わからなかった人は、
本アノマリーの発生条件を
じっくりと読み返してみてください。
SCP-2513-JPの抱える矛盾とは、
死ななければ観測できないアノマリーについての記録を
一体誰がどうやって残したのかという点にある。
結論から言うとその答えは、
死後にSCP-2513-JP-aに遭遇したとある職員が
SCP-2513-JPについての報告書を
財団データベースに登録するように
願って書かせた、ということになる。
その結論に至るにあたって
まず押さえておかなければならないのは、
本報告書が書かれてから間も無く(または同時に)
人類が滅亡しているという事実だ。
追記: ヒトの絶滅により、今後SCP-2513-JPが発生することはないと推測されています。
これを踏まえると、
先に無効な願いの例として挙げられていた
「死者を蘇生してほしい」「人類を救ってほしい」という願いが、
この滅亡を回避するためのものであったことが察せられる。
しかし、先にも述べたようにSCP-2513-JP-aは
自分の限界を超えた願いをかなえられないため
件の職員は願いの再考を迫られる。
「どうやらSCP-2513-JP-aには
人類の滅亡を回避する力はないようだ、
その上、3分間というタイムリミットもある…」
そんな絶望的な状況の中、最終的に彼が選んだ願いは
「自分が遭遇したこの現象を
報告書として財団データベース内に記録してほしい」
というものだった。
人類の滅亡が避けられないなら
記録を残すこと自体には
何の意味もないかもしれない。
それでも彼は最後の最後まで
「せめて、財団らしく」
あろうとする道を選んだのだ。
こうして投稿された
SCP-2513-JP報告書の末尾には
本報告書の作成にあたって
SCP-2513-JP-aの関与があったことを示唆する
ヒューム値の異常報告が記載されている。
また本報告書の末尾には
異常発生に伴う緊急通達プロトコルが
財団上層部宛に発令されたことが記載されているが、
それに対する応答は「未応答」のままとなっており、
人類が確かに滅んだことを示唆している。
SCP-065-jp - きょうからぼくはそうり大じん
SCP-065-jpに
指定されているのは
東京都██区の民家の
二階に存在する扉から
侵入することが可能な異常次元です。
SCP-065-JPの内部は
基底次元と酷似していますが、
日本だけは国土が酷く荒廃しており、
テーマパーク、アミューズメントパークなどの
レジャー施設の跡地が大量に存在するなど
現実との明確な違いが見受けられます。
財団が調査を進めたところ、
この状況には異常が発生した部屋に
以前住んでいた井川氏が関与しているらしく…?
この報告書を読み進めるにあたって
まずおさえておきたいのが、
失踪当時の井川氏が小学校低学年程度の
男子児童だったということ。
ある時、自室がSCP-065-JPに変化して
SCP-065-JP内へ入り込んだ井川氏は
そこで██さんと称する人物の手助けを受け、
SCP-065-JP内の日本の総理大臣となる。
以下はSCP-065-JP内で発見された
井川氏の手によるものと思われる日記の内容(一部)だ。
きょうからぼくはそうり大じん。
お父さんもお母さんももうしらない。██さんはやさしいから
ぼくをそうり大人じんにしてくれるって
やくそくしてくれました。これからは"かんてい"ってところにすむみたい。
日きもめんどくさいけどちゃんとかきます。
しかし井川氏は所詮は子供なので
後先を考えずに遊園地を作りまくったり
「宿だいをなくす」法律を作るなど
失政とすら呼べない失政を重ねてしまう。
その結果、SCP-065-JP内の日本は急速に荒廃し
井川氏の支持率も急落する。
20██年3月2日
今日やったこと
テレビでお話しをした
██さんとけんかした
「ぼくの言うことを聞かせる」法を作った感想
日本の人たちからのぼくの人気がすごく下がってるらしい。楽しいのになんでかわからない。██さんは「しかたない」って言ってた。でもなんだか落ち着かないからあたらしいほうりつを作りました。
最終的には
クーデーターが起きて██さんが死亡し、
井川氏は「かんてい」からの逃亡を余儀なくされる。
20██年1月10日
今日やったこと
███さんがしんだ
感想
ここの中に入って来た入にころされたらしい。██さんは「もうすぐにげた方がいい」って言ってた。ぼくもそうおもった。
その後の詳しい足取りは
日記の中にも記載されていないため不明だが、
報告書には基底世界のある駅の構内で
井川氏の死体が発見されたことが記載されている。
SCP-065-JP内で殺害されてから基底世界へ戻されたのか、
それともどうにか基底世界へは逃れられたものの
家にたどり着く前に力尽きて死んでしまったのか…
██さんの正体も含め、
多くの謎を残したまま
本報告書は幕を閉じている。
SCP-2903-JP - ナグファルの戦士達
SCP-2903-JPに
指定されているのは
複数の財団施設内で傍受された
発信元不明の電気信号です。
信号の内容は主に
SCP-2903-JPの発信主(以下 SCP-2903-JP-1)と
「シェイム」と呼称される
彼らの敵対存在との戦闘記録であり、
その内容からはSCP-2903-JP-1が
人類の水準から見ても遥かに高度な
科学技術を有していることが窺えます。
しかしながら、
「敵」はSCP-2903-JP-1に
広範かつ致命的なダメージを与える
恐ろしい兵器を所有しているらしく
通信から伝わってくる戦況は芳しくありません。
それからしばらく
一方的な通信の傍受が続いたのち、
財団はある時ついにSCP-2903-JP-1の部隊の1つである
「ナグファル・ブラック」との
交信に成功します。
しかし、その時彼らは
今まさに「敵」の襲撃を
受けている最中だったようで…?
SCP-2903-JP-1の正体は
財団施設内で繁殖した異常な"カビ"。
彼らの「敵」とは財団の清掃員であり、
恐るべき兵器は散布式の薬剤だった。
財団との交信に成功したナグファル・ブラックも
最終的には清掃活動に伴う薬剤散布によって"駆除"されてしまった。
SCP-7992 - SCP-7992はゴリラです
SCP-7992に
指定されているのは
人間…ではなくゴリラです。
それも不老不死と
変身能力を有した非常に危険なゴリラです。
SCP-7992は初期収容中に
生物老年学部門主任の
ハリソン研究員の四肢を引きちぎって殺害し、
その姿を模倣しました。
それ以来、ハリソン研究員の姿のまま
財団施設内で収容が継続されています。
SCP-7992は非常に危険なので、
間違っても交流を持とうなどとは考えないでください。
SCP-7992がゴリラだというのは
財団上層部が用意したカバーストーリーであり、
実際には不老不死となった
本物のハリソン研究員が収容されている。
財団上層部はどうにかして
不老不死の秘密を聞き出そうと監禁を続けているが
ハリソン研究員はそれに抵抗している。
ハリソン研究員が抵抗を続ける
理由については明言されていないが、
彼がかつて主任を務めていた
生物老年学部門がO5直轄の部門だったことを踏まえると
そこでO5や財団組織の醜い一面を知った可能性も想像できる。
SCP-6502 - ハーウィック墓地
SCP-6502に
指定されているのは
マサチューセッツ州
ウェイバリー・フォールズに位置する
ハーウィック墓地です。
報告書の記述によれば
この墓地に生きたまま埋葬された対象は
未知の理由で「死ななくなる」とのこと。
しかも、埋葬された場合肉体の腐敗は進行するものの
精神的能力と高次知性はそのまま埋葬されるというのだから
色々と可能性を感じずにはいられないアノマリーです。
副次クラスにTHAUMIELが指定されているところを見るに
財団側は既にこのアノマリーの
有効活用法を確立したものと思われますが…?
報告書には実際にSCP-6502に埋葬された
エヴァ・ブラッドリー博士の
サンプル事例が記録されている。
ブラッドリー博士は
熟達した収容スペシャリストであり、
彼女の死はある高リスクオブジェクトの
収容破綻に繋がるリスクがあった。
そのようなわけで財団は
致命的な情報災害に感染してしまった
ブラッドリー博士を本人の許可なくSCP-6502に埋葬して
死なせないようにすることを決定した。
しかし、
その後のブラッドリー博士に
待ち受けていた運命は
あまりにも悲惨なものだった。
報告書には埋葬後の
ブラッドリー博士を襲った
苦痛と恐怖が生々しく記録されている。
※SCP-6502-46 = ブラッドリー博士
2018年9月9日、19:31
SCP-6502-46 (叫ぶ): 出して!SCP-6502-46: お願い!
SCP-6502-46: どうか、お願いだから… 身動きが取れない…
2018年9月14日、11:02
SCP-6502-46: お願い、私を解放して。本当は私を助けたいのよね。
[合間。]
SCP-6502-46: どんな事でもする! 本当に何だってするわ、聞こえる? あなたを昇進させるし、O5たちに推薦するし、[編集済]への完全なアクセス権だって認める。
SCP-6502-46: お願いだから!
[合間。]
SCP-6502-46: 助けて。
2018年9月20日、22:20
[地下埋設マイクが、SCP-6502-46の棺の内部から、繰り返し爪を立てて引っ掻く音を検出する。SCP-6502-46が小声で呻く。]
SCP-6502-46: お願い! 誰か!
SCP-6502-46: 手が… 私の手が…
[引っ掻く音は更に数時間続いた後、途絶える。再開することはない。]
2019年5月12日、01:16
SCP-6502-46: 棺が崩れてる。
[合間。]
SCP-6502-46: 虫が。
[SCP-6502-46はその後36時間にわたって泣き続ける。]
報告書の記述はここで終わっている。
こんな目に遭うくらいなら
すっぱり死んでしまった方が
よっぽどマシと言うほかないだろう…
SCP-2312-JP - 水は流れて子は産まれ
SCP-2312-JPに
指定されているのは
北海道にある
霧に包まれた半径2kmの領域です。
1975年、常に霧がかかっている領域があるとして
この領域の異常性を認知した財団は
Dクラス職員を用いた
複数の現地調査を実施したのですが…
SCP-2312-JPの探索に従事する職員は
以下の条件を満たしている必要があります。
- 生物学的に男性である
- 現在、恋愛関係にある相手が存在しない
- 独身であり、事実上の結婚関係にあった人間が存在したことがない
- 性行為の経験がない
報告書に記載されている探索ログは全部で3つ。
1回目の探索は無人機を用いた探索記録であり、
その中にはタツノオトシゴ属の不明な種が
断続的に地面から空へ“落下”する様子や
10〜15ほどの子どもの泣き声、くぐもった男女の怒声、
赤黒く、胎動している崖から時折一部が剥がれ
川下へ流されていく様子などが記録されていた。
特に、最後の崖の描写は
剥がれ落ちる胎盤の様子を想起させ、
SCP-2312-JPが女性の子宮の
メタファーであることを匂わせている。
またこの探索では大量のDNAが混合した羊水と、
ホオズキの根がサンプルとして回収されているが、
後者に関してはかつて堕胎薬の材料として
広く利用されていたことに注意したい。
2回目の探索ではDクラス職員(D-3251)が投入され、
ところどころに暗褐色の物体が浮かんで流れる川や
Dクラスが次第に幼児退行し、
司令部の指示を無視して中央部へ向かう様子、
そして通信機器のバッテリー切れの直前に移り込んだ
正体不明の実体の存在が確認された。
これらはやはり、堕胎や流産を強く連想させる。
最後の3回目の探索では
2回目とは別のDクラス職員(D-3252)が投入された。
D-3252は探索の途中で何者かに押され崖から転落、
その後、子供の像を発見しそれに近づこうとしたところ
不明な音源からの音声が確認される。
不明な音源: ごめんなさい。あなたは碑に眠るの。
[子供の像は不可視の力によって急速に平屋の家に移動する。]
不明な音源: 泣かないで。
これに驚いたD-3252は近くの平屋へと逃走。
そこで井戸を発見すると
中を調べるように財団側から指示され、
覗いたところ、井戸の中は
先ほどの子供の像のものと思われる
大量の手で埋まっていた。
続いてD-3252は平屋内部の探索に移ったが
その中のある一室でまたしても異常事態に見舞われる。
[D-3252は襖を開ける。畳敷きの部屋の中央には膨らんだ布団が敷いてある。布団の横にはハサミなどの器具が入った箱と子供の全身像が並んでいる。]
D-3252: 五体満足な奴は久々に見たな。上から落ちてきたやつ以来か。
[突然ハサミなどの器具が揺れ金属音が鳴り響く。女性の呻き声がする。D-3252はこの現象に関心を払わない。]
[子供の像が上下に揺れ出す。子供の像の首が赤く色づいていく。]
D-3252: 喉が渇いた。ここには何もない。外に出る。
[D-3252は襖の前に移動する。襖が開かないことに気づくと、襖を叩き始める。D-3252の歯が徐々に抜け落ちる。D-3252はこの現象に関心を払わない。]
D-3252: (舌足らずに)ああ!やめてくれ!お願いだ!
[子供の首がねじれて裂ける。裂けた隙間から液体がこぼれだす。]
D-3252: 決められなかった!?なら止めてくれよ!嫌だ。ああ!
[D-3252の手に裂傷が発生し、出血する。D-3252はこの現象に関心を払わない。]
D-3252: (唸り声)
[襖を叩く音が弱まる]
[D-3252はしゃがみ込む]
D-3252: (えずき声)
[D-3252は以降応答しない。水が子供の像から流れる映像を映したまま、通信が断絶する]
[記録終了]
報告書はここで完結しており、
D-3252がその後どうなったのかは分からないが
状況からして恐らく死亡したもののと推測される。
本報告書は最後まで
あえて明確な答えを出さない
ねっとりとした和ホラー風のスタイルを取っており、
SCP-2312-JPの起源や目的などについては
かなりの部分で読み手の解釈に委ねられている。
それでもヒントは色々と散りばめられており、
無粋かもしれないが
そこから私なりに仮説を立ててみると
SCP-2312-JPは流産、または堕胎によって
子どもを亡くした女性の恨みや未練が
凝り固まって生じた現象だと考えるのが
最も自然であるように思える。
他の報告書でも霊的な実体が
現実世界に害を及ぼす例はまま見られるので
こうした現象も(財団世界では)
絶対にありえないとは言い切れないのではないだろうか。
SCP-2222-JP - 灯
SCP-2222-jpに
指定されているのは
サハラ砂漠地下の
起源不明施設内から発見された
非実体的特徴を有する
黄-赤色の球形発光体です。
SCP-2222-jpは通常、
一定の間隔で明滅していますが、
その度に別のアノマリーの収容違反や
要注意団体の襲撃が発生する直前に
その感覚や光色に一定の法則で変化が生じることから
O5内でもこのアノマリーの扱いに関しては意見が分かれています。
SCP-2222-JPの正体は
地球外あるいは別次元に由来する“寄生生物”。
SCP-2222-JPは
異常な方法で生命や構造物を生成する能力と
正常性の枠組みから外れた物品を
収集することで“成長”する特性がある。
SCP財団はこのSCP-2222-JPが
自らの成長のために生み出した「道具」であり
「幻影」に過ぎなかった。
またSCP-2222-JPには存在するだけで
より強力なアノマリーを引き寄せる性質があり、
実際にこのアノマリーが存在していたある次元では
その次元の財団に相当する組織(以下 財団X)が
インフレし続けるアノマリーの脅威に対抗しきれなくなり
最終的にそこの人類もろとも滅亡してしまっている。
基底世界の財団はこれらの情報について、
サハラ砂漠の地下で発見された
財団Xの施設内の複数の資料から知ることができた。
もっとも財団上層部は
仮にこの事実が公表された場合、
財団の存在意義やアイデンティティそのものが
根底から覆されるリスクがあるとして
そのアクセスを厳しく制限している。
SCP-2844-JP - 認知的不協和
この報告書については…
あまりにヤバすぎるので
よほどの覚悟がない限り
深入りしない方が良いでしょう。
世の中には
「知るべきではないこともある」
ということで…
SCP-2844-JPの正体は
その本質をごく1部でも知るだけで
感染する致命的なミーム災害。
複数の"恐怖"に関連するミームを内包する
SCP-2844-JPに曝露した対象は
心理的/高次脳機能的異常が発露し、
多くは不明な要因によって死に至る。
またこの過程で死亡した対象は
新たな感染源(SCP-2844-JP-A)となり、
視認したり接触した対象にも
SCP-2844-JPに曝露させるキャリアとなる。
そのためSCP-2844-JPの
感染拡大を防ぐことは極めて困難なのだが、
それ加えてSCP-2844-JPには
SCP-2844-JPの本質を見抜く存在を誘い出し、
抹殺しようとする性質が備わっており、
またその際には認知不協和と呼ばれる概念を
利用することが知られている。
ここでいう認知不協和とは、
SCP-2844-JPについて
理解しなければならないという認識と
SCP-2844-JPが危険な存在であり
関与してはならないという認識との間に生じる
一種のジレンマのことである。
曝露者はこのジレンマを回避するために、
無意識的に「SCP-2844-JP自体は脅威だが、
そのリスクは同時に快楽でもある」
という別の認知を代入するようになり、
その結果としてSCP-2844-JPを
拒絶することができなくなってしまう。
これがSCP-2844-JPに対抗することを
より一層難しくしていたのだが、
しかし財団はそこに目を付け、
対抗策としてのプロジェクトMONOGONを策定する。
プロジェクトMONOGONとは
人工的に開発された疑似的な認識災害である
"ALABASTERプログラム"を人類種全体に散布することで
SCP-2844-JPの拡大を表面上の影響無く阻止する計画だ。
…しかし、皮肉にもこの計画の実行が
人類滅亡のカウントダウンを
大きく先に進める結果を招いてしまう。
特別定義/APOLLYON: アイテムは収容不能であり、能動的に世界の終焉を招きます。
SCP-2844-JPを構成する複数のミーム的概念は、財団が流布したALABASTERプログラムを掌握する形で全ての人類種個体に拡散しました。現在のSCP-2844-JPを活性化させる可能性がある単語は - 全ての言語のあらゆる文法構造の43%を占めています。SCP-2844-JPの最小単位の配列は、概ね - 特定の存在に対する恐怖、抑圧の感情で満たされています。
なんと、SCP-2844-JPが逆に
ALABASTERプログラムを乗っ取り、
その結果全ての人類が
SCP-2844-JPに感染するという
とんでもない事態に陥ってしまったのだ。
ALABASTERプログラムを取り込んで
さらに強大になったSCP-2844-JPは
言語のみならず、流行/習慣/伝統/掟/仕掛/伝説/物語/識別ミームなど
あらゆる認識への侵食を加速させていく。
人類に残された時間はあとわずか、
滅亡は秒読みという状況の中、
途轍もないやらかしをした財団は
しかしまだ諦めてはいなかった。
ここにきて最終手段とも呼ぶべき
オペレーションCYANIDEの実行を決断する。
オペレーションCYANIDEは
財団が未だその一部を管理下に置く
ALABASTERプログラムを利用する作戦だ。
これを改良し、
SCP-2844-JPがまだ支配していない
未使用の言語を散布することで
曝露者の認識を上書きし、不協和の除去、
及びSCP-2844-JPの自己崩壊を促すというのが
財団側の狙いだった。
方法: 対抗ミーム - "ALABASTERプログラム"は、その一部分は未だ財団の管理下に置かれている。ALABASTERプログラムを改良し、特定の未使用の言語を散布する。仮にその言語に - SCP-2844-JPが支配する概念の表現が存在しないとしたら - 散布された言語によって認識を上書きされた対象は、恐怖たるSCP-2844-JPを拡散する事が困難になるだろう。
ALABASTERプログラムは肯定である。「より強い認識」が干渉を開始した時、不協和の存在は、不協和自体を除去するために最も最適な判断を下すだろう - SCP-2844-JPは自己矛盾によって崩壊する。
現行の人類種に対して肯定的であるALABASTERプログラムは、現実改変によるSCP-2844-JPの自然消滅を促す。認識と伝達の齟齬によって - SCP-2844-JPはこれ以上拡散されない。
かくして実行されたオペレーションCYANIDEは
今度こそ目的通りの効果を発揮し、
財団はSCP-2844-JP実体の将来的な拡散のリスクの
完全な回避に成功する。
しかし、これは毒を以て毒を制する作戦でもあり、
その副作用として基底現実の構成要素の断片的な崩壊、
ひいては致命的なAK-クラスシナリオが発生してしまった。
もっともそれはある程度承知の上だったようで、
財団はこれを回避する手段として
SCP-2000の再起動、つまりは人類のリセットを決定する。
これにより、多大な爪痕を残しつつも
ようやく人類はSCP-2844-JPの脅威から
解放されたかに見えたのだったが…
結論。やっぱりだめでした。
リセット後の人類を待ち受けるのは
完全なる絶望か、それとも…。