本当に同じキャラ!?ジョジョの荒木先生の38年の絵柄の変化を追ってみた【武装ポーカーからジョジョメノンまで】

ジョジョの奇妙な冒険

荒木先生の絵柄の変化を追う

こんにちは、daimaです。
先日いよいよジョジョ五部の
アニメが放送開始しましたね。

思えばアニメもこれで
通算5タイトル目を数えることになり、
改めてジョジョという作品の
歴史の長さを感じさせられます。

さて、だから
というわけではないのですが、
本日は荒木先生の漫画家活動38年間の
絵柄の変化をテーマに
ひとつ記事を書いてみたいと思います。

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(▲80年代、90年代、そして2012年にそれぞれ描かれたジョナサン・ジョースター。並べてみると時代ごとの変化がよく分かりますね。)

取り上げる作品は
デビュー作「武装ポーカー」から
現行作の「ジョジョリオン」まで。

各時期の
絵柄の変化を紐解く中で、
荒木先生の漫画家としての進歩や
他作品から受けた影響などを
分析してみたいと思います。

第ⅰ期 [武装ポーカー〜魔少年ビーティー](1980年〜1984年)

まずはデビュー作「武装ポーカー」から
初の連載作品である「魔少年ビーティー」までの
最初期にあたる時期を見ていきます。

それともうひとつ「絵柄」だ。
正直言って当時、
自分の「絵柄」というものに
イメージが、あまりなかった。

プロのマンガ家はひと目見て、
あっ!この作家だ!
という特徴があり、でも自分は
どうやって、そういう自分だけの
特徴というものを出していいのか、
さっぱり分からなかった。

特徴を出そうとすると
「クセがあってヘタ」と言われるし、
上手に描こうとすると
「誰先生に似てる」と言われるし、
どうすっかなあと、
暗中模索って感じであった。

『ゴージャス★アイリン』文庫版あとがきより抜粋

上記抜粋から伝わるように、
この時期は荒木先生にとって
自分なりの絵柄というものを
模索していた時期だったようで、
その画風は「カムイ伝」の白土三平や
「バビル2世」の横山三輝、
「サイボーグ009」の石ノ森章太郎など、
著名な先輩漫画家たちの影響を
強く感じさせるものになっています。


(▲バージニアによろしく)


(▲魔少年ビーティー)

しかしながらその反面、
ストーリーやアイディアの部分では
既に確固とした才能を発揮していて、
それは例えばデビュー作武装ポーカーの
練り込まれた構成であったり、
少年誌であえてピカレスク(悪人が主人公の話)
をやってみせた魔少年ビーティーの
大胆な設定などに表れています。

武装ポーカー(1980年)

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西部開拓時代のとある酒場を舞台に、
ドン・ペキンパーとマイク・ハーパーという
二人のガンマンが、
お互いのプライドを賭けた
ポーカー対決を繰り広げるお話。

荒木先生は20歳の時にこの作品が
第20回手塚賞準入選作に選ばれたことで
晴れて漫画家への第一歩を踏み出しました。

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その画風は先述した
諸作家らの影響が強く、
絵の面ではまだまだ発展途上ながらも
少ないページで登場人物のキャラを立たせて
最後にあっと驚くどんでん返しを仕込む構成力は
既にプロ顔負けといった風格です。

あの漫画の神様
手塚治虫氏が本作を読んで
「まれに見る才能ですよ!」
手放しに絶賛したというエピソードも
さもありなんといった所ではないでしょうか。

荒木 飛呂彦和手塚治虫 - YouTube

(▲荒木先生と手塚治虫先生の奇跡の2ショット。
手塚先生の「東北には漫画家が少ない」
という発言に、荒木先生がすかさず
同郷(仙台)の石ノ森章太郎氏の
名前を出したところ、
手塚先生が思わず「ああいう程度のね」と
こぼしてしまっているのが
なんとも微笑ましいですね)

また、いちジョジョファンとしては
本作が後のジョジョでも度々描かれた
ギャンブルを主題としている点や、
マイク・ハーパーの風貌が
スピードワゴンにそっくりなことなど
色々と興味深い発見のある作品でもありました。

マイクハーパーとスピードワゴン
(▲マイク・ハーパー(右)とスピードワゴン(右)。帽子とロン毛、顔の傷に面影があります。ただし、似てるのは見た目だけで両者の性格は全く違っていたりします)

ゴージャス★アイリン (集英社文庫(コミック版))

ゴージャス★アイリン (集英社文庫(コミック版))


(▲武装ポーカーはゴージャス★アイリンの文庫版に同時収録。同じく初期作品であるバージニアによろしくやアウトローマンもこの本に収録されています。)

魔少年ビーティー(1982年〜1983年)

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社会的ダイナマイト
一触即発的良心罪悪感ゼロ的
猛毒セリフ的悪魔的計算頭脳的
今世紀最大的犯罪少年BT※1が、
その頭脳を駆使して様々な悪事
(とたまに善行)を働くお話。

1982年に新人作家の登竜門である
フレッシュジャンプに
読み切り版が掲載され、
その後本誌での連載が決定しました。

本作の絵柄は先の「武装ポーカー」や
以前の読み切り作品「バージニアによろしく」、
「アウトロー・マン」などの路線を継承し、
その上にひとつまみのポップさを加えたもの。

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しかしながらそのストーリーは
年端もいかない少年が
犯罪すれすれの悪事を働くという、
「友情」「努力」「勝利」を
信条とするジャンプに真っ向から
ケンカを売るかのような内容だったのです。
(といっても「友情」と「勝利」については
きちんと描かれていたりしますが)

当然ながら本作の連載にあたっては、
当時の編集部で喧々諤々の議論となったそうで、
最終的には後にジョジョの担当編集を務めた
椛島氏の尽力によって、辛くも連載枠を
勝ち取ることができたという逸話が残っています(※2)。
(※2魔少年ビーティー文庫版あとがきより)

ちなみに『BT』は
イニシャルであり、
その本名が作中で明かされることは
最後までありませんでした。

ただ、荒木先生によると
このイニシャルの元ネタは
ジャンプでスペースコブラを執筆していた
『寺沢武一(=Buichi Terasawa)』先生だそうです※。
(※「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド共同プロジェクト」記者発表会での発言より)。

魔少年ビーティー (集英社文庫(コミック版))

魔少年ビーティー (集英社文庫(コミック版))

第ⅱ期 [バオー来訪者〜ジョジョ三部序盤](1984年〜1990年)

魔少年ビーティー
連載終了翌年の1984年、
荒木先生は故郷仙台を離れ、
東京へと仕事場を移しました。

そして今、思い返すと、
上京して良かったと思う点しかあがらない。

まず、やっぱり人間だ。
色んな考えや情報を持った人と知り合えて、
いろんな物の見方にショックを受けて、
見たり聞いたり出来たので、
勉強という点では最大にプラスになっている。

見た事もない画家やデザイナーの本が売ってるし、
食べた事もない料理に夢中になった。

フランク・フラゼッタとかエンキ・ビラル、
アントニオ・ロペスといった画家は、
本当に好きになった。

『バオー来訪者』文庫版あとがきより抜粋

上記抜粋で語られているように、
上京の経験は荒木先生にとって
大きな転機となったようで、
この時期を境に作品の画風も
大きく変化しています。

バオー来訪者

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上京後初の
連載作品となったのが
このバオー来訪者です。

その内容は
秘密研究機関「ドレス」によって
軍事用に開発された寄生生物バオーを
偶然移植された少年、橋沢育郎が
その力を利用してドレスの野望を
打ち砕くために立ち上がるという
比較的王道なSFヒーローもの。

荒木先生は
前作BTが「知力」の戦いを
メインテーマに据えていたのに対し、
本作では「肉体」の戦いを
意識して描いたと語っています。

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そのような理由もあり
本作では人体描写を中心に
絵の写実性が以前より格段に向上し、
後のジョジョにも繋がる
独特な構図やポージングも
この時期からしばしば
見受けられるようになっていきました。

この時期、自らの画風について
特に影響を受けたものとして
荒木先生がその名を挙げているのが
たくましい戦士や妖艶な美女を得意とした
アメリカのイラストレーター
フランク・フラゼッタです。

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(▲フラゼッタのコナン・ザ・バーバリアン)

その影響は一部の
キャラクターデザインにも表れていて、
例えばバオーの後半に登場した
分子を操るインディアンの末裔、
ウォーケンなどは、フラゼッタの描いた
コナン・ザ・グレートに
石川賢のエッセンスを
加えたような風貌をしていますし、
後のジョジョの奇妙な冒険でも
やはりフラゼッタ作品に出てくるような
甲冑姿のマッチョな男たちが
数多く登場しています。

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(▲ウォーケン)

さてそんなバオーですが
連載期間は短く、
1984年から1985年の
二年間で連載が終了しています。

しかしながら後にOVA化され、
ファンの間で度々続編の要望が出るなど
その人気はジョジョに負けず
根強いものがあり、2013年には
ジョジョの格闘ゲーム
「オールスターバトル」に
作品の枠を超えた
ゲスト参戦まで果たしました。

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本作が短期連載にも関わらず
それほどの人気を得た理由はやはり、
主人公バオーと育朗の魅力的な
キャラクター設定と、
無駄のないストーリー構成に
あるでしょう。

特にストーリーは
連載開始時点からもともと
2巻程度で完結する想定で組まれており※3、
そのため打ち切り作品にありがちな
蛇足感や消化不良感を残す事なく、
すっきりと作品を締めることに成功しているのです。
(※3コンビニコミックス『魔少年ビーティー対バオー来訪者』より)

しかしながらそのバオーですら、
荒木漫画の全体から見れば
まだほんの助走でしかありません。

次はお待ちかね、
誰もが知るあの作品を見ていきますよ。

バオー 来訪者 (集英社文庫(コミック版))

バオー 来訪者 (集英社文庫(コミック版))

ジョジョの奇妙な冒険(第一部〜第三部前半)

ここにきてようやく
お待ちかねの『ジョジョ』の登場です。

しかしながらジョジョは
35年を超える長寿作品であり、
その画風も度々変化を経てきたため、
全てを一括りに語ることはできません。

そのため本記事においては
画風の変化を基準として、
[第一部〜第三部前盤]
[第三部中盤〜第四部序盤]
[第四部後盤〜第五部中盤]
[第五部終盤〜第七部序盤]
[第七部中盤〜第八部]

の計5シーズンに分割し、
各時期の考察を進めてみたいと思います。

その上で最初に見ていくのは
第一部、ファントムブラッドから
第三部、スターダストクルセイダースの
序盤まで続く劇画調スタイルの時期です。

魁!男塾北斗の拳

この時期は調度80年代の末にあたり、
ジャンプ誌上では北斗の拳、
魁!男塾、ろくでなしBLUESなど、
私含む現代のジャンプ読者には
信じら難いほど男臭い劇画漫画が
紙面を飾っていた時代でもありました。

また、荒木先生はかねてより
劇画の巨匠、白戸三平氏に
強い影響を受けており、
自身も劇画漫画の道へ進むのは
全く自然な流れだったものと思われます。


(▲ 椅子の装飾まで丹念に書き込まれています)


(▲ この圧倒的な質量感!初期のジョジョ特有の漢らしさあふれる1カットです。)

この頃の絵のタッチは
劇画の基本である写実的な描写に
荒木先生独自の
誇張表現を加えたもの。

衣服や小物の細部に至るまで
ベタで陰影がはっきり
表現されているのが分かりますね。

またキャラクターの描き方に注目すると
ジョナサン、ジョセフ、ディオ、柱の男といった
メイン級の男性キャラは筋骨隆々に男らしく、
反対にエリナ、リサリサ、ホリィさんなど
ヒロインキャラは華やかに女性らしく
描かれていることに気づきます。


(▲ジョジョきっての美人、リサリサ先生(※50代))

これも男らしさ、
女らしさを強調する
劇画の特徴の一つですが、
後の部で女性的な見た目の男性キャラ
(例:第五部のナランチャ、スクアーロなど)
が多数登場したり、反対に
男性らしい女性キャラ
(例:第六部の徐倫やエルメェス兄貴)が
登場していることと比較すると、
時代による価値観の変化が感じられて
面白いですね。

第ⅲ期 [ジョジョ三部中盤〜ジョジョ四部序盤](1991年〜1993年)

時代が九十年代に入ると
かつて隆盛を誇っていた
劇画漫画は次第にその勢いを弱め、
ジョジョもよりソフトな方向へと
その画風を変化させていきました。

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具体的には
体や服の線の書き込みが減り、
背景も2部以前のベタを多用した
陰影の強いものから、
陰影をおさえた平面的な描き方に
変化しています。

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(▲二部のエア・サプレーナ島(左)と三部のDIOの館(右)を比較。以前に比べて影の表現が柔らかくなっています。)

こうして比較すると一目瞭然ですね。
どちらが良いというものではないですが、
漫画の絵としてはⅲ期の方が
ぱっと見で何が描かれているか分かりやすく、
より適したスタイルであるように思えます。

そしてこの時期の
画風について語るなら、
当時空前の大ヒットを記録していた
ドラゴンボールの影響に
触れないわけにはいかないでしょう。

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折しもジョジョ三部の終盤が
ドラゴンボールが最も盛り上がった
フリーザとの決戦の時期と重なっており(※どちらも1991年前後)
この頃のジョジョには
スタンド発現時のオーラ描写(=DBにおける気)や
DIO戦時のなんの前触れもない
空中戦描写(=DBにおける舞空術)など
その影響を強く感じさせる場面が
数多く見られました。

世界を発現するDIO
(▲オーラ描写の一例)

エジプトの街を飛びまくる承太郎
(▲スゲェ…あの高校生、落ちながら戦ってる…)

また、第四部に入ってからも
フリーザ最終形態を彷彿とさせるデザインの
「レッド・ホット・チリペッパー」や、
卵から生まれる点、体色、
嘴などに類似性が感じられる
「エコーズ」や、その本体で
怒ると超サイヤ人よろしく
髪が逆立つ広瀬康一など、
ドラゴンボールの影響は
以前色濃く残り続けています。

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(▲レッド・ホット・チリペッパー※ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトルより)

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(▲エコーズACT1※ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトルより)

しかしながら
ジョジョはドラゴンボールから
絵の面では確かに影響を受けつつも、
漫画の内容、
とくに戦闘描写については
正反対言っても過言ではないくらい
独自のスタイルを貫き続けています。

その最も分かりやすい違いは、
ドラゴンボールがあくまで
戦闘力という数値化されたものさしで
キャラ同士の強弱を決めていたのに対し、
ジョジョでは単純な腕力ではなく
機転と発想力こそが
勝敗の決め手となっていたことです。

例えば拳一つでトラックすら倒す
作中最強のスタープラチナが
夢の中に入り込むスタンドデス13に
手も足も出なくなってしまったり、
あるいはギャンブルで負けた相手の
魂を奪う、ダービー兄のスタンド
オシリス神がジョースタ一行全員を
あわや全滅寸前まで追い込むような描写は、
肉体の強さだけが勝ち負けとならない
ジョジョならではの強さの描き方でした。

またさらに極端な例を挙げるなら、
第四部では主人公勢全員を
一度は全員爆死させたほど強力な
吉良吉影のスタンド、バイツァ・ダストを
スタンドを持たないただの子供(川尻早人)が、
たった一人で攻略するという
あまりに意外な展開もありました。

このように、
たとえ絵柄やキャラクターは
時代によって変わっても、
その根幹は変えずに貫いてきたからこそ、
ジョジョという作品は
今尚コアなファンに支持され
続けているのだと思います。

…と、綺麗に閉めようかと思いましたが
ただ一点、この時代の絵柄について
私が物申したいことがあります。

それは、エリナさんやリサリサ先生が
登場したⅱ期や鈴美さんの登場したⅳ期に比べて
ⅲ期では全体的に女性の描写が野暮ったく、
もっと言えば可愛く無くなっているように
思えてしまうことで

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例えばホリィさんの場合、
三部序盤(左)の頃は少女のように
可愛らしかったものが、
三部終盤に再登場(右)した時は
なぜか急激におばさん化が進行しており、
初読時は少々困惑したものでした。

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また、一部のファンの間では
上記コマ(右)のホリィさんが
ヨコハマタイヤにしか見えないという
失礼極まりない評判も
囁かれているとかいないとか。

第ⅳ期[ジョジョ四部中盤〜ジョジョ五部中盤] (1994年〜1997年)

バブルが崩壊し、
阪神大震災や地下鉄サリンなど
暗い話題が続いた
90年代中盤以降に該当するのが
この第ⅳ期です。

この時期の画風の変化は
ⅲ期と比較すると一目瞭然で、
キャラクターの体格が
全体的に華奢になり、
ファッションモデルのように
等身の高いキャラクターが
次々に登場するようになります。

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(4部開始時と終盤の仗助を比較。
肩幅とリーゼントの量がダウンしています)

[ジョルノ ギャングスター]f:id:ama46572222:20181006182934j:plain
(5部主人公ジョルノ。
5部はキャラのスマート化が
最も著しい時期の作品です)

この変化の背景にはおそらく、
90年代中盤からジャンプが次第に
女性読者の獲得を意識し始めたこと、
そして80年代まで主流であった
劇画スタイルがさらに下火となった
影響があったものと思われます。

一方でこの時期になると
一目でそれと分かるような
荒木先生独自の画風が
ほぼ完全に確立されており、
あまり他の漫画作品からの
作画的影響は感じられなくなっています。

ただ一部のイラスト、コマについては
ファッションスナップや海外漫画からの
構図、デザインの借用がネット上で
度々指摘されています。

moebius.exblog.jp

matome.naver.jp

こうした借用の是非はさておき、
個人的には絵の見易さと
個性のバランスが丁度よく、
単純に絵として好きなのが
この時期の画風だったりします。

第ⅴ期 [ジョジョ五部終盤〜ジョジョ七部序盤](1998年〜2007年)

90年代終盤から2000年代中盤までと
本分類ではⅵ期に続いて該当期間の長いこのⅴ期ですが、
その画風はジョジョ全編を通しても
特にアクの強いものとなっています。

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(▲この時期に描かれたゴージャス★アイリンの主人公アイリン(右)。1986年版(左)と比較すると、絵柄というか骨格からして変わってそうな雰囲気です。まぁこれもアイリンお得意の変装技術の一端と考えれば納得…できるだろうか?)

特にわかりやすい特徴が
キャラクターの顔の描き方で、
ⅳ期と比較すると全体的に眼は小さく、
反面唇は厚ぼったくなっており、
それまでの漫画らしさを
前面に出した絵柄から、
少しづつ写実的な方向へ
揺り戻しが起きているようにも
感じられます。

また、この時期の
荒木先生は今までに増して
人物のポージングや構図に対する
実験精神に溢れていたようで、
時には構図にこだわるあまり、
何が起きているのか読者が
判別不能になるくらい

すごい構図がバンバン登場します。

矢をゲットするK・クリムゾンの図
(▲矢をゲットするK・クリムゾンの図)

ケンゾーvsFF
(▲F・Fをキックするケンゾーの図。)

壁を歩くアナスイ
(▲能力で壁を歩くのアナスイの図)

そしてそのアクの強さゆえに
一目でジョジョと分かる
強い記号性があるのもこの時期の特徴であり、
イラスト投稿サイトなどでよく見られる
「ジョジョ風に描く」系の
企画イラストには、この時期の画風に
寄せたものが比較的よく見られます。

また、本筋に絡まない
モブキャラの自己主張が
一段と強いのもこの時期の特徴。

ロッコバロッコ所長神様は宇宙人だったの人スリの人なんかすぐリタイアした人

六部のロッコバロッコ所長や
神サマは宇宙人だった?の男、
七部のスリの男や
究極の一発芸人
ウルムド・アヴドゥルなど、
一度見たら忘れられない
強烈なモブキャラが目白押しです。

ちなみにスピンオフ短編集、
岸辺露伴は動かないもこの時期からスタート。
露伴先生は初登場以来現在に至るまで
何度も描かれているので、
荒木先生の絵柄の変化を
比較する上で非常に便利な
存在であったりします。

第ⅵ期 [ジョジョ七部中盤〜ジョジョリオン](2007年〜現在)

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第七部、スティールボールランの中盤から
現在連載中のジョジョリオンに至るまで、
現在進行形で継続しているのが
このⅵ期の画風です。

その最大の特徴は、
エネルギッシュでダイナミックだった
前ⅴ期の真逆を行くかのような
無機質で淡白な作画スタイル。

この変化の要因として最も有力なのは
やはり第七部の序盤、2004年に起きた
ウルトラジャンプへの移籍の件でしょう。

連載の場が少年誌から
青年誌に移ったことで、
画風の方も青年誌に適したスタイルに
移行して言ったものと推測されます。

事実、ⅵ期の画風の片鱗は
掲載誌が移って間も無く描かれた
vsフェルディナンド博士戦の
直後から表れ始めています。

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(▲フェルディナンド戦後のジャイロの1コマ。明らかにこれまでと違う画風で描かれており、初読時は違和感バリバリでした。)

さらにフェルディナンド戦に続く、
男の世界で有名なリンゴォ戦では
絵柄だけでなくストーリーの面でも
よりその傾向が顕著になっていました。

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このバトルの敵役リンゴォは
病弱だった幼少期に
偶然家に立ち寄った脱走兵に
姉と母親を殺され、
さらに自分はその兵士から
レ○プされかけた末に
銃を奪って殺害するという、
少年誌では到底載せられない
えぐい過去を持つ人物です。

その後もSBRは
レズ疑惑のある大統領夫人や
白昼堂々14歳の人妻と※4子作りを
おっぱじめようとするラスボス、
妻に視力を失うほどのDVを働く
ウェカピポの妹の夫など、
これまで掲載誌の問題で
できなかった過激な展開を次々描写。
(※4 ただしこの時相手のルーシーは大統領夫人に変装していて、大統領自身はそのことを知りませんでしたが)

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(▲青年誌だからこそ出せたキャラ)

絵柄の方もそれに合わせて
どんどん淡白で無機質な方向へと
変化を続けていったのでした。

ただ、この時期の画風は
良くも悪くもこれまでの
ジョジョのイメージとは
大きくかけ離れたものであり、
ジョジョ展やジョジョメノンなどで
時たま荒木先生が今の画風で
過去作品のキャラを描く機会があると、
往年のファンは「誰だお前!?」と
なってしまうこともしばしば。


(▲ジョジョの完全版、ジョジョニウム用に新たに書き下ろされたカーズ様。ローマの地下遺跡よりも新宿二丁目辺りのバーで見つかりそうな風貌です。)

ゴリラ化したナランチャ
(▲ジョジョ展用に2012年に書き下ろされたイラストのナランチャ。ずいぶん…鍛え直したな。)

もっともこれは
半ば長寿漫画の宿命であり、
仕方ない部分であると
言えるかもしれませんね。

おわりに

以上、荒木先生の
デビュー当時から現在までの
絵柄の変化の総まとめでした。

しかし、
世に長寿連載マンガは数あれど、
ジョジョほど目まぐるしく
その画風が変化してきた漫画も
珍しいのではないでしょうか。

幾つになっても
新しいものに興味を持ち続け、
それを自分の作品の
糧にしようとする荒木先生の
貪欲な好奇心にはいつも驚かされます。

荒木先生にはこれからも、
その豊かな感性で
私たちがまだ見たことのない
新たなジョジョの世界を
描き続けて頂きたいものですね。

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