名だたる大作、話題作をおしのけ、2023年のGOTYを掻っ攫った謎のゲームとして、国内でも発売前から注目度の高かった『バルダーズゲート3(以下BG3)』。
私も昨年末にPS5版を入手して、今のところ総計100時間ほどプレイしているのだが、ゲームを進めるたび新鮮な驚きがあり、購入前のとっつきづらそうなイメージに反して、良い意味で裏切られた思いがしている。
本記事ではそんな私の実体験に基づいて、主に今本作を買うべきか迷っている人に向けて、どこが素晴らしいと感じたか、あるいは逆にどこが惜しいと感じたかについて率直な本音で述べていく。
プレイの楽しみを奪うネタバレは極力排除するつもりだが、レビューの性質上不可抗力として多少のネタバレ要素が混じることは避けられないので、前知識ゼロのまっさらな状態でのプレイ体験を希望される方は全部すっ飛ばして最後の結論の部分だけ読んでいただければ幸いだ。
そもそもバルダーズゲート3ってどんなゲーム?
これについてはすでに各所で詳しく説明されていると思うので手短に。
プレイ前に最低限知っておくと良いことは以下の3点だろうか。
バルダーズゲート3のベースがTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』であるということ
バルダーズゲート3を語る上で、そのベースとなっているダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)の存在を避けて通ることはできない。
D&Dは1970年台から存在する、世界一有名なTRPG(テーブルトークRPG)だ。
国内ではあの『ドラゴンクエスト』に影響を与えた『ウィザードリィ』や『ウルティマ』に影響を与えたことでも知られており、そういう意味ではドラクエの先祖と呼べるかも知れない。
バルダーズゲート3はそんなD&Dの基本システムや世界観、モンスター設定などを忠実に継承しており、そこが1つの魅力である反面、(プレイ前の私含む)D&Dの知識がない層へのとっつきづらさにも繋がっているきらいがある。
なので、プレイ前に実際にD&Dを予習できていればそれに越したことはないのだが、いかんせんリアルなメンツが必要なアナログゲームということもあり、正直それは厳しいという人も多いだろう。
そこで手軽な予習法としておすすめなのが映画「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」だ。

本作は誰もが楽しめる良質なエンタメ映画でありながら、バルダーズゲート3とほぼ同一の世界設定を共有しており、D&Dの世界観を掴む上で良質な教材となってくれる。
媒体が違うのでTRPGのゲーム性を掴む上では役に立ってはくれないが、ドルイドやバーバリアン、アンダーダークなど共通する固有名詞がバンバン出てくるので、事前に観ておけば「あ、ここ映画で出たところだ!」となること請け合いだ。
戦闘システムは『ターン制RPG』
本作の戦闘システムはターン制&耐力制の伝統的なRPGのそれであり、アクション要素は一切ない。
しかしそこに地形やオブジェクトといった各要素が加わることで、高い自由度と戦略性を実現している。
この辺はまた詳述するが、ご存じの方は、『ファイナルファンタジータクティクス(FFT)』シリーズや『ファイヤーエムブレム(FE)』の戦闘システムをイメージするとなんとなく雰囲気が掴めるかも知れない。
前二作のプレイ経験はなくても問題なし
本作のストーリーは完全に独立したものなので、バルダーズゲート1、およびバルダーズゲート2をプレイしていなくても問題なく楽しめる。(何人かのキャラがファンサービス的に継続登場しているらしいが、ウィッチャー3みたいにガッツリ本筋に絡んできたり、前作ありきの会話がばんばん流れてくるようなことはない)
バルダーズゲート3は難しい?難易度は?
プレイ前に不安になることの一つが難易度の問題ではないかと思う。
あまりに簡単すぎてもつまらないし、難しすぎても放り投げてしまいかねない。
その点バルダーズゲート3は最初から4段階の難易度が選択可能で、尚且つプレイ中にいつでも難易度の変更が可能なので自分にちょうどあった難しさを選びやすい親切設計となっている。

難易度 | 違い |
探検家(イージー) | ・敵のAIの行動が甘め ・自ユニットのステータスが高くなる ・敵が基本的な呪文しか使用しない ・アイテムの販売価格が低下 ・マルチクラスが使用不可 |
冒険家(ノーマル) | ・平均的な難易度 ・味方と敵のレベルが同等 |
戦術家(ハード) | ・敵AIの強化 ・敵が上位の呪文を使用 ・アイテムの販売価格が上昇 |
自信家 | ・ボスがパワーアップ ・セーブデータが1つしか使用できない |
カスタム | ・設定を自分で細かく調整可能 |
私は今のところ2番目に簡単な冒険家1本でプレイしているが、それでも毎回油断できない難易度バランスで、手応えのある戦闘を楽しめている。
逆にいうと、私のようにある程度ゲーム慣れした人間であっても、システムに慣れていない序盤は特に低難易度でも苦戦を強いられる可能性大なので、シリーズ初体験の方は見栄を張らずに最初は低難易度でスタートすることを強くお勧めしたい。
バルダーズゲート3のここに心打たれた!
ストーリーと世界の深み
選択次第で千変万化するストーリーライン

バルダーズゲート3をプレイし始めて最初に感心したのが、会話やルート選択の圧倒的な豊富さだ。
例えば会話であればストーリーの根幹に関わる会話はもちろん、ちょっとしたNPCとの会話にも必ずといっていいほど複数の選択肢があり、その選択次第でプレイヤーを取り巻く状況が目まぐるしく変化していく。
NPCの反応は決して通り一辺倒のものではなく、穏やかな選択肢を選んだつもりが結果的に相手を逆上させてしまったり、逆に威圧的な態度を取ることで交渉が有利に進むこともある。
このような思い通りにいかなさや予測不能制は私たちにプレイヤーキャラクターもまたこの世界の一員にすぎないこと、ゲーム内世界が虚構ではなく血の通ったものである事を認識させ、本作のゲーム体験をより深く味わい深いものにしているように感じる。
また、会話の選択肢によってはダイスロールが発生し、成否判定が行われ、失敗した場合には交渉が破綻したりするなど、プレイヤーに不利な展開になってしまうこともある。
しかしそれでもゲームが詰んでしまうことは基本的になく、また思った通りの展開にならなかったことで怪我の功名的に美味しい思いができてしまうことも多いのも本作をプレイしていて面白いと感じた点だ。(例えば、交渉に失敗して戦闘になってしまったけれど、その代わり倒した相手から貴重なアイテムを剥ぎ取れたり)
本来の意味での『ロールプレイ』を楽しむ
本作では主人公を、最初から設定が用意されたオリジンキャラクターとプレイヤーが自由に設定を決めることができるカスタムキャラクターの2つから選ぶことができる。

どちらを選んでも体験するストーリーの大筋は同じなのだが、個人的にはカスタムキャラクターの方をお勧めしたい。
その理由としては1つに、選ばなかったオリジンキャラクターも後から全員仲間にできる点があり、もう1つにはカスタムキャラクターを選択することで、主人公に自分だけの脳内設定を持たせられる点がある。
復讐に生きる戦士だとか、愛と献身に目覚めた元悪人だとか、色々と自分なりの妄想を膨らませて楽しむのもロールプレイ(なりきり遊び)の醍醐味ではないだろうか。
もちろんそういう設定を特に決めずプレイヤーに自己投影して遊ぶのも楽しいし、第一印象で気に入ったオリジンキャラで遊ぶのももちろんありなので最終的には自分の好みと直感で選ぶのがベストだろう。
バルダーズゲート3の戦闘について
地の利を得よ!
バルダーズゲート3の戦闘には高低差の概念があり、基本的に高い位置から低い位置の敵を攻撃すると有利になる。
他にも敵を狭い通路に誘い込んで一網打尽にしたり、全キャラ共通で使える「突き飛ばし」アクションで相手を高所から突き落としてダメージを与えるといった無数の駆け引きあり、ポジショニングはプレイ中でも特にプレイヤーの腕が問われる要素となっている。

卑怯こそ王道。勝利のためにあらゆる手段が許されるバトルシステム
本作は伝統的なRPGのように、パーティ全員がお行儀よく揃って戦闘に参加する必要はない。
パーティの最大人数は4人までだが、その4人を好きな数に分割して独立部隊として操作できるため、例えば1人が戦闘に突入している間に他の3人が別ルートから隠密状態で接近して有利なポジションを奪ってしまうことも可能だ。
また、戦闘中にはフィールドに設置されている各種『オブジェクト』を利用することができる。
火薬樽のオブジェクトを誘爆させて周囲の敵に大ダメージを与えたり、橋の土台を破壊して乗っている敵に落下ダメージを叩き込んだりといった戦術で、戦闘の流れを多く有利にすることができるようになっている。

ここら辺の戦術を極めれば、場合によっては暗殺者の如く戦闘モードに入ることすらなく敵を排除することすら可能なのだから面白い。
加えて私が本作の戦闘に関して面白いと感じたのが、フィールド探索と戦闘が完全にシームレスな作りになっていることだ。
探索中に敵に発見されると即座に戦闘モードに移行するのだが、これは裏を返せば敵に見つかりさえしなければいくらでも有利な状況を先に拵えた上で戦闘に突入できるということを意味する。
先に述べたポジションどりはもちろんのこと、一部オブジェクトは持ち物として運搬できるため、例えばこれから敵対する予定の相手の近くにこっそりと火薬樽を配置しておくといった汚い戦術も可能。
このように、本作の戦闘は自由度においてこれまでのRPGの常識を遥かに凌駕するほど圧倒的な広大さがあり、まるで子供の頃に戻ったように『このオブジェクトを利用できないか?これは流石に無理?』と試行錯誤を繰り返すゲーム体験ができたことは私にとって予期せぬ喜びだった。
魅力的な登場人物たち
『村人A』にまで手を抜かない作り込み

自由度と戦闘の面白さに次いで私が感銘を受けたのが、ゲーム内に登場するキャラクターの作り込みの深さだった。
それも、プレイヤーが操作するオリジンキャラたちだけならともかく、そこら辺を彷徨いている、従来のRPGで言えば『村人A』に相当するようなNPCに至るまで、一人一人に固有のグラフィックとボイス付きの会話が用意されているのには驚いた。
その上会話の内容も判で押したようなものではなく、その人物の種族や立場が色濃く現れたものとなっており、彼らとの会話を繰り返すことで、自然とバルダーズゲート3の世界へと没入していけるようになっている。
個性豊かなオリジンキャラクターたち

NPCの人物描写にも全力を尽くす本作だからこそ、共に旅をするオリジンキャラクターたちの人物描写はそれらに輪をかけて深く、濃密なものとなっている。
本作のストーリーはプレイヤーが『マインドフレイヤー』と呼ばれるタコ頭の怪物の船に誘拐され、不気味な寄生虫を脳に埋め込まれるところからストーリーが開始するのだが、オリジンキャラクターたちは同じように誘拐され、やはり同じく寄生虫を埋め込まれた、いわば『マインドフレイヤー被害者の会』のような関係だ。
そのような流れから彼らは『寄生虫を取り除いて元の生活に戻る』という共通の目的のもと一時的な共同戦線を組むのだが、いかんせん元々全員が赤の他人同士であり、種族や置かれた立場もバラバラということもあって特に序盤のうちはお互いにぶつかり合ったり、時に剣呑な雰囲気が生まれてしまうこともしばしばある。
そんな中でも旅の過程で同じ時間を共有し、言葉を重ね、数々の危機を協力して乗り越えることによって信頼や友情、あるいはもっと深い関係を築いていく過程こそがある意味で本作の一番のお楽しみポイントといえるかもしれない。
登場するオリジンキャラクターはパッケージに顔が出ている6人に加えて、他にも道中で条件を満たすと仲間にできる人物が数名存在する。
本稿ではその中でも、特に私が印象的に感じた人物についてネタバレにならない範囲でつらつらと雑感を述べてみたい。
アスタリオン

アスタリオンはパッケージの一番目立つボジションで不敵な笑みを浮かべている白髪のハーフエルフの男性だ。
そんなアスタリオンのキャラ造形は、私の独断と偏見による印象論で語るなら「性格の捻じ曲がった小悪党」であり、極めて自己中心的。
人助けの選択肢を選ぶと反対するわ、得になるなら悪者との取引にも賛成するわとおよそ一般的な善悪の感覚とは若干ズレた地平にいる人物であり、リアルにいたらあまりお近づきになりたくはないタイプと言えるかもしれない(笑)
しかしながらそんな変人だからこそ(?)、彼とのイベントや会話は先が読めない面白さがあり、仲間の中でも一番刺激的で興味深い人物だと私は感じた。
序盤で明らかになる彼にまつわる「ある秘密」も魅力的であり、また親密度次第でプレイヤーに対する態度が露骨に変わるのも人間味があってカワイイポイント。
噂によると本作のオリジンキャラの中でもアスタリオンはトップクラスの人気キャラらしいが、プレイしてみればそれも納得。他のゲームどころか映画、小説などの記憶を辿っても滅多にない独創的なキャラクター造形で、本作の物語に鮮やかな彩りを添える名優の一人といっても過言ではないと思う。
レイゼル

レイゼルはギスヤンキと呼ばれる好戦的な種族に属する女性キャラクター。
物語の中でも最序盤に出会うキャラクターなのだが、登場早々プレイヤーを敵と見做して殺そうとしてくるわ、助けてもらう立場になっても命令口調だわと第一印象はお世辞にも良いと言えるものではなかった(見た目も正直 緑色の研ナ○コみたいとしか思えなかったし)。
そんなわけで私も当初は「こいつとだけは仲良くなることはないだろうな〜」と思ってプレイしていたのだが、旅の中で冷酷なだけではない意外な一面が見えてきたりして、今ではむしろ愛嬌があるとすら思えるようになっているのだから不思議なものだ。
余談だが、レイゼルの性格は「目的のためなら手段を選ばない復讐のパラディン」という現在の私のロールプレイ設定によくマッチしていたらしく、パーティの中でも最速で好感度が高くなった。
もしRP設定をせず、リアルな自分の感覚でゲームプレイしていたら恐らくこういう関係にはならなかっただろうと思うと、素人ながらTRPGの奥深さと味わい深さを感じずにはいられない。
仲間とのロマンス(恋愛)要素について

バルダーズゲート3のゲーム体験において、自由度の高さや戦略性の面白さとは別方向で私にとって衝撃だったのが仲間とのロマンス(恋愛)イベントだ。
本作で仲間にできる全てのキャラクターにはプレイヤーの行動に応じて上下する好感度のパロメーターが存在していて、この値が一定以上に達したキャラクターとはプレイヤーの選択次第で恋愛関係を結ぶことが可能となっている。
私の場合、まだ全キャラ分を体験したわけではないけれど、既に観た分だけでもその作り込みはかなりものもの。
逢瀬に至るまでの雰囲気づくり、言葉選び、表情、しぐさ、カメラワークなど、作り手側がこのロマンスイベントに本当に力を入れていることが伝わってきて、プレイしている側も思わずどぎまぎしてしまうほど真に迫った内容だった。
そしてもう一つ、ロマンス関連で特筆すべきポイントとして、本作が幅広い性の在り方に対して極めてオープンなスタンスを取っている点が挙げられる。
具体的に言うと、本作ではプレイヤーの性別を問わず、仲間であればだれとでも、すなわち同性同士であっても恋愛関係を結ぶことが可能となっているのだ。
私自身、恋愛要素を含んだゲームは他にもいくつかプレイ経験があるけれど、ここまで思い切ったスタンスを取った作品は今まで例がなく(あっても、一部のキャラだけ同性愛者とかその程度)、昨今でも特に先進的な例だと思う。
ただ急進的であるということは、裏を返せば反発もを生みかねない諸刃の刃ということでもある。
たとえば下記のレビューには「気の合う友人同士くらいに思っていた同性のキャラから突然告白されて驚いた」「告白されて断ったら気まずい思いをした」という率直な感想が述べられているし、私自身、それに近い感想を抱いたことはあった。(ダチだと思ってたのに、お前俺のカラダを狙ってたのかよという...)
『バルダーズ・ゲート3』でめちゃくちゃ後悔した“避けてほしい失敗”集。マジギレパーティー脱退、色恋沙汰で気まずい、取り返しのつかない死など……でもそれも醍醐味 - AUTOMATONまた、いくら最終的な決定権がプレイヤー側にあるとはいえ、そもそもゲーム内での恋愛に興味のない方もいるだろうし、そういう層にとってはロマンス要素自体がノイズとなってしまう可能性もある。
そんな風に突き詰めて考えていくと、文化も属性も違う万人が受け入れられるゲームデザインをするというのは本当に困難なことなんだろうとしみじみ思う。
たぶんこれが正解と言うのはなくて、本作を含めこれからも広いふり幅の中でより最適な位置を求める試行錯誤が繰り返されていくのではないだろうか。
画面分割マルチプレイが楽しすぎる

本作は最大4人でオンラインプレイが可能なほか、オフライン2人プレイにも対応している。
協力プレイの場合、探索時は非同期的に互いが自由に動けるが、戦闘時はターン制となり、自分のターンのみ操作可能となるという形で協力プレイを実現している。
私の場合、年始の休暇を利用してオフライン2人プレイを体験したのだが、これが実に楽しかった。
2人で知恵を絞りながら機転を活かして困難な盤面を解決する瞬間は他のゲームにはない快感だし、会話中の選択肢ではお互いの人間性みたいなものが垣間見えるのも興味深い。
また、先述したように探索中は非同期でバラバラに動けるので一方が操作している間にもう一方は操作できず退屈するようなこともない。
1つ注意点があるとすれば、本作はCERO Zということもありゲーム中にそして結構露骨なグロ描写やセクシュアル描写があるので、その辺に抵抗がない相手を選んでプレイする必要があるという点だろうか。特に後者は、選択肢次第で普通にベッドシーンが流れたりするからね…
BG3のここがちょっと残念かも?
TRPGの前提知識がないと最初の内は戸惑う事が多い

1d8
本作をプレイしていると頻繁に見かける上記のような謎の文字列。
これはTRPG界隈においてダイスコードと言われるもので、上記であれば目の数が1~8の8面サイコロを1個ふった数値を参照するという意味になる。
これはTRPGのようなダイスを使うゲームでは基礎中の基礎知識であり、ゲーム内でも頻繁に目にする表記なのだが、TRPGの知識がなかった私は最初この意味がわからず、ネットで調べてようやく理解することができた。
このように本作には知っておくのと知らないとでプレイの快適さが大きく変わる基礎知識が多々存在しているので、もしプレイ中にもしわからない単語や概念が出てきたら多少面倒でも逐一ネットで調べることをお勧めしたい。
(それでも、本作が幅広い層に遊んでもらえるように細心を払っていることは間違い無いと思うが)
導線がやや不親切かも
人によっては攻略に重要な要素についてのチュートリアルが不足しているようにも感じた。
攻略に重要な要素のうち、例えばオブジェクトの利用などは敵もやってくるのでプレイヤー側も自然とこういうことできるんだと気づきやすいのだが、一方でプレイヤー側だけが使えるテクニックについては見落としが生まれやすい作りになってしまっている気がする。
例えば部隊の分離はその有無で体感的な難易度に天地の差が生まれるほど重要なテクニックなのだが、何となくプレイしていると能動的に部隊を分離、集合できることを知らないまま進めてしまう可能性もある(私自身、プレイ開始から数時間ほどしてようやく気づいた)。
特に日本ではドラクエなどでRPGはパーティ全員が揃って行動するものという先入観があるので、輪をかけて気づきにくいのではないだろうか。
こういう要素に気づかず、本作を理不尽ゲーだと誤解して投げてしまうプレイヤーがいるとしたらとても残念なことだ。
日本語吹き替えがない
現在時点(2024年1月21日)、バルダーズゲートの音声は英語のみで、日本語の吹き替えは存在しない。
私自身、同じくSPIKE CHUNSOFTがローカライズを担当した『ウィッチャー3』の印象から、本作も日本語吹き替えに対応しているものと思っていたのでこれは少々拍子抜けだった。
もちろん日本語字幕はつくのだが、小さい文字を長時間読み続けるのは少々辛い部分があり、またこれは細かい話になるけれど、ファストトラベル直後の暗転中に仲間同士の会話が流た場合に字幕が表示されず、英語音声から話の内容を読み取らざるを得ないという場面にしばしば遭遇することがある。
本作はとにかくテキスト量が膨大なので、その辺のコストを考えると無理からぬことだったのかもしれないが個人的には吹き替えがあれば嬉しかったというのが本音だ。
移動の遅さが気になる
ここでいう移動とはフィールド探索時の歩行速度のこと。
本作ではダッシュ移動のようなものはなく、移動は基本歩きになるのだが、その速度が体感的にちょっと遅く感じたので、速度を上げるかダッシュ的なモーションがあれば良いと思った。
フリーズバグあり
本作は情報量が膨大なゲームなので致し方ない部分もあるかとは思うが、プレイ中に稀にバグに遭遇することがあった。
自分が遭遇したものの中で特に致命的な例としては、例えば袋の中にアイテムを移動させようとするとゲームがフリーズが発生して、ソフトを再起動する以外に方法がなくなったこともあった。
またこれは厳密にはバグとは違うかもしれないけれど、会話の選択肢の中で男のキャラクター口調が急に女言葉になったりすることがあった。(性自認が女とかではなく、普通に男のキャラが)
膨大なテキストの全てを完璧に管理する事は難しかったのかもしれないけれど、そういうつまらない瑕疵でゲームへの没入感が冷めてしまうのは勿体無いことだと思う。
まとめ : バルダーズゲート3はこんな人にお勧め/お勧めしない
こんな人にお勧め
- 世界観に没入できるゲームをお探しの方
- 費用対プレイ時間のコスパがいいゲームをお探しの方
- ゲームの自由度は高ければ高いほど良いという方
- FFTAやFEみたいなSRPGが好きな方
- 詰将棋的な、頭を使うゲームプレイを希望する方
- エルフやゴブリン、ドラゴンが登場するファンタジー世界が好きな方
こんな人には向いてないかも
- エログロ系の描写に抵抗のある方
- 洋ゲー特有のノリやキャラ造形に抵抗のある方
- ゲーム内要素のコンプ癖がある(取り逃がしが許せない)方
- 痛快なアクションやスピード感ある戦闘を楽しみたい方
- ゲーム内の導線がしっかりしていないと途中で投げ出してしまう気がする方
- ゲーム内で起きる事象全てを自分の理想通りにコントロールできないと気が済まない方
総合的に見ればGOTY受賞も納得の完成度
バルダーズゲート3の本音レビュー、ご参考になっただろうか。
色々と癖が強く、特にTRPG文化になじみの薄い日本ではハマる、ハマらないの差が大きそうな作品ではあるけれど、私的にはここ数年で久々に「これはすごい」と唸らされた一本だった。
ぶっちゃけTRPG経験のない私でもハマれたので、特に戦略ゲー好き、LOTRやGOTのようなファンタジー世界好きなら手に取って決して損はない名作だと思う。
もし購入を迷われている方が居れば、この機会にバルダーズゲート3の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。