【永久保存版】死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28

読書
  1. はじめに
    1. 人はなぜ、本を読むのか?
    2. 選定基準
  2. 死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28
    1. カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー著 1886年
    2. 高慢と偏見  ジェイン オースティン著 1813年
    3. オデュッセイア  ホメロス著 紀元前8世紀ごろ
    4. ライ麦畑でつかまえて  J・D・サリンジャー著 1951年
    5. 異邦人  アルベール・カミュ 1942年
    6. 老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ 1952年
    7. 一九八四年 ジョージ オーウェル著 1949年
    8. 夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル著 1946年
    9. アルケミスト-夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ著 1988年
    10. アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 1959年
    11. 百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス著 1967年
    12. 白鯨 ハーマン・メルヴィル著 1851年
    13. アンナ・カレーニナ レフ・トルストイ著 1877年
    14. 大いなる遺産 チャールズ・ディケンズ著 1860年
    15. タイタンの妖女 カート ヴォネガット ジュニア著 1959年
    16. 怒りの葡萄 ジョン・スタインベック著 1939年
    17. 海辺のカフカ 村上春樹 著 2002年
    18. 星の王子様 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 著 1943年
    19. 蝿の王 ウィリアム・ゴールディング 著 1954年
    20. 野性の呼び声 ジャック・ロンドン 著 1903年
    21. 嵐が丘 エミリー・ブロンテ 著 1847年
    22. 指輪物語 J・R・R・トールキン 著 1954年
    23. 大地 パール・バック 著 1931年
    24. ロリータ ウラジーミル・ナボコフ 著 1955年
    25. 華氏451度 レイ・ブラッドベリ 著 1953年
    26. 冷血 トルーマン・カポーティ 著 1965年
    27. 伊豆の踊子 川端康成 著 1927年
    28. そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー 著 1939年

はじめに

人はなぜ、本を読むのか?

あなたは、月にどれくらいの本を読んでいるでしょうか?(漫画や専門書、自己啓発書は除く)

学生や本好きの方、学校の先生などはともかく、
ほとんどの忙しい大人は「ゼロ冊」なのではないかと思います。

ですが、私はそれを全く悪いことだとは思いませんし、
人と読んだ冊数を比べて一喜一憂する必要も全くないと考えています。

なぜなら、文学作品とは基本的に
それを必要としている人が必要な時に
必要なだけ読めば良いものだと思うからです。

では、文学作品を必要としている人というのは
具体的に一体どういった人のことを指すのか。

私はそれは、「自分は、なぜこうなんだろう」とか、
逆に「世界はなぜこうなっているんだろう」とか、
そういった答えの出ないモヤモヤを
抱えながら生きているようなタイプの人たちだと思います。

良質な文学は鏡のようなものであり、
そういった複雑な疑問を相対化して
クリアに捉えるための新たな視点を与えてくれます。

そして、登場人物たちの心の動きや
運命を通じて私たちに感動を与え、
心を強く柔軟にしてくれるものでもあります。

要するに私が言いたいのは読書とは、
どこか欠けていたり、歪んでいたりする人のためのものであって、
本日お送りする本記事
『死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28』も
主にそんな人たちのための企画である、ということです。

…ただその理屈で言うと実はこれはちょっとしたタイトル詐欺で、
より正確には『文学が必要な人が死ぬ前に読みたい世界の名作文学ベスト28』とでもすべきだったかもしれません。
タイトル長くなるのが嫌だから直さないけど

選定基準

そのようなわけで今から本の紹介に移りたいと思いますが、
その前に選定基準についてだけ軽く説明しておきます。

  • 客観的な評価(ブックランキングや各受賞歴など)
  • 読みやすさ
  • 私が読んで感銘を受けた度合い
  • 世界的評価が高ければ日本の文学作品も範囲内
  • ノンフィクション、SFも範囲内

また、紹介順にも意味があって、
先に紹介されている本ほど
私の中でオススメ度がちょっと高いです。

それではどうぞ。

死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28

カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー著 1886年

物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。

 推薦コメント
 奔放な父フョードル・カラマーゾフの特徴をそれぞれ受け継いだ3兄弟の物語。
 文庫本三冊に及ぶ長編ですが、前編の終わりごろから一気に面白さが加速します。
 特に前編のラストを飾る『大審問官』の章は必見。

 

高慢と偏見  ジェイン オースティン著 1813年

元気はつらつとした知性をもつエリザベス・ベネットは、大地主で美男子で頭脳抜群のダーシーと知り合うが、その高慢な態度に反感を抱き、やがて美貌の将校ウィッカムに惹かれ、ダーシーへの中傷を信じてしまう。ところが…。ベネット夫人やコリンズ牧師など永遠の喜劇的人物も登場して読者を大いに笑わせ、スリリングな展開で深い感動をよぶ英国恋愛小説の名作。

推薦コメント
生き生きとした人間描写と軽妙な語り口で今なお多くの読者から愛される不朽の恋愛小説。
小説として面白いのはもちろん、執筆当時のイギリスの文化や風習を知る上でも有益な一冊です。

オデュッセイア  ホメロス著 紀元前8世紀ごろ

トロイアの陥落後、帰路についたオデュッセウスは単眼巨人ポリュペモスの島に着く。仲間を食われたオデュッセウスはポリュペモスの目をえぐって脱出するが、ポリュペモスの父親、海神ポセイドンの怒りをかい、以後故郷へたどりつくまで10年間の長い放浪苦難をよぎなくされる。女神カリュプソによる7年の幽閉、人を豚に変える魔女キルケ、美しい歌声で誘惑するセイレネス、恐ろしい怪物スキュレとカリュプデスらとの遭遇と闘い、そしてようやくたどり着いた故郷イタケでは、妻ペネロペイアに言い寄り、その家を我が物顔に占拠利用するやくざな求婚者どもと闘わなければならなかった。だが、オデュッセウスは単純な勇士、不撓の航海者にとどまらない。策士であり、高貴であると同時に残酷・貪欲な人物でもある。「オデュッセイア」はそうした意味でも「最初の小説」「最初のすぐれた冒険小説」の名にはじない。

推薦コメント
有名なトロイア戦争の英雄オデュッセウスが
故郷のアカイアに帰り着くまでの波乱の旅を描いた
ギリシア叙事詩の大傑作。

のちの時代の創作全般に多大な影響を与えた作品であり、
その影響力は現代日本のサブカルチャーの中にも
風の谷のナウシカのナウシカ(ナウシカアー)や
漫画ベルセルクのシールケ(キルケー)など
オデュッセイアの影響を受けた作品が
多数存在していることからも伺えます。

ライ麦畑でつかまえて  J・D・サリンジャー著 1951年

インチキ野郎は大嫌い! おとなの儀礼的な処世術やまやかしに反発し、虚栄と悪の華に飾られた巨大な人工都市ニューヨークの街を、たったひとりでさまよいつづける16歳の少年の目に映じたものは何か? 病める高度文明社会への辛辣な批判を秘めて若い世代の共感を呼ぶ永遠のベストセラー。

推薦コメント
16歳の少年ホールデン・コールフィールドの独白を通じて
高度文明社会の病巣を鋭く描く青春小説の金字塔。

著者のサリンジャー自身が戦争PTSDの当事者であるという点も含め、戦後アメリカ社会を象徴するような作品です。

異邦人  アルベール・カミュ 1942年

私ははじめて、世界の優しい無関心に、心をひらいた。太陽の眩しさを理由にアラビア人を殺し、死刑判決を受けたのちも幸福であると確信する主人公ムルソー。不条理をテーマにした、著者の代表作。母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。

推薦コメント
44歳の若さでノーベル文学賞を受賞したフランスの小説家、アルベール・カミュの代表作。
周囲に迎合することを嫌い、独自の価値観に従って生きる男ムルソーを通じて人間の理性や常識に疑問を投げかける本作は、特に周囲に合わせて行動することが苦手なタイプの人こそ強い衝撃を受けるであろう作品です。
特に、ラスト付近の神父との対話における、ムルソーの語りの迫力は随一。誇張ぬきに『魂を揺さぶられる』小説です。

老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ 1952年

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが―。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。

推薦コメント
シンプルな構成、短くまとまったページ数、爽やかで勇気をもらえる読後感など日頃本を読む習慣のない人でも読みやすい一冊。
一方で下敷きになっているキリストの受難物語や物語に込められたヘミングウェイの理想など、読み方を変えることで違った表情が見えてくる懐の深さもあります。

一九八四年 ジョージ オーウェル著 1949年

ビッグ・ブラザー率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。

推薦コメント
もはや古典とでもいうべき位置にありながら
近年でもトランプ政権の誕生をきっかけに
Amazonでの売れ行きが急激に伸びるなど
今尚リアルなディストピア小説として
一定の影響力を及ぼし続けている一作。

某巨大独裁国家をお隣に持つ私たち現代日本人にとっても
多くの洞察が得られる一冊であるかと思います。

夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル著 1946年

わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ

推薦コメント
ナチスの強制収容所に収監されるという
極限状況を体験した精神科医V・フランクルによるノンフィクション。

淡々とした筆致を通じて
人間の本当の強さや困難な状況に立ち向かう心構えを
教えてくれる掛け値無しの名著です。

アルケミスト-夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ著 1988年

羊使いのサンチャゴは、彼を待つ宝が隠されているという夢を信じ、アフリカの砂漠を越えピラミッドを目指す。様々な出会いと別れを経験し、少年は人生の知恵を学んでゆく――。

推薦コメント

全世界で3000万部を売り上げ、
ウィルスミスも愛読書に挙げている
ブラジルの作家パウロ・コエーリョの代表作。

夢を持ち続けること、
夢のために自分から行動することの大切さを教えてくれる一冊です。

アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 1959年

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。

推薦コメント

私が『今までに読んだ中で一番泣けたお話』を
1つ選べと言われたらこの『アルジャーノン』を選びます。

でも、悲しいだけじゃなくて
人間に一番大事なものは何かを教えてくれる
とても温かい物語もあるので、心に残る一冊をお探しであれば
ぜひこの本を手に取ってみてください。

百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス著 1967年

蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。

推薦コメント

1982年にノーベル文学賞を受賞した
コロンビアの作家、ガルシア=マルケスの代表作。

現実と幻想が入り混じった魔術的な作風が
読み手を唯一無二の物語世界に誘います

白鯨 ハーマン・メルヴィル著 1851年

巨大な白い鯨〈モービィ・ディック〉をめぐって繰り広げられる,アメリカの作家メルヴィル(1819―1891)の最高傑作.本書は海洋冒険小説の枠組みに納まりきらない,法外なスケールとスタイルを誇る,象徴性に満ちあふれた「知的ごった煮」であり,およそ鯨に関することは何もかも盛り込んだ「鯨の百科全書」でもある。

推薦コメント
恐ろしく巨大な白いマッコウクジラ
モービィ・ディックに片足を食いちぎられた過去を持つ
エイハブ船長の復讐を描くメルヴィルの海洋小説。

出自も性格もバラバラな船員たちの魅力溢れる人物描写や
著者自身の捕鯨船への乗船経験を活かしたリアルな捕鯨の描写には
150年前の小説とは思えないほど強く引き込まれるものがあります。

アンナ・カレーニナ レフ・トルストイ著 1877年

モスクワ駅へ母を迎えに行った青年士官ヴロンスキーは、母と同じ車室に乗り合せていたアンナ・カレーニナの美貌に心を奪われる。アンナも又、俗物官僚の典型である夫カレーニンとの愛のない日々の倦怠から、ヴロンスキーの若々しい情熱に強く惹かれ、二人は激しい恋におちてゆく。文豪トルストイが、そのモラル、宗教、哲学のすべてを注ぎ込んで完成した不朽の名作の第一部。

推薦コメント
政府高官の妻でありながら
不倫の罪を犯してしまうアンナ・カレーニナと
不器用だけどどこまでも純朴な地方地主リョーヴィンの対比を通じて
人間がどう生きるべきかを示した文豪トルストイの恋愛小説。

恋愛という多くの人が共感できるテーマが主軸となっていることもあって読み易く、
トルストイ文学の入門編としてもおすすめの一冊です。

大いなる遺産 チャールズ・ディケンズ著 1860年

優しい鍛冶屋の義兄ジョーに育てられている少年ピップは、あるクリスマス・イヴの晩、脱獄囚の男と出会う。脅されて足枷を切るヤスリを家から盗んで与えた記憶は彼の脳裏に強く残った――。長じたある日、ロンドンからやってきた弁護士から、さる人物の莫大な遺産を相続することを示唆されると、貧しいながらも人間味ある生活を捨て去り、ピップは大都市ロンドンへと旅立つのだった……。

推薦コメント

イギリスの下町の鍛冶屋で働いていたピップという少年が
ある日匿名の人物から莫大な遺産を受け継いだことで
いきなり上流社会の仲間入りをすることになり、
その過程で人生に本当に大切なものは何かを学んでいく物語。

ディケンズ最晩年の作品であり自叙伝的な性格も持つ本作には、
個性的な登場人物あり、恋愛あり、
少しづつ謎が明かされていく面白さありと、
本を読むことの醍醐味が詰まっています。

タイタンの妖女 カート ヴォネガット ジュニア著 1959年

時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。

推薦コメント

現代アメリカを代表するSF作家
カート ヴォネガット ジュニアがキャリアの初期に発表したSF小説。

大胆奇抜な設定や
ややもすると悪ふざけのようにも感じられてしまう
独特のユーモアは好き嫌いが分かれそうですが、
波長が合う人にとっては一生ものの読書体験となりうる一冊です。

とりわけ私の場合はラストシーンの美しい情景と
物語中盤のボアズというキャラクターの独白の場面に強く胸を打たれました。

ちなみに有名お笑い芸人の爆笑問題の太田 光氏は
ヴォネガット作品の大ファンを自称していて、
所属事務所「タイタン」の社名を
この作品から拝借したという逸話があったりします。

怒りの葡萄 ジョン・スタインベック著 1939年

一九三〇年代、アメリカ中西部の広大な農地は厳しい日照りと砂嵐に見舞われた。作物は甚大な被害を受け、折からの大恐慌に疲弊していた多くの農民たちが、土地を失い貧しい流浪の民となった。オクラホマの小作農ジョード一家もまた、新天地カリフォルニアをめざし改造トラックに家財をつめこんで旅の途につく

推薦コメント

旧約聖書の『出エジプト記』を下敷きに、
自然の猛威と農業の資本主義化に追い詰められていく
貧しい農民一家の姿を描いたスタインベックの代表作。

どれだけ社会が豊かになってもなくならない
差別や貧困、搾取への怒りと同時に
どんな逆境にあっても懸命に生き抜こうとする
人間のたくましさも感じられます。

海辺のカフカ 村上春樹 著 2002年

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。

推薦コメント

15歳の少年と猫と会話ができる老人の
二人の視点が並行して描かれる村上春樹の長編小説。

暗く、どこか影を引きずったような登場人物たちが
現実と怪奇が交差する漠然とした世界の中で織りなす
濃密な村上ワールドには、一度ハマれば
二度と抜け出せなくなる強烈な魅力があります。

星の王子様 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 著 1943年

砂漠に不時着した主人公と、彼方の惑星から来た「ちび王子」の物語。人の心をとらえて離さないこの名作は、子供に向けたお伽のように語られてきた。けれど本来サン=テグジュペリの語り口は淡々と、潔い。原文の心を伝えるべく、新たに訳された王子の言葉は、孤独に育った少年そのもの。ちょっと生意気で、それゆえに際立つ純真さが強く深く胸を打つ―

推薦コメント

星新一のショートショートとならんで
わたしの幼少期以降の読書人生を決定づけたのが
この星の王子様という作品です。

有名な「本当に大切なことは、目に見えない」という言葉を始め、
ものごとの本質を鋭くつく多くの言葉に満ちている本作は、
きっと100年後も200年後も変わらず
世界中の人間の心を豊かにし続けていることでしょう。

蝿の王 ウィリアム・ゴールディング 著 1954年

未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく……。少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した問題作。

推薦コメント

ある意味で、この世のどんなホラーよりも
怖いのがこの『蝿の王』という小説です。

無人島という閉鎖空間の中で
少しづつ狂っていく少年たちの姿を通じて
人間社会からいつまでたっても
いじめや自殺がなくならない根源的な理由が見えてきます。

野性の呼び声 ジャック・ロンドン 著 1903年

ゴールドラッシュに沸くカナダ・アラスカ国境地帯。ここでは犬橇が開拓者の唯一の通信手段だった。大型犬バックは、数奇な運命のもと、この地で橇犬となる。大雪原を駆け抜け、力が支配する世界で闘い、生きのびていくうちに、やがてその血に眠っていたものが目覚めはじめるのだった。

推薦コメント

カリフォルニアの判事の屋敷で
忠犬として暮らしていた牧羊犬バックが
運命のいたずらから遠いアラスカでそり犬となり
過酷な環境の中で次第に野生へと目覚めていく物語。

もともと子供向けの小説ということもあって読みやすく、
雄大なアラスカの自然描写や
過酷な運命の中でたくましく成長していくバックの姿に
ぐいぐい引き込まれる一冊です。

嵐が丘 エミリー・ブロンテ 著 1847年

寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。

推薦コメント

30歳の若さで早逝した
英国の女流作家エミリー・ブロンテの唯一の刊行作。

時に嫌悪感をもよおしそうになるほどの背徳的な内容や
個性的すぎて容易には感情移入できない登場人物たち、
発表当時は斬新すぎて受け入れられなかったという
信頼できない語り手(ネリー)の存在など一癖も二癖もある作風ですが、
その唯一無二の作品世界と著者エミリーの豊かな感性には
読み手を掴んではなさない強烈な魅力があります。

指輪物語 J・R・R・トールキン 著 1954年

すべてのファンタジーは、ここから始まった!魔王の指輪を破壊する旅に出たホビット族のフロド。それを助ける魔法使い、エルフ族、ドワーフ族、人間の8人の仲間。行手に待ち受けるものは? ファンタジー史上に輝く不滅の金字塔ー。

推薦コメント

死ぬまでに読みたい本というテーマであれば、
ファンタジーというジャンルを確立させ
後の世代の多くの創作物に絶大な影響を与えた
この作品を外すわけにはいきません。

登場人物たちの系図から言語、歴史に至るまで
緻密に作り込まれた世界設定に下支えされた壮大な冒険譚は
物語を読むということの本質的な楽しさを味わわせてくれます。

また指輪物語といえばP・ジャクソン監督の映画三部作が有名で、
既にそちらを見たという方も多そうですが、
小説版には映画では尺の都合で描かれなかったストーリーや
キャラクターの掘り下げにつながる描写がたくさんあり、
むしろ映画を楽しんだ人ほど「あれは、そういうことだったのか」と
発見する喜びが得られるという面白さもあります。

大地 パール・バック 著 1931年

貧しい農夫、王龍(ワンルン)と阿藍(オーラン)一家の暮らしにようやく明るさが訪れようとしたとき、飢饉が襲う。二人はやむなく町へ出、それぞれ車夫と乞食になって糊口をしのぐ。そのうちに二人は、折からの暴動の勃発によって思いがけぬ大金を手にする。一家は再び故郷に帰り、没落した地主から土地を買い入れる。さいわい引き続く豊作にめぐまれて王龍は大地主にまでなるが、余裕ができると女遊びに走り、ついには妾を家に入れる。阿藍はただ黙々と働きつづける。子供たちは大きくなり、一家の暮らしはしだいに変容し、やがて二人にも死が。

推薦コメント

人間に多くを与え、時に奪ってもいく大地。

そんな大地の偉大さを、清朝末期の中国の
とある農民一家の生き様を通じて表現した
米国の女流作家パール・バックの代表作。

幼少期を中国で過ごした経験のある
著者による当時の中国描写はリアリティに富み、
読後には一人の人間の一生を
追体験したような感動を味わうことができる一作です。

ロリータ ウラジーミル・ナボコフ 著 1955年

「ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。…」世界文学の最高傑作と呼ばれながら、ここまで誤解多き作品も数少ない。中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリでありロード・ノヴェルであり、今も論争が続く文学的謎を孕む至高の存在でもある。多様な読みを可能とする「真の古典」の、ときに爆笑を、ときに涙を誘う決定版新訳。注釈付。

推薦コメント

そのあまりに過激な内容から
5カ国で発禁になったと言う逸話を持つナボコフの小説『ロリータ』。

しかしその内容は古今東西の文学作品へのパロディと
ナボコフ流のレトリックに満ちた極めて知的なものであり、
少女ドロレスに執着し、破滅の道を突き進む
主人公ハンバート・ハンバートの姿からは
他者に自己の理想を押し付けてしまう
人間の本質的な哀しさ、愚かしさが伝わってきます。

ちなみに新潮文庫版の巻末には本書から大きな影響を受けた
日本のノーベル文学賞受賞作家、大江健三郎が解説を寄せており、
その中で大江氏は本書の構成を高く評価し、
小説家志望の若者にはまずこれ(ロリータ)を読めと
推薦し続けてきたというエピソードを語っています。

華氏451度 レイ・ブラッドベリ 著 1953年

華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!

推薦コメント

全ての本が禁止された世界で、
本を燃やす焚書官の仕事をしていたモンターグが、
風変わりな少女クラリスや本を愛する人々と出会う中で
自分のやっていることに疑問を感じ、変化していく物語。

ブラッドベリはこの作品の中で
『頭を使わなくても楽しめて、ひたすら受動的な』
"テレビ"を読書と比較して徹底的に風刺しているわけですが、
そう言う意味ではその批判は現代最も人口に膾炙している娯楽である
スマートフォンおよびインターネットにも通じるところがあり、
その普遍性こそが本書を時代を超えた名作たらしめている所以であるかと思います。

読書好きでテレビの存在に疑問を感じているような方はぜひ。

冷血 トルーマン・カポーティ 著 1965年

カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に、著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。捜査の手法、犯罪者の心理、死刑制度の是非、そして取材者のモラル――。様々な物議をかもした、衝撃のノンフィクション・ノヴェル。

推薦コメント

1959年にアメリカのカンザス州で実際に起きた一家惨殺事件を題材に
事件の全容から裁判の様子、そして判決までを描いたノンフィクション作品。
著者は『ティファニーで朝食を』の著者としても有名なトルーマン・カポーティです。

この作品で初の試みとなるノンフィクションに挑んだカポーティは
3年に及ぶ綿密な取材の成果と持ち前の才覚を駆使して
現実の犯罪を極めて"面白い"物語へと昇華することに成功しました。

死刑の意義や人間の運命について
読後には様々な思いが渦巻くこと必至の本作。
果たしてあなたはカポーティがタイトルに冠した
「冷血(原題: In Cold Blood)」という言葉の真意をどう読み解くでしょうか…?

伊豆の踊子 川端康成 著 1927年

旧制高校生である主人公が孤独に悩み、伊豆へのひとり旅に出かける。途中、旅芸人の一団と出会い、そのなかの踊子に、心をひかれてゆく。清純無垢な踊子への想いをつのらせ、孤児意識の強い主人公の心がほぐれるさまは、清冽さが漂う美しい青春の一瞬……。ほかに『禽獣』など3編を収録。巻末の三島由紀夫による「解説」は、川端文学の主題と本質についてするどく論じている。

推薦コメント

1968年に日本人として初めてノーベル文学賞を
受賞した作家としても知られる川端康成の初期の代表作。

川端作品の特徴である日本的な感性による美の描写や
選び抜かれた日本語の放つ魅力はもちろんのこと、
若い時期に書かれた作品ゆえの
みずみずしい抒情が味わい深い作品でもあります。

そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー 著 1939年

その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作! 新訳決定版!

推薦コメント

言わずと知れたミステリーの女王
アガサ・クリスティーの最高傑作。

現在まで続く推理小説の基本形を作った作品でありながら、
圧倒的な緊張感と予想を裏切る結末の魅力がものすごく、
今読んでも全く色褪せない名作中の名作です。

推理小説ということで宗教や
書かれた時代の前知識があまりなくても楽しめることや
短い時間でサクサク読み進められるのもおすすめしやすいポイントですね。

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