- はじめに
- 死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28
- カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー著 1886年
- 高慢と偏見 ジェイン オースティン著 1813年
- オデュッセイア ホメロス著 紀元前8世紀ごろ
- ライ麦畑でつかまえて J・D・サリンジャー著 1951年
- 異邦人 アルベール・カミュ 1942年
- 老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ 1952年
- 一九八四年 ジョージ オーウェル著 1949年
- 夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル著 1946年
- アルケミスト-夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ著 1988年
- アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 1959年
- 百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス著 1967年
- 白鯨 ハーマン・メルヴィル著 1851年
- アンナ・カレーニナ レフ・トルストイ著 1877年
- 大いなる遺産 チャールズ・ディケンズ著 1860年
- タイタンの妖女 カート ヴォネガット ジュニア著 1959年
- 怒りの葡萄 ジョン・スタインベック著 1939年
- 海辺のカフカ 村上春樹 著 2002年
- 星の王子様 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 著 1943年
- 蝿の王 ウィリアム・ゴールディング 著 1954年
- 野性の呼び声 ジャック・ロンドン 著 1903年
- 嵐が丘 エミリー・ブロンテ 著 1847年
- 指輪物語 J・R・R・トールキン 著 1954年
- 大地 パール・バック 著 1931年
- ロリータ ウラジーミル・ナボコフ 著 1955年
- 華氏451度 レイ・ブラッドベリ 著 1953年
- 冷血 トルーマン・カポーティ 著 1965年
- 伊豆の踊子 川端康成 著 1927年
- そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー 著 1939年
はじめに
人はなぜ、本を読むのか?
あなたは、月にどれくらいの本を読んでいるでしょうか?(漫画や専門書、自己啓発書は除く)
学生や本好きの方、学校の先生などはともかく、
ほとんどの忙しい大人は「ゼロ冊」なのではないかと思います。
ですが、私はそれを全く悪いことだとは思いませんし、
人と読んだ冊数を比べて一喜一憂する必要も全くないと考えています。
なぜなら、文学作品とは基本的に
それを必要としている人が必要な時に
必要なだけ読めば良いものだと思うからです。
では、文学作品を必要としている人というのは
具体的に一体どういった人のことを指すのか。
私はそれは、「自分は、なぜこうなんだろう」とか、
逆に「世界はなぜこうなっているんだろう」とか、
そういった答えの出ないモヤモヤを
抱えながら生きているようなタイプの人たちだと思います。
良質な文学は鏡のようなものであり、
そういった複雑な疑問を相対化して
クリアに捉えるための新たな視点を与えてくれます。
そして、登場人物たちの心の動きや
運命を通じて私たちに感動を与え、
心を強く柔軟にしてくれるものでもあります。
要するに私が言いたいのは読書とは、
どこか欠けていたり、歪んでいたりする人のためのものであって、
本日お送りする本記事
『死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28』も
主にそんな人たちのための企画である、ということです。
…ただその理屈で言うと実はこれはちょっとしたタイトル詐欺で、
より正確には『文学が必要な人が死ぬ前に読みたい世界の名作文学ベスト28』とでもすべきだったかもしれません。タイトル長くなるのが嫌だから直さないけど
選定基準
そのようなわけで今から本の紹介に移りたいと思いますが、
その前に選定基準についてだけ軽く説明しておきます。
- 客観的な評価(ブックランキングや各受賞歴など)
- 読みやすさ
- 私が読んで感銘を受けた度合い
- 世界的評価が高ければ日本の文学作品も範囲内
- ノンフィクション、SFも範囲内
また、紹介順にも意味があって、
先に紹介されている本ほど
私の中でオススメ度がちょっと高いです。
それではどうぞ。
死ぬ前にこれだけは読みたい世界の名作文学ベスト28
カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー著 1886年
推薦コメント
奔放な父フョードル・カラマーゾフの特徴をそれぞれ受け継いだ3兄弟の物語。
文庫本三冊に及ぶ長編ですが、前編の終わりごろから一気に面白さが加速します。
特に前編のラストを飾る『大審問官』の章は必見。
高慢と偏見 ジェイン オースティン著 1813年
推薦コメント
生き生きとした人間描写と軽妙な語り口で今なお多くの読者から愛される不朽の恋愛小説。
小説として面白いのはもちろん、執筆当時のイギリスの文化や風習を知る上でも有益な一冊です。
オデュッセイア ホメロス著 紀元前8世紀ごろ
推薦コメント
有名なトロイア戦争の英雄オデュッセウスが
故郷のアカイアに帰り着くまでの波乱の旅を描いた
ギリシア叙事詩の大傑作。
のちの時代の創作全般に多大な影響を与えた作品であり、
その影響力は現代日本のサブカルチャーの中にも
風の谷のナウシカのナウシカ(ナウシカアー)や
漫画ベルセルクのシールケ(キルケー)など
オデュッセイアの影響を受けた作品が
多数存在していることからも伺えます。
ライ麦畑でつかまえて J・D・サリンジャー著 1951年
推薦コメント
16歳の少年ホールデン・コールフィールドの独白を通じて
高度文明社会の病巣を鋭く描く青春小説の金字塔。
著者のサリンジャー自身が戦争PTSDの当事者であるという点も含め、戦後アメリカ社会を象徴するような作品です。
異邦人 アルベール・カミュ 1942年
推薦コメント
44歳の若さでノーベル文学賞を受賞したフランスの小説家、アルベール・カミュの代表作。
周囲に迎合することを嫌い、独自の価値観に従って生きる男ムルソーを通じて人間の理性や常識に疑問を投げかける本作は、特に周囲に合わせて行動することが苦手なタイプの人こそ強い衝撃を受けるであろう作品です。
特に、ラスト付近の神父との対話における、ムルソーの語りの迫力は随一。誇張ぬきに『魂を揺さぶられる』小説です。
老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ 1952年
推薦コメント
シンプルな構成、短くまとまったページ数、爽やかで勇気をもらえる読後感など日頃本を読む習慣のない人でも読みやすい一冊。
一方で下敷きになっているキリストの受難物語や物語に込められたヘミングウェイの理想など、読み方を変えることで違った表情が見えてくる懐の深さもあります。
一九八四年 ジョージ オーウェル著 1949年
推薦コメント
もはや古典とでもいうべき位置にありながら
近年でもトランプ政権の誕生をきっかけに
Amazonでの売れ行きが急激に伸びるなど
今尚リアルなディストピア小説として
一定の影響力を及ぼし続けている一作。
某巨大独裁国家をお隣に持つ私たち現代日本人にとっても
多くの洞察が得られる一冊であるかと思います。
夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル著 1946年
推薦コメント
ナチスの強制収容所に収監されるという
極限状況を体験した精神科医V・フランクルによるノンフィクション。
淡々とした筆致を通じて
人間の本当の強さや困難な状況に立ち向かう心構えを
教えてくれる掛け値無しの名著です。
アルケミスト-夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ著 1988年
推薦コメント
全世界で3000万部を売り上げ、
ウィルスミスも愛読書に挙げている
ブラジルの作家パウロ・コエーリョの代表作。
夢を持ち続けること、
夢のために自分から行動することの大切さを教えてくれる一冊です。
アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 1959年
推薦コメント
私が『今までに読んだ中で一番泣けたお話』を
1つ選べと言われたらこの『アルジャーノン』を選びます。
でも、悲しいだけじゃなくて
人間に一番大事なものは何かを教えてくれる
とても温かい物語もあるので、心に残る一冊をお探しであれば
ぜひこの本を手に取ってみてください。
百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス著 1967年
推薦コメント
1982年にノーベル文学賞を受賞した
コロンビアの作家、ガルシア=マルケスの代表作。
現実と幻想が入り混じった魔術的な作風が
読み手を唯一無二の物語世界に誘います
白鯨 ハーマン・メルヴィル著 1851年
推薦コメント
恐ろしく巨大な白いマッコウクジラ
モービィ・ディックに片足を食いちぎられた過去を持つ
エイハブ船長の復讐を描くメルヴィルの海洋小説。
出自も性格もバラバラな船員たちの魅力溢れる人物描写や
著者自身の捕鯨船への乗船経験を活かしたリアルな捕鯨の描写には
150年前の小説とは思えないほど強く引き込まれるものがあります。
アンナ・カレーニナ レフ・トルストイ著 1877年
推薦コメント
政府高官の妻でありながら
不倫の罪を犯してしまうアンナ・カレーニナと
不器用だけどどこまでも純朴な地方地主リョーヴィンの対比を通じて
人間がどう生きるべきかを示した文豪トルストイの恋愛小説。
恋愛という多くの人が共感できるテーマが主軸となっていることもあって読み易く、
トルストイ文学の入門編としてもおすすめの一冊です。
大いなる遺産 チャールズ・ディケンズ著 1860年
推薦コメント
イギリスの下町の鍛冶屋で働いていたピップという少年が
ある日匿名の人物から莫大な遺産を受け継いだことで
いきなり上流社会の仲間入りをすることになり、
その過程で人生に本当に大切なものは何かを学んでいく物語。
ディケンズ最晩年の作品であり自叙伝的な性格も持つ本作には、
個性的な登場人物あり、恋愛あり、
少しづつ謎が明かされていく面白さありと、
本を読むことの醍醐味が詰まっています。
タイタンの妖女 カート ヴォネガット ジュニア著 1959年
推薦コメント
現代アメリカを代表するSF作家
カート ヴォネガット ジュニアがキャリアの初期に発表したSF小説。
大胆奇抜な設定や
ややもすると悪ふざけのようにも感じられてしまう
独特のユーモアは好き嫌いが分かれそうですが、
波長が合う人にとっては一生ものの読書体験となりうる一冊です。
とりわけ私の場合はラストシーンの美しい情景と
物語中盤のボアズというキャラクターの独白の場面に強く胸を打たれました。
ちなみに有名お笑い芸人の爆笑問題の太田 光氏は
ヴォネガット作品の大ファンを自称していて、
所属事務所「タイタン」の社名を
この作品から拝借したという逸話があったりします。
怒りの葡萄 ジョン・スタインベック著 1939年
推薦コメント
旧約聖書の『出エジプト記』を下敷きに、
自然の猛威と農業の資本主義化に追い詰められていく
貧しい農民一家の姿を描いたスタインベックの代表作。
どれだけ社会が豊かになってもなくならない
差別や貧困、搾取への怒りと同時に
どんな逆境にあっても懸命に生き抜こうとする
人間のたくましさも感じられます。
海辺のカフカ 村上春樹 著 2002年
推薦コメント
15歳の少年と猫と会話ができる老人の
二人の視点が並行して描かれる村上春樹の長編小説。
暗く、どこか影を引きずったような登場人物たちが
現実と怪奇が交差する漠然とした世界の中で織りなす
濃密な村上ワールドには、一度ハマれば
二度と抜け出せなくなる強烈な魅力があります。
星の王子様 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 著 1943年
推薦コメント
星新一のショートショートとならんで
わたしの幼少期以降の読書人生を決定づけたのが
この星の王子様という作品です。
有名な「本当に大切なことは、目に見えない」という言葉を始め、
ものごとの本質を鋭くつく多くの言葉に満ちている本作は、
きっと100年後も200年後も変わらず
世界中の人間の心を豊かにし続けていることでしょう。
蝿の王 ウィリアム・ゴールディング 著 1954年
推薦コメント
ある意味で、この世のどんなホラーよりも
怖いのがこの『蝿の王』という小説です。
無人島という閉鎖空間の中で
少しづつ狂っていく少年たちの姿を通じて
人間社会からいつまでたっても
いじめや自殺がなくならない根源的な理由が見えてきます。
野性の呼び声 ジャック・ロンドン 著 1903年
推薦コメント
カリフォルニアの判事の屋敷で
忠犬として暮らしていた牧羊犬バックが
運命のいたずらから遠いアラスカでそり犬となり
過酷な環境の中で次第に野生へと目覚めていく物語。
もともと子供向けの小説ということもあって読みやすく、
雄大なアラスカの自然描写や
過酷な運命の中でたくましく成長していくバックの姿に
ぐいぐい引き込まれる一冊です。
嵐が丘 エミリー・ブロンテ 著 1847年
推薦コメント
30歳の若さで早逝した
英国の女流作家エミリー・ブロンテの唯一の刊行作。
時に嫌悪感をもよおしそうになるほどの背徳的な内容や
個性的すぎて容易には感情移入できない登場人物たち、
発表当時は斬新すぎて受け入れられなかったという
信頼できない語り手(ネリー)の存在など一癖も二癖もある作風ですが、
その唯一無二の作品世界と著者エミリーの豊かな感性には
読み手を掴んではなさない強烈な魅力があります。
指輪物語 J・R・R・トールキン 著 1954年
推薦コメント
死ぬまでに読みたい本というテーマであれば、
ファンタジーというジャンルを確立させ
後の世代の多くの創作物に絶大な影響を与えた
この作品を外すわけにはいきません。
登場人物たちの系図から言語、歴史に至るまで
緻密に作り込まれた世界設定に下支えされた壮大な冒険譚は
物語を読むということの本質的な楽しさを味わわせてくれます。
また指輪物語といえばP・ジャクソン監督の映画三部作が有名で、
既にそちらを見たという方も多そうですが、
小説版には映画では尺の都合で描かれなかったストーリーや
キャラクターの掘り下げにつながる描写がたくさんあり、
むしろ映画を楽しんだ人ほど「あれは、そういうことだったのか」と
発見する喜びが得られるという面白さもあります。
大地 パール・バック 著 1931年
推薦コメント
人間に多くを与え、時に奪ってもいく大地。
そんな大地の偉大さを、清朝末期の中国の
とある農民一家の生き様を通じて表現した
米国の女流作家パール・バックの代表作。
幼少期を中国で過ごした経験のある
著者による当時の中国描写はリアリティに富み、
読後には一人の人間の一生を
追体験したような感動を味わうことができる一作です。
ロリータ ウラジーミル・ナボコフ 著 1955年
推薦コメント
そのあまりに過激な内容から
5カ国で発禁になったと言う逸話を持つナボコフの小説『ロリータ』。
しかしその内容は古今東西の文学作品へのパロディと
ナボコフ流のレトリックに満ちた極めて知的なものであり、
少女ドロレスに執着し、破滅の道を突き進む
主人公ハンバート・ハンバートの姿からは
他者に自己の理想を押し付けてしまう
人間の本質的な哀しさ、愚かしさが伝わってきます。
ちなみに新潮文庫版の巻末には本書から大きな影響を受けた
日本のノーベル文学賞受賞作家、大江健三郎が解説を寄せており、
その中で大江氏は本書の構成を高く評価し、
小説家志望の若者にはまずこれ(ロリータ)を読めと
推薦し続けてきたというエピソードを語っています。
華氏451度 レイ・ブラッドベリ 著 1953年
推薦コメント
全ての本が禁止された世界で、
本を燃やす焚書官の仕事をしていたモンターグが、
風変わりな少女クラリスや本を愛する人々と出会う中で
自分のやっていることに疑問を感じ、変化していく物語。
ブラッドベリはこの作品の中で
『頭を使わなくても楽しめて、ひたすら受動的な』
"テレビ"を読書と比較して徹底的に風刺しているわけですが、
そう言う意味ではその批判は現代最も人口に膾炙している娯楽である
スマートフォンおよびインターネットにも通じるところがあり、
その普遍性こそが本書を時代を超えた名作たらしめている所以であるかと思います。
読書好きでテレビの存在に疑問を感じているような方はぜひ。
冷血 トルーマン・カポーティ 著 1965年
推薦コメント
1959年にアメリカのカンザス州で実際に起きた一家惨殺事件を題材に
事件の全容から裁判の様子、そして判決までを描いたノンフィクション作品。
著者は『ティファニーで朝食を』の著者としても有名なトルーマン・カポーティです。
この作品で初の試みとなるノンフィクションに挑んだカポーティは
3年に及ぶ綿密な取材の成果と持ち前の才覚を駆使して
現実の犯罪を極めて"面白い"物語へと昇華することに成功しました。
死刑の意義や人間の運命について
読後には様々な思いが渦巻くこと必至の本作。
果たしてあなたはカポーティがタイトルに冠した
「冷血(原題: In Cold Blood)」という言葉の真意をどう読み解くでしょうか…?
伊豆の踊子 川端康成 著 1927年
推薦コメント
1968年に日本人として初めてノーベル文学賞を
受賞した作家としても知られる川端康成の初期の代表作。
川端作品の特徴である日本的な感性による美の描写や
選び抜かれた日本語の放つ魅力はもちろんのこと、
若い時期に書かれた作品ゆえの
みずみずしい抒情が味わい深い作品でもあります。
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー 著 1939年
推薦コメント
言わずと知れたミステリーの女王
アガサ・クリスティーの最高傑作。
現在まで続く推理小説の基本形を作った作品でありながら、
圧倒的な緊張感と予想を裏切る結末の魅力がものすごく、
今読んでも全く色褪せない名作中の名作です。
推理小説ということで宗教や
書かれた時代の前知識があまりなくても楽しめることや
短い時間でサクサク読み進められるのもおすすめしやすいポイントですね。