パラウォッチWiki(Parawatch Wiki)とは?
あなたはパラウォッチWiki(Parawatch Wiki)をご存知だろうか?
陰謀論者、超常現象愛好家、アマチュア作家が集まる
このオンラインフォーラムには数多くの異常な体験談が投稿されている。
全体的な雰囲気としては洒落怖に近いが、
あちらがホラーや恐怖を全面に押し出しているのに対して、
こちらはより純粋に奇妙な体験全般についての投稿が多いのが特徴だ。
本日はそのパラウォッチの投稿の中から、
私が特にビビり散らした10本の傑作をご紹介しようと思う。
紹介する話は伝説的テーブルトークRPGにまつわる不気味な噂話から
深海300mで働く飽和潜水士の恐怖の体験談、
さらにはインターフォンに録画された不気味な訪問者にまつわる投稿まで
どれも実にバリエーション豊かで
一度聞いたら脳裏にこびりついて離れなくなる話ばかりだ。
心の準備は出来ただろうか?
大丈夫なら、行ってみよう。
パラウォッチ傑作選
エスケイプ・フロム・テルミナス
▲エスケイプ・フロム・テルミナスのボックスアート。
エスケイプ・フロム・テルミナスへの関心は、70年代後半から80年代初頭にかけて薄れていった。
もっと単純で入手しやすいゲーム(ダンジョンズ&ドラゴンズ、トンネルズ&トロールズ、ロールマスター)が人気を博した。
それでも、残虐無道のミノタウロスを出し抜こうと知恵を絞る小さく活発なプレイヤー層が踏み止まっていた。ゲームの舞台は、6面全てがドアで接続された“六角形の小部屋”から成る広大な複合施設。
プレイヤーはこの無限に続く六角形(“ヘクス”)の迷路を1部屋ずつ移動し、新たに踏み込んだ部屋をマップに書き加えていく。
ヘクスの中に何があるかは、ダイスを転がし、参照表と照らし合わせて決まる。
罠あり、アイテムあり、メッセージあり、食料あり — かつてのプレイヤーの死体さえ見つかる。
戦闘コマンドが無いこのゲームは探索と生存を重視している。
だが、エスケイプ・フロム・テルミナスのユニークな点はその遊び方にある。
単独プレイなのだ。仲間も“ダンジョンマスター”もいない。
1960年代にアルビオン・ゲームズという会社が企画し、
たった700部だけ印刷された"エスケイプ・フロム・テルミナス"という
テーブルトークRPGについてのパラウォッチ。
完全ソロプレイで、多くの人の手を渡るうちに
ルールブックに数多の変更が加わった経緯を持つこのゲームは
発売から数十年もの間クリア条件を満たした者がいないという逸話を持ち、
中でもゲームシステムの一つである"ミノタウロス"が
クリアを阻む最大の障壁として立ち塞がっていた。
▲WEBチャットに投稿されたミノタウロスのイメージ。出典不明。
そんな中、2000年代に入るとエスケイプ・フロム・テルミナスの熱心なプレイヤーたちが
ネット上にフォーラム(“テルミナス・ベロシティ”)を立ち上げゲームクリアの戦略を最適化する試みを開始。
しかしその結果得られたものは
「エスケイプ・フロム・テルミナスが原理的に絶対にクリア不可能なゲームである」という身も蓋もない結論であり、
それを機にプレイヤーたちのゲームに対する熱も一気に冷めてしまったのだった。
そんなわけで今ではすっかり過去の思い出になり
フォーラムも2012年に閉鎖されてしまったのだが
実は閉鎖の2日前にフォーラムへの急激なアクセス数の増加が記録されている。
その原因は、かつてアルビオン・ゲームズで働いていた
ランドール・ペトロフの息子を名乗る人物が建てたあるスレッドであり、
そこには同じ人物によって次のコメントが書き込まれていた。
やぁ皆さん、ランドール・ペトロフの息子です(父は60年代にアルビオン・ゲームズで働いていました)。
皆さんがここで成し遂げた事を知ったら、父はきっと大いに感激し、誇りに思うでしょう。皆さんは父とアルビオンの望みを遥かに超えて、テルミナスの物語に新しい生命を吹き込みました。様々なバリエーションを読んでいるととてもワクワクします。でも1つ聞かせてください。ミノタウロスは誰の発案だったんですか?
読解のヒント
このパラウォッチは上記メッセージで幕を閉じているのだが、
物語の要所となる部分があえてぼかし気味に書かれているので、
最後まで読んでもいまいち意味がピンとこなかった方もおられるかもしれない。
そこで、ディスカッション内の作者コメントなどから拾った、
本パラウォッチのツボを理解する上で特に重要と思われるポイントをいくつか捕捉させて頂く。
- 「プレイヤーが(罠、飢餓、またはミノタウロスによって)死亡すると、そのヘクスには印が付けられる。」という記述は比喩ではなく、字面通りの意味である。つまり、ゲーム内での死は現実での死を意味する。
- 最終的にこのゲームはミノタウロスの存在によって原理的にクリア不可だということが判明した。これはつまり、ゲームをプレイする限り死を免れられないことを意味している。
- アルビオン・ゲームズが最初に発売したオリジナル版にミノタウロスは存在しなかった。つまり人から人の手を渡ってルールが改変される過程のどこかでミノタウロスという"異物"が紛れ込み、またゲームそのものも異常化したものと推測される。
アイマン
▲プライベートフォーラムの某メンバーが作成した、アイマンのモックアップモデル。
映画“スター・ウォーズ”の最初の三部作は、史上最も献身的で情熱に溢れたファン層を生んだ — この特定のオタク軍団と他所の連中を隔てる特徴は、画面上に現れるエキストラや背景キャラまでも、1人残らず強迫的に記録・分類するところにある。
全てのキャラクターは — 出演時間やプロットとの繋がりに関係なく — 名付けられ、架空のバックストーリーを与えられ、時には(もし十分に興味をそそる容姿なら)アクションフィギュアが作られる。
ところが、Wookieepediaでページを探しても見つからず、コレクターズガイドで法外な高値が付いてもいなければ、背景にひっそり隠れているわけでもない1人のキャラクターが存在する。
もし君が彼を見つけたのなら — お気の毒様。
1983年に公開されたスターウォーズのエピソード6
「ジェダイの帰還」にて、公式記録に一切存在の証拠がないにも関わらず
複数のファンがそれを見た記憶を有している
"アイマン"なる謎のキャラクターについてのパラウォッチ。
この手の都市伝説は日本でもしばしば聞かれ、
有名どころで言えばドラえもんの「行かなきゃ」や
ラピュタの「幻のエンディング」などの例がある。
しかしこれらの例と比べて
アイマンのエピソードがことさらに不気味なのは、
それを見たと主張する人々に一種の執着心を起こさせ、
同時に似通った内容の非常に恐ろしい夢を見ることだ。
目撃者はアイマンの絵を描き、ごっこ遊びに登場させ、他の背景キャラと同じようにあの一つ目の怪物の姿が掲載されていることを望みながらトップス社のトレーディングカード・パックを片っ端から開ける。
時が経つにつれて、アイマンは潜在意識に忍び込む。
普段は心の奥底に隠れ、決まって夢の中に現れる。
誰もその夢を忘れない。アイマンの夢の展開は個々人で異なるが、特定の要素が一貫している。
舞台となるのは森や地下室などの、無限に広がっていると思しき暗い空間で、胸の悪くなるような激しい恐怖心を伴なう。
他の子供たちも夢に登場する。
歩いたり走ったりといった単純な行動はほぼ不可能で、手足にコンクリートブロックを結び付けられたような感覚がある。
アイマンは常にそこに居て、木々やドアの後ろに隠れているか、背景に紛れている。
子供たちは夢の世界を探検するが、アイマンは決して後れを取らない。
誰かが追跡してくるサイクロプスの存在を言葉で認めると、怪物はその子供に飛び掛かって貪り食らい、また陰の中へと帰っていく。
寝ている間の体感時間は数時間にも及ぶのに、目を覚ましても全く眠った気がしない。
こんな夢を数ヶ月間、毎晩繰り返し見る。
起きている間も、アイマンはその子供の人生に遍在する背景キャラと化し、部屋の暗い片隅やベッドの下に身を潜めるようになる。
子供は自分に言い聞かせる — あいつは実在しないんだ、アイマンはただの着ぐるみか人形だ — そしてまた眠りに落ちる。
アイマンとは一体何だったのか?
本当に子供の頃のあやふやな記憶に特有の、
ただの思い込みにすぎない存在だったのか?
その結末を知った時、
きっとあなたは戦慄せずにはいられないだろう…
9号変電所
▲投稿内に添付された変電所地下の写真の一枚。
懐中電灯2本の決まりを覚えているね?
あれは実に分別のある忠告だ。
ここの地下で道を見つけるのは難しい。
明かり無しでどうやって抜け出せるだろう?
電話も通じない。
全くの独りきりだ…
何マイルも続く劣化したコンクリート、悪臭を放つ水溜まり、錆びた機械に囲まれて —
墨を流したような暗闇の中で。
山奥の変電所の小屋で働く
電力会社社員による恐怖の体験談。
投稿者の職場である変電所には広大な地下空間が広がっており、
投稿者は大雨が降った時などに排水ポンプを操作して
変電所の機会が浸水しないように保安する仕事に就いている。
そのような状態にも関わらず
コストや仕事の確保などの理由から埋め立てが行われていないこの地下空間は
投稿者曰く「無限に広がっているように感じられる」ほどに広く、
またその一部はかつて一度ダムの底に沈んだ
古い鉱山町の跡地の地下とも繋がっているのだという。
そのような極めて特殊な職場環境で生じる
諸々の危険やハプニングについて
文章と現場で撮影した映像を交えながら
臨場感たっぷりに語る投稿者だったが、
職場の中で起きた不気味な体験談を語る過程で
かつて職務中に失踪したジョンという同僚に話題が及ぶ。
投稿者によればある年の融雪期の終わりに
地下へ排水ポンプの一つを確認しに行ったのを最後に
行方不明となった同僚のジョンは
状況的に地下で遭難した可能性が高いにも関わらず
常に水が流入し続ける地下空間特有の探索の困難さなどの理由から十分に捜索が行われず、
今なお髪の毛一本すら回収されていままになっているというのだ。
同僚の遺体がどこかに漂っているかもしれない場所で仕事を続ける…
想像しただけでもゾッとする話だが
この話にはまだ続きがある。
最初の投稿から1ヶ月ほどが経過したある日、
9号変電所の地下でジョンのものと見られる携帯が発見され
それきっかけに改めて本格的な捜索が開始されたのだ。
そしてその結果、
9号変電所の地下深くにて
一体の死体が発見される。
これで一連の騒動にも
一応の決着がついたかと思われたのだが…
読解のヒント
最後に発見された死体が
ジョンのものではなかったという
衝撃的なオチで幕を閉じたこの投稿。
映像も含め、雰囲気だけでも十分に怖いのだが
本家ディスカッションには投稿者自らが
もう少し突っ込んだネタバラシをしていたので
そちらについても読解の手がかりとしてここに載せておく。
・鉱山にはまだ元の鉱山労働者がいる。彼らはそこにいて、沈んだ暗闇の中で、まだ掘っている。
最後に発見された遺体はその鉱山労働者の一人のものだった。
何処からともなく納屋が来る
父は隣人が納屋を取り壊すのを望んでいたので、自ら手を出そうとはしなかった。
筋金入りの頑固親父でね、何事も誤解の余地無く自分の思い通りにやらせたがる人だったよ。
父は私が納屋に近寄るのも良く思わなかった — “ガタガタすぎる”し、“学者先生が積み木で建てやがった”ような安普請だから、と言っていた。私は普段、納屋からは距離を置いていた。
他にも幾つか気付いた事があった。初めて見た時、そいつは作物の列に合わせて整然と並んでいたんだ。
それが、ひょっこり姿を現した次の日になると、納屋は少しだけずれていた。
私は自分が狂ってはいないと知っていたから、頭を使ってちょっとした科学実験をやった。
泥溜まりに挿した棒切れを納屋の角の一つに配置して、納屋がまた動きを見せるかどうか待った。
言うまでも無く、数日後に、私は自分が狂っていないことを確信した。そいつは羊の囲いに向き直ろうとしていた。
投稿者が子供の頃に遭遇した
おかしな納屋についてのパラウォッチ。
この投稿者のケースはアメリカだったが、
日本のどこかにもこんな存在が潜んでいるかもしれない…
そんな気持ちにさせられる秀逸な一作だった。
タワーB
▲タワーB。
深海飽和潜水士はある意味では有名人のようなものだ。
人数はそう多くない — この広い世界中でも数百人程度しかいない。理由はこうだ。君は船腹の真下にある鋼鉄の加圧管を知っているだろうか? ウォークインクローゼットと同程度の広さのあの部屋だ。君は2週間もの間、その部屋で食って寝てクソをしながら、身体が高圧環境に順応するのを待たなければならない。上層の連中は君をドナルドダックのような声にする混合ガスをポンプで送り込み、君の食事は牧師の娘の括約筋よりも締まりのきついホースから絞り出される。
まぁ要するに — あれは危険な、イカれた仕事だ。だが非常に楽しい仕事でもある。素敵な人々に出会い、素敵な物語を聞く機会がある。他の人間が夢見たことも無いような代物をその目で直に見られる。あの当時、私をあれ以上に夢中にさせたものは無かった。
飽和潜水士という、
深海での作業に特化した職業に就いている投稿者による恐怖の体験談。
1981年、タワーBと呼ばれるノルウェー北海の沖合にある
石油掘削リグの下で働いていた投稿者の
パートナー 兼 同僚の潜水士だったダニエル・バレストリが
”爆発的減圧現象”と呼ばれる何かが起きた後に死体で発見された。
通常、深海から帰還した飽和潜水士は
与圧室と呼ばれる小さなカプセルに入って
少しづつ地上の気圧に慣れるために減圧を行う必要があるのだが、
この時バレストリと共に与圧室に入っていたもう一人の潜水士が
なぜか十分が減圧が完了する前に与圧室の封を開けてしまい、
結果としてカプセルの外気が爆発的な勢いで外部に流出。
こうした事態によってバレストリとその潜水士は
例えるなら狭い隙間にものすごい力で無理やりねじ込まれた粘土のような状態になり、
ひとたまりもなく死亡してしまったのだった。
しかしここで読者には一つの疑問が生じる。
なぜ、十分な訓練と経験を積んでいたはずの潜水士が
このような単純な判断ミスを犯してしまったのだろうか?
その原因の解明こそが本パラウォッチの一つの肝なのだが、
私がもうひとつ深く感心したのが
途中で挟まれるアホロートルとネオテニーについての挿話だ。
▲ネオテニーのアホロートル。
一見、本筋とは無関係と思えるこの挿話が
実は最後のオチの巧妙な伏線となっていたことを理解した時には
思わずディスプレイの前で唸ってしまったものだった。
こういうのは単に発想力があるというだけではなく
幅広い分野への知識と興味がなければ決して書けないだろう。
ちなみに本筋からは外れるが
飽和潜水士の仕事の内容について興味が湧いたのであれば
こちらのインタビュー記事をお勧めしたい。
もはやSFレベルのスペック。飽和潜水1,000メートル防水の時計はどれだけスゴいか「深海の仕事」のプロに聞いてみた | GIZMODO
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訪問者
俺が新社会人になって引っ越した賃貸はその録画機能付きインターホンが取り付けられていた。
ただ、実際にインターホンのその機能をまともに使ったのは引っ越してからしばらくしてからだった。
というのも、俺が就職した企業は地元から離れていたから、訪ねにくる友人なんてほとんどいなかったし、新しい環境での研修やら何やらで毎日クタクタになってて他のことをやる余裕なんてなかったからだ。
俺があまりそういうのを気にしないっていう性格だったっていうのも関係していたかもしれない。初任給で親にプレゼントを贈って、会社にも慣れ、友人が増え始めたころに通販でちょっとした買い物をした。
所謂、自分へのご褒美というやつだ。
それから数日して荷物が届いた。
部屋の中で包装を解いているときに、ふと部屋にあるモニターのランプが赤く点滅していることに気が付いた。
未確認の映像があるということを示している証だ。
何の気なしにモニターを確認してみると、『「未確認の映像」が50件あります』という表示が出ていた。最初、前の住民の未確認のものが残っているだけだと思ったがそうではなかった。
一番古いものでも俺が引っ越してきてから録画されたものだったからだ。
最初の録画はスーツ姿の中年だったが、次のが強烈だった。40、50代ぐらいの女がまっピンクのワンピースを着てチャイムを鳴らしていた。
髪は黒色でむやみやたらと長く、顔のほとんどを覆っていた。
わずかに見えた爪には垢か何かが詰まっており、腕はしわくちゃであったが、肌は異様に白く、そのアンバランスさが異質さをより一層引き立てていた
。恐怖よりもまず先に吐き気が来た。それほどにこの女は気味が悪かった。
次の録画もその女だった。
その次の録画はスーツ姿のおっさんだったが、さらに次の録画はまたその女だった。
次も次も次も次も女だった。
結果として全体の大体80%、すなわち40件近くがその女を映したものだった。
来る時間帯は決まって平日の飯時であり、チャイムを何回も鳴らすと去っていった。
私は家にいる時に不意に鳴るチャイムが苦手だ。
応対のために食事だろうがトイレだろうが
今していることを中断せざるを得ないことや
最初から断ると分かりきっているセールスや宗教の勧誘のために
無駄な時間を取らされることも嫌なのだが、
それ以前に、この世で唯一心落ち着ける場所である自宅の前に
見覚えのない何者かが待ち構えているという状況自体に
本能的な不安を感じてしまうのだ。
そしてこの「訪問者」というタイトルのパラウォッチもまた
そういう心理に根ざした恐怖感に満ち溢れている。
初めての一人暮らし、
インターフォン、
身に覚えがない不気味な訪問者…
あまりにも怖すぎて
下手をすると日常生活に支障をきたすかもしれないので、
似たような生活環境でなおかつ恐怖耐性に自信のない方は
紹介した手前おかしな話なのだが
あえて読むことを控えたほうが良いかもしれない…
廃墟のパン屋
数年前、ウクライナのチェルノブイリに観光に行ったときの話だ。結局何を見たか未だに分からないが聞いてほしい。いつ頃だったかな、仕事に慣れて休暇に旅行に行く余裕ができたくらいのちょっとしたやんちゃをしてた頃だ。
ちょっとした趣味と実益を兼ねてウクライナに仕事のついでに旅行に行った。実はプリピャチと呼ばれている地域があって観光ツアーや許可を取ったうえでなら冒険ができる場所として有名なんだ。
自己責任っていう便利な言葉と簡単なサインさえ出来れば夢のような廃墟の街だ。チェルノブイリの汚染で人が住まなくなって数十年、汚染が多少減衰して安全になった範囲は入れる場所については世界中の廃墟マニアや聖地巡礼者にとっての結構な人気スポットになっていてガイド付きの探検ツアーが定期的に開かれている。
私は現地出身の知人をガイドに雇って、許可を取ったうえで創作の資料にするためにこの町を訪れた。
投稿者がチェルノブイリの廃墟で体験した怪現象についてのパラウォッチ。
描写はどちらかといえば淡々としているが、
それだけに妙な真実味がある。
異常の種明かしに重きを置かない
パラウォッチらしさがよく出ている投稿の一つだと思う。
夜8時半に風呂に入るな
俺の家では、子供の頃から変な決まり事がある。
「夜8時半に風呂に入るな」というものだ。
何故なのか。親父や母ちゃんに理由を聞いた事もあるけど、黙りこくって教えてくれない。両親だけじゃない。俺の親戚の人間は皆、夜8時半に風呂に入らない。親戚が嫁や旦那さんを見つけて家族に紹介すると、一番初めに風呂に入る時間の話をする位だ。
ただ、意外と条件は緩い。8時半丁度、自分の家の風呂場に入っていなければいいんだ。極端な話をすれば、8時29分59秒まで風呂に入ってていいし、8時30分1秒に入っててもいい。ただ、8時半丁度に風呂に入っていなければいいんだ。あ、ちなみに銭湯は何時でも入って良いらしい。この緩さもあって、次第に気にならなくなる。守るのは簡単だからな。夜ご飯を食べる時間が習慣化するみたいなもんだ。
どんな家でも、その家独自のルールがある。ただ、それだけだと思っていた。万が一、忘れて破ってしまっても、何も無いんだろうなと思っていた。
最初に種明かししてしまうけど、俺が知っている限り、2回だけ決まり事を破った事がある。
これは前に一度何かの記事で紹介したことのあるやつだけど
パラウォッチの中ではかなりの傑作なので再びご紹介。
投稿者は家に「夜8時半に風呂に入るな」という謎のルールがあり、
かつて2回だけそのルールを破ってしまった例があったことを語る。
これだけでもだいぶ意味不明で怖いのだが、
このパラウォッチにはもう一つ、
分かるとゾッとする"仕掛け"が仕込まれている。
ヒントは「夜8時半」という時間指定と
パラウォッチの掲示板風のフォーマットだ。
一回読んだだけではピンと来なかったという人も、
今度は時間に注意してじっくりと読み直してみてほしい。
てうぶく
三日前に体験した話
さっきもちょっと書いたけど漏れの実家って結構な田舎にあって、特に夜とかめっちゃ暇になるのよ。
テレビのチャンネルは三つぐらいしかないし、ネットなんて漏れが工房の頃カーチャンに頼んで繋いでもらったテレホが未だに現役なレベル。
だから夜にやる事っていったら速度がおっそいの我慢してネットやるか、部屋にある昔集めてた漫画読むかぐらいしかないのね
そんでその日も夜中に部屋で寝っ転がりながら漫画読み返してたんだけど、何か小腹が空いてきて。一番近くにあるコンビニに行くことにしたんだ。近くっつってもやっぱ田舎だから歩いて行けるようなとこじゃなくて、街灯もそんな無いから非常用の懐中電灯持ってかなきゃいけないし、チャリで20分ぐらいはかかるような所なんだが
確か夜の11時ぐらいだったと思うんだけど、蛙のうるさい声が聞こえるだけで全然人気のない道をチャリで走って、そんでジュースとアイス買って家に戻ってたんだよ。そしたらその帰り道の途中で、変なのに会った。ていうか変なのを見た。
現状、パラウォッチの中でも最もupvoteを獲得していると思われる投稿。(日本支部で)
これも紹介ずみだがパラウォッチ傑作選ということであれば
取り上げないわけにはいかないだろう。
内容はハンドルネーム『雛』という人物の体験談で、
舞台は氏が帰省で訪れていた佐賀のとある田舎町。
雛氏が夜遅くコンビニに行くために人気のない夜道を自転車で走っていると
山の方から神楽のような不思議な太鼓の音が聞こえてきたのだという。
祭りの練習にしても時間も場所もおかしいと興味を抱いた雛氏は
音の発生源に近寄って正体を確かめようとしたところ
その途中で木に打ち付けられたしぼんだゴム風船みたいな物体と
判読不能な漢字が5、6文字ぐらい(多分筆で)書かれた紙(?)を発見。
しかしそこで急に「これ以上行ったらヤバい」
と直観した雛氏はそこで一時撤退し、
家に戻るとこの体験談を共有するために
パラウォッチにスレッドを立ち上げたのだった。
スレの立ち上げ後、数名のスレ住人がこの話題に食いつき、
さらに雛氏はその日の夜にもう一度現場に凸することをスレ内で宣言。
これを受けたスレはさらなる盛り上がりを見せ、
実際に雛氏は凸の様子を現地で撮ったという
写真を交えてスレに投稿していくのだが、
なぜか途中で雛のレスが途絶えてしまい…
というのが大まかな話の流れだ。
ここまでであれば
古き良き時代のオカ板で起きた1エピソードといった感じだが、
多くの方が御察しの通り、
この投稿にはある裏の意図が隠されている。
その解説は上記の記事で既に行っているのでここではしないが、
何気ない投稿に隠された悪意の全てを理解してしまえば
きっと震えを感じずにはいられなくなることだろう。
るすばん星人
自分が小学校2年生ぐらいの頃、両親は共働きしてたから、週末は5歳の弟と一緒によく留守番をお願いされた。その時住んでいたのはアパートの2階だったんだが、道路側に窓があって、歩いて帰ってくる母親を見れたんだ。ちょうど今頃の時間、18時頃に帰ってくるから、その時間帯になると窓から母親を探してた。
そんなある日、いつも通り窓から歩いて帰ってくる母親を確認した俺は、母親がドアを開けた瞬間に脅かしてやろうと扉の前で待ち伏せる事にした。
それで、玄関の覗き穴から母親が階段を昇ってくる所を見ていた弟が、おかしな事を言い出した。
「あれ、何?」
血の気が引けた。なんで弟がそんな事を言ったのか理解できなかった。自分も覗いてみる。
「お母さんじゃん。」
「違うじゃん、何あれ。めっちゃ首長い。怖い。」
ほぼ反射的に自分は家の鍵を閉めた。自分にはいつもの母親にしか見えないが、弟には違う物に見えるらしい。帰ってきた何かは、扉を開けようとするが開けられない。すると、鞄から家の鍵を出して、ズズっと差し込む音がした。そして、ゆっくりと回し始めた。カチャっと回し終わった瞬間、怖くなった自分は必死にドアノブに体重をかけて開かないようにした。
「ちょっと何なの?開けて。」
自分には母親の声にしか聞こえない。しかし、弟には違うように聞こえるらしい。半泣きで耳を塞いでいた。自分は、しばらく必死に抵抗したけど、大人と子供の力の差だ。無理やり開けられた。
部屋の中に入ってきたのは…自分が知る母親だった。いつもと変わらない母親。弟も不思議そうな顔をしていた。今は、弟にも普通に見えているらしい。結局、その日は変なイタズラをしただけに終わり、しこたま怒られた。
Eテレの幼児向け番組のタイトルにでもありそうな
ふざけたタイトルに反して、正直今回取り上げた中では
個人的に最もビビったのがこの「るすばん星人」だ。
投稿者の弟が玄関の覗き窓から帰宅してくる母親を見た時にだけ見える、
異常に首が長くて目や口から赤黒い液体をボタボタこぼしている姿の「るすばん星人」。
その描写だけでももう
うっかり粗相しそうなくらいに怖いのだが
投稿を読み進め、後半にある衝撃的な展開があって、
そこでなぜるすばん星人がなぜ
あのような姿だったのかという理由を理解すると
全身の血の気がスッと引いたような悪寒を感じた。
しかも話はそれで終わりではないのだ。
投稿の最後の最後、
一見自然なように見える投稿者の語り口の中に
この投稿最大の"オチ"が隠されている。
よく読めば一目瞭然なのだが
それまでの語りが全く自然な感じだったので
気づいた時にはこれもまた本気でビビった。
まるでホラーの弐撃決殺。
なんて冗談でも言っていないとやってられない。
そんなマジにハンパない
トラウマ級の体験談だった。
終わりに
これで本日の紹介分は全てだ。
パラウォッチを通じて私が感じた、
夜な夜な洒落怖を読み漁っていたあの頃のような気持ちを
あなたも感じられたであろうことを願っている。
ところで…
私などは残念なことに生まれてからこの方
不思議な体験というものをしたことがないのだが
もしあなたがそういうことに縁があるのであれば
パラウォッチに体験談を投下してみるのも悪くないかもしれない。
もっともそのせいで
黒尽くめの男たちがあなたの記憶を消しに
訪問してくる結果を招いたとしても、私は一切責任を取れないが…