はじめに
漫画ジョジョの奇妙な冒険では三部以降
スタンドと呼ばれる超能力が登場し、
依頼現在に至るまでその長い連載の中で
多くのスタンドが描かれてきました。
しかし中には漫画やアニメで本編を追っているだけでは
存在を知ることのできないマイナースタンドというのもいくつか存在します。
例えばノベライズのオリジナルスタンドや
ゲームのオリジナルスタンドがそれにあたります。
そこで本日は、主にジョジョは漫画やアニメで知っているけれど
それ以上の知識はあまりないという方向けに、
知られざるマイナースタンドの世界をご案内します。
選定条件はマイナーでありさえすれば
あとは公式からお出しされた媒体出身のすたんどである事のみ。
中には「こんなの出してもいいの!?」
と驚いてしまうようなとてつもない強スタンドもあり、
スタンドに興味があればきっと興味深く読んでいただけるのではないかと思います。
それで、いってみましょう!
本記事にはジョジョの奇妙な冒険及びその関連作品に関するネタバレ要素を含みます。閲覧の際はその点を予めご了承ください。
マイナー度 ★★★ 全部知ってたらなかなかのマニア
まずは小手調べ。本編には出ていないものの
ファンであれば知っていてもおかしくないスタンドをセレクトしました。
サタニック・カプラー(凶悪連結器)
本体名 | アブサロム |
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能力 | スクラップなどを引き寄せて組み上げ、鉄道車両を生成する能力 |
名前元ネタ | スウェーデンのパンクバンド、サタニック・サーファーズ |
概要
三部を題材としたジョジョ初のノベライズ作品、
『ジョジョの奇妙な冒険(1993)』に登場したスタンド能力。
本体はDIOの刺客であり、
文明に対して愛憎入り混じった複雑な感情を持つ青年アブロサム。
能力は本体アブロサムのイメージをもとに
スクラップなどをよせ集めて鉄道車両と線路を生成し、
本体のアブロサム自身が運転士となって操縦するというもので、
その圧倒的なパワーとスタープラチナのラッシュにも耐えるほどの頑強さで
ジョースター一行を敗北ギリギリまで追い詰めました。
加えて他者のイメージを自身の中に取り込むこともでき、
作中ではポルナレフのイメージを取り込んでフランスの鉄道風の外見に変化したり、
イギーのイメージを取り込んで、イギーからみた列車のイメージである
巨大で凶暴な生物風の外見に変化したりもしています。
思うこと
三部らしいパワフルなスタンドですが、
ノベライズのオリジナルスタンドとしてみると
能力的には原作で既に登場していた力(ストレングス)や
運命の車輪(ホイールオブフォーチュン)との類似点が多く、
あまり目新しさはありません。
これはおそらく無理に捻った能力を出して
ジョジョの世界観を損ねることを危惧したからだと思われます。
そしてその判断は、本作のノベライズとしての違和感の少なさ、
そして各所レビューでの評価の高さなどを鑑みると
やはり正しいものだったのではないかと思います。
ダーク・ミラージュ(闇の蜃気楼)
本体名 | ミカル |
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能力 | 蜃気楼を実体化させる能力 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
同じく『ジョジョの奇妙な冒険(1993)』より
アブロサムの妹ミカルのスタンド能力。
能力は蜃気楼を実体化させるというもので、
自然現象の蜃気楼と同じく
日が十分に高く登った昼間にしか使えないなどの制約があるものの、
具現化させるものの種類は通常の蜃気楼が見せるものに限らず
ミカルの記憶の中にあるイメージならなんでも可能。
作中では直径20センチほどに縮めた大量の石油タンクを
摩擦熱で燃やして火球にして降り注がせたり、
アブロサムと連携しての幻影による精神攻撃などを披露しました。
思うこと
使用できるシチュエーションが限定されるのは痛いですが、
タンカーやビル群のような巨大な物質を
物理法則を無視して実体化できる能力は極めて強力。
作中ではポルナレフに気絶させられて敗北していましたが
成長して具現化できるイメージの幅が増えたら
さらに手のつけられない強敵になっていたのではないでしょうか。
プタハ神/創世の書(ザ・ジェネシス・オブ・ユニヴァース)
本体名 | 書記アニ |
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能力 | 創世の書に書かれている出来事を現実化する能力 |
名前元ネタ | エジプト神話の創造の神・プタハ |
概要
同じく『ジョジョの奇妙な冒険(1993)』より
カイロ市内でジョースター一行を襲った
書記アニのスタンド能力。
紀元前に書かれたにもかかわらず、
20世紀までのエジプトの歴史が記されているという
「創世の書」という書物と同化しており、
書記アニが創世の書のページを読み上げるか黙読することで
その内容を現実に召喚して使役する能力を有しています。
作中で書記アニは
この能力で戦艦や兵士に加えスフィンクス、アメミットのような
想像上の怪物まで具現化しジョースター一行を攻撃しました。
弱点は本のページが傷ついた場合に
そのページの出来事が呼び出せなくなること。
思うこと
一度に呼び出せる事実は一種類のみという制約があるとはいえ
複数の召喚対象を呼び出し分けることができ、
かつその中にスタープラチナすら正面から圧倒する
アメミットまで含まれているとなると
一人の人間に発現するスタンドとしては若干オーバースペック気味なものを感じます。
作中で書記アニ自身が
この本の能力で実体化した過去の人物であることが示唆されており、
もしそうだとすればこの能力はアヌビス神やノトーリアスBIGのように
通常のスタンドの枠から外れる、ある種イレギュラーな存在だったのかもしれません。
ちなみに「ノベライズ出身で」「本のスタンドを持ち」「反則級に強い」という三要素を兼ね備えたスタンド使いが、偶然とは思いますが15年ほどに発表されたの四部ノベライズ作品であるThe bookにも登場しています(後述)。
ザ・キュアー
本体名 | コニーリオ |
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能力 | スタンドが舌で触れたものを治療する能力 |
名前元ネタ | 英国のロックバンド、The Cure |
概要
五部を題材とした大塚ギチ、宮 昌太朗によるノベライズ作品、
『ゴールデンハート・ゴールデンリング(2001)』に登場したスタンド能力。
本体は本作のヒロインに当たる少女コニーリオ。
右目が赤、左目が金色のウサギの形をしたスタンドで、
スタンドの舌で触れたものを治療する能力を持っていますが、
治療の範囲が限度を超えると能力が暴走する危険性を秘めています。
思うこと
荒木先生が悪役にするのは忍びないという理由で
退場させたはずのフーゴに思いっきり大量虐殺をさせたり
忠臣だったはずのティッツァーノが
なぜか暗殺チームと同列に(しかもスタンド名で)語られていたりと
いろいろな面でツッコミどころの多かった五部ノベライズ作品、
ゴールデンハート・ゴールデンリングに登場したオリジナルスタンド。
小説の評価はさておき能力のほうに目を向けると
真っ先に比較したくなるのは同じ治療系能力の最高峰であるクレイジー・ダイヤモンドですが、そちらと比較すると本体のコニーリオ自身も直せる点とスタンド像の可愛さではザ・キュアーが、
どれだけ直しても能力が暴走するリスクがない点と純粋な戦闘能力の高さはクレイジー・ダイヤモンドが優っています。
しかし、やはり自分自身も治せるという点から
どちらか選べと言われれば
ザ・キュアーの方を選ぶ人の方が多いのではないでしょうか。
パブリック・イメージ・リミテッド
本体名 | リガトニ |
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能力 | ライフル弾の弾頭に取り憑き、射程距離、弾速、威力を強化する能力 |
名前元ネタ | 英国のロックバンド、Public Image Ltd |
概要
同じく『ゴールデンハート・ゴールデンリング(2001)』に登場したスタンド能力。
本体はかつてミスタと
コンビを組んでいたという設定を持つ
パッショーネの狙撃手リガトニ。
能力は狙撃手らしく、ライフル弾の弾頭に取り憑いて
射程距離、弾速、威力を強化するというものであり、
強化後の弾丸は通常の弾丸の実に四倍もの威力を発揮して
どんな障害物も貫通した上で確実に標的を貫きます。
ただしその圧倒的な性能と引き換えに
本体のスタンドエネルギーを全て使い切る必要があり、
そのままでは着弾後に本体が死亡してしまうデメリットを抱えていたため
作中でリガトニはスタンド使いだけを標的として狙い、
着弾時に標的のスタンドエネルギーを吸収することでそれを回避していました。
思うこと
当てれば必殺、しかし外せば自分が死ぬという
極めて男らしいスタンド能力。
同じ銃弾操作のスタンドでも
ホルホースのように軟派な精神性の持ち主なら
絶対に発現しなさそうなところが
個人的に面白く感じますね。
ジョイ・ディヴィジョン
本体名 | ソリョラ・ロペス |
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能力 | 右手で触れたものと左手で触れたものを入れ替える能力 |
名前元ネタ | 英国のバンド、Joy Division |
概要
同じく『ゴールデンハート・ゴールデンリング(2001)』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの構成員で、
ヴェネツィアのギャングを仕切るソリョラ・ロペス老人。
能力は右手で触れたものと左手で触れたものの
位置を入れ替えるだけというシンプルなものですが、
能力の発動に時間差を設けることができたり
複数の対象に能力を行使することもできるため、
作中でそうしたように待ち伏せして
罠を仕掛ける戦い方には打ってつけの能力。
他に、壁と本体の位置を入れ替えての
緊急回避のような芸当も可能ですが、
基本的には小細工専門であり
近距離パワータイプのスタンドとの接近戦は苦手。
思うこと
ありそうで意外となかった位置交換能力を持つスタンド能力。
…と思っていたら2010年代のジョジョリオンに入ってようやく
本家の方にも位置交換能力を持つスタンド能力(ショット・キーNo.1)が登場しました。
その上でショット・キーと能力を比較すると、
時間差がつけられる点と、一度に複数の対象の交換が可能な点で
有用性はこちらに分がありそうです。(というか単に弟と連携してようやく定助に勝てるか勝てないか程度だったショット・キーNo。1が能力として微妙すぎるだけの気も…)
The Book
本体名 | 蓮見琢馬 |
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能力 | 本体の人生が記された本のページを見せることで、そこに書かれた出来事を体感させる能力 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
四部を題材として
小説家の乙一氏がノベライズを担当した
『The book』に登場したスタンド能力。
本体は自身の生い立ちにまつわる因縁から
とある人物への復讐を誓う、
ぶどうヶ丘高校2年生の蓮見琢馬。
ダークブラウンの革張りの本のような外見のスタンドの中には
琢馬が生まれてから現在までに体験した出来事が記されており、
本を開いてページを見た相手にページの内容を
『追体験』させる能力を有しています。
作中ではこの能力を利用してある人物を"交通事故死"させたり、
また別の人物にインフルエンザにかかった体験を追体験させて
行動不能に追い込むなどの応用を披露していました。
思うこと
先にプタハ神の項で仄めかしていた
「強い本のスタンド」というのはこのスタンドのこと。
また、"読ませる"ことがトリガーとなっている点は
小説にもゲスト出演している岸辺露伴の
ヘブンズドアーとも類似点がありますね。
ただ、これらのスタンドと比較すると
プタハ神に対しては利用できる記録のバリエーションで、
ヘブンズドアーに対しては能力の柔軟性で劣っており、
外伝作品の主人公の能力としては少々控えめな印象です。
もっとも小説内ではその控えめさを感じさせないほど
脅威的な能力として描写されており、
どんな能力も応用次第で強力になるという
ジョジョの醍醐味が十分に表現されています。
せっかくなので小説自体の評価に話題を移すと、
私はこの『The book』はジョジョノベライズの中でも個人的にお気に入りの一つで、
その最大の理由は乙一氏のダークで湿っぽい作風と
日本の地方都市を舞台とした四部の設定ががっちり噛み合っていて、
お互いの魅力を全面に押し出した上でなお良さを殺し合わないという
ノベライズの理想的な形が実現されていると感じたからです。
四部のみならず、他の部まで意識したオマージュの数々や
当時から散々言われていた仗助の恩人の件についての言及など
ジョジョファンを公認する乙一氏のリスペクト精神がふんだんに感じられたこともベネ。露伴の一人称が「私」だったことだけは受け入れられなかったが。
なので…
もし四部が好きで、また読んだことがないという人がいたら
ぜひこの機会に『The book』、読んでみてください。
メモリー・オブ・ジェット(黒い琥珀の記憶)
本体名 | 大神照彦 |
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能力 | 本体が望む人間がいる場所に誰も立ち入らなくなる能力 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
同じく『The Book』に登場したスタンド能力。
本体はハンサムで人当たりも良いが、
過去にある後ろ暗い秘密を抱えている建築士の大神照彦。
能力は本体が望む人間がいる場所に誰も立ち入らなくなるというもので、
作中では大神がある人物を人の目から遠ざけるためにこのスタンドを利用していました。
思うこと
作中での活躍機会が少なく、
どちらかといえば物語を動かすための
舞台装置として用意された感の強かったスタンド。
対象に物が含まれるなら
重要なデータや貴重品を隠すなどの使い道もありますが、
もし人間しか隠せないのであれば使い道はかなり限定されますね。
誘拐とか、監禁とか、どう考えてもろくな使い道が重い浮かびません。
ヴードゥー・チャイルド
本体名 | シーラ・E |
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能力 | 殴った場所に唇を出現させ、その場所に記憶されている人間の「深層心理」を語らせる能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックスの楽曲 Voodoo Child |
概要
五部を題材として、小説家の上遠野浩平氏がノベライズを担当した
『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体は姉を殺害したイルーゾォに復讐するために
パッショーネに入団した経緯を持つ15歳の少女、シーラE。
能力はスタンドが触れた場所に唇を出現させ、
過去にその近辺で話された
悪口などの後ろめたい発言を再生するというもの。
この能力を人間に対して使用した場合、
その人物の深層心理を読み取って罵倒を浴びせることも可能であり、
心に抱えた罪悪感を徹底的に苛まれた標的は
ほとんど場合それに耐えきれられずショック死してしまうとのこと。
ラッシュ時の掛け声は「エリエリエリエリ」。
思うこと
痛いのもイヤですが、
こういう精神攻撃タイプはもっと喰らいたくないですね。
もし自分がこのスタンドに殴られたら
あんなことやこんなこと全部バラされて
秒で憤死する自信があります。
ところでThe bookからしばらく間のあいた
2011年に発表された恥パですが、
当時一番話題になったのはミンナノッタ・ボートなどと
散々ファンの間でネタに近い扱いをされてきた
あのフーゴを主人公に据えたことでした。
そしてお出しされた作品は、
五部らしくバトル描写をメインに
原作で描かれなかった五部キャラのその後を補完した、
外伝として素直に楽しめる一作でした。
一部原作キャラの扱いや解釈で
賛否の分かれる点はあったものの
五部ファン、特にフーゴファンなら
抑えておいて損はない一冊だと思います。
オール・アロング・ウォッチタワー
本体名 | カンノーロ・ムーロロ |
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能力 | 自我を持つ53枚のトランプカードを操る能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックスの楽曲 All Along The Watchtower |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの
情報分析チームに所属していた32歳の男、カンノーロ・ムーロロ。
53枚のトランプカードそれぞれに自我の宿った群体型のスタンドで、
その数の多さと薄い身体を生かした情報収集を専門としています。
しかしその本領は暗殺であり、
群体型ならではの変幻自在な戦術や
ダメージフィードバックの軽さ※は
敵対する相手にとって非常な脅威となります。
(群体型スタンドはダメージが分散するため。オール・アロング・ウォッチタワーの場合カード一枚がやられても本体が受けるダメージは1/53で済む。)
思うこと
ただのヘタレかと思っていたら
実は最強枠だった群体型スタンド。
しかし改めて思うが群体型スタンドは強い。
それはもう反則的に強い。
やはり『戦いは数』か…。
パープル・ヘイズ・ディストーション
本体名 | パンナコッタ・フーゴ |
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能力 | 共食いするほど凶暴なウイルスをばら撒く能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックスの楽曲Purple Haze + 歪みを意味するDistortion |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
フーゴのパープル・ヘイズが進化した能力であり、
スタンドの外見や殺人ウイルスをばら撒く点は同じですが、
ウイルスの威力がフーゴの感情に応じて変化するようになったことと
ウイルス同士がお互いに共食いを起こすようになった点に違いがあります。
そしてこうした変化の結果、
至近距離で感染するとウイルス同士が共食いして安全だが、
逆に中途半端な距離で感染すると共食いが間に合わず
一瞬で肉体が溶けてしまうほどの威力を発揮するという
一見矛盾した現象を引き起こすようになりました。
思うこと
劇中でのフーゴの精神的成長を反映した
パープル・ヘイズの新たな段階。
ちゃんと原理を示した上で、
一つ捻った進化をしている点が
実にジョジョらしくてベネ。
また、それまで本体にすら制御不可能で
仲間からも恐れられていたパープル・ヘイズが
フーゴの意思で制御できるようになった事実を通じて
キャラクターの精神的成長が描かれていたことも、
原作でフーゴのその後が気になっていた
1ファンとして密かに嬉しいポイントでした。
マニック・デプレッション
本体名 | マッシモ・ヴォルペ |
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能力 | 対象の生命エネルギーを過剰に促進させる能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックスの楽曲 Manic Depression |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの麻薬チームの一員であるマッシモ・ヴォルペ。
能力はスタンドの全身から飛び出す注射器の様な針を刺すことによって
対象の生命エネルギーの供給量を過剰に促進させるというもの。
この能力は影響を適切に調節すれば
筋力や自然治癒力の強化といったプラスの効果を対象に及ぼしますが、
人間の身体の限界を超えて生命エネルギーを引き出すことで
逆に寿命を縮めたり、ひどい場合には血管の過剰な強化で
心臓破裂させるなどといったこともできてしまいます。
またこの能力は物質を媒介にすることも可能であり
パッショーネ時代のマッシモはディアボロの命令のもと、
神経伝達物質を過剰促進する様に調整したこのスタンドの毒液を
食塩水に混ぜて代用麻薬として大量生成し、流通させる任務に従事していました。
思うこと
原作でブチャラティの口から存在だけ
語られていたものの結局最後まで出番のなかった麻薬チームの
リーダーという設定を背負って登場したマッシモのスタンド。
生命エネルギーの操作という
使い方次第では人助けに役立ちそうな能力でありながらも
「自分も他人も心底どうでもいいと思っている」本体の人間性から、
その真逆である対象の健康をズタボロにする能力になってしまっているという
業の深さを感じさせる設定は個人的に結構好きでした。
能力の原理的には作中で血縁関係が明かされた
『あの人』のスタンドとそう変わらないはずなんですが、
どんな優れた道具も結局は使い手次第ということでしょうかね…
レイニーデイ・ドリームアウェイ
本体名 | ヴラディミール・コカキ |
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能力 | 感覚を定着させる能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックスの楽曲 Rainy Day,Dream Away |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの麻薬チームの一員で、
実質的なリーダーであるヴラディミール・コカキ(70歳)。
能力が発現するとコカキの周囲50mに霧雨が降り出し
霧雨が触れた対象はある瞬間に感じた感覚を永遠に定着させられます。
こう書くと一見地味で無害そうな能力ですが、
その実態はチート級の恐るべき能力であり
劇中では「転びそうになったときにぐっと体に力を入れる感覚」を定着させることで
その行動を無限ループさせ、対象の身体を崖に向かって飛び出させたり、
あるいは「コカキには勝てない」という一瞬のためらいを定着させて
戦う意思そのものをゼロにして無力化してしまうなどの離れ業を披露しました。
仲間であるマッシモからも
「コカキに勝てる奴がいるとは思えない」と評されており、
恥パ内だけでなく全スタンドの中でも最強クラスの能力ではないかと思われます。
思うこと
単純なパワーの強弱がイコール能力の強弱とはならないという
ジョジョの精神を体現するかのような強スタンド。
加えてコカキ本体も超人的な精神力と
深い人脈の持ち主というハイスペックぶりは
少々盛りすぎ感を感じなくもないですが、
しかしパッショーネの麻薬チームのような
ダントツにやばい環境で70年間生き延びた男という設定に対しては
これぐらいでないと逆に説得力に欠けてしまっていたかもしれないですね。
ドリー・ダガー
本体名 | ビットリオ・カタルディ |
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能力 | 自分が受けたダメージの7割を反射する能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの楽曲Dolly Dagger |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの麻薬チームの一員であるビットリオ・カタルディ。
古ぼけた小型の短剣と同化しているスタンドで、
能力は受けたダメージの7割だけを相手に反射するというもの。
残りの3割は普通に自分が食らってしまうが、
1対1であれば基本的に反射量の差で
相手の方が先に死亡するため有利になれる能力。
一方で能力を使うたびに
確実に自分にダメージが蓄積してしまう性質上
連戦や多人数相手の戦いは向きません。
思うこと
「痛みが生の実感に繋がる」
というビットリオの思想を深く反映した能力。
戦闘用の能力としてみると
一騎打ちでほぼ無敵なのは良いですが
群体型のような苦手な相手には
なすすべなくやられてしまいかねないのは痛いところ。
そう考えるとやはり劇中でそうだったように
チームの中で的役になって相手の出方を伺う
毒見薬的なポジションが一番輝けるスタンドなのかもしれないですね。
ナイトバード・フライング
本体名 | アンジェリカ・アッタナシオ |
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能力 | 周囲の人間を重度の麻薬中毒の状態にする能力 |
名前元ネタ | ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの楽曲Night Bird Flying |
概要
同じく『恥知らずのパープルヘイズ』に登場したスタンド能力。
本体はパッショーネの麻薬チームの一員で
生まれつき血液がささくれだつ病気からくる
全身の耐え難い痛みをマッシモの
マニック・デプレッションで抑えて貰っているという設定を持つ
14歳の少女アンジェリカ・アッタナシオ。
一見可愛らしい小鳥のビジョンのスタンドながらも、
その能力は時速100km以上の高速で縦横無尽に飛び回り、
周囲の人間を重度の麻薬中毒の状態にするという実に悍ましいもの。
持続力、射程距離ともに最高クラスであり、
劇中では街ひとつを丸ごと影響下に置く活躍(?)を見せていました。
思うこと
表面的な能力の結果だけ見るとあまりにもヤバすぎるこのスタンドですが
アンジェリカの性格やら健康状態やらを総合して考えると
私はこの能力の本質は自分の感覚を他者に共有する能力だったのではないかと思います。
そしてもしこの仮説が正しく、
かつアンジェリカが健康体であったならば
逆に辛い病気で苦しんでいる人の苦しみを
取り除く存在に慣れた可能性もあったかもしれないですね…。
ザ・ワールド・オーバーヘブン
本体名 | 天国に到達したDIO |
---|---|
能力 | 真実を上書きする能力 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
2015年に発売されたゲーム
『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』に登場したスタンド能力。
承太郎に倒された基本世界のDIOではなく
並行世界(パラレルワールド)のDIOのスタンドであり、
ゲーム内ストーリーでは並行世界の移動能力を持つ
ヴァレンタイン大統領を偶然助けたことから基本世界の存在を知り、
その侵略を目論むという流れでラスボスを務めました。
能力は真実を上書きするといういわば現実改変能力であり、
劇中ではスタープラチナ、タスクACT4、ゴールドエクスペリエンスレクイエムの
最強スタンド三大巨頭をまとめて一蹴するほどのとんでもない強さを見せつけていました。
思うこと
スタプラとGERとACT4を
まとめてかませ犬にするという
二次創作ですら躊躇するような最強描写を実践した
(いろいろな意味で)恐るべきスタンド能力。
「能力バトルものにはインフレが起こらない」
そう思っていた時期が俺にもありました…
リモートロマンス
本体名 | ディキシー・フラットライン |
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能力 | ネット回線を通じて遠く離れた場所で起きた出来事をその場にいるかのように体験させる能力。 |
名前元ネタ | 英国のプログレッシブロックバンドCamelの楽曲Remote Romance |
概要
2012年より全国各地で開催されている
ジョジョ展でのイベントのために書き下ろされた特別なスタンド。
開催期間中にインターネットの公式ページで予約をすることで
会場に設置されたこのスタンドを模した端末を操作して
家にいながらにしてジョジョ展を疑似体験することができました。
公式の設定もあり、それによると本体は
かつて死刑になった伝説のハッカー、ディキシー・フラットライン。
本体の死後、ネットワーク上に残り続けたこのスタンド能力は
特定のサーバーにアクセスした人間を一時的な本体として、
ネットワークを通じて離れた位置の出来事を
その場にいるかのように体験させる能力を有しています。
思うこと
スタンド使いになって
スタンドを遠隔操作してみたいというファンの夢を現実のものとしたスタンド。
一能力として見ると個人的に気になるのは
本体の生前にどのような使われ方をしていたのかという点です。
ハッカーという本体の属性を考えると、
ネットワークを通じていろいろな場所に忍び込み、
パスワードや個人情報の抜き出しに利用したりしていたのでしょうか。
マイナー度 ★★★★ 全部知ってたら相当のマニア
マイナー度が一段階アップ。
ファンでも意外と知らない人が多そうなマイナースタンドをセレクトしました。
ストレンジ・リレイション
本体名 | インドに住むスタンド使いの老人(名称不明) |
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能力 | スタンド使いにだけ聞こえる音楽を演奏し、その音で行動を操る能力。 |
名前元ネタ | プリンスの楽曲Strange Relationship |
概要
1992年に発売された、
第三部を題材としたCDカセットブックに登場したオリジナルスタンド。
本体はジョースター一行がインドで遭遇したオルガン弾きの老人であり、
スタンドは老人が手に持つオルガンと同化しています。
能力はオルガンの演奏によって
スタンド使いだけが聞くことのできる音を発し、
それを聞いた対象の行動をコントロールする能力というもので、
スタンド使いを操って殺し合わせるという
老人の狂った趣味を満たすために利用されていました。
思うこと
私自身も今回の記事を書くにあたって
初めてその存在を知ったスタンド。
というかそもそも時代が古すぎる。
カセットブックて…今だと完全レトロ枠ですな。
それはさておき能力としてみると
音の性質上攻撃を回避することが難しく、
なおかつ複数人を同時にコントロールできる点は中々に強力です。
ただスタンド使いにしか効かないという点はかなり厳しく、
その一点のために似た能力である
ヘブンズ・ドアーやホワイト・スネイクに対して
圧倒的に汎用性で見劣りしています。
そもそも「スタンド使い限定のスタンド」なるものは
原作では一体たりとも出たことがなく、
ジョジョのスタンドの一体としてみるとちょっと違和感を感じてしまいます。
その辺の違和感の原因はやはり、
まだまだ設定が固まり切っていない感のあった
スタンド黎明期に発表された作品ゆえの宿命でしょうか。
グッチのスタンドバッグ
本体名 | 岸辺露伴の祖母の形見のバッグ |
---|---|
能力 | 中に入れた金目のものが消失し、その金額分だけ持ち主が危機に陥ったときに等価交換で助ける能力。 |
名前元ネタ | なし |
概要
2011年に集英社が発行している女性ファッション誌の
SPUR特別掲載された短編作品
『岸辺露伴グッチへ行く』に登場したスタンド能力。
露伴の祖母の形見のバッグに宿った能力であり、
中に入れた金目のもの(紙幣など)が消失する代わりに
持ち主が危機に陥ったときに
それまでに入れた金額分の"幸運"をもたらして助ける
等価交換の能力を有しています。
劇中ではイタリア旅行中に有り金全てを騙し取られ、
右も左も分からない土地に置き去りにされた挙句
雨まで降ってきて途方に暮れていた露伴の前にグッチの傘を出現させ、
雨よけ+売却することでその後のホテル代になるという形で能力が描写されていました。
思うこと
スタンド像も本体もなく、
スタンド扱いすべきか微妙なところだったのですが
劇中のラストページで露伴がこの現象のことを
「特殊能力(スタンド)「バッグ」だったんだ」
とはっきり明言していたので今回スタンドに分類してみました。
ちなみにこの能力は露伴が本体(?)のバッグを
グッチの工房に修理に出したことで永久に失われています。
ジョジョサピエンス
本体名 | 不明 |
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能力 | ジョジョファンのデータを大量に集めて、「究極のジョジョ人間」を作るスタンド。 |
名前元ネタ | ジョジョ + sapiens(人間) |
概要
2018年に『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』の開催に合わせて開設された
同名サイトのためにデザインされたスタンド。
サイトの内容は「17000人のジョジョファンへのアンケート結果から得られたビッグデータをもとに、リアルなジョジョファン像を明らかにしよう」というもので、アンケートの項目には年齢や性別といった当たり障りのないものから真似してみたいジョジョキャラの髪型や死んだとき最も泣いたキャラといった完全にファン向けなものまで実に幅広い内容が用意されていました。
思うこと
能力的には完全にイベントのためのもので特に考察の余地はないですが
ビッグデータを利用するという現代風な視点は面白かったですね。
本編に出すなら、例えばビッグデータを利用して
あらゆる未来を完全にシミュレーションする敵スタンドとかが出てきたら
個人的にはなかなか面白いバトルになりそうな気もしますね。
キラー・タイガー・クイーン/キラー・ダンシング・クィーン
本体名 | 不明 |
---|---|
能力 | 不明 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
「UNIQLO CREATIVE AWARD 2006」に
荒木先生が審査員として参加した際に書かれた
キラークイーンのオリジナルバリエーションスタンド2種。
あくまでもデザインのみで、
能力などは一切明かされていません。
思うこと
デザインのみですが、
公式企画でかつスタンド名もあるということでご紹介。
仕事の際にはヴァレンティノのスーツに髑髏ネクタイをしめて、
オフの日にはこのTシャツを着て生活すれば
身も心も吉良吉影になりきれることでしょう。
ちなみに余談ですが、キラー・タイガー・クイーンの方は
某非公式二次創作の不思議なダンジョンゲーで
通信機能を利用することで手に入る
隠しアイテムとして実装されていたりもしました。
マイナー度 ★★★★★ 全部知ってたら究極生命体級のマニア
マイナー度最高レベル!
よほどのマニアでなければ存在すら知らないであろう
超マニアック級のレアスタンドばかりをセレクトしました。
『テュルプ博士の解剖学講義』に登場した薫のスタンド(名称不明)
本体名 | 薫 |
---|---|
能力 | 体の中に物を埋め込む能力 |
名前元ネタ | 不明 |
概要
2002年に少年ジャンプの増刊誌である『読むジャンプ』に掲載された
乙一による当時初の四部ノベライズ作品
『テュルプ博士の解剖学講義』に登場したオリジナルスタンド能力。
体に押し付けたものを皮膚の裏側へと入り込間せる能力を持ち、
その能力には入れる時は簡単だが逆に出す時はその部分を切り裂いて
取り出さなければならないという性質があります。
思うこと
このスタンドが登場した『テュルプ博士の解剖学講義』は曰くつきの作品で、
冒頭数十ページが突如掲載されたかと思いきや
その後その後一切の音沙汰がなくなってしまった経緯がありました。
その間四部のノベライズに期待を膨らませていたファンは
ジリジリと続報を待ち続ける日々を送ることとなったのですが、
そうなってしまった裏事情について、The Bookの後書きで乙一氏が次のように理由を明かしています。
それから五年間、僕は『ジョジョの奇妙な冒険・第四部』の小説を書き続けた。
すでに刊行されている第三部、第五部の小説が、世界設定を借りて創作されたオリジナルの物語だったので、僕もそれにならった。しかしなかなかうまく書けなくて、ボツ原稿を大量生産した。
原稿用紙400枚を書いては、気にいらなくてボツにする、というのを何回もくり返した。
この五年間で葬った自分の原稿は2000枚以上になり、僕の収入は途絶えた。ボツ原稿ばかり書いて、新たな本が出ないのだから当然だった。しかたなく、別件の仕事を合間にやって生活費を稼ぎながら『ジョジョ』の小説を書いた。
書き直すうちに、小説の内容も二転三転した。
数年前に出版された『読むジャンプ』というムックに一部分だけ掲載された僕の小説は、葬られたバージョンの冒頭部分だった。あの時、せっかく荒木先生が挿絵を描いてくださったのに、僕が内容を変更してしまったせいで、今回の本にはつかえなくなってしまった。ほんとうにすみません。The Book 著者あとがきより
5年というのは待つには長い時間であったものの、
乙一氏のこの途轍もないこだわりがあったからこそ
The Bookはあれほど素晴らしいノベライズとなったわけで、
そう考えるとやはり必要なブランクだったのかもしれませんね。
もっともその結果として
初期バージョンの
『テュルプ博士〜』は忘却の彼方に沈み、
現在では連載当時の誌面以外でその内容を確認する方法すらなったわけで、
それゆえ後にも先にもここにしか登場しえない本スタンドには
最高レベルの星5つのマイナー度を進呈することになりました。
SCRAPPER(壊し屋)
本体名 | 不明 |
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能力 | 特定のタンパク質(RIM)を破壊する能力 |
名前元ネタ | 壊し屋(SCRAPPER)タンパク質から |
概要
2007年にアメリカの生物学専門誌Cellの表紙を飾った限定書き下ろしスタンド。
脳内に存在しする壊し屋タンパク質を擬人化したスタンドで、
イラスト内ではRIM(殴られてる赤い円盤)を破壊して
神経伝達物質の放出を調整する様子が描かれています。
思うこと
私は知識がないのでさっぱりですが、
Cellというのはライフサイエンス分野において
とても権威のある雑誌だそうで、
そんな雑誌がどこでどうやってジョジョと繋がったのか非常に気になるところです。
一方スタンド能力として見ると
サイズや能力からして戦闘能力はほぼ皆無かと思われますが
人体に果たしている役割の大きさは間違いなくA(超スゴイ)だと思います。
ファミコンジャンプ2のボス敵"スタンド使い"のスタンド
本体名 | スタンド使い |
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能力 | 対象を石化させる能力 |
名前元ネタ | なし |
概要
1991年にファミリーコンピューター向けに発売された
『ファミコンジャンプII 最強の7人』に登場したオリジナルスタンド。
このゲームの題材となった作品の一つに
当時連載中だったジョジョ三部が選ばれており、
本体のすたんどつかい(ゲーム中に表示される名称)は
そのジョジョ編のボスとして登場しました。
生物を石化させる能力を持ち、
ゲーム中では承太郎を除く
ジョースター一行全員を石化させることに成功していました。
思うこと
ジャンプのオールスター作品のオリジナル的キャラクターで
本体の名前もスタンドの名前も一切謎、
わかっているのは石化させる能力だけというとにかく謎多き存在。
ゲームを遊んだことのない世代は知る由もなく、
遊んだ世代の中でも多くは記憶から消えているであろうことから
おそらく今回取り上げた中では
最も知る人の少ないスタンドだったのではないかと思います。