先日、いつものように
SCPに関する情報をリサーチをしていると
ある一つの衝撃的な情報にぶつかりました。
なんでも私が生まれる以前から
日本の子供向けホビーのトレンドを牽引している
児童向け漫画雑誌の雄『コロコロコミック』が
SCP財団の特集を行ったというのです。
正確には今年の2月15日に発売された
コロコロコミック 2021年3月号掲載の
ブラックチャンネルという
Youtuberを題材にした漫画作品のある回の中で
今Youtubeで流行ってるコンテンツの一例として
一話限りでSCPがフィーチャーされたとのことでした。
私がこのニュースに衝撃を受けた理由は第一に
この両者の組み合わせが私にとって
あまりにも突拍子の無いものに思えたからです。
恐縮ながら私の個人的印象からすると
コロコロコミックとは
ポケモンとかビーダマンとか
スーパーヨーヨーとかベイブレート等の
大手企業のホビー製品とのタイアップ漫画を中心とした
至ってビジネスライクな雑誌だったはずであり、
そんなコロコロがネット発のアマチュアコンテンツで、
しかも子供向けかと言われると多々疑問の残る
SCP財団をフィーチャーしたというこのニュースは
私にとって俄かには信じがたいものでした。
もっとも特集されたとは言っても
先に述べたように一話限りのゲスト的な扱いであり
その内容もネットで確認できる情報を見る限りでは
シャイガイやクソトカゲなどの
有名どころのアノマリーの紹介や※
ざっくりとした世界観や専門用語の説明などに留まっており、
例えばSCPそのものが漫画になっただとか
SCP単体で連載枠を得たとかいうレベルの話ではなかったようです。
(※ちなみにSCPでもっとも有名と思われるSCP-173については完全にノータッチ。その理由は…推して知るべし。)
とはいえ例え簡易的にでも天下のコロコロを通じて
全国のキッズたちにSCPが紹介されたという事実に変わりはなく、
これはSCPというコンテンツが
段々と一般層にまで認知されつつあることの
ひとつの象徴的な出来事だったのではないかと私は見ています。
もしかするとこのままSCP普及の流れが進めば近い将来、
日本のおもちゃ屋に鬼滅のコスプレ衣装や
すみっこぐらしのぬいぐるみではなく
ペスト医師のコスプレ衣装や
ねこですのぬいぐるみが並ぶ時代がやってくるかもしれませんね。
…さて、そんな冗談はさておき
そろそろ本日の本題に入りたいと思います。
それは「SCPってそもそもコロコロを読むような
年代の子供たちが楽しめるようなコンテンツだったっけ…?」
という身も蓋もない疑問についてです。
というのも、今まで結構な数の
SCP報告書を読んできた身からすると、
SCPってそもそも大人ですら解説を読まないと
意味が分からいものや子供が読むには
あまりにも刺激の強い表現が含まれているものが多々あったりして、
コロコロを購読するような層が楽しめるイメージが
私自身に全くなかったんですよね。
それなのに子供たちに人気があるというのは
これは先の「ブラックチャンネル」がそうであったように
面白いポイントだけかいつまんで分かりやすく解説してくれる
YoutuberやYoutube動画の存在が大きいのだと思いますが、
それはそれでわかりやすさにフォーカスするあまり
SCPのほんの一側面だけが極端に強調されて
伝わってしまうリスクがあるように思えます。
そのようなわけで本日は
「SCPってこんな一面もあるんだよ」と伝える目的も含めて、
あえて「子供には見せられないor子供向けではない」
SCP報告書を主に3つのパターンに分類しながら語ってみたいと思います。
パターンその1 : 表現がえぐすぎたり、トラウマを植え付けそうなパターン
まず取り上げるパターンは
様々な意味で子供が読むには厳しい表現のある報告書群です。
SCPって本来は創作ホラーコンテンツなので
グロかったり怖かったりするのは
ある意味王道、正統派とも言えるのですが、
中にはその度合いが強すぎて
子供が呼んだらトラウマになりそうな報告書も
そこまで多くはないですがいくつか思い当たるんですよね。
例えば…
・SCP-596「忌まわしき再生の像」
→人間の体に貼り付いて、肉片からでも体全体を再構築できる
異常な再生能力を付与する像。財団が実施したこのアノマリーのある活用法が
直視に耐え難いほどえげつない。
・SCP-1455-JP「私が望んだことだから」
→プ○キュアみたいな魔法少女が凶暴な人型実体に
██████されたり███を███られたりする話。
オチも含めて秀逸だが表現的に絶対に子供には見せられない。
こんな感じで、SCP-173とは別ベクトルで
一般紙ではまず話題に出せない報告書が普通にあります。(コロコロに載ってたビルダーベアの時点でも
結構ギリギリな気はしましたが)
またエロやグロはそれほどでなくても
精神的トラウマを植え付けそうなものなら…
・SCP-2718「その後に起こるのは」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2718
→休暇中に旅行先で死亡したとあるO5メンバーが残した
想像を絶する体験の記録についての報告書。
内容的には素晴らしいですが、精神が不安定な方や
心臓が弱い方は読まないほうがいいかもしれないくらい
強烈な後味を残す報告書。
・SCP-444-JP「緋色の鳥」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-444-JP
→日本支部でも屈指の知名度を誇る最凶情報災害。
犠牲者の描写が中々に怖い。
このあたりなどがなかなか強烈ですね。
特に前者は作り話だと割り切れない怖さがあり、
もし私がこどもの頃に読んでいたら
強迫神経症にかかっていたかもしれません(大げさ)。
SCP財団はメンバー制と
レーティング制を採用しているので
例えば昔のどっきり系FLASHやブラクラみたいな
明確な悪意のあるコンテンツは皆無ですが
それでもあんまり小さい子には
見せないほうがいいものは確かにあるとは思いますね。
パターンその2 : 内容の理解が難しいパターン
続いて私が子供に向かないと考える
SCP報告書のパターンの二つ目が
あまりにも難解すぎる報告書です。
そもそもSCPはその世界観を維持するために
堅い文体、頻出する専門用語、
世界観を熟知している人にのみ通じる小ネタなど
随所に初心者殺しが存在しており、
「科学風のちょっと怖い話なんでしょ」程度の
軽い気持ちで公式サイトを覗いて
リンクされている適当な報告書を開いたりすると
まったく意味が分からず心をくじかれてしまう可能性があります。
(昔の私がそうでした)
今回も分かりやすいように、
特に私が難解だと思った報告書の
一例を挙げてみましょう。
・SCP-2998「異常放送、2485 MHz」
→財団がキャッチした異常な電波を追って
異世界人がやってきて地球を侵略するも
最後には財団職員が別のアノマリーを利用して全てをリセットする話。
途中で報告書の書き手が異星人側になったりして初読時は混乱すること必至です。
・SCP-3999「私は私に起きることすべての中心にいる」
→こんなの解説なしで誰が理解できるというのか
もちろんこれらは顕著な例であって
中にはSCP-____-J「先延ばs」のように
短めで分かりやすい報告書もあるのですが、
それでも全体的に見れば例えば同じ
ネット発祥のホラーである洒落怖などと比べると
相当にとっつき辛い部類であり、
SF好きな人か普段からある程度活字を読む人でなければ
大人であっても読解に苦労すること請け合いです。
一方でJP(日本支部)ならば
書き手も同じ日本人であるためか
比較的内容が頭に入ってきやすく
オチも理解しやすい場合が多いので
初心者の方は本家の方は有名どころだけ軽く押さえるに留めておいて
日本支部の方から優先的に読み進めていった方が良いかもしれませんね。
あと、方向性は違いますが
次のようなタイプの報告書も
子供には理解し辛いのではないかと思います。
・SCP-890-JP - 培養肉のジャータカ
→任意の液体を付着させるとそこから人肉が生成される皿。
その作成の背景にはある特殊な嗜好を持つ美食倶楽部の存在があって…?
こういう微妙な情緒を理解するには
ある程度年齢を重ねる必要があるように思いますね。
またこうした初期のSCPのコンセプトから
外れる報告書の存在は、続いて言及する
SCP報告書の多様化という点にも重なってきます。
理由その3 : SCPの多様化によって読者の期待と実際のテイストに乖離が起きるパターン
というわけで最後の理由3は
SCP報告書の多様化についてです。
SCP-173から始まった最初期のSCPは
その流れを組んでSCP-087 「吹き抜けた階段」や
SCP-106 「オールドマン」などの
比較的シンプルなホラーものが大部分を占めていたのですが
時代が下り、世界中に報告書の書き手が現れるようになると
投下される報告書のテイストも一気に多様化が進み、
単に「ネット発の創作ホラーサイト」という括りでは
SCPというコンテンツを正しく説明することが出来なくなってきました。
多様化の一例としては例えば
先の段落で紹介したSCP-890-JPのような
サスペンス的な報告書もあれば
SCP-1522 「夜の海ゆく船たちは」のような
涙腺を攻撃してくる報告書もあり、
変わったところだとSCP-905-JP 「フレディのスペシャルフライトショー」
のようなシュール極まる報告書もあります。
また報告書に限らずtaleにまで手を伸ばせば
チャット形式で物語が進んでいく
AIADハブの「警報! 封鎖開始!」や
まるで○chの掲示板のようなインターフェースで構成される
「狐娘目当てに妖怪保護区に行ったら大変な目にあった話」(なんちゅうタイトルだよ…)
なんていうtaleがあったりと、
ここまでくるともはや創作者の想像力と
技術力の限界を試す実験場の様相を呈しています。
こうした傾向はコミュニティにとっても
私たち読者に取っても基本的には歓迎すべきことだとは思うのですが、
しかし多様化が進めば進むほど
SCP財団全体としての統一感が希薄となることもまた事実であり、
特に新規の読者が初期の古き良きシンプルなホラー路線を期待して
現在のSCP財団のサイトを覗くと
実情とのギャップから肩透かしを食らってしまう可能性があります。
最近では最初期のSCP創作を2021年に蘇させる試みを標榜する
「原火コンテスト」なんてのも開催されているので
SCP財団メンバーの間でもそういう潮流は
ある程度認識されているのでしょうね。
翻って子供にSCPの紹介をする場合、
コロコロの例がそうだったように「ネット発のホラー!超ヤバイ!」的な
分かりやすい切り口が大人に対して以上に重要となるかと思うのですが
先に述べたようにSCPは日増しに多様化が進んでいるため
そのような形での紹介はどうしても実態との齟齬が否めず、
またその傾向はSCP財団の規模が拡大し続ける限り
今後さらに加速していくだろうと私は予想しています。
番外編 : 逆に子供にバカウケしそうな報告書
ここまでSCPを子供に勧めるのが
難しい理由を考察してきましたが、
最後に逆に「子供にウケそうなSCP報告書」を挙げてみたいと思います。
というわけで皆さんに質問なのですが、
世代や国を問わず安定して子供にウケる
鉄板ネタといえばなんでしょうか?
そう、下ネタですね。
基本的には硬派なSCPにも
ジョークオブジェクトを中心に下ネタは皆無ではなく、
私が思いつくところだと例えば次のようなものがあります。
SCP-4492 「便器内の傘」
→便器内にこれを落下させた人の膀胱と直腸内が空っぽになる青い折り畳み傘。消えた中身がどこに行くのかというと…
SCP-1049-JP-J 「不協和音」
→「████博士: ふざけるな!寄ってたかって私を屁こき虫に仕立て上げようってわけか!上等だ、かかってこい!」
紳士淑女のためのサイトを目指す
当ブログにしてはあまりに品のない話題で恐縮ですが
これもSCPの多様性を示す一例ということでおひとつ…
さいごに
結局、この記事で私が一番に伝えたかったことは
キッズはSCPを読むな、などということではなくて、
SCPは「ネットで流行ってる怖い話」的な
単純なレッテルで定義できないくらいに
膨大な多様性に満ちた滅茶苦茶面白いコンテンツだということです。
なので、私的には
SCPの知名度が上がるのも
子供が(今回取り上げたタイプのものも含めて)
SCP報告書を読むのも、
基本的には良いことなんじゃないかと考えています。
数少ない怖いこといえば、
SCPが有名になりすぎて、俗にいう
「コミュニティの一生」の末期を迎えてしまうことと、
子供も読むということで
表現的な規制を求める機運が
内的外的問わず高まってしまうことですかね。
個人的には前者の方をより危惧していますが
なんにせよ、SCP財団にはこれからも変わらず
私たちに新鮮な驚きをもたらし続けてくれる
場であってほしいものです。