『なんとか33』じゃない!ゲーマーから高い評価を受けるJRPGの超新星を徹底レビュー

PS5ゲームレビュー

なんとか33、じゃないよ!

Google検索で「なんとか33」と入力すると、このようなサジェストが表示される。

どうやらゲームの名前のようだが、あえてこんな間抜けな名前をつけるとは、ウケ狙いのお気楽バカゲーか何かなのだろうか…?

と、思われるかもしれないが、それは全くの誤解です。

本当のタイトル名は「Clair Obscur: Expedition 33(クレールオブスキュール:エクスペディション33)」。フランスのSandfall Interactiveというインディーゲームスタジオのデビュータイトルであり、内容は至って真面目なJRPGなのです。

ではなぜ「なんとか33」とかいうあまりにもあんまりな通称が広まりつつあるかといえば、それはパッケージを見れば一目瞭然。

なんだか小難しい英単語がずらずら並ぶ中で、中央にドンと「33」…

まぁ、これみりゃ大半の日本人は「あぁ、あのなんとか33ってゲームね?」って言うわな。
そういうわけです。

…と、この辺で「なんとか33」という呼び名についての話はおしまい。

本日私が本当にお伝えしたいことは、私自身がプレイして感じたClair Obscur: Expedition 33の魅力(と少しの欠点)についてなのです。

と言いますのもこのゲーム、クオリティや世界での評価、それに何より私が実際にプレイした感じた面白さに比して、日本国内での知名度やリアクションがまだまだ弱い気がするんですよね。じわじわと売れてきているようではあるのですが。

amazonのPS5ゲームソフト売り上げランキング。発売から3か月ほどたつがまだまだ上位に食い込んでいる。
Steamでも圧倒的な高評価。

思うにその最大の原因は、実際に手にとってみるまでのハードルの高さではないでしょうか。

名前も聞いたことがないインディー開発元の完全新規IPで、タイトルはやたら小難しく、メインヴィジュアルからぱっと見でどんなゲームなのかも想像し辛い。

この時点でかなり厳しい闘いであるのに加えて、プレイヤー自身のシナリオ体験が重要なRPGというジャンルである都合上、必然的にネタバレになってしまう配信者のプレイ動画などで知名度を上げることも難しい。

であればローカライズや国内でのマーケティングでそのギャップを埋める工夫がなされるべきなのでしょうが、TVCMはもちろんネット広告などでもあまり名前を気かなったことを鑑みるとそれもおそらく不十分だったのでしょう。

とはいえこれほどの意欲作、もっと多くの人に知ってもらうべきだという個人的な思いが抑えきれず、僭越ながら当ブログでもレビュー記事という形でその一助になろう思った次第です。

というわけで早速本題のレビューに移りたいと思うのですが、その前にネタバレについて一応ですがお断りしておきます。

本記事では未プレイの方のゲーム体験を損なうネタバレを極力含めないように配慮するつもりですが、それでも最低限のネタバレは避けられないためあくまでも一切ネタバレなしの真っ新なプレイ体験にこだわりたい、という方は本記事を閲覧しないことをお勧めします。

それではどうぞ。

Clair Obscur: Expedition 33のここがすごい!

理由その1 : 一筋縄では行かない、予想を裏切る衝撃的なストーリー展開の連続

RPGにおけるストーリーといえば戦闘システムと並んで最も大きな売りとなる要素の1つですが、本作のそれはかなりアクセル全開です(良い意味で)。

まず、おおまかなあらすじをおさらいしましょう。

年に一度「ペイントレス」と呼ばれる少女が目を覚まし、
モノリスに描き出す。それは呪いの数字。
その年齢にある人々は煙となり、消え去ってしまう。

年々、呪いの数字は小さくなり、犠牲となった人の数が積み上がっていく。

明日、彼女は目覚めて「33」の数字を描くだろう。
私たちもまた最後の任務に赴く。
ペイントレスを倒し、彼女が二度と死の呪いを
描けないようにしなければならない。

第33遠征隊の旅が今始まる。

Clair Obscur: Expedition 33 公式サイトより引用

簡単にいうと、一定の年齢に達した人間を抹消する呪いが出現した世界で、その根源である存在を倒しに謎だらけの超危険な島に遠征に行くぞー、というお話です。

…ついノリで遠征に行くぞー、なんて書いちゃいましたが、実際はもっと悲惨です。なにせ本篇開始前の過去67年に毎年出発する遠征隊が誰一人として帰還していない、死出の旅路みたいものなので。

で、いざ島に着いたらまた色々とあるわけなのですが、これがまぁなかなか、怒涛の展開の連続でこっちの情緒をぐちゃぐちゃにシェイクしてくるわけですね。

具体的なことはネタバレになるので何もいえないですが、個人的には久々にゲームのストーリーで真剣にワクワクさせられています。次から次に予想もしてなかったことが起こって、とにかく早く次の展開が見たい!って気持ちにさせられます。

ちなみに余談ですが、本作のストーリーには日本の漫画やアニメの影響が色濃く見られ、特にフランスでもヒットした進撃の巨人の影響が顕著です。

既視感しかないポーズ

衝撃的な展開を唐突にぶっ込んでくるところとか、もっと具体的にいえば遠征隊の役目や立場、心情などはほぼ調査兵団のそれですね。

そういう点を踏まえると、漫画やアニメに日ごろから触れている我々の方がよりハマりやすいストーリだと言えるかもしれません。

シンプルさと戦略性を兼ね備えたバトルシステム!

AP

本作の戦闘で最も重要なのはAP(アクションポイント)です。

これはスキルやフリーエイムと言った特殊な行動に必要なポイントであり、「ターンが回ってくる」「通常攻撃をヒットさせる」「パリィに成功する」「ルミナの効果」などで獲得することができます。

強力なスキルほど大量のAPが必要になるので、戦闘においてはいかに素早くAPをためつつ、必要に応じて無駄なくAPを使っていく事が重要になります。

フリーエイム

フリーエイムはAPを1つ消費して使用できる射撃攻撃です。フリーエイムはAPがある限り何度でも使用可能で、通常攻撃などと違い使用してもターンが移行しません。

フリーエイムの面白い点は、敵の弱点部位を狙い撃つと大ダメージを与えたり、特定の行動を封印できたりとシューティング的な要素がある点です。

他にも敵の中にはフリーエイムがちょっとした謎解きになっているようなものあり、単調になりがちなターン制バトルのほどよいスパイスになっています。

回避とパリィ

敵の攻撃にあわせてタイミングよくボタンを押すことで回避、またはパリィが可能です。

回避はその名の通り敵の攻撃を回避してダメージを無効化するもので、猶予はやや長めです。

一方でパリィは回避よりタイミングが厳しいものの、相手の攻撃を無効にした上でAPを1つ上昇させ、さらに全ての攻撃のパリィの成功した場合はカウンター攻撃まで行えます。

パリィの例。

なので、狙えるならパリィを狙っていきたいところですが、初見の攻撃をパリィするのは至難の業ですので、最初のうちはより簡単な回避で敵の攻撃動作を見極めつつ、動きがわかったらパリィに挑戦、というのがセオリーになります。

パリィは難しい分完全に決まった時の気持ちよさは抜群であり、本作のバトルの楽しさを大きく底上げする要因となっています。

またこれはゲームバランスを考えると一長一短ではあるのですが、パリィを極めれば普通ならレベルをずっと上げないと勝てないような強敵にも、パリィで攻撃を無効化し続けてゴリ押し的に勝利することが可能だったりします。

これを自由度と捉えるか、大味さと捉えるかで本作の戦闘に対する評価も大きく分かれそうですね。(個人的にはメインストーリーが簡単になりすぎるのが嫌だったので上記のゴリ押し的な方法は半ば自主封印してました。)

キャラクターごとの固有システム

キャラクターにはそれぞれ固有の戦闘システムがあります。

例えばルネの『ステイン』はスキルごとに異なる色のステインを生成し、次回以降のスキル強化に利用できるというものです。

上記キャプチャにもある「イモレーション」というスキルを使うと火属性のステインを1つ生成できるのですが、その状態で「落雷」というスキルを使うと、これが火属性のステインを1つ消費することで威力がアップする技なので大ダメージが狙えるといった具合ですね。

中には3つや4つのステインを要求するスキルもあり、どのステインを消費してどれを残すかのパズル性が面白いシステムとなっています。

他にもキャラクターごとに全く違う固有システムが存在しており、流れ作業になりがちなターン制バトルの戦闘に特有の面白みを加えています。

アイテムについて

本作で特に思い切ったなあと思ったのがこれ。

戦闘中に使えるアイテムは立ったの3種類で、しかも完全な消耗品ではありません。

ダークソウルのエスト瓶のような補充制であり、アイテム枯渇の心配はしなくても良いですが所持数の上限が決まっている分、例えばボス戦前に大量の回復アイテムを買い集めておいて回復連打でゴリ押しする、といった古き良きRPGで通用した戦術は不可能となっています。

FFやドラクエに慣れている方はこの辺最初戸惑うかもですが、アイテムによるゴリ押しは封印しつつも戦略性は担保されているので、個人的にこの仕様は賛成です。

ピクトスとルミナ

本作にはピクトスとルミナというアビリティシステムが存在します。厳密には違いますが、ニュアンス的にはFF9の武器アビリティシステムがやや近いでしょうか。

ピクトスというのは特定のパッシブ効果(=ルミナ)を持った装備品であり、1人3つまで装備することができます。

ピクトスを装備した状態で一定数の戦闘を経験するとそのルミナをパーティ全員が習得でき、以降はピクトスを外してもルミナポイントを使用して効果の恩恵を受け続けることが可能になります。

ルミナポイントというのは装備可能なルミナの合計値で、レベルアップや特定のアイテムの仕様で最大値を増やすことができます。

基本的に有能なルミナほど必要なルミナポイントも増えるので、プレイヤーは残りのポイントと相談しつつ装備するルミナを試行錯誤することになります。

ルミナの中にはフリーエイムを強化するものやピンチの時にステータスがアップするもの、中には体力が回復しなくなる代わりに防御力が2倍になるものなどもあり、組み合わせによる戦略は無限大。

このパーティは相手を火傷にすると有利になるからバーニングショット(フリーエイム時に一定確率で火傷付与)を装備しようとか、このキャラはAPの消費が激しいから死のエネルギーⅡ(敵を倒すとAP増加)でAPを補助しようとか色々考えてルミナを組むのは結構楽しいですよ。

理由その2 : モーションがカッコ良すぎ!

本作で個人的にすごいなと思ったのが各種スキルのモーションの作り込み。

キャラクターそれぞれの個性を生かしつつ、スタイリッシュで何度見ても飽きない洗練された動きばかりで戦闘の視覚的な面白さを大きく底上げしています。

せっかくなので個人的なお気に入りモーションを2つほどご紹介しましょう。

オーバーチャージ

主人公的存在、ギュスターブの必殺技!溜めて溜めて…ドーンッという緩急がマジで気持ちいい

フルーレ・フューリー

メンバー最年少、マエルの必殺技。何度見てもほれぼれする華麗な三連撃です。攻撃後の残心も素敵。

理由その3 : 音楽や風景描写も素晴らしい!

芸術の国フランスの本領発揮か、Clair Obscur: Expedition 33はフィールドグラフィックやBGMなどの美術面も素敵なんですよね。

BGMについては私は音楽に詳しいわけではないのですがジャズっぽいのとか電子音楽っぽいのとか色々なジャンルの音楽をRPGの戦闘BGMとして違和感なく取り込んでいるのがすごいセンスだな、と感じました。

Clair Obscur: Expedition 33の賛否両論点

本作をプレイしていて個人的にちょっとどうかな?と感じた点を挙げます。

パリィありきのゲームバランス

本作ではパリィがあまりに強すぎて、戦闘の重点がパリィに偏りすぎているような気がしました。

特に進行に必須ではない一部の隠しボスについてはパリィが必須になっていた印象です。

パリィは純粋に反射神経が問われるので、その辺が苦手な方にとっては遊びづらさを感じるかもしれません。

またゲームが進むとジャンプ回避や特殊なパリィなどが追加され、敵の中にはそれら複数の回避方法をミックスした攻撃を繰り出してくるようなものが登場したりして操作がかなり忙しくなってきます。

パリィ自体は爽快感もあって素晴らしいシステムだと思うのですが、個人的にはダメージの一部は受けてしまうとか、もう少しメリットを抑えても良かったような気もします。

レベルアップの度に手動でパラメータを上げるのが面倒臭い

本作の成長システムは任意性で、休憩地点でレベルアップごとに3ポイントづつ与えられるポイント好きなパラメータに振り分って強化できる仕様となっています。

しかしそのせいで休憩地点によるたび逐一手動でパラメータの上昇を行わねばならず、個人的に少々面倒でした。

キャラ育成の面で自由度を出したかった意図はわかるのですけどね。

用語が独特で覚えるまでがちょっと大変

ルミナとかピクトスとかネブロンとかクロマとか、聞き慣れない独自の用語が頻出するため、慣れない内は意味がわからず戸惑うこと必至です。

まぁこの点はしばらくプレイしていれば慣れるので大した欠点ではないですが。

JRPGの弱点もそのまま

アクション要素を取り入れるなどの工夫でカバーされていますが、ターン制JRPGの弱点が完全に払拭されているわけではありません。

アクション的な自由度で言えば今流行りのソウル系に及びませんし、選択の自由度で言えばオープンワールド系のゲームには及びません。

自由度の面で言えば例えば一昨年のGOYを獲得したバルダーズゲート3などは、同じターン制RPGでも段違いに自由度が高いゲームでした。

本作はその分、シナリオ体験の質の高さで差別化できているとは思いますが、攻略やキャラクリの自由さを重視する方にとっては窮屈さや古臭さを感じるかもしれません。

終わりに

以上が私から見たClair Obscur: Expedition 33のレビューでした。

JRPGという意外なジャンルとフランスという意外な国の組み合わせで最初は一体どんなゲーム内容なのか正直不安もありましたが、遊んでみるとなるほど世界中で高評価を受けているだけはある内容だなと感じました。

RPGにアクション要素を加えるという試みはFF7リメイクを始めこれまでにも幾度となく試みられてきましたが、本作はそれをかなり高い次元で成功させているように見えます。

というか、スタジオのデビュー作であえてJRPGを選ぼうというその決断が個人的には驚きでしたね。単純に売れ線を狙うならオープンワールドとか、ソウルライクとかを選びそうなのに。

あと余談ですが、本作のwikipediaの日本語版のページをみると全然内容がなくて寂しい感じだったり、やっぱりクオリティに対して国内での認知度が低いなぁと感じるので、何かのきっかけでもっと知られてほしいとは思いますねー。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Clair_Obscur:_Expedition_33

JRPGや日本のサブカルチャーに対するリスペクトが見える作品なので尚のこと…。

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