10年間ドット絵を描き続けてきた人間が考えるドット絵の魅力と可能性

エッセイ

趣味としてのドット絵

私が約10年ほど前から続けている
ちょっと変わった趣味の一つに
「ドット絵を描くこと」があります。

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▲こんな感じの。見事にジョジョしかない

こういったものを仕事帰りや
休日に一人でせこせこ仕上げるのが
私の趣味の一つなのです。

本日はこの奥深いドット絵の世界を
・私とドット絵の出会い
・ドット絵の歴史、魅力の考察
・daima的ドット絵制作環境(ドット絵の作り方、使用ソフトなど)


などを通して語ってみたいと思います。

私の話が少しでも
ドット絵に興味のある方の
お役に立てれば幸いです。
それではどうぞ。

そもそもドット絵とは何か?

『そもそも「ドット絵」って何?』
『普通のデジタルイラストと何が違うの?』

という疑問をお持ちの方のために
最初に軽くご説明をさせて頂きます。
(興味がない/もう知ってる方は飛ばしてOK)

ドット絵とは一般的に、
色のついたピクセルの集まりで
構成された8ビット画像
のことを指します。

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ドット絵は正方形の粒(ドット)の集まりでできている

ビットというのは
コンピュータの扱うデータの
最小単位のことであり、
8ビットの場合は
2の8乗=256までの数字が扱えます。

そのため、ドット絵の
パレットデータに保存できる
色の最大数は256色までであり、
RGB(赤・緑・青)の色指定も
それぞれ0から256の間で調整します。

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パレットの例。一枚のドット絵に使えるのは256色まで

そしてドット絵を
保存するときの保存形式(拡張子)には
大抵の場合GIFPNGが選ばれます。

なぜ普段よく目にするJPGでなく
GIFやPNGを使うかというと、
JPGは24ビット(=16777216色)という
膨大な色数を扱える反面、
非可逆圧縮を行うため
画質の劣化が起こりやすく
特にjpgでドット絵を保存すると
ドットのボケやにじみが強く目立ってしまうのです。

ちなみにGIFとPNGはどう違うのかというと、
どちらもJPGと異なり
ロスレス圧縮を採用している
(=ドットが滲んだりしない)点は同じなのですが
GIFは8ビットにしか対応していない代わりに
アニメーションを作れるメリットがあり、
PNGは逆に24ビットまで対応しているものの
アニメーションを作ることができないという違いがあります。

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▲GIFアニメの一例。ちなみにこのアニメは12枚のドット絵から出来ています

そのようなわけで、
上記のようなドット絵アニメを作りたいと思ったら
保存形式はGIF一択となるわけですね。

ドット絵はどこで使われている?

ドット絵はその容量の軽さから
容量制限の厳しかった黎明期のゲームソフトや
2000年代中盤頃までの携帯ゲーム機などで
グラフィック表現のほぼ唯一の選択肢として
幅広く利用されてきました。

今ではより効率的で表現の幅も広い
3Dグラフィックにその座を明け渡していますが、
インディーゲーを中心に
ドット絵をメインのグラフィック技術に
選ぶデベロッパーはまだまだ少なくありません。

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steamのドット絵ゲーコーナー。手軽に作れる(楽とは言っていない)ドット絵はインディー開発者の強い味方です

またドット絵の持つ
ノスタジックな味わいや
色数やドット数が制限された中で
いかに表現してみせるか、
という一種の縛りプレイ的な
魅力を評価する向きもあり、
中にはドット絵をアートとして
楽しむ専門のイベントまで
開催されていたりします。

pixel-art.jp

私がドット絵を描くようになったきっかけ

私は子供の頃から
三度の飯より絵を描くことが好きで、
同じく三度の飯よりゲームが大好きでした。

そんな私ですから、
ドット絵を描くことに興味を抱いたことも
ある意味必然だったのかもしれません。

私は所謂スーファミ世代に当たり、
子供の頃から「MOTHER2」や
「ヨッシーアイランド」、
「メトロイド」など数多くの
ドット絵ゲーに親しんでいました。

しかしドット絵そのものの持つ
美しさを初めて意識しだしたのは
小学生の頃、GBAでプレイした
「ファイナルファンタジータクティクスアドバンス(FFTA)」
のグラフィックに対してだったと記憶しています。

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ファイナルファンタジータクティクス アドバンス

ファイナルファンタジータクティクス アドバンス

このゲームはストーリーや
ゲームシステムの秀逸さもさることながら、
経年劣化を感じさせる建築物の風合いや
草地や水場など自然物の美しい陰影表現に
特に強く心惹かれたものでした。

しかしこの頃はまだ
「自分でドット絵を描いてみる」
という段階まではいかず、
描いてもせいぜいマリオペイントの
自作スタンプ機能で
ネタスタンプを量産する程度のものでした。

M.U.G.E.Nとの出会い

私が本格的にドット絵を描く
ようになった最大のきっかけは、
「M.U.G.E.N」の存在にあります。

「M.U.G.E.N」についてひと言で言えば
「キャラクターのグラフィックや性能、
ステージ、システムデザイン、
対戦形式に至るまで
やろうと思えばなんでも自由に改変でき、
さらにそのデータを不特定多数の
M.U.G.E.Nプレイヤーと共有できる
滅茶苦茶自由度の高い格闘ゲームツクール」

のようなものであり、
当時(2000年代中盤あたり)
このM.U.G.E.Nの対戦動画が
同時期に破竹の勢いを誇っていた
ニコニコ動画に投稿されたことで
一躍その名を世に知られることとなりました。

(※もっともM.U.G.E.Nは
その「文字通りなんでも作れてしまう」
という性質と「自作ファイルを公開して
共有できる」性質から権利的な意味合いで
非常にデリケートな存在であることにも
言及しておかなければなりません)

当時中学生だった私は
ニコニコ動画に上がっていた
「ドナルド・マクドナルドと
コンバット越前が殴り合っている」

珍妙な絵面の対戦動画を見て
M.U.G.E.Nに興味を持ち、
やがてM.U.G.E.Nのキャラクターが
自作できることを知ると
そちらの方にも興味を持ち始めました。

そして中でも
当時大ハマりしていた(今でも大好きですが)
漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に
登場するキャラクターの中から、
かつてカプコンが世に送り出した
名作アーケード対戦格闘ゲーム
「ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産」
に登場していない・・・キャラクターを
M.U.G.E.Nを通じて自作することに
一層強い興味を抱いたのです。

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(▲カプコンが開発したこのゲームはボイス、演出、システム、グラフィックなどすべてがキャラゲーらしからぬ高水準であり、原作ファンに限らず多くの格ゲープレイヤーを魅了した※スクショは2012年に発売されたリマスター版のトレーラーより引用)

しかしいくら熱意があっても
経験がなければまともな絵もプログラムも書けませんし、
なにより絵については1体のキャラクターを
完成させるために200枚はくだらない量を
書き上げる必要があります。

そのため私が最初にやったのは
「既に完成しているキャラクターを
部分的に改変して新キャラクターを作る」

といういわばコンパチ的な製作手法でした。

これは基礎となるベースを
既存のキャラクターから借りられる分
プログラムの書き方も
ドット絵の描き方も全く手探りだった
当時の私にとっては
・基礎を組む手間が省けて
モチベーションの維持につながる
・先達の技術を体感的に学ぶことで
急速な技術の向上につながる

といった点から非常に
有効な方法でした。

まぁ、それでもやはり
最初に出来上がったものは
目も当てられないような出来で
満を辞してニコ動にアップした製作報告動画には
「こんなのイラネ」「絵下手すぎ」などの
率直なご意見をいただくこともしばしばでした。

それでも当時の私は
「自分で動かせる格闘ゲームのキャラを
自分の手で作れたこと」

「曲がりなりにも自分の製作物に
多くの反応があったこと」

にひどく感動して貴重な青春の日々の多くを
M.U.G.E.Nの製作活動に費すこととなったのでした…

そして現在に至る

そして現在、SNSの登場によって
昔よりも自分のドット絵を
気軽に発信することができるようになりました。

まだまだ
趣味の域を出ないこの特技ですが、
将来的な夢としていつかは
ドットを使った自作のオリジナルゲーム
(ジャンルは2Dアクションかローグライクがいいかな)
を作って販売まで出来たら最高だなぁとも思っています。

注目のドット絵ゲー

自分語りが終わったところで、
私がここ数年にプレイして面白いと感じた
ドット絵の良ゲーをいくつかご紹介してみます。

おすすめのインディードット絵ゲー

先にも触れたことですが、
独立系デベロッパーが提供する
インディーゲーは
隠れた良ドット絵ゲーの宝庫です。

blasphemous

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つい先日リリースされたばかりの
メトロヴァニア※系2D探索アクションゲーム。
(※メトロイド+キャッスルヴァニアの造語)

とんがりコーンみたいな
ヘルメットを被った
「悔い改める者(penitent one)」を操作して、
醜悪な怪物が蔓延る
「Cvstodia」の地を散策するこのゲーム。

そのグラフィックは
道中で待ち構えるド迫力の巨大ボスや
フルサイズのイベントシーンに至るまで
全てが緻密なドット絵で描かれており、
本作の持つ退廃的でダークな雰囲気に華を添えています。

戦闘アクションの痛快さ、難
易度設定、好奇心をくすぐる
ストーリーテリングなど
グラ以外の要素も軒並みハイレベルで
かなり満足度の高い作品でしたね。

Hyper Light Drifter


初期のジブリっぽい
文明崩壊後の世界観と
初期のゼルダシリーズに似た
ゲーム性を併せ持つ
2Dアドベンチャーゲーム。

このゲームの最大の魅力は
16ビット世代の心をくすぐる
ドット絵で描かれたグラフィックの
味わい深さにあります。

輪郭線を無くした柔和な画風は
ジブリライクな世界設定と
相性抜群であり、
作品の世界観に強い説得力を与えています。

ゲームシステムや難易度調整も抜かりなく、
ゼルダ的な頭を使う謎解き要素もあり。

個人的な印象ですが、ゼルダの中でも
「神々のトライフォース」とかが好きな人は
操作感がかなり似ているので
特にハマれるんじゃないでしょうか。

www.taikutsu-breaking.com

One shot

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One shot(一度きり)という
意味深なタイトルを持つ
パズルアドベンチャーゲーム。

このゲームが変わっているのは
猫のような姿の主人公ニコが
第四の壁を超えて
プレイヤーと会話できる
インタラクティブなゲームシステムです。

この仕掛けがあることで
プレイヤーの視点は神のそれから
一気にゲーム内のキャラクターたちと
同様の地平に降りることとなり、
そのことで他のゲームとは一線を画する
独特の没入感を生み出しています。

ドット絵のクオリティこそ
前二作ほどではありませんが、
その凝ったゲームデザインが
妙に印象に残る一作でした。

daima的ドット絵制作環境

続いて私が日頃利用している
ドット絵の制作環境をご紹介してみます。

私はドット絵を描く際に
長らく「D-pixed」というフリーソフトの
お世話になっていましたが
近頃はもっぱら「Asprite」という
有料のドット絵エディタを利用しています。

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store.steampowered.com

www.taikutsu-breaking.com▲以前投稿したAspriteの解説記事です。

このAsprite、
有料なだけあって
・パレットの編集
・保存・読み込み
・拡大/縮小
・回転
・枠囲み、投げ縄、自動選択などの柔軟な範囲選択
・ぼかし
・レイヤー
・透過
・オニオンスキン
・アニメーションタイムライン
などドット絵描きにとって
必要な機能が一通り網羅されており
おまけに各機能のショートカットが
photoshopに近い構成なのもグッド。

それまでオールドスタイルな
D-pixedと長らく付き合ってきた私にとって
Aspriteのモダンな利便性は例えるなら
今までかご付き自転車にしか乗ったことのなかった人間が
生まれて初めて本格的なスポーツバイクに
跨ったときの感じるあの感動に匹敵するものであり、
その快適さの前では日本語未対応などという
欠点は全く気にならない些末なものでした。

…え?
機能はそこそこでいいから
無料でドット絵がかけるソフトは無いかって?

www.piskelapp.com

Piskelとかいいんじゃないですかね?(適当)

ドット絵をうまく描くコツは?

ドット絵といえど絵は絵なので、
上手くなるコツはアナログ絵とさほど変わりません。
①数をこなす
②描く対象の立体的造形を理解する
③上手い人の書き方を観察して真似る
基本はこの辺の積み重ねだと思います。

特に③は非常に重要。
ドット絵は普通のデジタル絵と比べて
描き手のとれる選択肢に大きな限りがあるので、
上手い人のドットの置き方や色彩を
少し真似るだけで飛躍的に
絵のクオリティがアップすることも珍しくありません(実体験)。

あとは陰影のつけ方ですね。
これは好みもあるので一概に言えませんが
うまい人は大体影のつけ方が立体的で自然です。

ドット絵で動くアニメ(GIFアニメ)を作るコツ

ドット絵を書きたいという方の中には
ドット絵のアニメーション(GIFアニメ)に
興味があるという方も
少なくないのでは無いでしょうか。

GIFアニメの作成自体は
動きの素材さえ揃っていれば
こうしたサイトや
GIFアニメ作成用のソフトウェアで
簡単に行うことができます。

ただひとつ難しいのは
上手なアニメを作るには
静止画を描くのとは
また別種の能力を要求されることです。

特に人間のような複雑な物体の動作を
自然に動かすには
描く対象の解剖学的な理解と
一つの動きのために
十枚を超える差分ドットを描く
根気強さが要求されます。

私が自分で一から動きを考えて
ドット絵アニメを作るときは
まずその動作にどういったカットが必要で、
かつ完成したらどのような動きになるかを
頭の中でしっかりイメージするようにします。

そうしてから
紙の上にその動作に必要なカットを
動きの順に並べてササっとラフ描き出して、
それでもイメージが固まりきらなければ
実際に自分の体を動かして
どういったカットが必要になるかを
検証することもあります。

ほかに動きを描くうえで
有効なテクニックとしては
一枚目、二枚目と順番通りに
描き進めるのではなくて、
動きのキーになる
動作の頂点を先に書いてから、
各動作間の間を中割りで
埋めていく方法があります。

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例えば上記の動作なら、
①、③、⑤、⑧あたりを優先して作って、
残りを後から補完していく順序になるわけですね。

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▲動かしてみる

このテクニックはポーズ・トゥ・ポーズともいい、
アニメーション全体のブレを減らしたり、
アニメーション内の緩急が
つけやすくなったりといった効果が期待できます。

www.taikutsu-breaking.com
▲Aspriteでドット絵アニメーションを作る手順を解説しています。

ドット絵の未来は?

ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後にドット絵の今後について
私の考えていることを話してみます。

古いものは新しいものに取って代わられ、
いずれ忘れ去られるのが世の常ですが
果たしてドット絵は今後どうなるのでしょうか。

私的にはたとえ
リアルタイムレイトレーシングが光の反射まで計算された
超精密なグラフィックを実現しようが、
VRがゲームと現実の垣根を取っ払ってみせようが、
ドット絵はドット絵のまま、
機械式腕時計が性能で勝る
クォーツ式腕時計に駆逐されなかったように、
今後も愛好者たちの間で
しぶとく生き残り続けていくように思います。

私もいずれ
ドット絵で販売できるレベルの
自作ゲームを作ったり、
あるいはドット絵メインでデザインされた
Webサイトを作ったりしてみたいですね。
それでは、またの機会に。

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