私の人生を揺さぶった、傑作小説11選

読書
  1. はじめに
  2. おしながき
    1. 異邦人 アルベールカミュ 著
    2. 実存主義人間、ムルソーの悲劇
    3. 感情爆発、必見の名シーン
    4. こんな人におすすめ!
    5. 深夜特急 沢木耕太郎 著
    6. 臨場感MAXの壮大な旅行記!
    7. 著者の豊かな感性にも注目
    8. こんな人におすすめ!
    9. 凍 沢木耕太郎 著
    10. 前人未到の挑戦!
    11. 常人離れした生き方に感銘
    12. こんな人におすすめ!
    13. 老人と海 ヘミングウェイ 著 福田 恆存 訳
    14. 世界的名作が教えてくれること
    15. 作者ヘミングウェイの人生
    16. ショートショートの広場 星新一 編
    17. 宝石のようなアイディアの数々
    18. 特におすすめの作品は…
    19. こんな人におすすめ!
    20. ゴールデンボーイ / 刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング 著 186P
    21. 「希望」という言葉の重み
    22. 社会的テーマへの問題提起も
    23. 映画版をご覧になった方も
    24. その他キング作品のおすすめ
    25. 人間の土地 サン=テグジュペリ 著 堀口大學 訳
    26. テグジュペリが描く「人間賛歌」
    27. カバーイラスト&あとがきは、あの宮崎駿氏
    28. こんな人におすすめ!
    29. アルジャーノンに花束を
    30. 優しさと悲哀の入り混じった名作小説
    31. こんな人におすすめ!
    32. 暗号解読(上下巻) サイモン シン(著) 青木 薫(訳)
    33. 歴史エピソードと楽しむ暗号の数々
    34. おすすめエピソード
    35. こんな人におすすめ!
    36. 日の名残り カズオイシグロ著
    37. 読了後に、暖かく切ない感動がこみ上げる一冊
    38. こんな人におすすめ!
    39. ハリー・ポッターシリーズ J.Kローリング著
    40. 子供心に衝撃を受けた名作
    41. その魅力を分析
    42. こんな人におすすめ!
  3. さいごに
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はじめに

私は子供のころから本を読むことが好きで、
社会人となった今も週末はよく書店へ出かけ、
通勤中の電車内で日々読書に親しんでいます。

今回は、そんな私の読書人生の中で、
特に大きな影響を受けたおすすめの小説作品を、
11冊に厳選してご紹介します。

比較的知名度の高い作品が多いですが、
どれも深みがあり、得るものの多い作品ばかりです。
この記事が、あなたの書籍選びの参考になれば幸いです。

おしながき

異邦人 アルベールカミュ 著

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、
映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、
動機について「太陽のせい」と答える。
判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、
処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。
通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、
理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。

フランスの小説家、アルベールカミュの作品です。
不条理小説と呼ばれるジャンルで、
実存主義文学の代表作でもあります。
「今日、ママンが死んだ」の邦訳も有名ですね。

実存主義人間、ムルソーの悲劇

あらすじを読んで頂ければ分かりますが、
ムルソーは一般的な常識とは
かけ離れた感覚を持った人間です。

母が亡くなっても涙一つ流さず、
翌日には女性と海に遊びに行く始末です。
このような行動は、日本であっても
眉をひそめられることでしょう。
ですが私は、本書を読み進める内、
そんなムルソーに強く共感していきました。

私は子供の頃から
周囲にあわせるのが苦手な性質で、
そのために余計な苦労をすることが多く、
集団生活を強いられる社会の中で
生きづらさを感じて育ちました。

そんな私にとって、社会の常識に縛られず、
自分の感覚に正直に生きるムルソーは、
親しみの持てる存在に見えたのです。
(殺人行為は絶対に許されませんが)

感情爆発、必見の名シーン

物語の後半、殺人を犯したムルソーは
裁判にかけられ、動機を尋ねられて
「太陽がまぶしかったから」と応えて失笑を買います。

さらに、母の葬儀での
非人間的な態度が悪印象を買い、
死刑判決を言い渡されます。

そして、独房に収監されたムルソーの元に、
懺悔をさせるために司祭が訪れます。
その司祭に対してムルソーは、
今までの態度が嘘のように
感情を爆発させるのですが、
この場面のやり取りが実に強烈で、
胸に迫るような感動を覚えました。

こんな人におすすめ!

周囲と合わせる生き方に
息苦しさを感じる方や、
「当たり前」に疑問を感じる方にとって、
強い共感を呼ぶ一冊です。
ページ数も200p程度ですので、
未読の方はぜひ手にとってみてください。

深夜特急 沢木耕太郎 著

深夜特急1?香港・マカオ? (新潮文庫)

深夜特急1?香港・マカオ? (新潮文庫)

インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く――。
ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。
途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。
マカオでは「大小(タイスウ)」というサイコロ賭博に魅せられ、あわや……。
一年以上にわたるユーラシア放浪が、いま始まった。
いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ!

ノンフィクション作家として著名な、
沢木耕太郎氏の旅行記です。
作者の実体験を元にした作品で、
当時26歳の沢木氏が、
香港~ロンドンまでの行程を
主に乗り合いバスを利用して、
一人で旅する様子が描かれています。

臨場感MAXの壮大な旅行記!

この小説の魅力は、著者の実体験を基にした
ノンフィクションであることです。
世界を旅する中で沢木氏は
実に様々な人達と出会います。

マレーシアの陽気な娼婦たちや、
タイに住む胡散臭い華僑の男性、
インドのしたたかな闇商人や、
イランの美しい未亡人などなど…
全ての人々との出会いに深みがあり、
一期一会の素晴らしさが味わえます。

また、一人旅にはつきものの
様々なトラブルも描かれます。
マカオでは、「大小」という
サイコロ博奕にはまって
あやいく無一文になりかけたり、
インドで熱病にかかり、
朦朧とした意識で生死の境をさ迷ったり、
パキスタンの映画館では、
テロリストと間違われて
警察に暴行を受けたりもします。

これらトラブルは、実体験に基づく
ノンフィクションということもあり
読んでいて非常にハラハラさせられます。

著者の豊かな感性にも注目

そして、この小説の
もう一つの大きな魅力が、
作者である沢木氏が持つ、
独特の鋭い感性です。
その鋭さは文章の端々に垣間見えます。

恐らく、私は、小さな仮の戦場の中に身をゆだねることで、
危険が放射する光を浴び、
自分の背丈がどれほどの物か確認してみたかったのだと思う。

今の私だったら酒場で注文を訊かれてもナーダとは答えないだろう
なぜなら私がナーダそのものだからだ。
まさに今の私は、無にして無、ナーダ・イ・ナーダのようだった。
ナイフで切り裂いても空気が漏れるだけでしかない…

沢木氏の作品全般に言えることですが、
作中に一貫して、ニヒルで
乾いた空気感が漂っています。
この空気感は好みが分かれそうですが、
私にとっては心地よく、肌に合う作風でした。

こんな人におすすめ!

文章は簡潔で、一冊の分量も程よく
スラスラと読み進められます。
注意点としては、
作中の年代が1960年代ですので、
現代と比べて、各国の治安や
交通事情は大分異なっていると思われます。

ですが、旅人の心得や
旅の醍醐味を知る一冊として
旅に興味を持つ全ての人に
読んでいただきたい一冊です。

凍 沢木耕太郎 著

凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。
世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、
ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。
だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、
二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった――。
絶望的状況下、究極の選択。
鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。

「深夜特急」に引き続き、
沢木耕太郎氏のノンフィクション作品です。
夫婦揃って日本のトップクライマーである
山野井泰史氏と妻の妙子氏が、
ヒマラヤのギャチュンカンに
挑む姿が描かれています。

前人未到の挑戦!

本作で描かれるのは圧倒的な自然と
それに挑む小さな人間の底力です。

酸素は薄く、常に死と隣り合わせの
8000メートル近い高所で、
氷の絶壁を、僅かな道具と身一つを
駆使して登る山野井夫妻の姿は、
読んでいる側も
生きている心地がしないほどの
緊迫感に満ちています。

常人離れした生き方に感銘

主役である山野井夫妻の人生は、
まさに山に人生を捧げたかのようです。
お金の為でも名誉の為でもなく、
ただ登りたいから登る。

命を落とすリスクがあっても、
凍傷で指を失おうがそれでも登る。
その、狂気と紙一重とも言える
ストイックさにただただ圧倒されます。

私のような凡人には
とても真似できない生き方ですが、
そのブレない生き方は、
心の底から格好良いと思いました。

彼らが真の意味で自由だからだ。
その中での大事なのが名声から自由である。
山野井はクライミングを「真剣な遊び」と呼んでいた。
その時々の自分の条件でできるぎりぎりのところを追求する。

こんな人におすすめ!

沢木氏らしく、
大変面白く読みやすい一冊です。

山に興味のある方はもちろん、
純粋に読み物としても一級品ですので、
とにかく読み応えのある一冊が欲しい
という方にもおすすめです。

最後に、本書からとくにお気に入りの文を
一つだけ抜粋させて頂きます。

死ぬ人は諦めて死ぬのだ。
俺たちは決して諦めない。
だから絶対に死なない。

敗れざる者たち (文春文庫)

敗れざる者たち (文春文庫)

沢木氏の作品では、
短編集「敗れざる者たち」もおすすめです。
また、氏の作品に興味を持たれましたら、
ブログ内におすすめ作品の記事を書いていますので
そちらもぜひご覧ください。

www.taikutsu-breaking.com

老人と海 ヘミングウェイ 著 福田 恆存 訳

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

キューバの老漁夫サンチャゴは、
長い不漁にもめげず、
小舟に乗り、たった一人で出漁する。
残りわずかな餌に想像を絶する巨大な
カジキマグロがかかった。
4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、
帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた
獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。
徹底した外面描写を用い、
大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して
自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

アメリカ文学の巨匠、
アーネスト・ヘミングウェイの代表作です。
この作品は1952年、
ヘミングウェイの晩年に出版され、
後のノーベル文学賞受賞の
大きな要因にもなりました。

私がこの作品を初めて読んだのは、
高校生の頃でしたが、
その当時の私にとって本作は、
今一つピンとこないものでした。
ですが、成人した後に読み返してみると、
非常に強い感動を覚えたのです。

世界的名作が教えてくれること

サンチャゴ老人は、
巨大カジキマグロとの死闘に勝ったものの、
帰路でサメの群れに襲撃され、
必死の抵抗空しくせっかく勝ち取った
カジキマグロの大半を奪われてしまいます。

結果だけ見れば、老人の漁は
くたびれ儲けの骨折り損でした。
ですが、漁を終え疲れ切って帰宅した
老人の姿に悲惨さは無く、
むしろ爽やかさを感じさせるラストで
本作は幕を閉じます。

私はそこに、(奇妙な事ですが)日本的な
敗者の美学を感じました。
老人は、結果はともあれ
カジキマグロとの死闘には打ち勝ちましたし、
自分を慕い、尊敬してくれる少年もいます。
老人は結果より大切な、
目に見えない勝利を得たのだと思います。

加えて本作で興味深いのは、
老人が死闘を演じたカジキマグロに対して、
深い敬意と友情を感じていた
ことです。

「魚よ」彼は言った。「お前を愛しているし、心から尊敬もしている。
だが、俺はお前を必ず殺す。今日のうちにな」

海と共に生きてきた老人にとって、
海の化身のような巨大カジキマグロは、
獲物であると同時に尊敬すべき友でも
あったということでしょうか。

作者ヘミングウェイの人生

また、作者である
ヘミングウェイ自身の人生と重ねて読むと、
この物語はより一層
味わい深いものになります。

失われた世代を代表する作家として大成功をおさめ、
一躍時代の寵児となったヘミングウェイ。
しかし、晩年の飛行機事故をきっかけに躁鬱病を発症し、
最期はショットガン自殺でその人生に幕を下ろします。

他にも、人生で四度の結婚を繰り返し、
同時代の作家、フィッツジェラルドや
サンチャゴのモデルとなった漁師と決裂するなど、
人間関係のトラブルも絶えなかったそうです。

マッチョで頑健なイメージが
売り物だったヘミングウェイですが、
その様な人間的弱さや
繊細さも併せ持っていたからこそ、
「老人と海」のような
歴史的名作を生み出せたのだと私は思います。

本書の最後の一文、
「老人はライオンの夢を見ていた」
これは、文学史に残る
最も美しい一文だと私は思います。

この書からは、本当に多くの
大切なことを学ばせられます。
私が読んだのは、画像の新潮文庫版ですが、
無料で読める青空文庫にも、
石並杏氏訳の物が掲載されていますので、
ネットでもOKという方は
そちらをおすすめします。

ショートショートの広場 星新一 編

ショートショートの広場 (講談社文庫)

ショートショートの広場 (講談社文庫)

星新一ショートショート・コンテスト
(1979年~1983年)に応募された
2万5420編の中から、最優秀作、
優秀作の58編を収録。
どこにでもありそうな話から、
空前絶後の空想の産物まで、
プロも驚くアイデアの妙、
そして文章の冴えをご満喫ください。
編者による全作品への選評も同時収録!

一般公募によって開催された、
ショートショート・コンテスト(1979年~1983年)の
受賞作品集です。

審査員長は言わずと知れた
ショートショートの大家、
星新一氏が勤めています。
各年度の優秀作品が10点×5年分で、
約50点の作品が収録されています

宝石のようなアイディアの数々

私がこの小説集をおすすめする最大の理由は、
収録作品の面白さに他なりません。

一般公募ですので、各作品の作者は
当時アマチュアだった方達なのですが、
応募総数数千作の中から
厳選された十篇
ということで、
アイディア、構成力共に
プロ顔負けの傑作ぞろいとなっています。

特におすすめの作品は…

中でも、私がぜひ読んでいただきたい作品は、

○不条理なストーリーに見せて、
ラストで深い寓意性を感じさせる「鬼」

○ラスト一文の美しさがいつまでも心に残る「花火」

○高齢化社会の行く末を、
残酷ながらも鮮やかに描いた「首」

○本書でも特に型破りな作風で、
最後にそう来たかと唸らされる「読むな」

○海の神秘性、母性を豊かな感性で描いた「海」

の五編。何度読んでも色あせない名作です。

こんな人におすすめ!

一作数ページのショートショートですので、
気の向いたときにサッと読めるのも高ポイント。
星新一氏のショートショートが好きな方はもちろん、
オチにびっくりさせられるような小説や、
ムードのある小説をお探しの方にお薦めの一冊です。

余談ですが、私が星新一氏の作品と出会ったのは、
小学校三年の頃でした。それまでは、
かいけつゾロリに夢中だった私が、
初めて熱中した活字小説で、
短い休み時間のたび、
貪るように読みふけった思い出があります。

ゴールデンボーイ / 刑務所のリタヘイワース スティーブン・キング 著 186P

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。
ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。
昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。
不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。
30年かかってついに脱獄に成功した男の話
「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。
キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の1冊。

モダンホラーの大御所、
スティーブン・キングの中編作品です。
表題作は、元ナチスの老人と
少年の不気味な交流を描くゴールデンボーイ。

こちらの作品も、キングらしい
ゾッとするモダンホラーで大変面白いのですが、
今回ピックアップするのは、
同時収録の「刑務所のリタヘイワース」の方です。

フランクダラボン監督の名作映画
「ショーシャンクの空に」の原作でもあり、
1940年代のアメリカで、
妻殺しの無実の罪を着せられた
銀行員アンディ・デュフレーンが、
厳しい獄中生活から自由を得るために戦う姿を、
親友レッドの視点で描いています。

「希望」という言葉の重み

本作が凄い点は、
「希望」というありふれたテーマを扱いながら、
説教臭ささや押しつけがましさ無い
所です。

アンディは、暴力で所内を牛耳る囚人達や
権力を笠に着る看守達に対して、
力ではなく、持ち前の知識や
頭脳で対処し厳しい環境を生き抜きます。
そのスマートさとタフさが、
男として本当に格好良い
のです。

社会的テーマへの問題提起も

また、作中に登場する
老囚人ブルックスの末路を読むと、
本書が犯罪者の構成と社会復帰に対して、
鋭い意見を投げかけていることに気が付きます。

映画版をご覧になった方も

映画「ショーシャンクの空に」は
私も大好きな映画で、何度も見返しています。

原作である刑務所のリタヘイワースも
話の大筋は同じですが、
細かい設定が変更されています。

ネタバレになるため詳しくは書けませんが、
映画はドラマティックさを重視した改編が多いです。
どちらが良いとは言えませんが、
私は原作小説の方が味わい深かったように思います。

その他キング作品のおすすめ

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

また、キング作品なら、
名作映画「スタンド・バイ・ミー」の
原作小説であるこちらもおすすめです。

映画版との違いを楽しむのもいいですし、
活字で読むとより想像力が刺激されて、
作品の持つノスタルジックな魅力が
一層深く味わえます。

夜がはじまるとき (文春文庫)

夜がはじまるとき (文春文庫)

短編集をお探しなら、
こちらの「夜がはじまるとき」がおすすめ。
クトゥルフ神話から
仮設トイレに閉じ込められた男の話まで、
キングらしいモダンホラーの
醍醐味が味わえる一冊です。

人間の土地 サン=テグジュペリ 著 堀口大學 訳

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

星の王子さまで知られる
サン=テグジュペリの作品です。

黎明期の郵便飛行機のパイロットであった
テグジュペリの体験を基にした作品で、
アンデス山脈の墜落事故から生還した僚友や、
リビアの砂漠で遭難した、
テグジュペリ自身のエピソードが語られます。

テグジュペリが描く「人間賛歌」

本書を通じて感じたことは、
著者テグジュペリの人間への深い愛情です。
命がけで自然と格闘する
二十世紀初頭の飛行士や、
彼らと関わる様々な人々の姿を通じて、
人が生きることの尊さや、
世界の美しさ
が描かれています。

豊かな現代を生きる私たちにとっても、
生きることの意味や
素晴らしさを感じさせてくれる名著です。

カバーイラスト&あとがきは、あの宮崎駿氏

また、新潮文庫版の表紙のイラストは
ジブリの宮崎駿監督が手掛けており、
巻末にも書評「空のいけにえ」を寄せています。
こちらも、飛行機と戦争の関係について
深い洞察のある名文です。

こんな人におすすめ!

読み応えがあって、心に染みる一冊を
お求めの方におすすめの一冊です。

注意点としては、本作の訳者である
堀口大學氏の訳が少々クセが強い点です。

詩的な言い回しが度々登場し、
慣れていない方は苦労するかもしれません。
ですが読み進めれば普通に慣れますし、
それだけの価値がある作品です。
最後に、本書で私が感銘を受けた文を
何点かご紹介します。

僕ら人間について、大地が、
万巻の書より多くを教える。
理由は、大地が人間に抵抗するためだ。
人間というのは、障害物に対して戦う場合に、
初めて実力を発揮するものなのだ。

イデオロギーを論じ合ってみたところで、
何になるだろう?
すべては、立証しうるかもしれないが、
またすべては反証しうるのだ。
しかも、この種の論争は、
人間の幸福を絶望に導くだけだ。
それに人間は、いたるところ
ぼくらの周囲で、同じ欲求を見せているのだ。

精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、
はじめて人間は創られる。

アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)

アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)

32歳になっても幼児の知能しかない
パン屋の店員チャーリイ・ゴードン。
そんな彼に、夢のような話が舞いこんだ。
大学の偉い先生が頭をよくしてくれるというのだ。
この申し出にとびついた彼は、
白ネズミのアルジャーノンを競争相手に、
連日検査を受けることに。
やがて手術により、チャーリイは天才に変貌したが…
超知能を手に入れた青年の愛と憎しみ、
喜びと孤独を通して人間の心の真実に迫り、
全世界が涙した現代の聖書(バイブル)。

24人のビリーミリガンでも有名な、
ダニエルキイス氏の長編小説です。
1966年に長編小説として発表され、
今も世界中の人々に愛されています。

優しさと悲哀の入り混じった名作小説

巧みな物語の構成や、
作者の知識に裏打ちされた
リアリティも魅力ですが、
本作が評価された最大の理由は、
その一貫したテーマ性にあると思います。

例えば、日本語文庫版の序文には
次のような一節があります。

他人に対して思いやりを持つ能力がなければ、
そんな知能など空しいものです。
人間のこの特性を欠いているひとびとは、
残忍な嘲笑と空威張りの仮面の影に隠れるものです。

また、作中で主人公チャーリイは
次のようなセリフを口にします。

でも僕は知ったんです。
あんたがたが見逃しているものを。
人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんて
なんの値打ちもないってことをです。

本作を最後まで読むと、
これらの言葉がとても重く響きます。

こんな人におすすめ!

感性を育む時期の学生さんにはもちろん、
歳を重ねた大人が読んでも、
実に多くの発見を与えてくれます。

本作は、単に読み物として
楽しめるだけではなく、
障碍者福祉やいじめ問題、
家族や友人とのつながりなど、
私たちに身近で重要なテーマが
沢山含まれた
お話です。

暗号解読(上下巻) サイモン シン(著) 青木 薫(訳)

暗号解読(上) (新潮文庫)

暗号解読(上) (新潮文庫)

文字を入れ換える。表を使う。
古代ギリシャの昔から、人は秘密を守るため
暗号を考案してはそれを破ってきた。
密書を解読され処刑された女王。
莫大な宝をいまも守る謎の暗号文。
鉄仮面の正体を記した文書の解読秘話…。
カエサル暗号から未来の量子暗号に到る暗号の進化史を、
『フェルマーの最終定理』の著者が
豊富なエピソードとともに描き出す。
知的興奮に満ちた、天才たちのドラマ。

「フェルマーの最終定理」でも知られる、
サイモン・シンの作品です。
暗号の作成と解読の歴史を、
数々のエピソードを交えて紹介しています。

歴史エピソードと楽しむ暗号の数々

暗号の発展と歴史上の活躍について、
非常に分かりやすく書かれた良書です。

扱う内容は実に幅広く、
古代ローマのカエサル暗号から
昨今話題の量子コンピュータまで、
史実の様々なエピソードが語られます。

また、ひとつひとつのエピソードは、
暗号作成者と解読者の人間ドラマとしても楽しめ、
暗号技術の解説書としてだけでなく、
読み物としても優れています。
図説も豊富で、難しい暗号の仕組みも
大変理解しやすくなっています。

おすすめエピソード

私が本書で特に印象深かった
エピソードを二つご紹介します。

一つは、エニグマの解読を果たした
アラン・チューリングのエピソード。
難攻不落のエニグマを攻略した
チューリングの偉業に驚き、
その後、彼に待ち受けていた
理不尽な運命に強い憤りを感じました。

そしてもう一つは、
現代のインターネット通信の
安全を支えるRSA暗号のエピソード。

素数や時計の計算方法を利用した
暗号作成の過程は興味深く、
Web業界で働く身として
非常に勉強になるお話でした。

こんな人におすすめ!

暗号や数学に興味のある方はもちろん、
歴史、小説好きの文系人間でも
十分楽しめる一冊です。
また、Webなどの情報技術にかかわる方にも
おすすめですよ。

日の名残り カズオイシグロ著

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

品格ある執事の道を追求し続けてきた
スティーブンスは、短い旅に出た。
美しい田園風景の道すがら
様々な思い出がよぎる。
長年仕えたダーリントン卿への敬慕、
執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、
二つの大戦の間に邸内で催された
重要な外交会議の数々―
過ぎ去りし思い出は、
輝きを増して胸のなかで生き続ける。

失われつつある伝統的な英国を描いて
世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、
ブッカー賞受賞作。

アンソニー・ホプキンス主演で映画化もされた作品。
年老いた英国執事スティーブンスが
美しいイギリスの土地を車で旅行しながら、
昔仕えたダーリントンホールでの
思い出を振り返るお話です。

読了後に、暖かく切ない感動がこみ上げる一冊

この作品は、とにかく人間描写が巧みです。
徹底したプロフェッショナリズムを持ち、
自分の仕事に誇りを持つスティーブンス、
そんなスティーブンスに何かと意地をはるも、
本当は自分のことを気にしてほしい
女中頭のミス・ケントン。
影響力のある自分の立場に責任を感じて
世界平和のために尽力するダーリントン卿。
全ての登場人物に血が通っていて
その強さも弱さも包み隠さず描かれています。

特に、作中でスティーブンスが語る
執事としてのプロフェッショナリズムは、
一社会人としてぜひ見習いたくなる点が多く、
この本を読んだのが自分自身、
働き方に迷っていた時期だったこともあって
大いに影響を受けました。

また、作品の端々から
著者カズオ・イシグロ氏の
世界平和を願う真摯な気持ちが感じられ、
個人的な視点でも社会的な視点でも
考えさせられることの多い一冊でした。

こんな人におすすめ!

憧れだった父が老いていく姿を見る悲しみや
好きな人に素直に慣れなかった思い出など、
登場人物たちはみな、
私たちに身近な後悔や葛藤を抱えていて、
そのことに対して長い時間の中で
向き合う姿が丁寧に描かれています。

働くことの意味を見失いそうな方や
過去に人間関係で後悔を残している
全ての方に読んでほしい名作小説。
歳を重ねるほど味わいの増す一作です

ハリー・ポッターシリーズ J.Kローリング著

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

ロンドン郊外の、どこにでもありそうな平凡な街角、
ある晩不思議なことがおこる。
そして額に稲妻形の傷跡を持つ赤ん坊が、
一軒の家の前にそっと置かれる。
この家の平凡なマグルのおじ、おばに育てられ、
同い年のいとこにいじめられながら、
その子、ハリー・ポッターは何も知らずに11歳の誕生日を迎える。
突然その誕生日に手紙が届く。魔法学校への入学許可証だった。
キングズ・クロス駅の9と3/4番線から魔法学校行きの汽車が出る。
ハリーを待ち受けていたのは、夢と、冒険、友情、そして自分の生い立ちをめぐるミステリー。
ハリーはなぜ魔法界で知らぬものが無いほど有名なのか? 額の傷跡は?
自分でも気づかなかった魔法の力が次々と引き出されてゆく。
そして邪悪な魔法使いヴォルデモートとの運命の対決。

イギリスの女性作家、
J.Kローリングによる児童文学です。
七巻全てが映画化されるほどの世界的人気で、
正式な続編「ハリー・ポッターと呪いの子」は
2016年11月に発売予定です。

子供心に衝撃を受けた名作

私がこの作品と出会ったのは、
小学校五年の頃でした。

学校の休み時間すべてを
費やして読んでもまだ足らず、
授業中にこっそり
隠れて読んでいるのがばれて、
強面の社会科教師に
ボードで頭を叩かれたのはいい思い出です。

その魅力を分析

この作品の素晴らしい点は、
第一にその練り込まれた世界観です。

魔法世界の歴史や文化、
動植物の生態などが非常に細かく描かれ、
読んでいる内に、本当に自分が
魔法世界に飛び込んだような気持ちになります。

魔法世界が人間世界のす側に隠れている設定も
夢を感じさせてくれますね。

そしてもう一つは、
勇気や努力、友情の尊さについて、
メインの読者である子供に
自然と学ばせてくれる点
です。

作中でハリーは、
自分を嫌うスネイプやマルフォイ、
ヴォルデモートとの因縁など、
数多くの苦難を経験しますが、
そのたびに勇気と機転、
そして友情によってそれらを乗り越えます。

この書籍がこれほどまでに
世界中で愛されるのは、
こういった普遍的で大切な事柄を、
物語として分かりやすく伝えてくれたから
ではないでしょうか。

こんな人におすすめ!

活字に慣れてきたお子さんに
親御さんが贈る本としてはもちろん、
童心を忘れてしまった大人が
今から読んでも楽しめる小説です。

これから購入される方は、コンパクトで
持ち運びに便利な文庫版がおすすめです。

さいごに

私の人生を変えたおすすめの名作小説10選、
お楽しみいただけましたでしょうか。

今回私が取り上げた小説は、
ジャンルも知名度もバラバラですが、
どれも自信をもって
お薦めできるものばかりです。

良い小説は、私たちの世界を広げ、
想像力を豊かにしてくれます。
たった一度きりの人生、
良質な書物を沢山読んで
豊かなものにしていきましょう!

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