はじめに
この記事は上記記事の続きです。
ガチで面白いSCP報告書50選
SCP-2581-JP - 可愛く撮ってね☆
SCP-2581-JPに
指定されているのは
23歳の日本人女性です。
上記の添付画像を見て頂くと
SCP-2581-JPの背景がまるで
デジタル加工でもされたかのように
不自然に歪んでいるのが
ご確認頂けるかと思います。
実は、これこそが
SCP-2581-JPの有する異常性なのです。
その発現条件はSCP-2581-JPが写真や
映像の被写体となった場合。
その条件が満たされた場合に、
SCP-2581-JPの周囲の空間が
本人の意思とは無関係に
歪んで映ってしまうのです。
加えてこの歪みのパターンは
本人の表情や映る角度によって
ランダムに変化するため、
一度ゆがみが発生した写真や映像を
歪む前の状態に戻すことは
財団の技術力をもってしても困難です。
私などはもし自分の身にこんな現象が起こったら
おちおち記念写真も撮れずに
困ってしまうのではないかと思うのですが、
実はこの現象には、SCP-2581-JPにとっては
メリットとなり得るもう1つの特徴がありました。
それは、この歪みが必ず
SCP-2581-JPの頭部の大きさを10%~25%ほど
小さく見せる形で発現するということ。
年頃の女性にとって何もしなくても
勝手に頭を小さく見せられるこの異常は
実に有難いものであったようで、
財団によって確保される以前には
この異常性を自身のインスタグラムの生配信に
意図的に"活用"していたことが分かっています。
その後、事情を察した財団によって
収容される運びとなったわけですが、
正直他人に危害を加えるわけでもないですし
いずれは記憶処理なんなりを受けて
社会に復帰することになるのではないでしょうか…?
収容後にSCP-2581-JPが
継続した吐き気などの
体調不良を訴えたため
急遽健康診断が実施された。
以下はその際に撮影された
SCP-2581-JPの頭部MRI画像。
ご覧のように全体的に歪んでしまっており、
脳内に腫瘍があることは分かるが
その正確な位置を把握するには
不十分なものとなってしまっている。
もちろんこれは
SCP-2581-JPの異常性の影響によるものなのだが
先述したように当人には
その影響をコントロールすることができない。
報告書は最後、財団が腫瘍の正確な位置を
特定する努力を継続していることを記して終了している。
…といった感じで
最初は無害な異常と思われたものが
土壇場で本人の命取りになったという
意外性が面白い(と言うにはちょっと可哀想な気もするが…)報告書だった。
メタ的に見れば、
昨今のルッキズム的な風潮を
上手く皮肉った報告書という事もできる
…のかもしれない。
SCP-2627-JP - 島(ごと)流し
SCP-2627-JPに
指定されているのは
新潟県の西部に存在する佐渡島…
として知られる"タライ船"です。
一般にはまだ島として認識されていますが、
財団による近年の調査で
実はそれが底を鎖で改定と繋ぎ止められた
巨大なタライ船だったと判明したんですね。
さてそんなSCP-2627-JP報告書ですが
最新版(2ページ目)では
世界規模の急激な海面上昇の発生し、
更にその影響でSCP-2627-JPを繋いでいた鎖が破損して
沖へと流されてしまった事が記されています。
しかもその時、SCP-2627-JPの上には
現地サイトの財団職員だけでなく
地元民や財団と敵対する
要注意団体のメンバーたちも滞在してたようで、
危うく一触即発の事態が予想されたのですが…?
SCP-2627-JPが漂流を始めた時、
そこには同地勤務の財団職員に加え、現住民、
日本生類創研(ニッソ)、東弊重工、マナによる慈善財団、
人語を解す狸らのグループがいた。
世界的な海面上昇による陸地の大規模な水没と
1つの島の上での漂流という緊急事態の中、
彼らは以前の対立や敵対関係を乗り越えて
互いの技術や能力を提供しあいながら
漂流生活を乗り越えていく。
その間、本島の財団本部との連絡を担っていたのが
SCP-2627-JPのサイト-8155-RI管理官 加納だったのだが、
この加納がある時"事故死"したという連絡が
SCP-2627-JP側から財団本部側に寄せられる。
しかしそれは実は、
エージェント・伊藤および
他の漂流メンバーらによる暗殺だった。
この時すでに海面上昇の影響で
世界の半分が水中に没しており、
彼らは残された貴重な陸地であるSCP-2627-JPを
再び財団の管理下に戻すのではなく
自分たちだけで維持していく道を選んだのだ。
報告書は最後、彼らによる
財団からの独立宣言をもって終了している。
敵同士が同じ窮地の中で手を結び、
共に生き残るというハートフル路線かと思いきや
最後の最後で血なまぐさいオチがつくこの意外性。
良い意味で、頭をガツンとやられた気分だった。
またこの報告書に関しては
二重の故郷シリーズがヘッドカノンとなっているので
其方も併せて読んでおくとエージェント・伊藤らが
あの決断に至った心情などを
より深く理解することができるだろう。
SCP-2562-JP - お祈られ
SCP-2562-JPに
指定されているのは
複数の民間企業に送信された
発信元不明の就職希望メールです。
しかしSCP-2562-JPに
添付されたエントリーシートの内容は
どれも粗雑でやる気を感じさせないものばかり。
一体どこの誰がどんな目的で
このようなものを
送り付けてきたというのでしょうか?
SCP-2562-JPの送り主は
信仰を糧として存在を維持する神格実体…
平たくいえば神社などに祀られている神様たち(以下 SCP-2562-JP-A)だった。
少子高齢化の影響で
十分な信仰を得る事が
難しくなった彼らは、
俗にいう「お祈りメール」を通じて
不足していた信仰を補おうとしたのだった。
ある神格実体(以下 SCP-2562-JP-A-1)への
インタビューを通じてこの事実を知った財団は
SCP-2562-JP-A-1の協力のもと
SCP-2562-JP-Aの保護機関となることを彼らに周知。
その結果想定を超える
20000件以上の応募があったため、
は受け入れ態勢が整うまでは
代替措置として略式礼拝を施した
"不受理通知"がSCP-2562-JP-Aに送信されている。
SCP-2507-JP - おどかしオバケ
SCP-2507-JPに
指定されているのは
小さな子供が持つ
「お化け」のイメージから形成された
夢界実体群の総称です。
彼らの生きがい(?)は
夢の中で活動するオネイロイ※を
どうにかして怖がらせること。
(※オネイロイ=人が夢の中で活動する際に身に纏うアバターの総称)
しかし、その活動はあまり芳しい
成果を挙げられていないようで…?
添付イメージをご覧になればわかるように
SCP-2507-JPは見た目が怖く無いどころか
どちらかといえば可愛い寄りである上に
驚かし方もジャンプスケア一辺倒で工夫がなく、
ほとんどの場合は自力で目的を達成する事ができない。
そこで彼らは別の悪夢実体が
オネイロイへの攻撃として見せる
悪夢の中に飛び入り参加することで
自らの目的を果たそうとするセコい手段に出た。
しかしそこでもやはり
彼らのしょぼさが仇となり
大して相手を驚かせられないばかりか
その脈絡のない登場によって
それが悪夢であるという気付きを与え、
結果的に標的が悪夢から
抜け出すのを手助けをしてしまうという
大ポカをやらかしてしまっている。
SCP-2507-JPは悪夢実体を発見すると一定距離を保ちつつ尾行を行い、悪夢実体がオネイロイを固有余剰夢界空間に吸収すると自身もその内部に侵入します。
その後吸収されたオネイロイの付近に潜伏し、悪夢により対象の恐怖感情が高まったタイミングでジャンプスケアを行います。この際対象は瞬間的には驚愕反応を示すものの、前述したSCP-2507-JPの特徴から多くの場合すぐに冷静さを取り戻します。
またSCP-2507-JPの出現・行動の脈絡のなさ、及び異質な外見からその存在及び現在の状況に疑問を抱き、これに起因して夢界中の他要素に関しても観察を行った結果、最終的に高確率で自身が夢中にいるという結論に至ります。
これを知覚した対象はその後悪夢に対する逃避感情から意図的な覚醒の試みを行い、短時間の内に覚醒に至ります。
財団はこうしたSCP-2507-JPの性質が
結果的に夢世界で活動する
ファウンデーション・コレクティブの
活動の助けになっていると解釈しており、
あえて収容はせず野放しとしている。
「SCP-2507-JPの活動は有益であるため、収容の試みは行われません。」
このようにSCP-2507-JPは
財団の側から見れば愛すべき存在なのだが、
横からしゃしゃり出てきて攻撃を邪魔される
悪夢実体の側からすれば
到底たまったものではないだろう。
最大の敵は
無能な味方ということか…
SCP-2569-JP - 生活
SCP-2569-JPに
指定されているのは
迫田満吉氏が所有していた
一軒の家屋です。
迫田氏とその家族は1998年に発生した
一家惨殺事件で全員死亡しており、
それ以来SCP-2569-JPでは次のような
怪奇現象の発生が確認されています。
SCP-2569-JP内では、一定のタイムラインに沿って以下のような現象が発生します。
06:30 リビング及びキッチンにかけての家具及び電化製品の発生。これは生前の迫田一家が所有していたものと一致する。
06:43 キッチンに数点の食器及び家庭用器具が出現。生前に迫田一家が所有していたものと一致。水道、ガスコンロが自動で稼働。なお、 SCP-2569-JPのライフラインは停止されている。
07:00 水道、ガスコンロが停止。キッチンの食器のみが消失。リビングのテーブル上に調理された食物が盛られた食器が出現。食物の内訳は目玉焼き、ベーコン、レタス数枚、トースト、牛乳及び麦茶。出現した食器の数は迫田一家の人数と比例する。
07:22 食器内の食物が消失。数秒ほど間を置いて食器が消失。汚れが付着した食器がキッチンのシンクに出現。水道が稼働。
07:25 玄関にてビジネスシューズ及びローファーの出現と消失が確認される。これは迫田満吉氏と迫田氏の娘であった迫田環奈氏が使用していたものと一致する。
07:31 シンク内の食器が消失。水道が停止。
08:32 浴室付近にて洗濯機の稼働音と類似した音を確認。
09:48 ベランダ方面にある窓の付近にて開閉音を確認。窓そのものの開閉は確認されていない。
10:11 リビング及び迫田夫妻の寝室及び迫田環奈氏の寝室にて掃除機の稼働音と類似した音を確認。
12:01 リビングのテーブル上に████社製のカップラーメンが出現。調理済み。
12:06 カップラーメンが消失。
14:00 リビングにて出現しているテレビが起動。チャンネルは常に██放送に合わせられている。
16:04 テレビが停止。
17:02 玄関にてローファーの出現と消失を確認。
17:48 各部屋に電灯の出現。点灯。
18:33 玄関にてビジネスシューズの出現と消失を確認。
19:03 リビングのテーブル上に食器及び調理された食物が出現。07:00時とは異なり、食物の内訳は日によって変化する傾向にある。
19:55 テーブル上の食器及び食物が消失。
19:57 リビングのテレビが起動。14:00時とは異なり、合わせられるチャンネルは日によって異なる傾向にある。
23:15 テレビが停止。
23:25 消灯。同時に電灯が消失。それに伴い、出現した家具及び電化製品すべてが消失。以降は06:30時まで、特筆すべき現象なし。
まるで迫田家の幽霊が
生前の営みを再現しているかのようで
読んでいて背筋が寒くなりますね…
しかし2005年4月9日に
一家を殺害した犯人である
西崎和雄に死刑判決が確定すると
このルーティーンにある変化が生じて…?
死刑判決が出た日に
SCP-2569-JPに起きた変化は
次の様なものだった。
テーブル上に、大皿に盛られたホールケーキ,ローストチキン、茶碗に盛られた赤飯3つ。
四方の壁に、"輪飾り""輪つなぎ"と呼称される、色紙を切って輪っか状に繋ぎ合わせた飾り付け。
キッチンとの境目付近に、「祝・西崎死刑確定!」とマジックペンで書かれた垂れ幕。筆跡は迫田環奈氏のものと一致。
クラッカー音3発。
自分たちの仇の死刑が決まったとなれば
彼らが歓喜するのも無理はない。
しかしこの行動が後に
ある予想外の事態へと繋がっていく。
事案-2: 201█/██/██、20:47時のSCP-2569-JP内にて、この時点まで観測されていなかった異常が発生しました。当時SCP-2569-JP内は通常のタイムラインに沿ってテレビを起動させている状態でしたが、突然テレビが停止し、以下の現象が確認されました。
キッチン方面から金切り声。声紋は迫田満吉氏の妻であった迫田綾子氏と一致。
廊下方面から絶叫。声紋は迫田環奈氏と一致。
リビング方面から怒声。言語は解析できず。声紋は迫田満吉氏と一致。
箪笥類や棚類などの家具の転倒。
テレビ液晶画面の破損。
複数発の殴打音。
軽度の揺れ。
キッチン方面、廊下方面、リビング方面にて複数の血痕の出現。のちの調査で、これらの血痕のDNAは迫田一家のものと一致した。
西崎の死刑判決から5年以上が経過したある日、
SCP-2569-JP内で二度目のルーティーンの変化が起こった。
それはまるで
何者かの襲撃を受けたかのような激しいものであり、
それ以来SCP-2569-JPの怪現象は
ぱったりと止んでしまう。
その真相について
報告書中では最後まで明言されてはいないが
状況からして死刑後に幽霊となった西崎が
かつて自分の死刑を祝った迫田家へ
「お礼参り」に来たと考えるのが自然なように思える。
もしそうだとすれば迫田家の面々は
同じ人物に二度殺されたということになり、
ただただ哀れと言うほかはない…
[スロット割り当て無し] - 私を殺すもの(SCP-2455-JP)
SCP-2455-JPに
指定されているのは
サイト-19で活動している
起源不明の反ミーム実体です。
報告書の記述によると、その外見は
概ねヒトに類似する身体構造・体格を備えているものの
頭部や手足は異常に発達し、全身は滑りけを帯びて体毛は一切なく
極め付けは平均的な人間の4倍以上の大きさに開いた口という
概ね化け物と呼んで差し支えない外見を有しています。
しかしながらそうした外見以上に脅威的なのは
SCP-2455-JPが持つ反ミーム的な性質です。
SCP-2455-JPの存在は、
それが知覚された瞬間に忘却されるため、
サイト-19の職員のほとんどは
実際にSCP-2455-JPを目撃しているにも関わらず
実質的にその存在を認識する事ができていません。
唯一睡眠中だけはSCP-2455-JPの存在・活動を
限定的に想起することが可能となるのですが、
その場合は起床後に悪夢を見たと認識されるため
SCP-2455-JPの存在を把握するきっかけにはなりません。
そんな中、幼少期から
能動的に明晰夢を見る特技を持つ
アナ・ゴールウェイ財団下級研究員だけは
SCP-2455-JPの存在を認識し続ける事ができたため
このアノマリーの報告書執筆、
および対抗策の発見を決意したのですが…
報告書中にはSCP-2455-JPの持つ
残虐な性質が生々しく記録されている。
SCP-2455-JPは主にサイト-19内でさまざまな儀式的殺人・食人行為に従事しています。
割り出された活動周期からこのSCP-2455-JPの行為は食事のためではなく、単に娯楽としてのみ行われているように見えます。
SCP-2455-JPは生きた状態での磔、火炙り、串刺し、化学的融解、皮剥ぎを殊更に好む傾向にあり、被害者にはサイト-19職員及びサイト付近に居住する一般市民を含みます。
ムードメーカーだったボブ、だれよりも優秀だったテレサ、結婚したばかりのカレン、私を気遣ってくれたジョン、そして名も知らない罪のない大勢の人たち。この際被害者はSCP-2455-JPとその行為を完全に認識しているように思われます。
これはSCP-2455-JPが自身の反ミーム効果の範囲を操作することが可能であり、その能力をずっと脳にこびりつくような叫び声を被害者に上げさせるためだけに使用していることの証左であるかも知れません。
SCP-2455-JPはアナ研究員の存在に気づいており、
恐らくは彼女を精神的に苦しめる目的から
身近な人物や気遣いを見せた人物を優先して
(そして残虐に)殺害してきた。
だからこそアナ研究員は
これ以上大切な人々を巻き込まないためにも
自分一人でSCP-2455-JPへの
対抗策を見つけ出そうとしていたのだが、
その孤独な戦いは
少しづつ彼女の精神を蝕み始めていた。
未だに誰も奴の凶行には気付いていない。
私は一人きりで奴に立ち向かう責任がある。
それができるのは私だけだから。
私だけしかいない。
そんな必要も、理由もないのに。時々、奴は私のことに気付いていながら、楽しみのためあえて泳がせているのかもしれないとすら思う。
だとすればそれはチャンスなのだろう。
奴が私を侮っているというなら、まだ猶予があるということだ。
試すべき手段をすべて行えるかは分からないが。
幸運にもすべての手段はやりつくせた。
だけど何も変わらない。
本当はもっと多くの人が犠牲になっているはずなのに、奴の異常性は彼らの名前を忘れさせてしまった。
私は彼らの死に報いなければならない。
私は財団職員として人々の安寧を守らなければならない。
じゃあ誰が私を守ってくれるの? これ以上奴の好きにさせないために、たった一人であってもこの暗闇の中で私は戦い、あがき続ける。そうしなければならない。
あがき疲れたよ。私は諦めるわけにはいかない。SCP-2455-JPの収容を必ずやり遂げなければならない。
もういや
報告書は最後、アナ研究員による
「誰か、私をたすけてよ」という
悲痛な一文を残して終了している。
その後サイト-19がどうなったかについては
報告書中では一切語られておらず、
全ては読み手の想像に委ねられている。
SCP-2520-JP - 玖虞攣くぐつれ
SCP-2520-JPに
指定されているのは
「玖虞攣(くぐつれ)」という言葉について言及されている
説明・文章・音声・文字・記事・画像・会話・映像・██です。
報告書の説明によれば、
どうやらこれらの情報を認識すること自体に
危険性があるようなのですが…?
玖虞攣とは
説明・文章・音声・文字・記事・画像・会話・映像・██の
9つのステップを経ることで成立する「死」の事象。
報告書には上記の9つの要素を
含んだ資料が順番に配置されており、
最後の「自己責任で先に進む。 」
というボタンを押した時点で読み手自身が
玖虞攣による死の条件を満たしてしまう構成となっている。
ここに表示されている
"もう1人"こそが玖虞攣の死をもたらす存在であり、
██(黒塗り)で示されている何かの正体だと思われる。
以下は著者によるスポイラー。
作中に示されるように、玖虞攣による死は、9つの段階を経ることで成立します。9つ目は██とボカされており、そこに何が入るのかについては明かすのも雰囲気や想像性を損なうでしょうから、貴方の想像に任せることにしています。
さて、9つの段階のうち、最後の段落を見ると、記録の数が「8つ」であることがお分かりになるでしょう。ここで質問があったのが、「8つだけだとそもそも玖虞攣による死が成立しないんじゃ?」というものでした。しかしよく最初を見返してください。記載されている9つの段階の1つ目である「説明」って……。左の太文字を見れば、「説明」が何を示しているのかがおのずと理解できるでしょう。
「9つ目が何なのか想像もつかない!」という方もいらっしゃいました。これについては改稿でちょっぴり分かり易くしたつもりです。特に、記録6には重要な言葉があります。はてさて、なぜそれぞれの記録は関連付けも困難なほど錯綜しているのでしょう。そもそもこれらの記録は、相互に関連しているのでしょうか?あるいは……
核心の部分がひたすらぼかされているので
好き嫌いは別れそうだが
考察抜きでも和風ホラーとして秀逸なので
お時間があればぜひ実際に
報告書の方を読んでみてもらいたい。
SCP-2600-JP - 感染性収斂進化
SCP-2600-JPに
指定されているのは
特定の生物種を突然変異させ、
その惑星の支配種にする
異常な進化現象です。
財団はこの現象の発生機構を解明することで
アノマリーの発生確率をコントロール
できるようになると期待しているようですが…?
人類が地球の支配種となれたのも
SCP-2600-JPの影響によるものだった。
SCP-2600-JPの影響の進行度合いと
曝露した生物種が棲む惑星における
アノマリーの発生度合いには相関関係があり、
生物種が反映すればするほど
危険なアノマリーの発生率も増大する。
(これらの現象をまとめてSCP-2600-JP-Aと呼称する)
財団は以下の証拠を基に
SCP-2600-JP-Aが
惑星による免疫反応である
とする仮説を立てた。
- SCP-2600-JPの影響とアノマリーの数には明らかな正の相関がある。
- SCP-2600-JPの影響に伴って出現したアノマリーは、そのほとんどがSCP-2600-JPの影響が特に発現した生物種1のみに対して危害を及ぼす性質を有する。
- 一度SCP-2600-JPが終息すると、その惑星では同様の特徴を持つ外宇宙生命体との接触によるSCP-2600-JP事象は二度と発生しない。
- 地球の人類を含む外宇宙の生命体が生命の存在する他の惑星に接触すると、接触から1年以内にその外宇宙生命体に対して甚大な被害をもたらすアノマリーが出現する。この特性により、惑星はSCP-2600-JPから自らの生態系を保護していると考えられている。
- 脅威度の高いアノマリーの分布はSCP-2600-JPの影響が特に発現した生物種の分布とほぼ一致している。
アノマリーの増加の問題から、
SCP-2600-JPの影響を受けた生物は
必ず1万年以内に滅亡する。
それを避けるため財団は
上記の免疫説を前提とした
いくつかの施策を実施した。
- アノマリーに"自己生態系"であると一方的に認識させるトリガーを開発し、強力な現実改変を用いてその形質を全支配種に適用する
- 過度な環境形成作用をもたらす開発によるアノマリーの発生を軽減化する
- 大規模な核実験、地下資源の開発などによる突発的SCP-2600-JP事象を阻止する
- 世界的戦争など、これまで他惑星でSCP-2600-JP終息の原因となった、非異常の諸問題による人類の滅亡を阻止する
報告書は最後、
財団がこれらの施策を継続して
実施中であることを
年表で示して終了している。
しかしながら改めて見返すと
本報告書の財団は
人類の滅亡を回避すべく
ソ連の崩壊を根回ししたり
SDGsを世界的に推進したり
同じくSCP-2600-JPの影響を受けた
他の惑星と連携したりと
八面六臂の仕事ぶりだった。
果たして彼らの努力は
ただしく実を結ぶのだろうか…
SCP-5657 - ニッキーはお見通し
報告書を開くと
いきなり不穏な描写が。
どうやら"USER_NOT_FOUND"なる人物が
財団施設内に侵入した上AIをハッキングして
SCP-5657の収容室に侵入しようとしているようです。
かくしてその試みは成功し、
SCP-5657に関して財団が保有している情報を
開示するよう要求するUSER_NOT_FOUND。
そこで分かったのは、
SCP-5657に指定されているのが
ニキータ・ルドーという
アメリカの女性テレビタレントであること。
SCP-5657が1995年から1997年にかけて、
心理療法のセッションに類似した構成の
昼帯トーク番組『ニッキーはお見通し(Nicki Knows)』の司会を務めていたこと。
SCP-5657が身体接触を介して発動する、
感情に特化した超感覚的知覚を有していること。
SCP-5657がGOI-115 — 以下、"笑う人々" —の標的となっていること。
"笑う人々"の総数や目的は不明であること。
"笑う人々"には人の姿を模倣する能力があること。
"笑う人々"がこれまでに26回
SCP-5657を暗殺しようと試み、
その直前まで追い込んでいること。
"笑う人々"による直近の爆発物を使った暗殺未遂では
財団の保安職員の類繊維埋め込まれた爆薬により
SCP-5657が表皮の32%にIII度熱傷と
下半身が一部付随となる大怪我を負ったこと。
現時点でSCP-5657が
"笑う人々"を発見する唯一の既知の手段であることから
実験が完了するまでSCP-5657の生存が
最優先事項であると見做されていること─
…などなど興味深い情報が山盛りですが
ここまでの話を総合すると
USER_NOT_FOUNDがSCP-5657の収容室の前にきていて
しかも財団のAIがハックされてしまっているというのは
限りなくヤバい状況だといえそうです。
果たして
SCP-5657の運命やいかに…?
SCP-5657はかつて、その感情を読む能力で
自分の番組に参加した有名人たちの
後ろ暗い秘密を暴くことで人気を博していた。
(表向きは心理的なテクニックという建前のもと)
事件はその番組に、当時
大統領選の候補とも噂されていた
ティモシー知事が出演した際に起きた。
知事の正体は"笑う人々"の一員であり、
SCP-5657は番組の冒頭で握手した際に
そのことを見抜いてしまったのだ。
SCP-5657: いえ、分かっていただけていませんね。私はサイコパスやソシオパスとも握手したことがあります。深い井戸の底で消えかかっている炎を見ているような感覚になるほど抑圧された人に出会ったこともあります。これはそういうのとは違うんです。私が言っているのは、博士、そういう井戸すらなかったということです。光はなかった。形も、匂いも、何の感覚もなかったんです。空っぽでした。
その後、あまりの恐怖から
番組はおろかアメリカ国内からも逃げ出したSCP-5657は
最終的にメキシコの国境沿いのモーテルに腰を落ち着ける。
しかしそこにもすぐに
"笑う人々"の追手がやってきた。
SCP-5657: (ため息をつく) それで、モーテルの宿泊代を現金で払って、万一倒れてもいいようにベッドの上に立っていたんです… その時お腹が空いて最後に食べたのも72時間前だって思い出したんですけど。
それでササッとお昼を済ませようと自販機に買いに行ったんです。せいぜい20秒でした。チートスを買って戻ってくるとちょうど… あいつがそこにいたんです。部屋の中に。
立ってた。
笑ってた。喉に腕を巻かれるまでに声を上げる時間もありませんでした。
喉を掴みさえしなかったんです。
クマの罠みたいに手のひらを押しつけて、私の気管を潰すだけだったんです。そこで視界が真っ暗になりました。
しかしその際、
SCP-5657は"笑う人々"に対して
自分の感情を逆流させ、
動きを止める事に成功する。
普通の人間に対しては
そのようなことはできないのだが、
感情が空っぽの"笑う人々"に
対しては可能だったのだ。
そして、
これらの記録を読み終えた
USER_NOT_FOUNDは
いよいよSCP-5657の独房に侵入する。
だが、先のモーテルでの記録を読み終えた今
USER_NOT_FOUNDの目的は少し変化していた。
感情の逆流という現象にヒントを得て、
自分達が感情を獲得するために
SCP-5657を利用することを思いついたのだ。
SCP-5657: ああ、そ—… あぁ、そんな… ██っ!どうか—!どうか—… (嗚咽) あぁ、どうか終わって… どうか…
USER_NOT_FOUND: あーあ。それはもういらないんだよ。君から得られるものはもっとたくさんあるからね。
SCP-5657: (嗚咽、転写不能)
USER_NOT_FOUND: 一緒に来よう、ニッキー。我々に感じるということを教えるんだよ。
しかし、SCP-5657こと
"ニッキー"を捕まえようとした
USER_NOT_FOUNDの手は空を切る。
SCP-5657が資料を閲覧していた間に
本物のニッキーは既に脱出しており、
その場にはホログラムで
ニッキーの姿だけが投影されていたのだ。
USER_NOT_FOUND: いや。おかしいぞ、お前は私の手首に触っただろう。ここはお前のセルだ。お前はここにいた。
ニッキー: その「いた」ってのがカギよ。でもそうね、確かにここは私のセルだった。私は20年間そこを出たことがなかった— 今夜まではね。
USER_NOT_FOUND: (…) これはお前の計画だな。
ニッキー: 違うわよ██、スマイリー。彼らが20分くらい前に私を隠し通路から連れ出したの。私があなたに好奇心をたっぷり追加してあげたすぐ後にね。正直あなたが立ち止まってるのは、その、15秒だけでよかったんだけど— あなたはずっとファイルをめくってたってわけ。私も腕が上がったわね!
USER_NOT_FOUND: いや。おかしいぞ、お前は私の手首に触っただろう。ここはお前のセルだ。お前はここにいた。
ニッキー: その「いた」ってのがカギよ。でもそうね、確かにここは私のセルだった。私は20年間そこを出たことがなかった— 今夜まではね。
USER_NOT_FOUND: (…) これはお前の計画だな。
ニッキー: 違うわよ██、スマイリー。彼らが20分くらい前に私を隠し通路から連れ出したの。私があなたに好奇心をたっぷり追加してあげたすぐ後にね。正直あなたが立ち止まってるのは、その、15秒だけでよかったんだけど— あなたはずっとファイルをめくってたってわけ。私も腕が上がったわね!
USER_NOT_FOUNDは必死の様相で歩き回り始め、その後自身の喉に手を伸ばす。
ニッキー: ねえ、ねえ、何でもない奴。そこの壁のパネルが見える?それの後ろに何があるか説明してあげて、博士。
インターホン | アデラード博士: 凝結銃だよ。高圧の泡スプレーが接触のコンマ002秒後に1立方メートルあたり3000kgになるまで硬化させる。
ニッキー: 彼が言ってるのはね、一瞬で像になるってこと。
最初にAIがハッキングされたとみえたのも
全てはUSER_NOT_FOUNDに
疑いをもたせないための"演技"だった。
ニッキー: あなたを担いでたのよ。
私もあなたを担いだ。
AIまであなたを担いだ。
そうでしょ、EVAS?
その通りです。
やりすぎでしたか?
乗っ取られたふりの時はどうでした?
ニッキー: 馬鹿なこと聞かないで。
あなたは絶対俳優になるべきだったわね、EVAS。
まあ、こいつの監視員で我慢しなさいよ。
かくして捉えられたUSER_NOT_FOUNDには
ニッキーに代わりSCP-5657の指定がなされ、
彼女の使っていた収容室に
そのまま入れられることとなったのだった。
SCP-2430-JP - ローズマリーに追憶を
本日最後にご紹介するのは、
300近いupvoteを集め、
素手喧嘩コンテストで優勝を果たした報告書です。
(その分、もう読んだという方も多そうですが…)
この報告書を開くと
その瞬間にある強烈な違和感を抱くはず。
なぜそうなっているのか?
読み始めた頃には分からなくとも
読み進めるうちに徐々に理解できてきて…?
報告書中には、
一見無関係な文章が
大量に挿入されている。
特別収容プロトコル: SCP-2430-JPは日の当たる場所に置かれたプランターではありません。
SCP-2430-JPはサイト-8102の標準的な収容温室内に鉢に植えた状態で収容されています。
SCP-2430-JPは遊園地のどこかにいるイエネコ(Felis catus)ではありませんし、エージェント・アルセニエフに購入させられた、うんざりするほど紅茶の匂いが取れないロシア語辞書でもありません。
SCP-2430-JPへの言及は可能な限り避けるようにしてください。
SCP-2430-JP-aの新たな発生を確認した場合は、SCP-2430-JP-aの含まれる情報を速やかに破棄してください。
意図しない情報漏洩を招く危険性から、当報告書の編集は凍結されています。
SCP-2430-JPは1株のローズマリーであり、
その異常性は、自身が誰かに言及された際に、
言及者が過去に失ったものについて
「SCP-2430-JPは◯◯ではありません」という形式で
余剰情報を発生させるというものだった。
こつまりこれらの余剰文章は全て
その異常性の産物だったのだ。
SCP-2430-JP-aは「SCP-2430-JPは[その情報を作成した人物がこれまでに知覚した事象]ではない」という主張の形をとり、情報作成者の語彙の範囲で発生します。
情報媒体が文書であった場合、SCP-2430-JP-aには情報作成者の記憶上の文書が混入する可能性があります。
また、SCP-2430-JP-aを形成する文章で扱われる事象は、情報作成者が作成時点で既に失われたと認識しているものに限られます。
例外は確認されていません。
上記を踏まえて、
さらに余剰文章の内容を追っていくと
その中にエージェント・アルセニエフという人物の名前が
繰り返し登場していることに気がつく。
SCP-2430-JPは遊園地のどこかにいるイエネコ(Felis catus)ではありませんし、エージェント・アルセニエフに購入させられた、うんざりするほど紅茶の匂いが取れないロシア語辞書でもありません。
SCP-2430-JPはエージェント・アルセニエフの頭部ではありません。
前日の夜だというのにチェスがしたいと騒ぐエージェント・アルセニエフではありません
これらの内容からして、
報告書の執筆者とエージェント・アルセニエフは
特別に親密な関係にあったものと思われるが
SCP-2430-JPで言及する対象が
「既に失われたもの」であることを考えると
この人物は既に死亡しているものと考えられる。
加えてその他のいくつかの言及から
エージェント・アルセニエフが職務中の事故で死亡したこと、
その後報告書の執筆者が深い喪失感を抱えながらも
悲しみを忘れるために仕事に打ち込もうとした背景が見えてくる。
SCP-2430-JPは病棟を出た後の、まるで世界が終わるような眩しさではありません。
SCP-2430-JPは焼却炉で灰になった辞職届ではありません。
SCP-2430-JPは誰かが手向けたローズマリー (Rosmarinus officinalis)ではありません。
SCP-2430-JPは毒物をあおって死に続ける夢ではありません。
ちなみに、ローズマリーには
「あなたは私を蘇らせる」「変わらぬ愛」「追悼」「誠実」
という花言葉があるそうな…