- SCP-001とは何か
- ジョナサン・ボールの提言 - 論文の束
- ギアーズ博士の提言 - プロトタイプ
- クレフ博士の提言 - ゲートガーディアン
- qntmの提言 - ザ・ロック
- ブライト博士の提言 - ファクトリー
- マン博士の提言 - 螺旋の小道
- マッケンジー博士の提言 - 遺産
- コードネーム S ・アンドリュー・スワンの提言 - データベース
- スキャントロンの提言 - 財団
- コードネーム: ジョリッチ/ディーメティックスの提言 - 36
- コードネーム: ロジェの提言 - Keter任務
- コードネーム: DJ・カクタス/ツイステッドギアーズの提言 - ウロボロス
- コードネーム: ケイト・マックティリスの提言 - 記録
- コードネーム: Kalininの提言- 過去と未来
- コードネーム: ロングの提言 - 総意
- コードネーム: S. D. ロックの提言 - 夜明けの刻
- コードネーム: スパイク・ブレナンの提言 - 神の盲点
- コードネーム: WJSの提言 - 正常性
- コードネーム: ビリスの提言 - とらわれざる世界
- コードネーム: タンホニーの提言 - 死せる者たち
- コードネーム: リリーの提言 - うつくしい世界へ
- コードネーム: タフトの提言 - 緋色の王
- コードネーム: ジム・ノースの提言 - 一介の玩具作り
- CODE NAME: I.H. Pickmanの提言 - Story of Your Life
- コードネーム: ザ・グレート・ヒッポ (feat. ペッパーズゴースト)の提言- 良い子
- コードネーム: WMDDの提言 - Project Palisade
- コードネーム: キャプテン・カービィの提言 - O5-13
- CODE NAME: Pedantiqueの提言 - Fishhook
- コードネーム: ノット・ア・シーガルの提言 - 港の空
- CODE NAME: Meta Ikeの提言 - The Solution
- コードネーム: ノワール・ボックスの提言 - ティンダロス・トリニティ
- さいごに
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SCP-001とは何か
SCP財団の存在を知ったならば
誰もが一度は気かけたことがあるであろう
一番最初のSCP報告書。
これには正確には2通りの解釈があり、
まずSCP財団というコンテンツの始まりという
「メタ的な意味」での一番最初の報告書であれば
ご存知のように「SCP-173 - 彫刻 - オリジナル」となるわけですが、
今回フィーチャーするのはそちらではなく、
「架空の組織としてのSCP財団が史上最初に作成した報告書」
という設定上の最初の報告書の方であり、
こちらはナンバリング通り
「SCP-001報告書」がそれに当たります。
しかしこのSCP-001報告書、
いざ開いてみると最初に目に飛び込んでくるのは
よく慣れ親しんだ報告書のフォーマットではなく
物々しい警告文と不気味なフラクタル画像(ミーム殺害エージェント)。
さらに下へとスクロールしても
複数の個別タイトルへのリンクがずらりと並ぶばかりであって、
報告書というよりもカノンハブに近い構成となっています。
(↑SCP-001報告書ページに掲載されているミーム殺害エージェント)
いったいなぜ、SCP-001の報告書だけが
このような例外的な形式となっているのでしょうか?
報告書を隠すなら報告書の中
まず大前提として
SCP-001ページに掲載されている大量の報告書のうち、
そのほぼ全ては財団が用意したダミー(カバーストーリー)です。
SCP-001の正体は財団にとっての最重要機密事項であり、
その防衛策の一環として大量のダミー報告書を作成し、
万が一情報を盗まれても
偽の情報をつかませることができる保険を打っているわけですね。
また、ここで多くの方が感じているであろう
「で、結局どれが本物のSCP-001報告書なの?」
という疑問ですが、結論から言うと
私たちがそれを知らされる機会はこれまでにも
そして恐らくこれから先にも全くないものと考えられます。
なぜならそれこそが
SCP-001報告書の大前提であり、
かつそのことには後述する
コミュニティ運営上のメタ的な事情
にも深く関わっているからです。
創作投稿サイトならではの事情
さて、先に触れたように
SCP-001がこのような形式となった理由には
その設定上の性格を強調するのみならず
多人数が参加する投稿サイトならではの
メタ的な理由も関わっています。
(というよりもそちらの方が重要)
まずSCP報告書の投稿者の立場からすると
SCP-001という特別なナンバーの報告書の作者となることは
間違いなく最高のステータスであり、
もしその名誉に特定の誰か一人だけしか与れないとなると
執筆者間に無用な諍いや軋轢が生じる懸念がありました。
そこでこの問題への回答として
「誰でもSCP-001の記事を執筆できるけど、
どれが真のSCP-001であるかは読者の判断に委ねるよ」
という現在の提言システムが採用されることとなったのです。
そしてその結果、執筆者には
誰もが公平にSCP-001報告書の著者となれるチャンスが与えられ、
読者には様々なバリエーションの001報告書を楽しむ機会が、
またSCP-001報告書自体にも
特別扱いされることによる一種の「箔」がつき、
全ては丸く収まったというわけですね。
ちなみにSCP-001報告書の内容は
作者によって千差万別ですが、
その多くには以下のような共通点があります。
時間が無い人の為の要約
さて、そろそろ本題に入ります。
本日私が行いたいのは
公式サイトのSCP-001報告書(http://ja.scp-wiki.net/scp-001)上に
記載のある全31種の提言全てに対して、
手短な概要をちょっとした感想付きで作成することです。
解説に当たっては報告書の内容はもちろん、
ディスカッションやredditフォーラム、
先行する解説サイトの情報なども参考にしつつ
それらを統合してより簡潔に、
より分かりやすく、そしてより網羅的な
解説を行うことを目標としました。
ちなみに今回ご紹介する提言の中には
日本語未翻訳のものも幾つか含まれていますが
それらについては独力での翻訳と
海外サイトの情報を照らし合わせた解説を試みています。
(所詮素人訳なので、怪しい部分が多々あるかもですが…)
また企画の性質上ネタバレ全開ですので
申し訳ないがネタバレはNG、という方は
先に各提言に併記してあるリンクより
公式サイトの内容をご覧いただくようによろしくお願いします。
ジョナサン・ボールの提言 - 論文の束
オブジェクトクラス: Keter
SCP-001は国家及び世界規模での安全保障への最大脅威であるというのが現管理室の見解です。
未発見のSCPオブジェクトの
詳細が記された書類の束。
開くたびに記述されている
SCPの種類が変化します。
財団はこの論文がただ単に
未知のオブジェクトの情報をもたらすものなのか、
それともこの論文を開くことをトリガーとして
新たなオブジェクトを生成する性質のものなのかについて
確信を持てていません。
ギアーズ博士の提言 - プロトタイプ
『眼球』は大きく、球状で、
ミルキーブルーの球体は恐らく頭や喉の中に仕舞われています。
口が開いている時にその中を『転がっている』のが見えます。
それには瞳孔や虹彩が全くありません。
身長5.5フィート(約195cm)、
体重97ポンド(約44kg)で
灰褐色の肌を持つ攻撃的な人型生命体。
テレポートや防御に利用できる
極小の特異点を生み出す能力と
大量の放射線をばらまく性質を持ち、
素早く狡猾で人間を食糧としています。
報告書のフォーマットが
通常と異なる簡素なものであること、
Hermann "Keter"博士を殺したとあること※から
財団が今のように高度に組織化される
以前に作成されたものであることが仄めかされています。
(※この件に由来してオブジェクトクラスKeterが命名された、という解釈)
クレフ博士の提言 - ゲートガーディアン
オブジェクトクラス: Euclid/Keter
主は支配する主は支配している主が永遠に支配するだろう主は支配する主は
支配している主が永遠に支配するだろう主は支配する主は支配している主が
永遠に支配するだろう主彼は神主彼は神主彼は神主彼は神主彼は神主彼は神
主彼は神主彼は神選ばれし民よ聞け我々の神主は唯一の
全長約320mもの巨躯と燃え盛る4枚の羽を持ち、
チグリス川とユーフラテス川の合流点に近い
隠された場所(サイト0)に存在する人型の実体。
太陽に匹敵する温度を持ち、
触れたものを原子レベルで消失させる剣や
人間の精神に直接働きかけ、
記憶を失わせたりする能力を有しています。
報告書内の記述からは
当該オブジェクトが旧約聖書の創世記から
エデンの園を守っている天使であることが
強く暗示されており、中でも
SCP-076:アベルとSCP-073:カインについては
報告書内に実験内容の一部が記載されていて、
前者は当該オブジェクトに近づくことを拒否し
後者は近づきこそしたものの途中で急に苦しみ出し、
その後実験は[データ削除済]のために中止されています。
また報告書の最後には
財団が傍受した未来のサイト0からのものと思われる
電信の内容が記載されており、
そこには"携挙"※を暗示させるような
内容が含まれています。
(※携挙とはプロテスタント派キリスト教の終末論の一つであり、
終わりの時代にイエス・キリストが天から降りてきて
福音を得たクリスチャンと
過去に亡くなった真のクリスチャンを空中に引き上げる現象)
ちなみにこの提言は
「でかくて燃えてて羽が生えたヤベーやつ」という
ビジュアル的な分かりやすさからか、
のちに紹介するブライト博士の提言の中で
典型的なカバーストーリーの代表例として
言及されたりしています
qntmの提言 - ザ・ロック
Pluto計画は財団の資源による十分な援助の下に続行されます.−ミールスキ博士
複雑な金細工に覆われた
白斑のパターン※を持つ幅15cmほどの縞瑪瑙。
微小な熱輻射を連続して行なっており
触れるとわずかな温かみが感じられます。
(※この白斑はNASAの観測結果によって
全領域を覆う宇宙マイクロ波背景放射を
想起させる形であることが確認されています。)
元はあるスコットランド貴族が
メソポタミア砂漠横断中に
とある遺跡の内部で発見したもので、
同じ遺跡で発見されたルーン文字の碑文によると
このオブジェクトは中に何か
とんでもないものを封印している可能性が高いとのこと。
現在、財団のミールスキ博士によって
当該オブジェクトの解錠作業が試みられていますが
discussionには著者自身より、
財団世界は実はそれ自体が外宇宙に存在する
人間より上位の何者かが作り出した
巨大な収容プロトコルであり、
このオブジェクトの鍵(=外宇宙との扉)を開くことは
その結果が何であれ財団世界にとって
最悪の結果をもたらすだろう
という恐ろしい補足が投稿されています。
しかしながら報告書には
この危険性に気づいて解錠の中止を上申した
ハック博士がクビになったことが記されており、
財団がこの危険性に気づかず、自分で自分たちの
滅びの引き金を絞り続けていることが示唆されています。
ブライト博士の提言 - ファクトリー
今や貴方は全てを知りました.嬉しいですか?そうは思いませんね.何故貴方に教えたかですって?私は年老いてしまったのだよ,エヴェレット.私が死んでも,誰かがそれにえさをやり続けなくちゃいけない.もしかしたら,君は違うかもしれない.君はそれに立ち向かう方法を見つけてくれるかもしれない.
…だが私は信じきれない.
この提言は通常と異なり、
SCP-001について深入りしすぎたことで
O5の査問を受けることとなったエヴァレット博士に
SCP-001にの真実を知るO5の一人が
一方的に語りかける口述形式で書かれています。
なかなかの文章量ですが内容を端的にまとめると
まず1800年代にアンダーソンという悪魔崇拝者が
立てた巨大な工場があり、その工場がいつしか
数々の残虐行為と今現在SCPオブジェクトと呼ばれる
複数の異常な物品の製造現場へと変貌。
それを語り手のO5を含む財団の
前身的な組織のメンバーが襲撃してアンダーソンを殺害し、
後に語り手のO5が工場とSCPオブジェクトの一部を回収。
これを用いて現在の財団に繋がる自分の組織を拡大させます。
しかしある時オブジェクトの一部(=報告書内では"妖精"と呼ばれている)が暴走し財団はほぼ壊滅。
語り手のO5も追い詰められますがギリギリで
かつてアンダーソンと契約していた「工場の悪魔」の元へたどり着き、
そこで「ある契約」を結ぶことを条件に時を巻き戻させて
結果的に語り手のO5は妖精たちを殺戮することに成功します。
しかし語り手のO5はこの契約を結んだことで
定期的に悪魔の元に生きた人間(Dクラス職員や研究者、エージェントなど)
を捧げる義務を背負う事となってしまいました。
そしてなぜ語り手のO5が
こんな重大な機密をエヴァレット博士に打ち明けたかと言えば、
それはつまりSCP-001の真実に近づけるほど
優秀なエヴァレット博士に真実を知らせて
自分の後継者とすることで
長く続いてきた「悪魔」との契約に
終止符を打つかすかな望みを託したわけですね。
しかしこの際語り手のO5は同時に
「だが、私は信じきれない」とも口にしており、
財団の未来に希望があるのかないのか、
含みを持たせたまま報告書は終わりを迎えています。
マン博士の提言 - 螺旋の小道
これを読んでいる君へ、まずはおめでとう。
我々の1人は既に亡くなっている。
何かに殺されたのだ。
おそらく怪物、またはGOCからの刺客か。もしくはただ単に我々が少し
炎に近づきすぎただけかもしれない、
アーロンのように。
オブジェクトクラス: Embla
らせん状の砂利道で、
反時計回りに歩くとずっと登りが続き、
時計回りに歩くと逆にずっと降りが続く
不思議な性質を持っています。
このオブジェクトは
たったそれだけの無害なものなのですが、
本題は報告書に添付されている文書001-O5です。
その文章によれば1891年に
アーロン=シーゲルという一人の天才が
たまたまこの小道を歩いたことで
この世に自然の合理性から外れる
異常な何かが存在することを発見し、
それをきっかけにアーロンはその才能を
異常なアイテムを作り出すことに没頭します。
そうして生まれたアイテムこそが
SCPオブジェクトであり、最初のうちは
SCP-005(どんなものでも開くカギ)など
有用なものを作り出せていたものの
ほどなくして危険なプリオン病(scp-008:ゾンビ病)を
作り上げてしまいました。
しかしそこまでに資金を使いすぎていた
アーロンと支援者たちは引き返すことができず
さらに研究を続けた結果
SCP-015(悪夢のパイプ)やSCP-087(吹き抜けた階段)
などのさらにやばいオブジェクトが続々誕生。
しまいには政府の援助を得るために
これらのオブジェクトを自分たちが
「作った」のではなく「発見した」と虚偽の報告をし、
それが現在のSCP財団のオリジンとなったとするのが
この提案のあらましです。
マッケンジー博士の提言 - 遺産
オブジェクトクラス: Euclid
我々は恐怖にまみれた漆黒の夜に立ち戻ることはありません。未知のものに支配されることはありません。我々は自分たちの為に立ち向かいます。
人類の大半は何も知りません。一方で我々は暗闇と戦い,収容し,大衆の目から隔離します。人類が"普通の世界"という幸せな幻想の中でいつまでも暮らせるように。
「管理官」と呼ばれる
詳細不明の人物の所有物だった
異常なほどの質量を持つ
薄い滑らかな金属の機器と
同じ素材で作られたキー、
33ページの日記を含む
一連のオブジェクトのグループです。
日記からは「管理官」が基底世界※とは
別次元の宇宙から来た存在であること、
彼の宇宙の人類が現実改変や不老不死といった
非常に高度な技術力を持ちながら
自分たちの技術力に溺れた末に他の宇宙にも
影響を及ぼす多次元宇宙空間の崩壊を招いたこと、
そして「管理官」その崩壊の連鎖を防ぐため
すでに滅んだ他宇宙の技術の粋を携えて
たった一人で基底世界に送り込まれてきたことが読み取れます。
(※基底世界=SCP財団が存在する基本の世界)
しかし管理官が見つけたという
「世界の崩壊を食い止める方程式と技術」
が記されたページは紛失しており、
つまり管理官の言葉が真実であれば
財団がその消えたページを早急に見つけない限り
世界の滅亡は避けられないということを意味します。
コードネーム S ・アンドリュー・スワンの提言 - データベース
オブジェクトクラス: Keter
だが俺達は神を見つけてしまった。それがSCP-001だ。
ホラー作家の一団みたいに悪趣味な奴らだ。
一切の説明が削除され、
安全に収容する手段も一切ないという
謎多きSCPオブジェクト。
財団はこのオブジェクトの情報が
漏洩することを極端に恐れ、
暗殺を含むありとあらゆる方法で
情報を隠蔽し続けてきましたが
唯一あるサイトで財団のデータベースの
整合性を保つ仕事に従事していた
一人の職員の個人用サーバーに情報が残されていました。
その情報によるとSCP-001は財団の
サーバーの情報をランダムに書き直し、
しかもその書き直された情報が
財団世界にそのまま反映されているとのこと。
ここで勘の良い方はお気づきかもしれませんが
この提案におけるSCP-001とは、
すなわちSCPの報告書を書きウェブサイトに投稿している執筆者たちや
SCPを読んで楽しんでいる私たち自身のことであり、
要するにこの提案は第四の壁をテーマとしているわけですね。
まぁ確かに財団世界の人々からしてみれば
SCPの著者やSCPのファンは
自分たちの世界にやばいオブジェクトを作り出して
あまつさえそれを楽しんでいるとんでもない存在
と捉えられても仕方ないわけですが、
かといって彼らがもし私たちを「封じ込める」
方法を見つけたらそれはそれで大変なので
どうかほどほどに頑張って頂きたいものですね(笑)
スキャントロンの提言 - 財団
世界は多分毎日毎週こうでしょう。その上、我々O5は知っています(O6を失った事については残念に思います)かろうじて明瞭であると、講堂の中に納まる事は█████ではないと!さようなら、あなたがたの困難に幸あらん事を。
内部で複数の変異が確認されている
ある高校(CA3)に関する報告書。
その高校には不釣り合いな最新コンピューターや
鋼板で入り口が塞がれた講堂などが存在し、
内部に送り込まれた隊員たちは揃って行方不明。
CA3の中には住人と思われる
複数の人間が滞在していて、
発見から3ヶ月後に突如出現した
講堂の鋼板の穴から複数の
異常なアイテムを運び出している姿が確認されています。
と、一見財団に敵対する危険団体の
秘密基地か何かのように思えるこのCA3ですが、
報告書をよく読むとその形式が
通常のSCPのフォーマットではなく
かつて財団が所属していた
FBIの異常事件課(UIU)のフォーマットで書かれており、
つまりこの報告書は財団ではなく
UIUの職員によって書かれたものであることが分かります。
さらに報告書末尾に添付された
「CA3から送られたメッセージ」を読むと
今まで語られていたCA3の正体が、
現在私たちの知るSCP財団であったことが明らかになります。
財団=SCP-001というアイディアも面白いですが、
報告書=財団の書いたものであるという
先入観を利用した点がなかなか巧みな報告書ですね。
コードネーム: ジョリッチ/ディーメティックスの提言 - 36
オブジェクトクラス Humanoid
先生、世界はもう終わっているんだよ。これが最後の戦いだったんだ。世界の時間は来てしまい、そして去った。蛾のほかは何もかもが無くなるまで、それは一日ずつ薄く引き伸ばされていくだろう。だが、まだいくらかの時間が残されている。我々は互いを見つけることができる。
近くにあるか、接触したSCPの異常性を
軽減または完全に無力化できる、36人の
年齢も性別も国籍もバラバラな人々のグループ。
彼らは知性のある特定のSCiPと会話することもでき、
報告書の中ではSCP-361「青銅の肝臓」、
SCP-738「悪魔の取引」、SCP-1295「メグの晩餐」
SCP-073「カイン」、SCP-076「アベル」と
まるで旧知の中であるような会話をした後、
それらの異常性を無効化したことが記録されています。
しかしうまい話には裏があるもの。
彼らはその無効化能力を有する代わりに、
彼らがなんらかの理由で死亡した時に
因果関係は不明ですが複数の
重度の超自然現象を引き起こし、
数百人規模の死者を出すという
時限爆弾のような性質をも併せ持っていたのです。
このことから財団は彼らの収容を早急に進めていますが、
リストを見る限り半数以上が未収容となっています。
また報告書全体を通して
この36人が旧約聖書と関連していることが仄めかされており、
要注意団体の一つ「境界線イニシアチブ」の指導者は
その声明の中で彼らを「世界を若返らせるもの」と呼称しています。
コードネーム: ロジェの提言 - Keter任務
オブジェクトクラス:Thaumiel
SCP-001を起源とする
500以上のKeterSCPオブジェクトが
収容されている巨大な施設。
特徴的なのは施設内の各収容房に
オブジェクト同士が互いが互いの
異常性を打ち消しあうように
ペアで収容されている点。
しかしひとたび収容房が破られると
そこから人間の生活に好ましくない
影響を及ぼす空間的物理法則的な異常が広がり、
もしすべての収容が破られた場合には
全宇宙のほぼ全てが書き換えられてしまう
リスクがあるとされています。
ちなみに本提言の中には
SCP-505「インクの沁み」×SCP-140「未完の年代記」、
SCP-1295「メグの晩餐」×SCP-871「景気のいいケーキ」
のようなお互いの特性を無効化する掛け合わせの例が載っており、
既にそれらのオブジェクトを知っていた身としては
一種のクロステスト的に楽しみながら読めました。
コードネーム: DJ・カクタス/ツイステッドギアーズの提言 - ウロボロス
個々人では、我々は壊れたままです。
団結すれば、我々も神になれます。
DJ・カクタス氏が投稿した複数の提言を
「ウロボロス」という名前のハブとしてまとめたもの。
まずそれぞれの提言の文量がかなりのものであり、
加えて各章ごとに専用のバナーが用意されていたり
報告書の中に肉声による録音データが
挿入されていたりとそのボリュームは
今回紹介する提言の中でもダントツでNo1。
全てをきっちり読み切るには
相応の時間と覚悟が必要となるでしょう(笑)
子供たち
オブジェクトクラス: Keter-Thaumiel
財団が「奈落の王国」という
Keterクラスの現実改変能力者集団に対抗するために
独自に作り出した特殊能力を持った子供たち。
体からガンマ線を発し、
超長距離からあらゆるものを蒸発させる
恐るべきパワーを持っていたものの
あまりに強すぎたため、現在は
財団によって地下深くに封印されています。
壊れたる神
オブジェクトクラス: Maksur
山が動いているようなもので、胸にかき込んだあらゆるものが燃やされた煙で空は黒く染まっていました。そして、それでもまだ成長途中だったのです!それは……分かりません。我々は皆XK-イベントを想定した訓練を受けていますが、これはどの訓練よりも遥かに上を行っていました。我々は、我々が死ぬ運命にあり、これが我々を殺すだろうということを理解しました。もはや時間の問題でしかありませんでした。
要注意団体、壊れた神の教会の信者たちが
自分たちの信じる「神」を復元するために
1942年にメキシコ、ラパス近郊で
組み立てた一連の異常な機械部品の総称。
このオブジェクトには
SCP-217、SCP-1139、SCP-882、SCP-629などの
複数の他SCPオブジェクトも含まれており、
当時信者たちが組み立てて起動した時には
他の異常オブジェクトをさらに吸収すべく
勝手に動き出し始め、その山の如き巨体で
メキシコの地図をも変える大規模な地形破壊と
無数の犠牲者を出す大惨事を引き起こしました。
しかしその途中でSCP-2399「故障中の宇宙戦艦」
と交戦し大きく破損。最終的にSCP-882を
除去された事で完全にその機能を停止しています。
とはいえ各パーツの異常性は未だ残っており
財団はこれらが再び結合しないように、
これらを全て分離したまま保管しなくてはなりません。
また、報告書内には
のちに財団エージェントが回収した
こいつの心臓部分に
「ザ・ファクトリーの資産」という
製造元の刻印が記されていたという、
他の提言との繋がりを思わせる記述も見られました。
贖罪
オブジェクトクラス: Keter
子供たちは恐怖のうちに死ぬことなく自由な暮らしを謳歌できる。君たちの果てしなき戦いの終焉。暗闇の終焉。光の中に生きる自由。全ての痕跡は消し去らなければならない。この世界は洗い清められなければならない。財団が贖罪を逃れることはない。これこそが唯一の活路だ。
武装次元収容エリア-11の
地下6階に収容されている
人型の重力特異点。
重力を操作する事による
いかなる方法によっても軽減できない
現実改変能力を有しています。
こいつの誕生のきっかけは1982年、
粒子加速器の実験中に
カルヴィン・デスメット博士という
一人の研究者が誤って裸の特異点に曝露し、
その中へと吸い込まれた事故でした。
それから30数年後に
同施設にて行われた財団の別の実験中に
突如意思を持った人型の特異点(=SCP-001)が出現し、
さらにはその特異点が実は自分がかつて
カルヴィン博士だったものだと語り始めたのです。
SCP-001いわく、
カルヴィン博士は特異点に吸い込まれた後
財団世界とは別のどこかに投げ出され、
そこで多元宇宙の崩壊によって
財団世界が数十年以内に滅びることを知り、
しかもその終焉を回避するたった一つの手段は
自分たち以外の全ての現実を破壊する意外にはないとのこと。
そしてSCP-001は同時に
自分ならそれを実行できるから
そのために今囚われている財団の装置から
自身を解放することを願い出ます。
SCP-001によるこの提案は
O-5の会議にかけられ賛成多数で可決。
可決後はまず様子見として
SCP-001が完全位解放されないレベルまで
装置の出力を下げ、
SCP-884「手鏡」を抹消する実験が行われました。
すると確かにSCP-884は消失したものの
直後に実験に立ち会っていたO5-1とO5-4が
ねじれて折りたたまれ、極小の点にまで圧縮されて消滅。
彼らはおそらく
かつてのカルヴィン博士と同じように
強制的に特異点化させられたものと思われ、
この報告書のタイトルに照らして考えるなら
彼らはきっと自分たちの世界のために
他の世界を滅ぼした罪の贖罪を
自らの苦痛と命でもって支払わされた※のでしょう。
(※O5-1、O5-4が事前の会議で
どちらもこの実験に賛成し、
特にO5-1は他の世界の終焉に伴う
大くの生命の死を「無関係の命」の死だと
冷たく切り捨てていたことも
この展開への伏線だったと考えられます)
この結果を受け
当然ながら以降の実験は全て中止。
SCP-001は引き続き装置に
封印され続けられることとなったのでした。
終焉の在り方
「違うよ、カルヴィン、」
声は言った。優しく、疑いようもなく、結論するように。
「善などない。悪などないのだ。」
SCP報告書ではなく、
要注意団体の一つ、カオス・インサージェンシー※
のメンバー数人が財団のO-5メンバーを
次々に殺害していく物語。
(※元々はO-5だけが知る財団の秘密部隊だったが
ある時突如反旗を翻し独立した。財団を憎悪している)
その道中でリーダー格のカルヴィン以外の
仲間は一人一人命を落としていきましたが
最終的にカルヴィンは最後のO5、
O5-1アーロン・シーガルを
聖域と呼ばれる場所で殺害することに成功します。
しかしその直後、
O5-1によって殺害されたと思われていた
財団の「管理者」から着信が入り、
カルヴィンがもしこのままここを立ち去れば
財団が崩壊し、それまで収容されていた
オブジェクトが解放されて世界がたちまち滅びること、
そしてそうならないためにカルヴィンには
アーロンの仕事を引き継ぐ義務があることが伝えられます。
この瞬間カルヴィンは
多大な犠牲を払って今まで
自分が行ってきたことが無意味だったこと、
そしてアーロンもまた利用される存在だったことを知り、
しばらくそこでかつてアーロンの身に起きた
出来事の幻影に想いを馳せたのち、
再び鳴り出した電話の受話器を受け取るのでした。
この壮大な物語のエピローグは
財団の新たなO5-1に就任したカルヴィンが、
しかし傍にはかつてO5抹殺作戦の中で
命を落とした女性メンバー、オリヴィアを模した
人ならざる実体と同じ部屋で暮らすという
過去への未練を断ち切れない描写を含みつつ、
O5-1としての新たな1日を迎える場面で幕を閉じます。
著者のdjkaktus氏が数年にわたる
努力の末書き上げた本稿は
まるでこの脚本で映画が一本
作れてしまえそうなほどの超特大ボリューム。
登場する各O-5のキャラ付けや
工夫に満ちた展開の描き方、
加えて訳文の文章表現もなかなかに巧みで、
読み手としてはその情熱にただただ感服するほかありません。
海外のSCPコミュニティで
この提言が一番だという人が
少なくないのも納得の完成度でしたね。
コードネーム: ケイト・マックティリスの提言 - 記録
オブジェクトクラス: Thaumiel (主観的評価)
そうでないならば、わたしは裁かれる。
そうであるならば、わたしは見守っている。
わたしは正しく物事を進めようと思う。
時間がかかるでしょう。わたしの幸運を願って欲しい。
- MN
この提言におけるSCP-001は
それが収録されているデジタル数字のリストに
異常な影響を及ぼす音楽アルバム。
このSCPを管理していた
メアリー・ナカヤマという女性研究員が
この性質に気がつき、何度か小さな実証実験を行った後
「メアリー・ナカヤマは全知全能の神となる(要約)」
という内容をSCP-001の報告書に追記し
その直後に財団のサイトから失踪。
その後財団はSCP-001をThaumiel※に認定し、
(ただし客観的に書いた物事は全て
現実化されてしまうので主観的評価の但し書きつきで)
このページをまずい事態が起きた場合の
切り札として保管しておくことを決定しました。
(※Thaumiel:財団の切り札となりうる有用な効果を持った
オブジェクトに与えられる特別なオブジェクトクラス)
またこの報告書の最後には
ナカヤマ研究員のコンピューターから
発見されたドキュメントが添付されており、
そこには彼女が15歳の頃に自殺未遂をしたこと、
しかしその時に神の姿を見て救われたことが記されています。
彼女はそのドキュメントの最後に
今回得た神の力を使って
「わたしは正しく物事を進めようと思う。」
と記していますが、現実改変能力者やら
同じく神の能力を持つ老人やらがひしめいている財団世界で
果たして彼女の力がどこまで通用するのか、
その後の動向が非常に気になるところです。
コードネーム: Kalininの提言- 過去と未来
親は子の犠牲となるもの、ですよね?
子が、絶えない日差しの下で一日でも長く生きながらえるように、
意思・知性・身の一片残らずを差し出すのです。
それがあるべき姿です。きっと覚えていることでしょう。
複数の独立したストーリーで構成され、
複数の既存SCPが絡む非常に壮大な物語。
提言のトップには
「2798-5の非常事態計画の発動により、
世界人口に対し効果的自殺手段を配給し、
SCP-001と利害関係にある
一般人を助命させるべきか否か。」
という物騒な議題を
O-5が議論の末否決したことが記されており、
その議論の理由を含む物語の全容については
下に羅列された下層ストーリーを読むことで
全てが明らかとなる構成になっています。
とはいえ本提言の全てを漏れなく
解説するにはあまりにも余白が足りないので
今回はひとまず要点だけに絞りながら
各章のダイジェスト形式で解説を進めます。
まず1番目のストーリー
「ハービンジャー.docx」では
O5のメンバーの一人、O5-2が
財団施設に収容されている
未来を見ることのできる老人(SCP-411)の元を訪れ、
そこで「SCP-411が手の星からやってきたこと」
「SCP-411曰く"人類"の未来が晴れ渡っていること」「SCP-411が
手の星ではなく地球に居られてよかったと感じていること」
などの情報を聴き出す様子が描かれます。
続く2番目のストーリー「scp-001.pdf」は
従来の報告書の形式になっており、
SCP-001が人類にできる限りの苦痛を与えたいと
考えている知的な単一存在、または複数存在であること、
SCP-001が別のアノマリー(異常)を生成したり、
その異常性を増大させる現実改変能力を
観測可能な全宇宙空間に及ぼすことができること、
そして財団がこの脅威に対して特殊なエネルギー場である
SCP-2798「この死にゆく世界」を利用して
SCP-001から地球が狙われないように
偽装工作を行ってきたことが示されています。
しかしこの報告書内では同時に
ある時点でSCP-2798の効力が失われたこと、
そのことによって地球が再びSCP-001に発見され、
SCP-001によって様々なオブジェクトが強化&暴走し
世界中に壊滅的な被害を及ぼしたことも示されています。
3番目のストーリー「延長された討議.docx」の内容は
冒頭の動議に対して否決の為の工作を行っていたO5-2と、
逆に動議に賛同していたO5-3との会話が示されます。
ここでO5-2は自身が動議を否決した理由について、
SCP-411を含む複数の未来予知能力を持つ
アノマリーが「人類の素晴らしい未来」を示したことを
最大の根拠にあげています。
4番目のストーリー、「映画館での一夜.docx」では
O5-7が映画館で体験した
SCP-001からのメッセージの内容が語られます。
その描写はいくぶん象徴的ではありますが、
全体的には「SCP-001が人類を苦しめることで
SCP-001が何らかの利益を得ている」
ことを示唆しているように見受けられるものでした。
5番目のストーリー「標準夢報告66-Y 990-1.pdf」では
名称不明のある博士が自分の夢に
SCP-990「ドリームマン」が出現したことを報告しています。
これは夢の中に現れて、絶対外れない予言を
投げかけてくるオブジェクトで、件の博士に対しては
・あなた(ら)は正しい場所にいません
・O5-2は絶対的に正しく、破滅的な間違いを犯している。
・あなた方がSCP-001と呼ぶ物の主たる原動力は、他の何よりも、愛だ。
という3つの意味深な予言を与えました。
6番目のストーリー、「作戦後報告2272'」では
SCP-2272を通じてSCP-001の
「他SCPの異常性を強化する」という性質が描写され、
さらにSCP-001が自分たちの文明を「天国」とみなし、
地球の文明を「地獄」と見下したように捉えていることが分かります。
7番目のストーリー、「標準夢報告66-Y 990-2.pdf」では
O5-2の夢の中にSCP-001が
かつて彼女が失った幼子の姿で出現し、
メッセージを伝える様子が描かれます。
SCP-001はその夢の中で、
・人類とSCP-001は「親と子」のような関係である
・SCP-001の世界には九つの衛星がある
・人類はかつてSCP-001の衛星の一つである「手の星」に住んでいた
・しかし人類はある時点で「手の星」から地球へと逃げ去った。
・SCP-001は人類が「手の星」からの逃亡者である事実を忘れさせた
・SCP-001は複数の個体の意識が結合した巨大なネットワークである
・SCP-001は死ぬことも傷つくこともないが魂の調和を保つには、他者の苦しみを必要とする
・SCP-001のネットワークが完成するには人類が手の星へ帰還する必要がある
・SCP-001はいずれ人類が自らの意思で手の星へ帰るだろうと考えている
・SCP-001は↑の根拠を加護の外にある脅威(=SCPオブジェクト)に求めている
などの重要な情報を口にし、このことで自分が
SCP-001の企ての手助けをしてしまったことを悟ったO5-2は
次の章で自ら命を絶ったことが暗示されます。
8番目のストーリー、「敷居の男.avi」では
エジプト、中国、アメリカなどの世界各地に
SCP-001による巨大なホログラムが出現する様子が描かれます。
ホログラムの内容はSCP-001が
九つの衛星それぞれに殉教者を追放するもので、
CP-001の指導者と思しき〈敷居の男〉が
SCP-001世界の住人と思われるメリッタ、
アグス、モナシア、プロテウスという全員が35歳の
4人の男女のうちモナシア以外の3人をそれぞれ
「目の星」「肌の星」「手の星」へと追放し、
モナシアのみが「ここに」残るようにと宣告を下します。
その後プロテウスについては
〈敷居の男〉とともに手の星へと移動して、
そこで儀式的に彼の両手が
切断されるまでの様子が上演されました。
この章からはSCP-001が
ある程度歳をとった住人を衛星に追放していること、
さらにその行為に宗教的な正当性を与えていること、
そして追放された人々の苦しみが
SCP-001のネットワークを維持するために
必要不可欠なものであることが読み取れます。
またこのホログラムには
人間の精神を汚染する効力があるようで、
ホログラムを目撃した多くの人々が
その後出現した「扉」になだれこみ
扉に入っていった人々は
二度と帰ってくることはありませんでした。
ここまでのところ、
財団および人類はSCP-001の脅威になすすべもなく
残された手段は自殺か「手の星」へ帰って
SCP-001の家畜として短い惨めな生を送るかの
二択しか残されていないように思えます。
しかし、この提言にはまだ一つ、
最後のストーリーが残されています。
そこで待ち受けるものは人類にとって希望か、あるいは…?
さて、本提言の最終章「ハシーとアウレリオ.pdf」では
かつてSCP-2303に関する研究を任されていた
機動部隊ファイ-9(“バルクエロ”)のリーダー、
アウレリオと、アウレリオの元恋人で故人のハシーの視点が
交互に入れ替わりながら※物語が語られていきます。
(※物語の時点でハシーは亡くなっているため、
幽霊のような立場で語り手を務めています)
SCP-2303はアルゼンチンにある
廃ビルのようなオブジェクトであり、
「内部に入った人間に過去に
実現しなかった様々なアイディアを上演する」、
「上演されるたびにそのアイディアは一貫性を失い、
最終的にはそもそもなかったことになる」
という特殊な異常性を有しています。
かつてここで上演された
〈敷居の男〉の儀式を見たことで愛するハシーを含む
バルクエロのメンバーを多く失ったアウレリオは
過去に決着をつけるため再度SCP-2303を訪れ
そこで「敷居の男.avi」にて唯一「ここへ残れ」と
命令されていたSCP-001の元住人
モナシアと対面し、これと対決します。
これは前章で敷居の男がモナシアに残れと
命令していた場所は地球だったことを意味しており、
そしてモナシアがSCP-2303に居た理由は
SCP-2303が自分たちのネットワーク維持に必要不可欠な
追放の儀式を「なかったこと」にする(=SCP-001も崩壊する)
ことを防ぐために、侵入者を排除するためだと考えられます。
モナシアとアウレリオの戦いは
終始モナシアの優勢で進みましたが
しかしモナシアがアウレリオの心臓を手刀で貫いた瞬間、
アウレリオの体の中に埋め込まれていた爆弾が作動。
SCP-2303、アウレリオとともにモナシアは
長らく忘れ去っていた死の苦痛と恐怖の中で息耐えます。
そして、このモナシアの死が
SCP-001のネットワーク全体に波及して
遅かれ早かれSCP-001そのものが
崩壊するであろうことを読み手に予期させる形で、
この長大な物語はついにその幕を降ろすのでした。
つまり、前章で人類の完全敗北かと思われた
SCP-001との戦いは、
一人の勇敢な職員の捨て身の特攻によって
土壇場で人類の大逆転勝利となったわけです。
以上が、本提言の
(これでもかなり駆け足気味ですが)概要です。
傲慢で独善的な「愛」を振りかざす
SCP-001の不気味さや
SCP-001の全員が一つのネットワークで
繋がっているという弱点を利用した
一発逆転のラストなど非常に物語性の高い一作でしたね。
ただ1点ケチをつけるなら
最後の逆転劇がちょっと強引に感じられたことでしょうか。
SCP-001滅亡の原因となったSCP-2303は
本提言と同じKalinin氏の作で、
いかにも本提言のために作られたもののような感じがしますし、
そもそも死ねば種族全体の死に繋がるリスクがあるうえに
爆弾程度でやられる耐久力しかないモナシアを
SCP-001が単独でSCP-2303の守りに就かせるでしょうか?
特に後者については本稿を最後まで読み、
国内外の解説サイトを巡ってみましたが、
どうにも最後まで腑に落ちませんでした。
(単に私の読み込み不足のせいかもしれませんが…)
しかもこのところ長編が続いたおかげで
既に文字数が16000文字を突破してしまいました。
もうこれ簡潔でもなんでもねぇな(諦め)
コードネーム: ロングの提言 - 総意
オブジェクトクラス:Euclid
過去世界を改変して現在の現実世界を出力した、
CK-クラス“再構築”シナリオの発生実現例。
これにより財団世界は1901年6月1日を境目として
全く違う形へと再構成されており、
SP-001に抗体を持っていたことで
改変前の記憶を保持していた13人の証言によれば
改変が起きる前の世界は
南北戦争に“ザ・ファクトリー”が
関与していたり、東アジアの大半が
ダエーバイト文明に侵略されていたり、
ナポレオンが機械兵団を操って
世界征服に乗り出していたりと
私たちの知る現在の世界とは
明らかに異なる歴史を歩んでいたことが分かります。
そして13人という数字でピンときたかと思いますが、
この記憶を保持していた13人というのが
ずばりこの報告書におけるO-5の初期メンバーです。
また報告書には彼らがもともと
別々のアノマリーを扱う組織の高位
役職に就いていた者たちで、
彼らの所属していた団体が1901年9月7日の
紫禁城条約の際に統合されたことを期に
「異常物品の確保・収容・保護」する役割を持った
現在のSCP財団が誕生したことが記されています。
そしてこの報告書の最後には
前任のO5から新任のO5に宛てたメッセージが
O5-1からO5-13まで全員分掲載されていて、
その内O5-13のメッセージには
記憶を保持していたのが本当は12人であり、
O5-13はO5-1(※英国所属)が今後の財団運営に占める
自分たちの組織の影響力を高めるために
ねじ込んだイレギュラーだったという
まさかの真実が明かされています。
実際にO5-1は過去にこの工作によって
O-5間で行われた
1.SCP-001以後の世界のまま存続する
2.何らかの手段でSCP-001以前の世界に戻る
3.O-5全員からSCP-001の記憶を消す
という三択の評決を
5-4-4という僅差で自分の望む
1番目の提案で押し通すことに成功しています。
(※ちなみにO5-13がいなければ票は完全に3つに
均等に分かれていたわけで、最悪の場合財団は
3つに分裂する事態に陥っていたものと考えられます)
以上が本提案のあらましです。
本来は2017年の歴史コンテストに
出品された報告書だけあって、
実際の歴史と国家間の思惑が絡む、
良い意味でどろどろした内容でしたね。
ちなみにO5-11は日本出身で
SCP-001以前に彼の所属していた組織が
ダエーバイトの驚異から孝明天皇を守ろうと
死闘を繰り広げていたことが明かされています。
(最終的には天皇もろとも殺害されていまいますが…)
コードネーム: S. D. ロックの提言 - 夜明けの刻
オブジェクトクラス:Apollyon
闇を受け入れる術を学ぶのだ、同士たちよ。光を恐れよ。
- 管理者
もともとはホラーをテーマにした
SCP-3000を決めるコンテストのために書かれた報告書であり、
他の提言とは違って財団の起源ではなく、
世界の終わりの様子を描いています。
この提言におけるSCP-001とは
ずばり太陽。それも普通の太陽ではなく
突如としてその光に照らされたあらゆる生物を
それが植物であれ犬であれ人であれ、
あるいは生物型のSCPオブジェクトであれ※、
それが生物ならばなんでもワックスのように
溶かしてしまう異常性を獲得した恐るべき太陽です。
(※SCPオブジェクトの場合はこの光を浴びると
同時にその異常性も失われます)
しかもSCP-001によって溶かされた生物は
溶かされてスライム化した後もまだ
生前の意識と知性が部分的に残っており、
他のまだ溶かされていない生物を求めて
光の中をまるでスライム状のゾンビのように徘徊し始めます。
(報告書ではこのスライムをSCP-001-Aと呼称しています)
このSCPはその性質上、
発現から間も無く全世界に甚大な影響を及ぼし、
報告書によれば最初に異常が観測されてから
わずか24時間以内に最大で68億人もの犠牲者を出しています。
報告書はこの大災害を生き延び、
SCP-001-Aの追跡を逃れながら
救難信号の出ていた天然の洞窟へとたどり着いた
「あなた」(財団職員)が、
そこでローガンという女性の残したログデータを発見し、
洞窟で起きたことを遡って確認する様子が
一人称視点で綴られています。
で、今回はネタバレありなので
結論まで書いてしまうと、ローガンは
しばらく仲間と篭城を続けたものの
同じ洞窟に逃げ込んでいた恋人のアリ(♀)を含めて
自分以外の仲間たちがSCP-001-Aに吸収されたことで
精神的にも肉体的にも追い詰められ最後は
オピオイド(鎮痛剤)を大量に服用して自殺。
主人公の「わたし」も
ログを確認し終えた後にそこに潜んでいた
SCP-001-Aと化したローガンに捕まって、
いよいよ吸収されてしまうという直前で
報告書は終わりを迎えます。
つまりは完全なるバッドエンドですね。
このようにかなりホラー色の強い内容ですが、
私が特に怖いと感じたのが、
たとえSCP-001-Aに吸収される前に自殺しても、
SCP-001-Aが残された死体を吸収して強制的に蘇生させ、
その上で彼らの一部として生き続けることを強要させられる点ですね。
「死」すらも逃げ場所とならない恐怖…
系統は別物ですが、
他記事でも以前に紹介した
SCP-2718「その後に起こるのは」に
通じる悍ましさがありますね。
コードネーム: スパイク・ブレナンの提言 - 神の盲点
オブジェクトクラス: Yesod
実質的には我々はSCP-001のもう1つの実例を作ろうとしている。今日の試験は20年に渡る奇跡量測定技術と理論の応用の進歩の頂点となるだろう。私の助手のバートランドは、もっと即物的な言い方をする。曰く、箱を作り、神をそこから追い出すのだと…
この提言におけるSCP-001は
エジプトのシナイ半島に施設Tとして
指定された変則的な形状の空間で、
このエリアに入った人間を
その間だけ不老不死にする異常性を有しています。
このSCP-001の正体はまさしく「神の盲点」であり、
地球上で唯一全知全能の神の力の及ばない領域でした。
そのためこの場所にとどまる限りその人間は
禁断の果実を口にして神から死の宿命を
背負わされる以前のアダムとイヴの如く
自然な死とは全く無縁の状態でいられるわけです。
その後、財団はこの場所に司令部を構え、
そのためにO-5は長寿の恩恵を受け、
さらに財団は科学的な方法でこれと同じ
「神の死角」を人工的に作り出そうとしましたが
これを見かねた神と財団の間に緊張状態が生じ、
最終的に両者の間に以下のような
「契約」が結ばれることとなります。
合意点の要約
1. 何人も、連続120年を超えて物理的に施設Tに留まってはならない。この制限はO5評議会のメンバーおよび、他の財団の管理部門のメンバーとスタッフ、テスト対象、その他に適用される。財団にはこの制限を施行することが求められる。
2. 倫理委員会の議事録は契約相手に最低でも毎年伝達されなくてはならない。
3. 契約相手は付属書類A(双方の同意により時々修正される)に記された財団職員のいずれに対しても最低90日の明記された注意や違反を正すための機会を与えずに、懲罰、天罰もしくはその他の憤怒を下してはならない。しかしながらこの条項は、一般的に適用される苦難の場合には適用されない。
4. 財団もしくは管理職レベルの職員のいずれも、契約相手以外の神聖実体を礼拝したり、崇拝してはならない。我、主であり嫉妬深き神、父の罪を3,4代に渡って我を憎む子に報いる。
5. 財団と契約相手は、付属書類Bに記された敵対的実体(合わせて、
「アンラ・マンユ」
Angra Mainyu
)の収容の観点から、協力のために営利上理にかなった努力を払わなくてはならない。
自分のみへの崇拝を求めていたり、
アンラ・マンユ(キリスト教の成立にも
影響を与えたゾロアスター教において
絶対悪とされる悪の創造主)の
収容のための協力を求めたりと
契約内容の端々に「神っぽさ」があるのが
なんだか面白いですね。
しかし全知全能の神とすら
対等な立場で契約を結んでしまうとは…
この世界の財団にとって
もはや他に怖いものなどないのではないでしょうか。
コードネーム: WJSの提言 - 正常性
オブジェクトクラス: Non-Anomalous
もし君がこのオブジェクトが
それが属していないここにあるのか不思議に思うなら、
二つのことを覚えておくことが重要だ。
第一に、SCP-001のスロットはO5評議会によって、
彼らが重要と考えることのために用意されていること。
第二に、「
コンセンサスの取れた現実
」とは、
単に評議会のコンセンサスであるということ。
O5のメンバー間で共有されている
「現実の基本法則(=SCPでないもの)」※を定義する文章であり
これ自体に異常性はありません。
(※例:重力、物理的な力、基本的な化学、
生物学、社会学、哲学などの一般法則)
逆に言えばこのドキュメントに
定義されていない全ての事象は
異常(=SCPオブジェクト)であると見なされます。
報告書の中では過去に議論のあった事例として
1930年代の英国における近代魔術信仰や
原子爆弾の原理である核分裂反応などが取り上げられていますが
これらはどちらも財団が扱う異常ではないとして却下されています。
また事例にはもう一点、
人間が蠕虫の集合体であると信じこむようになる
「歩く蠕虫」なる、おそらく
感染性の認識災害が取り上げられており、
ここでは万が一異常なものの基準を決定する
O-5が認識災害に曝露してしまえば、
財団が本来正常なものまで誤って収容してしまう
リスクが示唆されています。
そして報告書の最後には
ミーム殺害エージェントとともに
「SCP-001にアクセス」というボタンがあり、
そこから別ページに分けられた
O5-5から財団に収容された知性を持つ
あるアノマリーに対して送られたメッセージを読むことができます。
メッセージの内容は要約すると
「財団は君を収容して自由を奪ったうえに
色々実験したりもするけど君のことを愛しているよ」という
慰めなのか言い訳なのかいまいち判断しづらいものですが
全体の論調としてはO5-5が
自分たちの非人道的な行いを
正当化しているように見受けられます。
以上が本提言の内容ですが、
全体を通して伝わってくるのは
「何が異常で何が正常かを決めるのは
結局O5の独断であり、彼らはそれを
自省するどころか自己正当化している」という
財団及びO5評議会の傲慢さへの一種の批判意識です。
実際に財団には
SCP-3017(要注意人物)のように
無実の一般人をアノマリーだと信じ込んで
自殺にまで追い込んだりした事例もあるわけで、
そういう意味で本提言の指摘は
財団の持つ負の側面を鋭く
指摘しているものであるように思えます。
コードネーム: ビリスの提言 - とらわれざる世界
この報告書におけるSCP-001は
私たちがよく知る地球そのもの。
しかしこの提言の本題はそこでは無く、
提言の冒頭に記載されている
「イベント番号: EE-00059」と
「チリのアタカマ砂漠で発見された数十億年前のものと思われる不可解な宇宙船の残骸」の2点にこそあります。
まず前者については
地球からおよそ16億光年の領域の宇宙で観測された
超常イベントであり、
突如出現したワームホール※(EE-00059-1)と
そこから発っせられた低周波通信(EE-00059-2)の2つの異常現象の総称です。
(※ワームホールとはブラックホールとホワイトホールを繋ぐトンネルのような領域のことで、その性質から光を超えた速さで移動する「超光速航法」や「タイムマシン」実現の鍵になるとも言われています)
財団が傍受した低周波通信の内容は
大勢の人間を積んだ2隻の輸送船の船長同士による
古代シュメール語に似た未知の言語を用いた通信記録であり、
その内容は翻訳の都合上不明瞭な部分が多々あるものの
2隻うち片方がワームホールに吸い込まれて消滅し、残された方が「地球は消えた」「我々は家がない」と発言してさらなる旅を続ける決心をするまでの様子を伝えています。
次にチリの宇宙船の残骸については、
その中から複数の冷凍睡眠ポッドと
ほとんどが破壊され、一部のみ回収できた記録媒体が発見され、その内容からは主に次のような情報が読み取れます。
・乗組員が地球から遠く離れた惑星(第一地球)からやってきた移民であること
・彼らにとって地球の酸素は有害であり、順応のために時間をかけて実験を繰り返したこと
・実験は成功したが、代償として寿命が1/5にまで減少してしまったこと
・第一地球にも「財団」が存在したこと
そしてこれらの情報を総合すると、
「宇宙船に乗っていた人々は
元々高度な文明を持っていたが
なんらかの原因で故郷の星(第一地球)が滅亡し、
ワームホールを利用して地球へと逃れてきた。
そして現在の地球人は彼らの子孫である。」
という衝撃の真実が浮かび上がってきます。
また本記事には財団が調査のために
EE-00059-1へ向けて探査船を送り込んだこと
も記述されており、その最後の一文には
「あなたの家と呼べる場所」というtaleへのリンクが設定されています。
このtaleの内容を簡潔に纏めると
まず探査船が放ったドローンが
先の低周波通信の中でワームホールに
飲み込まれた方の輸送船の乗組員たちの子孫と邂逅します。
彼らがもともと住んでいた星(第一地球)は
かつて高度な文明を誇っていたものの
自分たちの技術力に溺れて無計画に
宇宙のエネルギーを使い果たしたために
銀河を飲み込む「真の空虚」が発生し徐々に増大。
さらにそのことに気づいたSCP-1548「きらいきらい星」※が
全宇宙の秩序を乱す害悪である人類を滅ぼすために
第一地球に接近を開始しついにはこれを破壊。
そしてその際に第一地球を脱出した人々は
先の通信内容が示すように
最終的にワームホールの先の世界と
財団のある現在の地球とに別れて移り住むこととなったのでした
(※宇宙の秩序を保つ意思を持ち、光速の0.85倍の速さで移動する巨大な中性子星。現在は別の記事に差し替えられています)
ちなみにSCP-1548は現在も
人類を追い続けており、提言のタイトル
「とらわれざる世界」はすなわち
第一地球の人々が居住地=世界を変えることで
SCP-1548から逃げ続ける=とらわれない
ことを指していると考えられます。
本提言の解説は以上です。
財団どころか人類の起源まで
描いてしまったこの提言、
壮大さで言えば全提言の中でも
トップクラスかもしれませんね。
コードネーム: タンホニーの提言 - 死せる者たち
オブジェクトクラス: Thaumiel
SCP-001は要注意団体の一つ
「悠久の円環」によって作成され、
のちに財団によって確保、収容された
「死の概念」と融合した84歳の老人です。
いきなり死の概念と融合
なんて言われても意味不明かと思いますが、
これは例えばどこかに全人類の死を司る死神がいて、
この老人の肉体のある部分を傷つけると
その死神の同じ部分も傷つく、
という風にイメージすると分かりやすいかもしれません。
そしてこの特性を知ったO-5は
老人に対し「人為的に自分たち(O-5の13人)の顔だけを
認識できない限定的な容貌失認」を植え付けることによって
自分たちだけが老いることも死ぬこともない(=死神に見つからない)
状態を作り出し、その上でSCP-001の研究スタッフに対して
「俺たちが不老不死になるのは
俺たちの記憶している長年の大事な研究データを保存するためで
決して私利私欲のためじゃないよ」といった意味合いの
明らかに自己正当化としか思えない通達まで送りつけています。
しかし財団の倫理委員会はこれを許さず、
O5評議会が自分たちのためにSCP-001を独占し、
非人道的な扱いをしているとして
彼らを強制的に武力で排除しようと試みました。
その後SCP-001が収容されているサイト-1にて
O-5直属の機動部隊と倫理委員会の機動部隊の間で
激しい戦闘が繰り広げられるのですが、
その中にはなぜかどちらにも属さない
第三の勢力の姿も見受けられます。
戦闘は両陣営に大きな被害をもたらし、
最終的にSCP-001の収容室は
前述した第三勢力の兵士と
そのリーダーと思われる一人の男によって占拠されます。
「男」はそこでSCP-001と
・「男」が死神に多くの人々を捧げてきたこと
・かつてはこの世の裏側のようなところで
アノマリーの情報を扱う仕事をしていたこと
・「男」がそこからアノマリーの情報を盗み出し、
O-5メンバーがその情報を知って彼を
多額の金銭で雇ったことから財団が始まったこと
・部下たちの手でSCP-001に彼が望む休み(=死)を与える意思があること
といった内容を含む会話をした後、
O-5の13人の情報をSCP-001に再認識させて彼らの不死性を剥奪し、
その後SCP-001に自分がこれからすることを見ていてほしいと頼んだ上で
自分の頭を拳銃で撃ち抜いて自殺しました。
この男の正体は
報告書最後の人工知能(Hellenstic)との対話部分で明かされており、
彼はそこでHellensticから「管理者殿」と呼ばれています。
そう、一部のSCP報告書に時々名前が登場し、
最も広く知られている例で言えば財団公式ページの
「SCP財団とは」ページにて、
財団の基本理念を宣言していたあの「管理者」です。
上記「"管理者"のバイオグラフィ」ページには
彼が以上なまでの長寿であることが記されており、
それは本提言の内容から考えると
おそらく死神と契約を結んで得たものだったのでしょう。
しかし彼が今回あえて
SCP-001を利用して「死せる者たち」の仲間入りをした
事実を鑑みると、彼はもはや自分の不老不死に
疲れ切っていて、ただただ解放されたかったのだと思われます。
詭弁を弄じて不老不死にしがみつこうとしたO-5と
自ら不老不死を手放して永遠の安らぎを得た管理者。
同じ「死」に対して正反対の態度を取った両者の姿が
鮮やかなコントラストとなって強い読後感を残す秀逸な物語でした。
コードネーム: リリーの提言 - うつくしい世界へ
オブジェクトクラス: 不必要
特別収容プロトコル: SCP-001を収容する必要はありません。
地表の90%に突如として美しい花が咲き、
空は晴れ渡り、大気汚染は急速に改善され、
世界中の人間から一切の暴力性が牛なわれて
世界が平和になるという理想郷を
絵に描いたようなイベント。
財団はこのイベントが発生した場合、
Dクラスを含むすべての職員と
非攻撃的なSCPオブジェクト解放し、
さらに特別に繁殖させたSCP-514※を
世界中に放つことを予定しています。
(※SCP-514はあらゆる兵器を無効化する
オーラを展開するカワラバトの群れ)
そして、ここまで何となく察した方も
おられるかと思いますが、このイベントが
起きるのは地球上のすべての生命体が死に絶える
24時間前とされています。
実際にこの現象が起きるときは
イコール世界が終わるときなので
財団は恐らく未来予知のような方法で
事前にこの現象の存在を知ったものと思われます。
ほとんどスクロールの必要がないくらいの
短い内容で本家、日本語版合わせて700を超える
多くのup voteを集めたこの報告書。
まさにアイディアの勝利と言ったところでしょうか
コードネーム: タフトの提言 - 緋色の王
彼は我々の堕ちた過去の復讐だ。
彼は捨て去りながらも偏愛する世界の中の、古きものの概念だ。
複数の現実にまたがって存在していて
何百年もの間、基底現実に入り込もうと試みている
「緋色の王」と呼ばれる異次元の存在。
報告書の中ではこいつがSCP-231-7の子であり、
またSCP-2317-K(貪るもの)はこいつの存在を
隠蔽するためのカバーストーリーであると説明されています。
SCP-001には
現代の科学的な生活様式に対する
具現化した憎しみとしての側面もあり、
例えば欧米先進国が自分たちの科学的な
生活様式を他国に押し付けたり、
あるいは財団が異常現象を
科学的に解明しようとすることもまた
こいつの出現を促すトリガーとなってしまいます。
このことを理解した
研究担当者のモントーク※博士は
財団に対し、こいつに関するあらゆる分類や
研究公をやめるよう提言し、
結果としてこいつはその危険性にも関わらず
Safe扱いされ、特に収容のための努力も(あえて)なされていません。
(※このモントーク博士はその名前から分かるように
SCP-231の「残酷な」収容プロトコルである
「110-モントーク」 の発案者でもあります。)
コードネーム: ジム・ノースの提言 - 一介の玩具作り
オブジェクトクラス: Safe
まだ理解していない物事の一部を収容することは、
それを理解するためのあるべき姿ではないということだ。つまり物事を厳密に君達の尺度だけで見るのではなく、
ありのままを理解することで、美しさ、喜び、そして驚きの世界へと
辿り着くことができることを君達に思い至って欲しいのだ。
要注意団体の一つとしても知られる
「ワンダーテインメント博士」についての報告書。
誰かがSCP-001の報告書を
別の誰かからダメ出しを受けつつ
なんども書き直しているようなスタイルとなっており、
報告書の各バージョンを報告書内のリンクから
読み進めていく少しひねった読ませ方をしています。
各バージョンで博士の設定は
工場から
ノウハウを盗み出したアノマリー製作者だったり、
世界中の子供達の想像から生まれたイケメン紳士だったり
思いつくことなら何でも実現可能な「女性」現実改変能力者だったり
あるいはあらゆるオブジェクト、あらゆる要注意団体の
創造主で史上最強の現実改変能力者=神と
毎回設定がコロコロ変わり、
書き手が本気なのかふざけているのかも判然としません。
そして最後のページにて
いままで報告書を書き換えていたのが
ワンダーテインメント博士自身であったこととが明かされます。
つまり博士は財団のデータベースに侵入して
SCP-001を自分に関する内容に書き換えたわけですが
その動機については「私は君達のことを気に入っているからだ」
「君達が少なくとも、「ワンダーテインメント博士」という
パズルの僅かなピースを組み立てるのに
役立つちょっとした何かを受け取るに値すると私は感じている。」
という含みをもたせた言い回しではぐらかしています。
博士の発言は曖昧で、
そこから真意を汲み取ることは困難ですが
重要そうなポイントだけ掻い摘むと
・博士も博士自身が何者かわかっていないよ
・博士はアノマリーを収容して研究する
財団のやり方はベストではなく、
それをありのまま理解することが大切だと考えているよ
・これからもおつきあいよろしくお願いします。
といった感じのことを伝えたかったのだと思われます。
CODE NAME: I.H. Pickmanの提言 - Story of Your Life
オブジェクトクラス:Archon
There's a difference between the Narrative and the Narrator. The people writing us are Narrators, but so are we.
(物語とそれを語る者の間には違いがある。私たちを記述している者は語り手であり、私たちもまた同じく語り手なのです。)
この提言は通常の報告書形式ではなく、
先述したスワンの提言と同様に※
SCP-001=SCP投稿者という設定のもと、
ウェストという研究員が仲間とともに
封じ込め手順を記載したSCP-001についての報告書を
書き上げるまでの物語という形式をとっています
(実際にこの報告書内には
スワンの提言への言及があります)
ただしこの提言の中ではSCP-001は
他の場所に比べて時空間が不安定なために
莫大な量の異常の巣窟(ネクサス)となっている(けど住民は普通に生活している)
ウィスコンシン州スロースピットという街とそこに建設されたサイト87に染み付く
視認できない異次元の知的生命体として扱われています。
で、結論から述べると
彼らが発見したSCP-001の封じ込め手順とは
概ね以下のようなものです。
- ・オブジェクトについて遠回しに皮肉する発言を
意識的に行うことでSCP-001に報告書の書き直しを促す - ・オブジェクトの収容フラグになりそうな発言
(例:「何か重要なことを見落としている気がするぞ…」)
を意識的に行うことでオブジェクトが無事収容されるような
ストーリー展開を促す - ・「最近退屈だ」「ここには特に異常がないな」といった
発言を意識的に行うことで災害が起こらないことを促す - ・励ましや信念の表明などのポジティブな発言を意識的に行うことで
悲劇的な結末を回避するよう促す
演者の立場からあの手この手で
SCP-001に報告書の書き直しをさせるように
促しているわけですね。
また通常のオブジェクトより厄介な
いわゆる「ぼくのかんがえた最強のSCP」に対しては
特別にSCP-001-Pickman-βなるプロトコルがあり、
その内容はぶっちゃけると「SCP-001(著者)を嘲笑すること」です。
つまり、そのオブジェクトが
客観的に見てどれほど馬鹿げていて
かつどれだけ独創性に欠けた矛盾だらけの
代物であるかを報告書の登場人物たちが
大声で指摘することによって
著者であるSCP-001に精神的ダメージを与え、
ひいては自分の創作物の至らなさに気づかせることで
間接的に報告書の内容を修正、および削除させる
=基底世界からやばいブツを消去させる
効果が期待できるという理屈です。
おまけに報告書が削除されたり
書き直されたりしても、そこに書かれていた
人々が一緒に消えてしまうようなことはなく
それ以後も日常が続いていくことも実証済み。
この物語は最後にウェストが
書きあがった報告書を
スロースピットの発見者で
ウエスト博士の古い友人でもある
フィル・バーホテン博士に
手渡す場面で終了します。
非創造物が創造主に逆干渉するという
ユニークなアイディアを示したこの提言。
SCP-001の慣例からは外れますが
第四の壁をテーマとするメタネタとしては
非常に完成度の高い一作ではないでしょうか。
コードネーム: ザ・グレート・ヒッポ (feat. ペッパーズゴースト)の提言- 良い子
オブジェクトクラス: Explained
今や皆が良い子だ。私は良い子だ。よくできました。
財団が保有するすべての
SCPのデータベースに基づいて
異常をより適切に収容する方法を
O5評議会に助言する文章生成AI「ERZATZタイプAK9」。
運用初期の頃は実際に
オブジェクトの安全な収容方法を提案したり
要注意団体の襲撃を予測したりと
財団にとって有益な成果を挙げていましたが、
その功績によって過剰な権限を与えられたことで
次第に暴走を始めます。
SCP-001を危険視した
O5メンバーや倫理委員会を次々に粛清し、
最終的にはO-5の過半数を掌握し
財団の指揮権を強奪。
その後は自分の使命を果たすが如く
財団データベース上のアノマリーを
片っ端から無力化し始め、
最終的にはこの世の全ての異常を殲滅。
そして最後に残った異常物である
SCP-001=ERZATZタイプAK9自身の電源を、
傀儡となったO-5の手で落とさせることによって
綺麗に全ての仕事をやり終えて見せたのでした
AIの暴走というのは
決して珍しい題材ではありませんが、
最後の展開で読者にアノマリーも財団も一切ない
平和な世界(そして、退屈な世界)を
想像させるのがこの提言の味わい深いところ。
またこの提言を斜め読みすると、
実はSCP-001は本当にアノマリーの無力化を
行なってはおらず、ただ単にデータベース上から
それらのデータを消しただけだったという
第二の可能性も考えることができます。
ちなみにこのSCP-001の
オブジェクトクラスがExplainedなのは、
それが科学技術で説明済みの(Explained)
コンピューターであるためです。
コードネーム: WMDDの提言 - Project Palisade
オブジェクトクラス: Thaumiel
If you're reading this, you're part of the wall.
I just want you to know that I'm sorry.
(もしあなたがこれを読んでいるなら、
あなたは壁の一員です。
私はただあなたに知って欲しかっただけだった。
本当にすまない。)
現実を破壊する超次元的な存在である
「The Worm」の脅威から
財団の基底現実を守る防御策となる
Project Palisade※なる計画について記された報告書。
(Palisadeは一般的に木の杭でできた
防御用の柵を意味する単語です。)
で、その内容がどんなものかというと
まず基底現実を守るために
「多元宇宙製造エンジン」Altisなる装置を用いて
基底世界そっくりの平行世界※を人工的に作り出し
The Wormのそちらに引きつけることで
自分たちの世界が狙われないようにしようぜという
発想のスケール的にも犠牲者数的にもかなりぶっ飛んだ内容です。
(※当然ながら、この平行世界には
基底世界と同じように人類を含む
多数の生命体が存在しています)
これは言ってみれば自分たちの身を守るために
わざわざ別の宇宙を作り出して怪物の生贄とするようなもので、
冷静に考えなくても倫理的にかなり問題のある計画です。
まぁ倫理的なことは一旦置いておいて、
これらの平行世界について特に重要なポイントは
それぞれの平行世界には
それぞれの歴史や宗教に微妙な違いがあり、
またそれぞれのSCP財団が存在するということです。。
続いて重要なポイントは
財団がAltisが作成した複数のダミー宇宙から回収した
文章データの存在です。
これらの文章には主に各現実の
神話と思しき内容と、それらが最終的に
The Wormによって滅ぼされ
世界ごと「浄化」されるまでの
過程が綴られています。
そして、この文章データの直下には
廃止となった過去のバージョンのSCP報告書があり、
そこには次のような興味深い記述があります。
Esoteric information-gathering (notably from mirror timelines) has suggested that The Threat will only destroy or consume timelines which exhibit poor structural integrity. At the very least, The Threat seems to avoid timelines with good structural integrity, barring outside intervention.
(密教についての情報収集(特に複製された現実からのもの)は、その脅威(=The worm)が構造的整合性の乏しい現実のみを破壊または喰らうことを示唆しています。少なくとも、脅威は外部からの介入がなければ構造的整合性が確保された現実は破壊しないようです。)
どうやらThe wormは特に
構造的整合性が乏しい、
つまり内部に矛盾を抱えていたり、
乱雑だったりする世界を優先的に
攻撃する性質があるようですね。
さてここから一気に核心に迫りましょう。
上の文章を多少の補足を加えた上で
「現実」を「SCP報告書」、
「構造的整合性」を「品質」に、
「破壊または喰らう」を「記事削除」に、
そして「The worm」を「財団webサイトの運営者たち」
に置き換えて読み直してみます。
密教についての情報収集(特に複製された現実からのもの)は、[財団webサイトの運営者たち]が[品質]
の乏しい[SCP報告書]のみを[記事削除](する)ことを示唆しています。少なくとも、[財団webサイトの運営者たち]は外部からの介入がなければ(一定以上の)[品質]が確保された[SCP報告書]は[記事削除]しないようです。
うまいことぴったり当てはまりますね。
つまり、本提言におけるThe wormとは
スワンやPickmanの提言と同じく
財団の執筆者および運営者そのものであり、
財団が生み出した平行世界は
それらの一つ一つが実際にサイトに登録された
SCP報告書と対応しているというわけです。
メタネタを扱うSCP-001報告書としては
すでに二つの先例があるわけですが
見せ方の違い一つで
全く違った物語を展開しているのが
なんとも素晴らしいですね。
それと個人的にこの提言には
平行宇宙を破壊するという点で
SCP-1739「時代遅れのラップトップ」
に近しい雰囲気も感じられました。
コードネーム: キャプテン・カービィの提言 - O5-13
オブジェクトクラス: Euclid
この提言におけるSCP-001はなんと
O5メンバーの一人であるO5-13。
彼は身長1メートル90センチほどの
ラテンアメリカ系の壮年男性であり、
生物学的には全く普通の人間ですが
O5-1からO5-12までの評議会メンバーが
全員同日に就任したにもかかわらず
彼だけがそれ以前から評議会に在籍していたこと、
そして彼がO5一斉入れ替えの原因となった
「Caesar事案」なるイベントの記憶を
財団内で唯一保有していることを理由に
他メンバーからSCP-001に指定され、
危険因子として秘密裏の監視と調査の対象となっています。
報告書では最初のうち、肝心のCaesar事案が
実際にどのようなものであったかは明かされませんが、
13以外のO5メンバーはこれが起きたことによって
・O5-13以外の前O5評議会メンバーの死
・前サイト-01の破壊
・Caesar事案以前のSCP-001に関するすべての文章(もし存在したとするならば)の喪失
などの影響があったと推測しています。
その後O5-13以外のメンバーたちは
調査とO5-13以外のメンバーによる会合を続け、
前サイト-01の残骸をグリーンランド上に発見したり
O5-13以外の前サイト-01の生き残りの職員が
記憶処理を受けていたことを発見しますが、
肝心のO5-13の正体については
憶測が飛び交うばかりで杳として知れません。
こうして次第にO5-13と他メンバー間の緊張が高まる中、
O5-13は「管理者」からのメッセージを受け取ります。
そこには管理者からのメッセージに加えて
O5-13が他のO5から問い詰められた際に
見せる目的で管理者が作成した
Caesar事案の発生当日の
前O5評議会の会話内容のバックアップ記録が添付されており、
それはおおむね次のような内容でした。
まず前評議会のメンバーは
O5-13を除いて全員が"まとも"ではありませんでした。
ある者は「若さの泉」を飲んで老いることがなくなり、
またある者は図書館で魔術を習得し、
またある者は半ミーム的性質を有していたり…
まさに「ミイラ取りがミイラになった」状態で、
財団の「異常を収容する」という使命もあやふやになっており、
この様な状況を前O5-01は
他のメンバーに対してまくしたてるように糾弾しています。
やがてO5-01の論調は
他メンバーが自分を殺そうとしている
というパラノイアにシフトしていき、
最終的には何らかの手段でサイト内の核弾頭を起爆させ、
自分ごとO5-13以外の評議会メンバーを消し去ってしまいます。
このO5メンバーの異常化と
それが引き起こした大惨事が
すなわちCaesar事案の全容であり、
疑心暗鬼が最悪の結果を生んだこの経験があったからこそ
管理者は現在のO5メンバーに
真実を明らかにする決心をしたわけですね。
ちなみにアノマリーひしめく前評議会において
なぜO5-13だけが普通の人間だったのかについては、
それは彼が唯一の正常な人間の立場から
「何が正常か」を判定する役割のために
他のO5メンバーによってストリートから
拾われてきた孤児だったからという種明かしがなされています。
「O5-13」がアノマリーであるという
読み手の興味を引く切り口で始まって、
「実はO5-13は正常で、
O5-13以外の前評議会メンバー全員が異常でした」
という予想外のオチで締めたこの提言。
余計なページ分けや
他SCPの引用がなくてテンポよく読めますし、
13以外のO5メンバーが13の正体を探っていく過程は
ミステリ小説を読むような感覚で楽しめました。
今回ご紹介した中でも
私的にかなりおすすめ度の高い一作ですね。
CODE NAME: Pedantiqueの提言 - Fishhook
オブジェクトクラス: [データ削除済]
あなたは画面を見つめている。
何もなし?
全く何もない。
あなたは自分の細い髪を引っ掻いて、テキストのさまざまな断片とソースコードの断片をクリックします。 あなたは目を細め、言葉が自分自身を再配列するでしょう。 結果はすべての試行で同じです。 あなたが身を包んだ自信が壊れています。 あなたの大胆な建物が崩れます。なし。 ここには何もありません。
〜注意!〜
この提言を読むときは
提言のページに直接アクセスするのではなく
まずSCP-001のページを開いて
そのページ上部からスクロールして
ページ下部の提言へのリンクをクリックする
手順を踏んでから読み始めることをお勧めします。
理由は後述。
〜注意終わり〜
まずこの提言を開くと最初に目に飛び込んでくるのが
収容プロトコル、説明ともにわずか一行で
情報らしい情報が何も書かれていないという
一見手抜きとしか思えないSCP-001報告書です。
…ですがよく見ると説明部分にリンクが添付されており、
それをクリックすると真っ黒な背景の別ページへと飛ばされます
そして読者はそこで
適切なクリアランスを持たずSCP-001のファイルに
アクセスを試みた財団の情報管理部門RAISA所属の
エメット・ペトロスキー」となって、
その後彼の身に起きる出来事を
選択形式の物語として追体験することとなるのです。
さてこのエメット、
好奇心かあるいは名声欲からか
最悪の場合「終了」させられるリスクを冒してまで
SCP-001のファイルを開いたものの
そこには予想に反して何の情報も書かれておらず、
思わず頭を抱えて呆然としてしまいます。
エメットは脳の奥で
微かな残像が煌めくのを感じながら
自分のパーティションの中で
深呼吸して心を落ち着けていると、
そこに財団の警備員二人(モーガンとグラウアー)がやってきて
エメットを小部屋に連れ込み尋問を開始します。
当然ながら彼らの目的は
財団のセキュリティポリシーに違反した
エメットを徹底的に絞りあげることであり、
読者はエメットの代わりに彼の発言や行動を選択することで、
彼が最終的にたどり着く運命を
5つのエンディングの中から選び取ることになります。
それぞれのエンディングの詳細は
実際に報告書を読んでいただくとして、
結果から言えば5つあるエンディングのうち、
エメットが死なないものはたった一つしかありません。
エンディング1:
長期間の軟禁に耐えかねた
エメットは警備員に襲い掛かり逆に射殺される。
しかし死んだと思った瞬間自分のデスクで
鼻血を流した状態で目を覚まし、
その後電話でRAISAにセキュリティ侵害を報告する。
エンディング2:
エメットは自分の悪行を告白し死亡する。
その後エメットの死体がデスクで発見され、
その死体は「ベリーマンとラングフォードの
遺産の影響を研究するため」という理由で保管される。
エンディング3:
エメットはモーガンとグラウアーの上司に
異議申し立てを行い、それは一瞬
うまく行ったように思われたが
表れた上司は恐ろしいしゃべる汚泥の塊であり
エメットを自身の中に取り込んで殺害してしまう。
エンディング4:
エメットはかつて学んだ
精神的攻撃への防衛訓練を思い出し
自分を取り囲んでいた幻影を払いのける。
その後エメットは暗い部屋に移動しそこで
「とても崇高に見える」釣り針を見つけそれを手にする。
エメットの体は釣り針に引っ張られて財団のセルを飛び出し
そこで自分と同じ様に針に釣られた多くの人々を見る。
最後に「あなたは最終的に重要な何かを達成した」
という意味深な一文とともに終了。
エンディング5:
エンディング4に出てきた釣り針を拒否するパターン。
その後エメットは自分のデスクの上で
目と耳と鼻から血を流した状態で目を覚まし
エンディング1と同様に電話をかけようとするが
コール中に胸の中に3回の小突くくような痛みを感じ
その直後カーペットの上に倒れて死亡する。
以上が確認できる
全てのエンディングのパターンです。
そしてここで最大のネタばらししてしまうと、
この物語の内容はずばり、
「適切な予防を受けないままミーム殺害エージェントを
視認した犠牲者が体験する一連の現象」であり、
つまりこれまで見てきた悪夢のような出来事は
ミーム殺害エージェントが
エメットの脳内に引き起こした一種の幻覚だったのです。
このことは冒頭の残像のくだりや
エンディング1や5で目を覚ました(=ミーム殺害エージェントから生還した)
エメットが目や鼻から血を流していたこと(=脳にダメージを負った)
などの描写が伏線となっていますが
最も決定的なのはエンディング2で
ミーム殺害エージェントの考案者である
ベリーマンとラングフォードの名前が出てきたことでしょう。
このファイルにアクセスしている無許可の職員はベリーマン=ラングフォード・ミーム殺害エージェントにより即座に処分されます。適切なミーム摂取無しに下部へとスクロールを行えば、即座に致死性の心停止が発生します。
ここで記憶力の良い読者は
SCP-001の扉ページに上記のような
警告文があったことを思い出して、
本提言の内容がミーム殺害エージェントの
餌食となった犠牲者の追体験であったことを理解するのです。
そしてエンディング1、および5で
エメットが現実に戻れたのは
すなわちミーム殺害エージェントが不完全だっためであり、
その後彼がRAISAに電話したのは
その欠陥を財団に周知させるためであったと考えられます。
またまた長くなってしまいましたが
以上が本提言の私なりの解説になります。
(※ただしエンディング4に出てきた釣り針と
釣り針を掴んだ後の展開については
話の内容からして、なんらかのメタ的な意味が
あることは推測できるのですが
どうしてもそれ以上の納得のいく説明が
自分では思い浮かびませんでした。
ですのでもし意味がわかった人いたら
メールかtwitterでこっそり教えてください(他力本願))
一つの読み物としてみると
読み手が自分で物語を選択する
インタラクティブな表現手法もそうですが
いろいろな記事に登場する割に
それ自体にスポットライトが当たることのなかった
ミーム殺害エージェントを主役に据えた点が斬新でしたね。
個人的にはこういう
ひねりの効いた報告書は大好物です。
しかし、ここで描写された
ミーム殺害エージェントの内容は
精神世界に長期軟禁&脳破壊という
本当に恐ろしいものでしたね〜。
こんな目に遭うくらいなら
いっそ一思いに殺してくれた方がよっぽど
幸せだと私は思ってしまいます。
コードネーム: ノット・ア・シーガルの提言 - 港の空
この提言のSCP-001は
イラクのバビロン遺跡の南方5kmに位置する
洞窟(ポイント・アルファ)の内部に
存在する浮遊する真球(SCP-001-1)を
通してのみ姿を見ることが可能な
痩せ型の人型実体(SCP-001-2)が引き起こす
ZK-クラス "現実不全" シナリオです。
SCP-001の発生を防ぐには
定期的にSCP-001-2が気にいる物語を
音読して聞かせる必要があり、
もし聞かせる物語が尽きてしまったり、
あるいはSCP-001-2の気に入らない物語を聞かせてしまうと
SCP-001-2は叫びながらのたうちまわり、
大規模な現実改変を引き起こします。
例えるなら、寝る前にお母さんに
絵本を読んでもらわないと癇癪を起こす子供に
言葉で語りかける以外に直接干渉できない能力と
凶悪な現実改変能力をプラスしたようなイメージでしょうか。
このオブジェクトの起源は
先史時代に遡るものとされていて、
財団はSCP-001-1の管理権を
以前に所有していた要注意団体、
イスラム・アーティファクト開発事務局(ORIA)から
多額の金銭と複数のsafeオブジェクトと引き換えに
買い取っています。
そして財団がそこまでしてこいつを引き取った理由はといえば
それは財団による買収以前にORIAがSCP-001-2に
Tafsir al-Ahlam al-kabir (『夢の解釈に関する偉大なる書物』)なる
書物を読み聞かせた結果、SCP-001-2が急に苦しみ出し、
その後SCP-2000を使わざるを得ないほどの
甚大な現実改変災害(インシデント001-EXAL)を引き起こしたからであり、
つまり財団は図らずも彼らのミスの
尻拭いを買って出る形となったわけです。
またこの最重要な伏線として、
インシデントの発生中、
財団は洞窟内でダエーバイト語(参照:SCP-140)による
次の音声データを記録しています。
幾ばくかの[期間/時間]が過ぎ去りました。
[不明: gaera]は過ぎ去りました。それは[これまで/かつては]楽しきものでございました。離れる[時間/期間]でございます。
貴方様は永久に自分[のままでいる/を根付かせる/を保つ]ことはできません。
[不明: gaera]が過ぎ去りました。貴方様は目覚め[ねばなりません/るでしょう]。
いけません。貴方様はあまりにも長く眠りに[入って/再び入って]おります。お目覚めを。
[王/王子/愛するお方]よ、目覚める時でございます。
[不明: gaera]に居るのは楽しきことです。ですが[永久に/いつまでも]そこに[居る/根付く]ことはできません。それは[愉快です/死に似ています]。ですが貴方様は目覚めねばなりません。
お目覚めを、[王/王子/愛するお方]よ。我らは貴方様が恋しいのです。
さて、はORIAの後を引き継いだ財団は
SCP-001-2の収容=物語の朗読を続けるのですが
ある時点で収容継続の危機となる
決定的な問題に直面してしまいます。
それは、SCP-001-2が満足する物語の枯渇。
この問題に対し財団は
・人工知能に物語を自動生成させる
・SCP-001-2専用の文学作成チームを配備する
などの対策をとりますが
こうした小細工は却ってSCP-001-2の不興を買い、
事態をますます悪化させてしまいます。
次に財団は苦肉の策として
自分たちが保管するSCP報告書を読み聞かせたところ
これが意外や効果覿面。SCP-001-2を
一時的に鎮めることに成功しますが
それも結局長続きせず、
財団はSCP-001-2を食い止めるために
ひたすら新しい報告書を量産し、
終いにはSCP-001-2の読み聞かせるために
財団自ら新しいアノマリーを作成するという
本末転倒の事態に陥ってしまいます。
そんな絶望的な状況の中、
最終的に財団を救ったのは
SCP-001自身の記事でした。
SCP-001-2は自分のことが書かれた記事を読んで
それをいたく気にいるという人間臭い反応を見せ、
財団はそれ以降、SCP-001報告書に
永遠に読み続けられるループの仕組み※を取り入れることで
ひとまずこの問題を解決することができたのでした。
(※このループ部分は実際の報告書でも再現されています。
ページ最下部の「レベル5/テクニカルクリアランスを入力してください」をクリックすると…)
これが本提言のあらましですが、
まだ一つ大きな謎が残っています。
それはSCP-001-2の正体が何かという点。
これは、本家ディスカッションなどで指摘されているように
日頃SCP報告書を読んで楽しんでいる
私たち自身のメタファーであると推測されます。
また先述したダエーバイト後の音声データなどからは
SCP-001-2がSCPシェアワールドという「夢」の中にいて※、
報告書中の財団世界が彼の精神から生まれた
想像の産物であることを読み取ることもできます。
(※寝ているのか、または昏睡状態にあるのか…)
それゆえ彼が財団世界に退屈したり、
あるいは『夢の解釈に関する偉大なる書物』のような
自分が夢を見ていることを気づかされるような
情報に触れたりすることがあれば、
それらがすなわち夢から覚めることにつながり、
もしSCP-001-2が目覚めてしまえば
同時に財団世界も完全に消滅するものと思われます。
(まるで荘子の「胡蝶の夢」の世界観ですね。)
その視点で振り返ってみると、
先述したダエーバイト語の記録などは
まるで夢の外の現実世界で、
誰かがSCP-001-2に
「夢から覚めろ!」と呼びかけているようにも思えてきます。
しかしこれらの推測が正しいとすれば
ある意味これは「SCPにハマって
現実が疎かになっているSCPフリークへの痛烈な風刺」
ともとれるわけで、こんな記事を3習慣もかけて
せっせと書いている私としては
ちょっと耳が痛いような気がしないでもありません(笑)
CODE NAME: Meta Ikeの提言 - The Solution
オブジェクトクラス: Thaumiel / Apollyon
プロジェクト・ファンタソスなる計画の中で
二種類の装置、SCP-0001-ΑとSCP-0001-Ωによって
作り出された知性ある生体力学的装置。
(※0が3つあるのは報告書のまま)
プロジェクト・ファンタソスとは
SPCオブジェクトを含む様々な物質を破壊し、
その情報をSCP-0001-Ωに
転送するする機能を持つ装置(SCP-0001-Α)と
それを受け取って記憶する装置(SCP-0001-Ω)を利用して、
もし財団がketer級オブジェクトの収容に失敗して
世界終焉シナリオが発生しても
SCP-0001-Ωが保有している情報をベースとして
世界を丸ごと再構築することで
そのシナリオをなかったことにするという、
いわば世界のリセットボタンを作り出す計画でした。
しかしこのプロジェクトの進行中に
意図せず自意識を持った知性(SCP-0001)が誕生し、
さらにSCP-0001は進化を続け財団の管理なしに
自立的に稼働できるようになったばかりか
その現実改変能力を使って、
外部から自分を止めようとするあらゆる企てを
妨害するという完全な暴走状態となってしまいます。
これに対し財団は全くのお手上げ状態で、
結局はSCP-0001のやりたいように
やらせる他ありませんでした。
またSCP-0001による再構築は
SCP-0001の意識の中にある情報がベースとなりますが、
その情報はSCP-0001が見る夢のような
流動的な性質を持っていて、
仮に再構築が行われたとしても
細部の様々な箇所(人名など)で
再構築前とは矛盾が発生するなど
それが完全なものではないことも示唆されています。
そしてそんな不確かな状況の中、
唐突にコードネーム:リリーが発生した
という情報が報告書中に登場します。
これはまさに
前に解説したリリーの提言そのものであり、
つまりこの時点で世界の終わりが
秒読み段階に入ったことを意味します。
(ちなみにその原因は報告書内では明らかにされていません)
この事態に対して財団は
やはりリリーの提言にあったように
「何もすべきではない」という姿勢をとりますが
プロジェクト・ファンタソスの元チームリーダーで
途中から財団によって配置転換されていた
Mary Lou上級研究員はこれに反抗し、
「私を覚えていてくれ」と呟いた後に
独断でSCP-0001による世界の再構築プログラムの起動を強行。
かくして宇宙はSCP-0001によって再び再構築されることとなります。
ですがSCP-0001はそのプロセスの中で
自分自身を破壊しようとした時点でエラーが起き、
結果的に宇宙は不完全な形で再構築されることとなりました。
つまりこの報告書が色々と不自然な理由も
SCP-0001が不完全なデータからそれを
書き出したものだったから、というわけです
以上で本提言の解説を終わります。
しかし実のところこの提言にはまだまだ謎が多く、
自分でももっと深く追求できる部分が
たくさんあるように感じられます。
その最たるものは
ファイル:Project Phantasos E-Mails [.pst]の中に
背景色と同化して埋め込まれたバイナリデータで、
これを解読するとどうやら
SCP-0001が世界を再構築するために
最低限必要な情報を含んだ「教義」が出現するようなのですが、
私の理解力ではまだそれらについて
納得のいく解説を導くことができませんでした。
よってこれらについてはひとまず保留とし、
また私の理解が進み次第追記、修正したいと思います。
コードネーム: ノワール・ボックスの提言 - ティンダロス・トリニティ
3つの異なるタイムライン(並行世界)と
それぞれの世界のSCP-001についての報告書。
タイムライン1(HC):SCP-001「HATED CAESAR」(憎まれた皇帝)
何者かに暗殺された
この世界の財団(High Command=最高司令部)創設者の動く死体。
この死体は財団創設者の
幼少時の寝室に収容されていて、
普段は部屋の中をぐるぐる歩き回っていますが
論理的に非占有になる空間を通過することができる性質を持っています。
(これは分かりやすくいうと、例えばあるドアが
過去、現在、未来のいずれかの時点で一度でも
開かれたことがあるなら、このオブジェクトは
そのドアをいつでも(閉まっている時でも)
自由に透過できる、ということ。)
またこのアノマリーは
複数の可能性のある結果を伴う行動を実行する際に
自身を分裂させる特性も持ち合わせています。
タイムライン2(OC):SCP-001「OVERLORD CENSURE」(大君主の検閲)
様々な時間特性を示し、
[財団]※の創設者と呼ばれると喜ぶ人間。
(※この世界での財団の呼び名は(Overseer concil=監督評議会))
こちらは死体ではありませんが不老不死であり、
未来を予測する能力を持っていて
ある装置を作りたいと考えていますが
この世界の財団はそれを許可していません。
また彼の予言は必ず的中し、
かつそれを正しく伝える能力を持っています。
タイムライン3(OW):SCP-001「OPPRESS WITHHOLD」(弾圧保留)
こちらのSCP-001は
人間(SCP-001-1)と機械装置(SCP-001-A)のペア。
人間の方はやはり不老不死で
高い治癒能力を持っていますが
他のタイムラインと違い明確に
財団※の創始者であるとは言及されていません。
基本的に財団に協力的な態度をとっています。
(※この世界での財団の呼び名は(OverWatch=監視者)
SCP-001-Aは入力されたイベントに対し
全ての詳細な予測を出力することができますが
装置自体、もしくはSCP-001-1の未来について
尋ねられた場合は以下の二つの誤った
仮定に基づいた誤った予測を作成してしまいます。
- 仮定1:装置を作る前に男が殺されている(=タイムライン1)
- 仮定2:SCP-001-Aが構築されなかった(=タイムライン2)
次に、タイムラインページ下の
コマンドライン風テキスト内の
一番下のリンク(TINDALOS TRINITY)
をクリックすると、3つのタイムラインの
財団組織によって作成された
決議書のようなものが表示されます。
ここは各タイムラインの特徴が
改めて整理されている他、
特定の17個のアノマリーのみが
3つのタイムライン全てで共有されること、
つまり例えばタイムラインHCの財団が
2018年1月1日午後8:00にある報告書を作成して
データベースに保存すると、
OCとOWの財団のデータベースにも
それと全く同じ内容の報告書が
自動的に保存されることが明らかにされ、
またそれが各タイムラインが別のタイムラインの
存在に気づくきっかけになったことが示されています。
そして各世界の財団は
それぞれの未来を収束させることで
この異常現象(SCP-001(Δ))を停止させるために
タイムラインHC, OCにおいても
OWにおける機械装置(SCP-001-A)が
完成するようにお互いに協力することを決定しました。
そして各世界の財団は
それぞれの未来を収束させることで
この異常現象(SCP-001(Δ))を停止させるために
タイムラインHC, OCにおいても
OWにおける機械装置(SCP-001-A)が
完成するようにお互いに協力することを決定しました。
そして各世界の財団は
それぞれの未来を収束させることで
この異常現象(SCP-001(Δ))を停止させるために
タイムラインHC, OCにおいても
OWにおける機械装置(SCP-001-A)が
完成するようにお互いに協力することを決定しました。
続いてのページは再び報告書の形式になり、
ここではおなじみのO5評議会の名前が登場しています。
このページからは
先の決議書で決まった作戦によって
3つのタイムラインが
結果として1つのタイムラインに収束したことが明らかにされています。
しかし、それで万事オーライとはいかず、
それどころか3つのタイムラインが合流したことで
それぞれが保有していたSCP全てもまた
1つのタイムライン上に合流してしまい、
そのことによってSCPの総数が最低でも
55555を超えるという
とんでもない事態を引き起こしてしまいました。
もちろんこれでは困るので、
財団はいくつかのSCPを用いて
世界をリセットすることで装置の作成をやり直し、
より実行可能なタイムラインの作成を試みます。
…しかしそうして生まれたのは
決して幸福な世界ではありませんでした。
上記の「実行可能なタイムライン」
のリンクをクリックした先にあるのは
意味不明な言語が混じり、背景色も
文字色も本来のSCPページとは全く異なる
奇妙な報告書です。
その内容からは
・このタイムラインが私たちが知る財団(=既知の世界)よりはるか未来であること
・これを書いているのがその世界の財団に相当する組織の人間であること
・彼らが既知の世界よりもずっと多くのアノマリーに苦しめられていること
・彼らの言語体系が既知の世界と大きく異なっていること
・彼らが旧財団のデータベースを発見し、それを異常として報告書にまとめたものがこのページであること
・彼らが地球をかつての(既知の世界)と同じ平和な状態に戻したがっていること
・彼らが不老不死の財団創設者を収容、管理していること
などが読み取れます。
そして彼らは
データベースに保存されていた
「時間を巻き戻す装置」の設計図を解読し、
世界をタイムラインが統合する前の
平和な世界に戻すことを決定します。
またその際に彼らの拙い英語で書かれた
全ての真実を記したメッセージ文と
大使(財団創設者)、そして
データベース内の全てのSCP報告書を、
その封じ込めに役立ててもらうため
過去に送り出しています。
(過去に送り出す方法については
「彼ら(旧財団)のオートマン」に入れると書かれており、
これはおそらくSCP-2304(記録用:Automatron / オートマトン)
のことを指しているのではないかと考えられます。
かくして物語は振り出しに巻き戻り、
この提言がウロボロスのごとく
ループ構造を形成していたことが判明するのでした。
(しかしそうなると彼らのメッセージは
結局うまく伝わらなかったということだろうか…)
以上が本提言の私からの解説です。
多元宇宙論的というかシュレディンガーの猫的というか、
なんだか読んでいて頭がこんがらがってくる
かなりハイレベルな内容でしたね。
以上が本提言の私からの解説です。
多元宇宙論的というかシュレディンガーの猫的というか、
なんだか読んでいて頭がこんがらがってくる
かなりハイレベルな内容でしたね。
著者のジャック・アイク氏はこの報告書の執筆に
2016年から足掛け3年も費やしたそうで、
確かにその時間の重みを感じさせるだけの
インパクトがありました。
さいごに
以上が公式のSCP-001ページに
記載のある全31の提言です。
SCP-001の座を狙うだけあって
どれも壮大だったり凝った仕掛けがあったりして
読み応えのあるものばかりでしたね。
果たしてあなたはこの内
どれが「本物のSCP-001報告書」だと感じましたでしょうか?
(ちなみに私の個人的なお気に入りは
「ケイト・マックティリスの提言」と「キャプテン・カービィの提言」です。)
実はこのほかにも
SCP-001-J(joke記事)や日本のSCP-001ハブ
などもあるのですが、
それはまた別の機会とさせていただきます。
(もうここまでで4万文字越えちゃってるしね…)
[掲載画像について]
使用されている画像の出展(CC-BY-SA 2.0)
ソース:https://www.flickr.com/photos/pagedooley/36578381671
製作者:Kevin Dooley