はじめに
こんにちは、daimaです。
本日は私が今まで見てきた名作映画※の中から
特にこいつの隣には絶対住みたくないと感じた
サイコすぎる悪役たちを
ベスト10のランキング形式でご紹介します。
(※ホラー映画は除く)
それではどうぞ!
第10位:サミュエル・ノートン刑務所長
(引用元:WSJ | The Shawshank Residuals
出演作品 ショーシャンクの空に(1994)
演:ボブ・ガントン
ノートン刑務所長は
スティーヴン・キング原作、
フランク・ダラボン監督の名作ヒューマン・ドラマ
「ショーシャンクの空に」に
登場したショーシャンク刑務所の所長です。
表向き信心深い人格者風でありながら
その本性は刑務所の囚人達を
低賃金できつい労働に従事させ、
自分は汗一つかかずにその利益を
着服して私腹を肥やしているという
正真正銘のゲス野郎。
そしてそんな性格ゆえか、
持ち前の優しさと聡明さで
他の囚人の尊敬を集める
主人公アンディのことは蛇蝎のごとく嫌っており
劇中ではあの手この手で
アンディの計画を妨害してきました。
中でも部下のハドリーに命じて
アンディが目をかけ、
社会復帰までサポートした若い囚人、
トミーに行わせたある仕打ちは
観客に刑務所側への強い怒りを抱かせ、
最後のシーンのカタルシスを
最大限まで高めるという
悪役の働きとしては100点満点
パーフェクトな(?)悪行でした。
ちなみに
私は「ショーシャンク」が大好きで
原作小説の「刑務所のリタ・ヘイワース」
も読んだのですが、比べてみると
映画版と原作では
レッドの設定やハドリーの扱いなど
細かい筋に色々な違いがあり、
このノートンに関しても
最後の描写が大きく変わっていたりします。
映画も原作も
それぞれ違った味わい深さがあるので
映画だけ見た、という方も
ぜひこの機会に原作小説を
手に取ってみてはいかがでしょうか。
…映画版も観てないという方は323
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第9位:アーサー(ジョーカー)
(引用元:JOKER - Teaser Trailer - Now Playing In Theaters)
出演作品 ジョーカー(2019)
演:ホアキン・フェニックス
第9位には2019年公開の映画
ジョーカー(2019)より
主人公のアーサー(ジョーカー)を選出しました。
この「ジョーカー」という映画、
意図的に多義的な解釈が
可能な作りになっていて
件のアーサーについても
「凶悪な犯罪者」であるという見方と
「不幸な環境の犠牲者」であるという見方と
二つの見方が成り立ちます。
例えば最初の凶行である
サラリーマン三人組の殺人についても
殺された側が大企業に勤める
エリートのチンピラという
多くの人にとって同情の難しい存在であり、
彼らがアーサーに殺された時むしろ
スカッとしたという方も
少なくなかったのではないでしょうか。
そして恐らくそれこそが映画の狙いであり
アーサーの存在を一方的な悪としないことで
受け手側にその行動の是非を
考えさせる狙いがあったのだと思います。
またその後の犯罪についても同様で
殺される相手は必ずアーサーに対して
何らかの落ち度を持った人間ばかり。
逆にアーサーに日ごろ親切にしていた同僚は
アーサーの殺人を目撃したのに
生きて逃がされるなど
映画の中でアーサーは徹底して
「同情できる存在」として描かれるのです。
このように純粋な悪党度合いでは
他の悪役に一歩譲るアーサーですが
格差の拡大や価値観の多様化といった
時代の変化位に応じた新しいタイプの悪役として
映画「ジョーカー」と共に彼を高く評価したいと思います。
第8位:ロイ・バッティ
(引用元:Blade Runner 30th Anniversary Trailer)
出演作品 ブレードランナー(1982)
演:ルトガー・ハウアー
ロイ・バッティは
リドリー・スコット監督のSF映画
「ブレードランナー」に登場した、
反乱レプリカント※のリーダーです。
(※労働や性的サービスの目的で造られた人造人間)
自分たちが造られた存在であり
さらに安全装置としてたった4年しか生
きられない寿命制限が設けられていることに
強い憤りを抱いたロイは、
ある時同じ目的を持つ数人の
仲間を引き連れて持ち場を脱走。
それから自分たちの開発者である
タイレル博士に寿命を伸ばさせる目的で
秘密裏に地球へと足を踏み入れます。
そしてそんなロイたちを
捕獲する立場として登場するのが
ハリソン・フォード演じる
本作の主人公デッカードであり
このデッカードと反乱レプリカント達の
戦いを主軸としつつ、そこにデッカードと
タイレル社の女性アンドロイド
レイチェルとのラブストーリーが
横軸として絡み合う形で
ブレードランナーのストーリーは進行していきます。
さて、このようにロイ・バッティは
人間によって造られた存在であり、
作中では生みの親である
タイレルの眼球を指で押しつぶすなどの
悪事こそ働いたものの
今回リストした他のキャラクターに比べると
少々凶悪さに欠ける部分はあります。
ですがそれでもなお私が
今回のランキングにロイを選出した
最大の理由は、今も私の脳裏に
強烈に残る、彼の最期の
独白シーンのインパクトにこそあります。
俺は、お前たちが
想像もできないものを見てきた。
オリオン座の近くで燃える宇宙船、
タンホイザー・ゲートの闇に輝くオーロラ。だが、そんな思い出も消えていく。
雨の中の涙のように…。
演者のルトガー・ハウアーが
即興で読み上げたという
信じがたい逸話を持つこの独白シーンは
詩的でありながら想像力を掻き立てられる深みがあり、
直後の真っ白な鳩がまるで
ロイの魂を象徴するかのように
飛び去ってゆくカットの美しさと相まって
映画を見た私を含む多くの人々の
心に深く刻み込まれました。
…そのようなわけで、
ロイが適役としてブレードランナーという
現代SF映画の金字塔的作品に為した貢献と
私自身の個人的な思い入れを考慮して、
彼を本ランキングの第8位と
させて頂きたいと思います。
第7位:アニー・ウィルクス
(引用元:Misery (1990) - Movie Trailer)
愛と憎しみは紙一重と言いますが
それは小説やそれこそ映画などの
作品に対する愛、
つまりはファン心理についても
同じことが言えるのではないでしょうか。
スティーブン・キング原作
ロブ・ライナー監督のスリラー映画
「ミザリー」に登場した
小説ファンの中年女性
「アニー・ウィルクス」は
そんなファン心理に潜む狂気を
この上なく恐ろしい形で表現した存在です。
「ミザリー」の登場人物はとても少なくて
話のメインとなるのは
小説「ミザリー」シリーズを代表作に持つ
人気作家のポールと、そのポールを
山道での自動車事故から救出して
自宅へ運び、看病まで申し出た
「親切な」看護婦の中年女性
アニー・ウィルクスのたった二人。
そして実はこのアニー
ミザリーシリーズの「ナンバー・ワンのファン」
を自称するほどの熱狂的ファンであり、
ポールのカバンに入っていた
編集者に手渡す前の
最新話の原稿を勝手に読んだ上、
その原稿に書かれていた主人公の
ミザリーが死んでしまうという展開に激怒。
最新作の内容を自分が納得するものに
書き直すまで帰さないと脅迫し、
事故で足を怪我して動けないポールを
人里離れた自分の山小屋に監禁する…
というのが映画の大まかなあらすじです。
さて、ここまでの話でわかるように
アニーは思い込みが激しく
非常に自己中心的な精神の持ち主です。
「ミザリー」を自分が
望む内容にするためならば
ポールの折れた脚の
痛みを抑える(+中毒性もある)
鎮痛剤を取引の材料にしたり、
ポールが必死で書き上げた
一点ものの原稿をポール自身の手で
燃やさせたりするなどの
えげつない仕打ちを平気で行います。
そして、そんな
アニーの「お仕置き」の中でも
特にキ○ガイ度MAXだったのが
例の「ハンマー」のシーン。
あのシーンばかりは
あまりにも痛々しすぎて
画面を直視することができませんでしたね…
公開年度のアカデミー主演女優賞にも輝いた
キャシー・ベイツの鬼気迫る演技も最高なアニー・ウィルクス。
男には決して出せない、
女性ならではの絡みつくような狂気が
心底恐ろしい名キャラクターでした。
第6位:リトル・ゼ
出演作品 シティ・オブ・ゴッド(2002)
演:レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ
魅力的な悪党が登場するのは
なにも欧米の作品だけではありません。
2002年公開のブラジル映画、
シティ・オブ・ゴッドに登場した
「神の街」と呼ばれるスラム街出身の悪党、
リトル・ゼもまた強烈なインパクトを残した一人です。
リトル・ゼはわずか9歳の時にして
同じく神の街に住んでいた
年上の不良グループ(3人組)に
その頭脳を買われてモーテル強盗を計画。
さらにその際、不良グループたちが
金目のものを奪って逃亡した後に
自分一人でこっそりモーテルに侵入して
事前の計画では生かしておく
予定だった客や従業員たちを
片っ端から笑いながら銃殺するという
子供の残酷さと呼ぶにはあまりにも
凶悪すぎる悪の才能を見せつけ
スクリーンの前の私たちのド肝を抜きました。
加えてその後も
靴磨きの少年のふりをして
客から金を強奪したり、
モーテルの事件のことで
逃亡していた主人公ブスカぺの兄
マヘク(3人組の1人)をだまし討ちで銃殺したり
かつての同級生ネギーニュの
麻薬ビジネスを暴力で乗っ取るなどの
様々な犯罪行為を繰り返した末に
18歳の時になるころには
神の街で一番の悪党になるという
超スピード出世を遂げます。
しかしリトル・ゼの悪行の中でも
最も語り草となっているものといえばやはり、
年下の悪ガキグループのメンバー二人に行った
みせしめの処刑シーンでしょう。
幼児ともいえる年齢の子供に
手と脚どちらかを撃たれたいかと尋ねた上に
手と答えた相手の脚を打ち、
その後新入りメンバーに度胸試しと称して
子供の片方を射殺させたあのシーンは
観ていて思わず目を背けたくなるほど
残酷なシーンでした。
そんなわけで、この短い説明だけでも
とんでもない悪党だと分かるリトル・ゼですが
しかしその反面妙に人間臭い部分もあった
憎み切れない魅力があるんですよね。
ブスカペの撮った自分たちの写真が
新聞の一面を飾って得意げになったり
唯一の親友だったベネが自分の元を
離れていくことに耐えられず口論になったり…
とりわけ印象的だったのが
沢山の人で賑わっていたベネの送別会の会場で
ナンパに失敗したリトル・ゼが
その腹いせに女性の彼氏を暴力で従わせて
公衆の面前でストリップさせたシーンです。
人望があり、
送別会に沢山の人が訪れたベネと
誰からも愛されず
暴力でしか問題を解決できない
リトル・ゼの哀しさが
対比にされる形で際立っていました。
そして映画のラスト。
リトル・ゼに待ちうけるある運命と
最後に流れるあるテロップを目にした時、
リトル・ゼもまた繰り返される貧困と暴力の
一部でしかなかったことに気づかされ、
同時に彼らのたくましい生き方から
これまでの自分の生き方を
改めて問い直すきっかけを得られたのでした。
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第5位:フレッチャー
(引用元:Whiplash TRAILER 1 (2014) - J.K. Simmons, Miles Teller Movie HD)
出演作品 セッション(2014)
演:J・K・シモンズ
「パワハラ教師」と聞くと
今まで紹介してきた悪役に比べて
なんだか一気にスケールダウンした感がありますが
「セッション」に登場したフレッチャーの
「パワハラ」はよくある
飲み会強制参加や「いじり」程度の
生ぬるいパワハラではありません。
マジで人が死ぬレベルです。
セッショのあらすじを
ざっくり説明すると
偉大なジャズドラマーになることを目指して
名門シェイファー音楽院に入学した
19歳のアンドリュー・ニーマンが
そこで同校の鬼教師フレッチャーと出会い
様々な試練を乗り越えて
成長してくというもの。
これだけならよくある
よくあるスポコン青春映画の筋書きですが
「セッション」ではそこに
才能はあるが明らかに人格に問題がある
フレッチャーの存在が加わることで
狂気と紙一重の音楽家たちの世界が描かれます。
一流のミュージシャンを
育て上げることに憑りつかれた
フレッチャーにとって
技量の低い生徒を他の生徒の面前で罵倒したり
椅子を投げつけるなんてのは日常茶飯事。
時には相手が二度と立ち直れないような
ひどい暴言をぶつけることもあります。
しかし一方で過去の優秀な教え子の
死の知らせを聞いて涙を流したり、
ジャズクラブに出演した際の前口上で
「自分が生徒を罵るのは、
彼らにジャズ界の伝説に
なってほしいと願うからだ。」
と語るなど音楽への愛だけは本物であり、
このことがフレッチャーという人間を
単純に悪と割り切れない部分でもあります。
それでもなお私がフレッチャーを
今回のランキングに入れた決め手は
映画のラストシーン直前に
フレッチャーがニーマンに行った
ある陰湿な復讐行為です。
あれほど完璧な演奏に
こだわっていたフレッチャーが
その演奏を犠牲にしてでも
個人的復讐をなそうとしたのは少し残念でしたが
しかしそのことがあの伝説的な
ラスト9分誕生の伏線となったのだから
全く良く出来た映画ですよね。
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第4位:アレックス・デラージ
(引用元:BFI | A Clockwork Orange and fashion: Why the droogs never go out of style)
出演作品 時計じかけのオレンジ(1971)
演:マルコム・マクダウェル
悪人を主人公に据えた映画は数あれど、
世界規模の社会現象を巻き起こしつつも
映画に影響された犯罪の多発から
監督本人が映画の上映禁止令を出し、
公開後40年近くを経た今でもなお
カルト的な人気を保ち続けている
映画というのは「時計じかけのオレンジ」
を置いて他にないでしょう。
アレックス・デラージは
そんなカルト的人気を誇る
アンソニー・ヴァージェス原作、
スタンリー・キューブリック監督のSF映画
「時計じかけのオレンジ(1971)」の
主役を務めたキャラクターです。
時計じかけのオレンジの舞台は
昼は全体主義の政府による支配が行われ、
夜は不良たちが闊歩し暴力が支配する
ディストピア然とした近未来のイギリス。
そこで不良少年グループのリーダーとして
暴力、セックス、ドラッグ三昧の日々を送っていた
アレックスは、しかしある日
強盗先で仲間の裏切りを受けて逮捕され、
その後刑期短縮と引き換えに承諾した
犯罪者向けの人格矯正療法、
ルドヴィゴ療法を施された結果
本人の意思とは無関係に
「悪いこと」が強制的にできない人間にされしまい…
というのがこの作品のおおまかなあらすじです。
この一見奇妙な物語の内容には
人間の自由意志や本当の更生とは
何かについて問いかける裏の狙いがあり、
その鋭いテーマ性とキューブリックの
卓越した映像センスが
見事に融合した結果として
この作品に対する今の評価があると言えます。
さて、もし私がこの作品の中でもっとも
印象に残ったシーンを聞かれたら、
やはり仲間とともに作家夫妻の家を
襲撃したアレックスが
「雨に唄えば」を口ずさみながら
無抵抗な夫妻に暴力の限りを尽くした
あの有名なシーンを挙げるでしょう。
行為の悪辣さとは対象的に
陽気な歌を口ずさみながら老夫婦を
痛めつけるアレックスの姿からは
アレックスが暴力というものを
心の底から楽しんでいることが
言葉以上の説得力を持って伝わってきました。
映画自体の完成度や
ファッション性の高さから、
今では映画史におけるひとつの
アイコンともなっているアレックス。
その純粋な暴力性は
今回紹介した悪役たちの中でも
トップクラスの濃さで
私の脳裏に焼き付いています。
第3位:ジョーカー(ダークナイト)
(引用元:The Dark Knight (2008) Official Trailer #1 - Christopher Nolan Movie HD)
ジャック・ニコルソン(バットマン:1989)、
ジャレッド・レト(スーサイド・スクワッド:2016)、
ホアキン・フェニックス(ジョーカー:2019)など
様々な俳優によって演じられてきたジョーカーですが、
「悪役」として最高の一人を選ぶなら
私にとってそれはヒース・レジャー演じる
ダークナイトのジョーカーになるでしょう。
旧来のジョーカー像に縛られない
現代的なヴィジュアルに
大胆不敵で予測不能な行動の数々、
そしてヒース・レジャーのまるで
ジョーカーが取り憑いたかのような怪演。
このあまりにも
型破りなキャラクターは
クリストファー・ノーラン演じる
主役のバットマンを喰うほどの存在感を見せ、
ヒース・レジャーにその年の
アカデミー賞助演男優賞をもたらしました。
ちなみに『ダークナイト』の公開当時、
私は高校生だったのですが
やはり初見時のインパクトは
凄まじいものがありましたね。
難しい映画なので
一回見ただけではそこに隠された
真意までは読み取れませんでしたが、
それでも「何かすごいものを観てしまった」
という興奮を感じたことはよく覚えています。
また「ダークナイト」は
ジョーカー以外の部分も
おしなべて高クオリティ。
バットモービルのド迫力アクションや
ヒーローの道徳的ジレンマを
訴えかける深遠なテーマ性、
複数のストーリーラインが一点に向かって
収束していく巧みな構成など
「ダークナイト」が今や毎月のように
新作が公開されるヒーロー映画ブームの
先鞭を打つ作品となったことも
さもありなんといった完成度です。
そして最大の極め付けは
ジョーカーを演じたヒース・レジャーが
作品で作品の公開を待つことなく
映画の公開年と同じ年に
急性薬物中毒で急逝したことでしょう。
無論、役者の死と映画の出来は無関係ですが
なにせ演じたのがあのジョーカーということで
どうしても何か因縁めいたものを
感じずにはいられませんでした。
第2位:ハンニバル・レクター(レクター博士)
(引用元:The Silence of the Lambs Official Trailer #1 - Anthony Hopkins Movie (1991) HD)
出演作品 羊たちの沈黙(1991)
演:アンソニー・ホプキンス
羊たちの沈黙と言えば
90年代を代表する名作サイコスリラー映画ですが
その評価を不動のものとした最大の立役者といえば
作中で主人公クラリスが未可決事件の
ヒントを貰う役割で登場した元精神科医の猟奇殺人鬼、
レクター博士その人でしょう。
猟奇殺人鬼のイメージに反する
柔和で紳士的な態度と
一瞬で初対面のクラリスの内面を暴き、
言葉だけで人間を死に至らしめることもできる
人間離れした洞察力と知性、
そして演じるアンソニー・ホプキンスの
まるでレクター博士が評したかのような
鬼気迫る演技力などなど、
とにかく彼にまつわるすべてがずば抜けて魅力的。
中でも私が好きなのが
クラリスが初めてレクター博士の房を訪れるシーン。
他の囚人たちが座り込んでいたり
せわしなく動き回っていたのと対照的に
直立不動でガラスに向き合って
クラリスを待っていたレクターの姿が異様すぎて、
このワンカットだけでもうすでに
「こいつはタダものじゃない」
という迫力がビシビシ伝わってきました。
そのあまりに秀逸なキャラクターから
その後も『ハンニバル(2001)』、
『ハンニバル・ライジング(2007)』、
『ハンニバル(2013)』など
幾度となくスピンオフ化されたレクター博士。
彼こそはまさに映画界を代表する
至高の名悪役と呼べるのではないでしょうか。
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第1位:アントン・シガー
(引用元:No Country For Old Men (2007) Official Trailer - Tommy Lee Jones, Javier Bardem Movie HD)
出演作品 ノー・カントリー
演:ハビエル・バルデム
世の中に名悪役は数あれど
絶対に関わり合いになりたくない悪役を
一人選べと言われたら
私は迷わずこの
アントン・シガーを選ぶでしょう。
スペイン出身の名優バビエル・バルデムが
髪を奇妙なボブカットに整え、
家畜屠殺用の空気銃を携えて演じた
このキャラクターは、
その徹底した非人間性で
観たものすべてを
恐怖の渦中へと突き落としました。
シガーは「ファーゴ」や
「ビッグ・リボウスキ」で
知られるコーエン兄弟が監督した
2007年公開のスリラー映画
「ノーカントリー(No Country for Old Men)」にて、
アメリカ、メキシコ間の国境付近で
麻薬取引にまつわる殺人現場を偶然目撃し、
そこで現場から札束の入った
ブリーフケースを持ち帰ってしまった
ベトナム帰還兵のルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)
を追うギャングの殺し屋として登場しました。
シガーの姿を初めて見たときに
髪型以外で恐らく一番最初に目につくのが
彼がその手に携えている奇妙な武器、
「家畜屠殺用の空気銃」でしょう。
音もなくボルトを打ち込んで
標的を殺害できるこの武器は
殺人のために完全に合理化されたものであり
シガーがこれで人を次々殺していく様は
かなりのインパクトがありました。
…とはいえシガーに対して
私が本当に恐怖を感じたのは
この武器の方ではありません。
むしろそれ以上に、
シガーの持つ標的をどこまでも
追い詰める執念深さや
冷血動物のごとく徹底した人間味の無さ
といった精神性にこそ
深い恐怖を覚えたのです。
中でも印象的だったのが
シガーが劇中で何度か披露した
「コイントスで相手を
殺すか殺さないかを決める」シーン。
突然目の前に現れて
ただの確率で他人の生死を決定する。
まるで死神か天災かと
言わんばかりのこの演出に、
心の底からこいつにだけは
出会いたくないものだと
思わされたものでした。
このような感じで
プロの精神科医もお墨付きを出したほど
完璧なサイコパス像で描かれる
シガーが登場する「ノーカントリー」。
単純にアクション映画として
だけ見ても滅茶苦茶面白いのに、
そこに時代によって変化する理不尽な暴力と
それに取り残される人々という
深遠なテーマを見事に絡めて
一つの作品に昇華した稀有な映画です。
バイオレンス描写が大丈夫で
まだ未鑑賞の方はぜひ一度
鑑賞してみてください、
きっと後悔はしませんよ。
おわりに
今回の映画悪役ランキングは
いかがでしたでしょうか。
魅力的な悪役は
映画の持つテーマを引き立て、
映画全体の魅力を大きく高めてくれます。
今後も私たちを魅了する
映画の悪役が続々と
登場することを期待したいですね。
それでは!