切なすぎて読むのが辛くなるSCP報告書8選

SCP-5699を写した日付不明の写真。恐らく戦時中に撮影されたもの。SCP
SCP-5699を写した日付不明の写真。恐らく戦時中に撮影されたもの。

こんにちは、daimaです。

前回は恐怖、前々回はアイディアをテーマに
お送りしてきたSCPのまとめ記事ですが、
今回は『切なすぎて涙が止まらなくなるSCP報告書8選』と題しまして
私の目頭を熱くさせた切ない・悲しい系のSCP報告書を
8本厳選してご紹介したいと思います。

選出は日本支部、本家混合で、
なおかつ当サイトでは(私の記憶が正しければ)
初めてご紹介するフレッシュなものばかり。

ネタバレ箇所については開閉式となっていますので、
クリックでオープンしてご覧ください。

それではどうぞ!

SCP-646-JP「電話」

回収時のSCP-646-JP

回収時のSCP-646-JP

SCP-646-JP - SCP財団

過去を変えることができるという男(SCP-646-JP-A)に
電話で自分の好きな過去を変える依頼ができるという
不思議な電話ボックスについての報告書。

しかし、SCP-646-JP-Aには
変えられる過去と変えられない過去があったり、
改変後に現実改変の証拠となる
ヒューム値の変動が検出されなかったりと
その能力には何やら裏がありそうな様子。

そんな謎多きSCP-646-JPに対し、
財団はいつものようにDクラス職員を用いた実験で
その性質を明らかにしようとしていたのですが、
しかしある回の実験に参加したDクラス職員(D-8164601)が
事前の打ち合わせを無視して
「俺を自由にしてくれ」という依頼をしてしまい…

ネタバレ解説を読む▼

まずSCP-646-JP-Aの能力は純粋な時間移動能力であり、
現実改変能力は一切有していませんでした。

つまり、彼が解決できる依頼の範囲は、
この時間移動能力を除けば
一般的な成人男性ができる範囲に限られます。

そしてD-8164601の
「俺を自由にしてくれ」という依頼に対し、
彼が選んだ解決方法は
D-8164601がDクラスに身を堕とした原因である
犯罪が起きる直前まで戻り、
犯行を思いとどまるように言葉で説得するというものでした。

しかし、その結果は報告書に書かれている通り、
逆上したD-8164601による
SCP-646-JP-Aの殺害という悲劇的なものとなりました。

これは、単にSCP-646-JP-Aが命をおとしたというだけでなく、
SCP-646-JP-Aの英雄的行動にもかかわらず
D-8164601がDクラス職員となる運命から
逃れられなかった(=依頼を遂行できなかった)という点で二重の悲劇です。

ただ一つ、この話に救いがあるとしたら、
本来D-8164601が殺害するはずだった被害者が
命を落とさずに済んだということでしょうか…

SCP-276-JP 「許さない」

██駅のホーム

██駅のホーム

SCP-276-JP - SCP財団

東京の特定の駅ホームにのみ出現する
白衣を纏った壮年の男性の
幽霊(SCP-276-JP)についての報告書です。

SCP-276-JPは財団職員だけを狙い、
駅ホームから落下させて電車に轢かせて殺害するという
極めて危険な存在です。

SCP-276-JPはいかなる物理的手段によっても排除できません。

ターゲットとなった人物を
ホーム側に押し戻したり、
進行方向に障害物を置くなどの方法によって
SCP-276-JPの攻撃を回避する試みは
ターゲットが最終的に圧死するという理由でどれも失敗に終わりました。

また、これらに加えてSCP-276-JPには
二次被害を生み出す極めて危険な別の性質も有しています。

それは、SCP-276-JPによって殺害された人物が、
SCP-276-JPと同じく幽霊となり、
生前恨みのあった人物をやはり
SCP-276-JPと同様の方法で殺害するようになるというもの。

このように財団にとっては頭の痛い存在だったのですが、
しかしSCP-276-JPの出現する駅が日本の経済上重要な拠点であったことから
そこを閉鎖することもできず、財団にできたことは
問題のホームを利用しないように職員に通達することのみでした。

しかしある女性研究員が
このアノマリーの犠牲になったことをきっかけに
事態は思わぬ方向に向かい出し…

ネタバレ解説を読む▼

結論から述べるとSCP-276-JPは
SCP-276-JPのせいで婚約者を亡くした
エージェント小野によって消滅させられました。

婚約者がただ殺されただけでなく、
他者に危害を加える悪霊にさせられたことによって
SCP-276-JPに強い恨みを抱いたエージェント小野は
「SCP-276-JPに殺害された対象が
生前恨んでいた対象を殺害するようになる」という性質を逆手に取り、
SCP-276-JPにわざと自分を殺させることで
「SCP-276-JPを恨み殺せる幽霊」となり、
自らの手で婚約者の仇を討ったのです。

その後幽霊としてホームに留まることになったエージェント小野は
財団によってSCP-276-JP-A5に指定されますが、
しかし敵討ちを終えた彼が他の誰かに危害を加えることはなく、
ただ一人、静かに佇み続けるだけの存在となったのでした。

ちなみに事件の元凶だったSCP-276-JPの正体については
かつてanomalousアイテムの横領や横流しの罪で
財団に終了処分された研究助手であったことが補遺から読み取れます。

SCP-1581-JP 墓場はバルーンでいっぱい

SCP-1581-JP発生後の空

SCP-1581-JP発生後の空

SCP-1581-JP - SCP財団

ここでちょっと方向性を変えて雰囲気が秀逸なものを。

SCP-1581-JPは棺などの容器の中に入れられた人間の死体が
多量のゴム風船と紙吹雪、カラースモークに変換される異常現象です。

報告書の中では最後までなぜ、
どうしてこんなことが起こるのかについての説明はなく、
また特に驚かされるようなオチもないのですが、
しんみりとした気持ちと爽やかさが入り混じった読後感が
個人的に好きで今回紹介させていただきました。

また、この報告書を題材にした
『紐を話した風船は』というtaleも
なかなか味わい深い内容ですので
ご興味あれば合わせて読んでみてください。

紐を放した風船は - SCP財団

SCP-721-JP 夏日の坂

探査ドローンによって撮影されたSCP-721-JP-α上空の画像

探査ドローンによって撮影されたSCP-721-JP-α上空の画像

SCP-721-JP - SCP財団

██県██市郊外の旧道に存在する
下り坂へ続くトンネル(SCP-721-JP)についての報告書。

SCP-721-JPの中には
のどかな夏の田園風景が広がる異常空間(SCP-721-JP-α)があり、
SCP-721-JP-αの内部は季節に関わらず
常に同じ天候、気温、湿度、風速、雲量、太陽高度が維持されています。

またSCP-721-JP-αは他にも
その内部に人が侵入するたびに侵入した人間が
SCP-721-JP-αに抱く主観的な認識や感情に応じて
空間拡張が行われる性質や、
SCP-721-JP-α内部ではあらゆる物質的、精神的消耗が
発生しないという性質も有しています。

財団はSCP-721-JPの発生に
有真██という人物が関与していると見て調査を続けています。

ネタバレ解説を読む▼

問題の有真氏はニューエイジの神秘主義を主張する
カルト宗教に傾倒した過去を持つ過激な自然保護活動家でした。

開発によって自身が子供の頃に感動を受けた
美しい田園風景が失われつつあることに心を痛めた彼は
その風景を永遠のものとすることを決心し、
思い出の地に住居を移した上で
そこに古巣であるカルト宗教から盗み出した情報を応用して
先述のSCP-721-JPを作成します。

しかし、有真氏自身がSCP-721-JPの中に入り
彼の主観によって思い出の風景を再現させようという
彼の当初の目論見はなぜかことごとく上手くいきません。

禁忌とも呼べる手段を用いたにも関わらず
目的を達成できないことに苛立つ有真氏でしたが、
そんな彼の目的を達成させたのは
彼の子供である二人の幼い兄弟でした。

SCP-721-JPが完成するしばらく前からそこを訪れ
有真氏から彼が愛した風景の話を聞かされていた兄弟は
数ヶ月後に再びそこを訪れ、自転車に乗った状態で
その時すでに完成していたSCP-721-JPの中へと入り込んでしまったのです。

そしてその瞬間二人の頭の中で膨らんでいた
父の思い出の風景のイメージが最後の鍵となりSCP-721-JPが完成。
結果として報告書にSCP-721-JP-αとして記載されている
広大な田園風景が誕生したのでした。

こうして有真氏の悲願が達成されたわけですが、
代わりに彼はとても大きなものを失うことになりました。

SCP-721-JPを完成させた彼の子供たちは、
ずっと頭の中に思い描いていた風景を目の前にして
好奇心を抑えることなどできなかったのでしょう。

そのまま自転車で奥へ奥へと進み続けた彼らは
その尽きない想像力でSCP-721-JP-αを拡張させ続けることによって
もはや財団ですら容易には追いつけない遥か遠くまで走り去って行きました。

父の思い出の風景の中、
二人は今も夏日の坂を降り続けているのです。

SCP-1287  かなしまないで

SCP-1287 - SCP財団

SCP-1287はアメリカワシントン州の████████に存在する、
表面上に不規則な間隔で行方不明者の名前が出現する異常性を有した
高さ3m、長さ10m、幅1mの大理石の板です。

誰かがこれらの名前の1つに触れると、
触れた人の脳内に「この人の家族にはあなたの助力が必要です。
彼らを救うために、あなたの人生を使っていただけますか?」という声が聞こえ、
それに対して肯定の意を示した場合
その人の外見が行方不明期間による年齢の加算も含めた上で
触れた名前の持ち主と全く同じ姿に変化します。

この異常によって姿が変化した人物(SCP-1287-A)は
行方不明者の失踪時までの記憶と知識を獲得した上で
行方不明者の家族や親しい人のもとに帰りたいという強い衝動を覚えるようになり、
それを実行した場合、3ヶ月で影響を受ける以前の記憶を喪失し
自身を完全にその行方不明者であると信じるようになります。

本アノマリーの収容後、
その性質に目をつけた財団は
任務中に行方不明となった隊員の姿に変化させることで
失踪直前の情報を引き出す目的に利用しようと計画しますが、
しかし収容からしばらくすると
SCP-1287の反応が徐々に遅れるようになっていき…

ネタバレ解説を読む▼

報告書の後半には
SCP-1287の異常性が収容から半年後に失われたこと、
そしてその時点で破壊可能となったSCP-1287の内部から
身元不明の人間男性の遺体が発見されたことが記されています。

発見時の状況や後に示すメッセージの内容から見て
この男性こそがSCP-1287の原因であり、
また現実改変能力者でもあったことは間違い無いのですが、
一方で彼がそんなことをした理由については
次の二つの情報から朧げに推測することができます。

その内の一つは彼が失踪者探索プログラムへの支援と
資金提供を行っていた後援者であったという過去であり、
そしてもう一つは彼の遺体とともに
SCP-1287の内部から発見されたという以下のメッセージです。

そう遠くないうちに、私の力は使えなくなるだろう

この力が尽きるなんて考えたこともなかった

私は不死身だと思っていた

だがそれでもいい、彼らの家族は幸せなのだから

私は、私にできることをした

強力な現実改変能力を持ちながら、
その力を最期まで他人を救うために使ったこの男性。

生きていた頃はどんな人物だったのか、
行方不明者の捜索に関心を持った理由は何だったのか、
行方不明者の縁者のためとはいえ、
他人の人生を犠牲にすることをどう思っていたのかなど、
報告書で描かれている部分が少ないだけに
その人物像についてあれこれ想像が膨らんでしまいますね。

SCP-5762  医者の一日

手術室3内のSCP-5762。

手術室3内のSCP-5762。

SCP-5762 - SCP財団

続いてご紹介するSCP-5762は、マーシャル・カーター&ダーク株式会社の
プライベートオークションで押収された経緯を持つAI付きの手術ロボットです。

液晶画面を通じて人間とやりとりができるこのロボットは
財団の買収当初、電源を落とされどこかに保管される予定でしたが
財団のアリソン・ブリーディレクターの提案により
病気の財団職員の手術に活用されることが決定。

自分の力が活かせる場所を獲得したSCP-5762は
次々と困難な手術を成功させていったのですが…

ネタバレ解説を読む▼

報告書に掲載されている手術事例の最後、
記録にある中で唯一SCP-5762が
死なせてしまった患者というのが
SCP-5762に活躍の機会を与えてくれたアリソン・ブリーその人でした。

恩人を救えなかったことに打ちのめされたのか、
ブリーの死後、SCP-5762は30分間
外部からの問いかけに無反応となり
その後自発的ににシャットダウン。

それ以来現在に至るまで
SCP-5762の再起動が成功していないことを記して
本報告書の内容は終わっています…

SCP-5726 きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!

きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!(2002-2007)のタイトルスクリーン

きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!(2002-2007)のタイトルスクリーン

SCP-5726 - SCP財団

某魔法少女アニメを彷彿とさせる
ふざけたメタタイトルが目を惹くこちらの報告書。

SCP-5726は「ダークネス」の魔の手から世界を守るため魔法少女
「ダーリンピンク」を自称する人型実体であり、
外見こそ人間の14歳程度の少女のように見えるものの
実際には多数の肌色の肉状の層から構成される
通常の人間とは全く異なる体組織を有しています。

SCP-5726はいわゆる「魔法」を使うことができ、
自身が"ダークネス"と見做した対象を
手にした杖から発射されるハート型の光によって
文字通り爆殺することが可能です。

加えてSCP-5726は人間の血を
ダークネスの証拠として見なす性質があり、
誰もがその被害者となる可能性があることから
オブジェクトクラスは最も危険なオブジェクトに与えられる
Keter指定がなされていますが
一方で本人の性格は年齢相応の純真なものであり、
また言葉を通じたコミュニケーションも可能であることから
SCP-5726の担当職員となった西川-ジョーンズ研究員は
危険性を指摘する同僚のキム下級研究員の反対にも関わらず
SCP-5726をあくまでも人間の少女と同じように扱い、
対話による共存の可能性を探ることを決意したのでした。

ネタバレ解説を読む▼

収容期間中を通じて、SCP-5726を
人間として扱い続けた西川-ジョーンズ研究員でしたが、
ある時ふとした偶然から出血した姿をSCP-5726に見られてしまい、
そのことから彼女をダークネスだと認識したSCP-5726によって爆殺されてしまいます。

この事態受けた財団はとうとうSCP-5726の処分を決定。
SCP-5726を完全に無力化できる冷凍での半永久的な保管が実施されることとなりました。

報告書の最後、
財団によって誘導されたどり着いた冷凍庫の中で
SCP-5726が薄れゆく意識の中で
キム下級研究員と交わした一連のやりとりは、
これまで彼女が引き起こした惨劇にも関わらず
読んでいていなんとも切なく、やりきれない思いがするものでした。

最初読み始めた頃にはよくある魔法少女に
残酷なことをやらせるだけの話だと思っていたのですが、
最後にこんな悲しいオチが待っていようとは…
良い意味で予想を裏切られた報告書でしたね。

SCP-5699 - 自分を労ってあげて。

SCP-5699を写した日付不明の写真。恐らく戦時中に撮影されたもの。

SCP-5699を写した日付不明の写真。恐らく戦時中に撮影されたもの。

SCP-5699 - SCP財団

SCP-5699は重大な情緒不安定状態にある人の前に出現する
フードを被った人間のような姿のアノマリーです。

SCP-5699は出現後約5分間
静かに対象者を観察してから消失し、
対象者の近くにある鏡などの反射面にメッセージを残します。

ネタバレ解説を読む▼

この短い報告書には特に捻ったオチがあるわけではなく、
SCP-5699は単に自殺しそうな人の前に現れて
言葉で慰めるという本当にただそれだけのアノマリーです。

しかし、報告書に記載されている
SCP-5699が残したメッセージの事例の内容には、
それを読む人の想像力を刺激し、心を強く打つ力があります。

メッセージを読めば、それらが
孤児、入院患者、トランスジェンダー、HIV感染者、
DV被害者、ホームレスなどさまざまな理由で
社会的に弱い立場にある人々に向けられたものであることがわかります。

そして、最後のメッセージは
SCP-5699プロジェクトの研究主任であった
ロナルド・ピアソン博士に向けられたものであり、
その内容を特別収容プロトコルの内容と合わせて考えると
財団がSCP-5699の収容の必要性がないと判断するに至った背景に
この博士が大きく関わっていたことが推測されます。

ともあれ、このアノマリーについて私が特筆すべきことは、
それが詩的で美しく、慈愛に満ちたものであるということです。

ホラーサイトとして始まったSCP財団から
こんな創作物が生まれるなど、一体誰が想像できたでしょうか?

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