はじめに
ここ1ヶ月ほどの間に読んだ中で、
特に私の琴線にクリティカルヒットした
イカしたSCP報告書を5作ほど紹介したい。
紹介する報告書は当サイトでは初めて紹介するものばかりで、
なおかつ公開された日付もなるべく浅いものだけを選んでいる。
具体的に言えば本家ならシリーズVI (5000-5999)以降のものオンリーだし、
日本支部や中国支部の場合も新しめのものに絞って選んである。
それでは行ってみよう。
最近読んだSCP報告書の中で特に面白かったやつベスト5
SCP-CN-2987『みあげないで』
▲(SCP-CN-2987の現場にて発見された携帯の典型的な画面。報告書中より引用)
本日一発目は中国支部より。
各地の公衆トイレで次々と人々が失踪する怪奇現象が発生。
現場には失踪者の携帯電話だけが発見され、
電源を入れてもなぜか必ず真っ白な画面と
5種類のアイコンだけが表示される状態になっているという
ほぼそれだけの説明で完結しており、
おそらく一見しただけではほとんどの人が
意味がさっぱりわからないであろうこの報告書。
しかし、その内容を
改めてよ~く観察してみると…?
~以下ネタバレ~
バッテリー警告の(システム上の)意味は重要ではない。アップロードの意味も、アイプロテクションモードのシステム的意味も恐らく重要ではない。
注目すべき所は、これらのアイコン自体である。「バッテリー警告」は警告を意味するビックリマーク、「アップロード完了」は上を指す矢印、「アイプロテクションモード」は眼球だ。繋げるとそれは「上を見るな」という意味になる。携帯にはこうした数種類のデフォルトアイコンしか入っていない1ため、これらを使ってでしか「上を見るな」というメッセージを伝えられないのだ。
つまるところ、誰か、あるいはナニカが他の人に対し、次のように警告しようとしているということだ。「真夜中に一人でトイレに行くときは、決して上を見てはならない。さもなければ、ああいった失踪者俺達のように、頭の上のナニカに連れて行かれるから」と。
SCP-CN-2987のディスカッションより引用
おぉ~
いいねぇ。この背筋にゾクゾクくる感じ。
これを読んだ後しばらくは、
夜トイレの個室に入るたびに頭上が気になって仕方なくなること請け合いだ。
SCP-6239『夢の子』
この報告書に出てくるSCP-6239は
極めて強力な現実改変能力を持つ13歳の少女。
現在は財団によって昏睡状態にあり、
「いかなる状況下でも、決して対象を目覚めさせてはならない」
という厳しい収容プロトコルが策定されているこのアノマリーに対し、
新たな研究担当として配属されたアンドリューズ博士はしかし
引き継ぎの際に前任のアクサミット博士から
「実は君はSCP-6239の能力が生み出した想像上の産物に過ぎないんだよ」
という衝撃的な話を聞かされ、それを確かめるために行動を開始する…
というお話。
いわゆる胡蝶の夢的のフォーマットを踏襲したお話ですが、
SCP財団の世界観との組み合わせ方や会話劇の見せ方が巧みで、
アンドリューズ博士の抱く自分の存在に対する不信感が
読んでいるこちらにまで生々しく伝わってきて物語に引き込まれた。
物語の最後、主人公のアンドリューズ博士が
どんな選択をしたのかについては、
是非とも自分の目で確かめてみてほしい。
SCP-2788-JP『 n人目の死んだおばあちゃん』
続いて紹介するのは、
今回は唯一の日本支部の報告書だ。
いわゆる『意味がわかると』系の報告書で、
最初は不気味な現象の説明がなされるだけで意味がよくわからないのだが、
最後の補遺を読むことで初めてそれまでの内容が
最後の『オチ』に向けた前振りだったことがわかる仕掛けになっている。
多くの事例では1名の人物が複製される回数は1回のみですが、まれに数日から数年の間隔を挟んで再度複製される場合もあります。現在の最多複製回数は█████氏の38回です。
最後まで読み終えてネタを理解した上で
もう一度読み返してみた時に最高にウケたのがこの一文。
これだけで█████氏の人柄が
透けて見えてしまうのだから面白い。
SCP-6061 『GUILTY. GUILTY. GUILTY.』
こいつは未翻訳の報告書だが、
本家の注目記事にピックアップされていたので気になって読んだものだ。
内容をざっくり説明すると、
「SCP-6061は人間が芸術活動を行うことを「有罪」であるとして
芸術に関わりのある人間を標的に、イスラム過激派のような残虐な処刑を行う正体不明のエンティティ。」
といった具合だろうか。
この報告書が面白いのは、第一に
SCP-6061がなぜ人間の芸術創作行為を有罪と見做すのか、
その根拠が全く不明であり、報告書中でそれが明かされることもないことだ。
犠牲者たちは、通常では理解できない
SCP-6061たち独自の判断基準で有罪宣告をされ無惨に殺される。
その理不尽さはややもすれば
投げっぱなし、説明不足になりかねないが
この報告書においてはそれがむしろ
理屈の通じない別次元の知的生命体に対する
恐怖感にうまくつながっていたように思う。
そしてもう一つ、この報告書の肝となるのが
SCP-6061に遭遇した中で唯一の生存者であり、
また唯一財団によるインタビュー記録が残されている、
おそらく高名な画家のラングレー氏に関する顛末だ。
なぜ、彼だけが生かされたのか
その理由は報告書を最後まで読むことで明らかになるので、
気になる方は未翻訳なのでちょっとハードル高めだが
是非とも本報告書を読んでその結末の衝撃を味わって頂きたいと思う。
SCP-6698 『みんなも排水口は掃除しとけよ』
こいつは…
紹介しておいてなんだがいわゆる『閲覧注意』ってやつだ。
例のGから始まる虫が登場するので
特に食事中は絶対に見ないことを強くお勧めする。
私がこれを読んだ時刻は
昼飯を終えて2時間経ったくらい経った頃だったが、
それでも読み終えた後はさっき食べたものが
喉まででかかったほどだった。
正直今思い出しても気分が悪くなる。
ただ、視点を変えてみれば
それだけ読む側にインパクトを与えられるということは
それだけ書き手の表現力が卓越しているということでもあるし、
ホラーもののツボがきっちり押さえられているせいか
生理的嫌悪感の強い内容にも関わらずぐいぐい読まされてしまう。
強烈な題材を扱いつつもそれに頼り切らない、
構成力が光る一作だったと思う。
…あと、余談だけど
これを読んだ日の夜に風呂場の扉を閉めるのを
一瞬ためらった経験をしたのはきっと私だけではないはずだ。
終わりに
今日はこれで終わりだ。
楽しんでもらえただろうか?
最後に知っている人も多いかもしれないが、
実は今週の頭までwikidotからのハッキング被害でダウンして
SCP財団のサイトにアクセスできないという状態が発生していた。
幸い、運営側の努力により今は復旧しており、
歴代のSCP報告書も以前と同じように読むことができる。
運営チームの迅速な対応には感謝しかないし、
それに加えて身近なサイトが標的になったことで
近年増加傾向にある国際的なサイバー犯罪の恐ろしさを
改めて思い知らされた出来事でもあった。