脅威!恐怖!驚愕!
こんにちは、daimaです。
本日は「閲覧注意!オチが怖すぎるSP報告書5選」と題して
刺激強めのSCP報告書を5つご紹介します。
選出に際してはシリーズⅥ以降の比較的新しい報告書のみセレクト。
当ブログでも初めてご紹介する報告書ばかりです。
それでは、どうぞ。
SCP-5088 「空のプール」
さて、本日1発目にご紹介するSCP-5088は
イギリスのウィガンという所にある
健康クラブ跡地に設置された空のプールです。
このプール、添付の写真をご覧になれば分かる通り
見た目は水の入っていない空っぽプールなのですが、
この中に入ったものがあたかもそこに
水があるかように浮かんだり沈んだりするという不思議な性質を有しています。
また、このプールの中にある「水」は
ただ目に見えないだけでなく、
そもそも物質的に実在すらしていないらしく、
普通の水のように掬って外に出すこともできないというのだから
ますます不思議なことこの上ありません。
一定の場所から動かず、上記以外に特に
危険な性質も発見されていないことから、
オブジェクトクラスは最も低リスクとされる
Safa指定がなされているこのアノマリーですが、
それはさておきアノマリーの性質解明を
使命の一つとしている財団は
この不思議なプールに対していくつかの
「実験」を行うことを決定しました。
実験1 : ハツカネズミを用いた生物実験
生物に対するSCP-5088の影響規模を試験するために、被検体(今回は実験目的で飼育されたハツカネズミ)を小型ケージに入れ、SCP-5088の底に降ろして5分間留めました。
財団が最初に行なったのは
生きたハツカネズミをケージに入れ、
そのままSCP-5088に沈める生物実験でした。
SCP-5088に「浸された」ネズミは
即座に苦痛の様子を示し始め、
およそ3分ほどで窒息死してしまいます。
しかし被検体の死亡確認後、
その死体がケージごとSCP-5088から引き上げられると
それまで停止していた生体反応が一転して復活。
ついさっきまで死んでいたことがまるで嘘だったように
全てのバイタルサインが正常な状態へと回復したのです。
もっともそれも束の間のことで、
再び息を吹き返したかに見えたハツカネズミは
その後一切の刺激に反応しなくなり、
その数分後には再度死体の状態に戻ってしまいました。
そして、その後に行われた
検死解剖の結果、さらなる意外な事実が判明します。
なんと、2回目の死の原因が
被検体が自らの舌を噛み切り、
喉に詰まらせた結果の窒息死であったことが分かったのです。
1回目は外傷を伴わない窒息死で
2回目は舌をかみ切った上での窒息死。
これらの事実は、
一体何を意味しているのでしょうか?
今はまださっぱりわかりませんが、
何だか嫌な予感がプンプンしてきましたね…
実験2 : ハツカネズミの死体を用いた実験
蘇生がSCP-5088に本質的に備わった特性なのか、被検体が存在しない液体に溺れたことへの遅延反応なのかを判断するために、数体の死亡済み被検体をSCP-5088に降ろしました。
続いて財団は、最初から死んだ状態のハツカネズミを
SCP-5088の中に入れることで、
SCP-5088に蘇生効果が備わっているかどうかを確認する実験を行いました。
しかし結果としては何も起こらず、
SCP-5088に死体を蘇らせる力があるわけではない
という事実だけが判明する結果となりました。
実験3 : Dクラス職員を用いた人体実験
SCP-5088内での窒息に続く異常な影響をより明確化するために、人体実験が承認されました。
最初の実験と同様に、被検体(今回はD-22122、自殺傾向歴の無い32歳女性)をケージに入れ、SCP-5088の底に降ろしました。
実験の一貫性を損なう可能性がある行動を抑止するための麻酔が投与されました。
2つの動物実験を経た財団は、
いよいよ生きた人間を用いた人体実験に移行します。
これまでの経緯から、被検体となった生物は
ほぼ100%死亡することが分かっているわけですが、
そこはおなじみDクラス職員(D-22122※女性)を利用するので問題ありません。大丈夫、Dクラスに人権はないからね。
さて、かくして先のネズミ同様
ケージに入れられた状態でSCP-5088内に降ろされたD-22122。
予想通りと言うべきか、彼女はそこでまもなく窒息死し、
続いて先の実験と同様に死体を載せたケージが
SCP-5088の外へと引き上げられることとなります。
そしてやはり予想通り、
SCP-5088から外に出た途端にD-22122は息を吹き返したわけですが、
ここからの展開が最初の実験とは異なっていました。
蘇生したD-22122は終始無反応だった
最初のケースのネズミとは違い、
激しいパニックの反応を示し出したのです。
SCP-5088の境界を離れると、被検体は以前の実験と同じく即座に蘇生し、激しい興奮状態で叫び声を上げ、保安職員と実験担当者による拘束の試みを振り切って近くの壁に走り寄りました。被検体はこの壁に急速かつ勢いよく自らの頭部を打ち付け始め、頭突きを5回行った後に意識を失いました。
この間、被検体が以下の言葉を繰り返す様子が観察されました。
あれが私を待ってる! 私がそこに戻るのをずっと待ってる!
現地の医療職員の努力にも拘らず、被検体は鈍的外傷によって再び死亡し、実験は時期尚早に終了しました。
死亡する前に、被検体が微笑む様子が観察されました。
D-22122が見たという「あれ」とは一体なんだったのか…
そして彼女が、死亡する前に微笑んだ意味とは…
報告書はここで終わっており、
その真相は今も見えない水底に隠されたままです。
その上でどうしても
全てを知りたいというのであれば…
あなたも、一度「溺れて」みますか?
SCP-5412 「酒に呑まれる」
もしこの世に「無限にビールの湧き出るビール樽」が存在したら…
そんな世の呑兵衛達の夢を体現したようなアノマリーが
この報告書に書かれているSCP-5412です。
まずはアノマリーの説明を見ていきましょう。
SCP-5412は現在、ビール生産の反復サイクルを持続させる奇跡論プロセスの影響を受けているビール樽です。
毎分およそ65,708リットルの速度で、SCP-5412は約413,000kPaの圧力がかかったビールを管の内部に出現させます。
一般的な樽の耐久性を大幅に上回るにも拘らず、SCP-5412は損傷することなく、無期限にこの容量と圧力を維持できます。
先ほど述べたように、
このアノマリーは一言で言うならば
「無限にビールの湧き出るビール樽」に他なりません。
ただ、上記の文章をきちんと読んだ方は既にお気づきかと思いますが、
その中にちょっと気がかりな一文が含まれているんですよね。
SCP-5412は約413,000kPaの圧力がかかったビールを管の内部に出現させます。
参考までに、kPaとは圧力の単位のことで、
413,000kPaとは1cm²に4130kg(約4トン)もの
圧力が掛かった状態を意味します。
これは当然ながら一般的なビール樽の耐久性を
大幅に上回る途方もない圧力なのですが、
SCP-5412は曰く「原始的な奇跡論舞踏儀式」によって
その圧力に耐えられる超自然的な耐久力を有しているとのこと。
SCP-5412は古代北欧のセイズマズルが使用していた原始的な奇跡論舞踏儀式によって作成されました。この儀式は本来、ビールや蜂蜜酒の供給量が少ない時期に、樽を再補充する目的で設計されたものでした。
なるほどなるほど、SCP-5412は
古代北欧の魔術に通じた人々が、
酒を安定的に供給する目的で編み出した
魔術的な儀式によって
作り出された代物だったと言うわけですね。
しかしそうだとすると、古代の魔術が
現代的な金属製のビール間に掛かっていることや、
SCP-5412の内部に413,000kPaもの圧力が
発生していることに対する説明がつきません。
特に後者に関しては、
自分たちが飲むにしろ神に捧げるにしろ
そんな圧力が掛かっていては、
樽からビールを取り出すだけでも
ずいぶん苦労しそうなものですからね。
これらの疑問の答えに迫るため、
説明セクションの残りの一文にも目を通してみましょう。
不正確な動きや言い回しが儀式の本来の意図からの逸脱を引き起こしたと仮定されています。
「不正確な動きや言い回し」?
誰かがSCP-5412を作ろうとして
失敗したということでしょうか?
何とも想像が膨らむこのアノマリーですが、
全ての答えは、SCP-5412発見時の状況を収めた
永続記録の内容を記載した
「発見」セクションに記されていました。
古代北欧の魔術儀式とは
1ミリも関係性が無さそうなこちらの画像ですが、
実はこれこそが先に触れた映像記録の一場面であり、
ここに映っているノリノリな3人のお兄ちゃん達こそが
実は他ならぬSCP-5412の作成者だったのです。
カイル: フィルの両親がな、オカルト系のあれこれにハマってんだ。俺たちは屋根裏にしまってあったガラクタから、昔の北欧のおまじないを幾つか学んだのさ。
撮影者: [笑う] いやー、こりゃ全員かなり酔ってるな。
グレッグ: [撮影者に身振りをする] お前、あー、ちょっと下がってた方が良いな。
[3人がSCP-5412を取り囲む。]
フィリップ: オーケイ、3つ数えたらやるぞ。ワン… ツー… スリー!
上記は映像記録に含まれていた
SCP-5412の関係者たちの発言の一部ですが、
この部分からだけでも
SCP-5412が生み出された経緯が
おおよそお察し頂けるかと思います。
そして、彼らが千鳥足の状態で行った儀式によって誕生した
SCP-5412が結果的に何を引き起こしたかについては、
該当箇所が会話主体でそれほど解説の必要がないと言うことと、
表現的に少々きつい描写があるということで、
あえて割愛させて頂きます。
その上で読み終えた後の
私の素直な感想を記しておくと、
「中途半端に知識がある状態が一番怖い」というのと
「酒に"呑まれる"ってそっちの意味かい!!」
ってところですかね…。
SCP-5535 「君の手でさえ君を憎んだら」
何とも意味深なメタタイトルが目を惹くこちらの報告書。
SCP-5535に指定されているのは
マテオ・ヴェレスという一人の男性です。
妻の殺害と子供の殺害未遂という
凶悪な犯罪を犯して逮捕された彼は、
逮捕後にそれは自分の意思ではなく、
左腕に宿った別人格が行ったのだと主張。
その後、主張の裏付けのために
警察から病院へと搬送されて検査を受け、
そこで異常な脳科学反応が発見されたことで
最終的にそれに着目した財団によって
アノマリーとして身柄を抑えられるに至ったという経緯がありました。
まるで漫画「寄生獣」を抱負とさせるこの事件ですが、
しかし彼の左腕はミギーとは違い
誰に対しても非常に敵対的であったため
財団は彼の左腕が周囲に危害を加えることがないように
左腕を専用の容器に拘束する形での収容を実施します。
かくしてひとまずの収容がなされたSCP-5535ですが、
もちろん話はこれで終わりではありません。
ある時、週に一度のSCP-5355の腕を締め付ける容器を取り外す最中に
SCP-5355の左腕が空中に文字を書くような所作をみせ、
それを認めた財団の担当者が、本体であるSCP-5355の反対を振り切って
左腕に文字を書かせてみる試みを行なったのです。
そうして、左腕が書いたメッセージの内容は
財団の担当者と私たちの頭を混乱させるのに十分すぎるものでした。
まず、私があなた方を傷つけたことを謝罪します。
あなた方は私が動くのを止めたので、私はあなた方が彼の仲間なのではないかと思ったのです。
今、私は彼も同様に投獄されていることに気付いたので、私はそうではないことが分かりました。この男は彼が言うような人間ではありません。
彼は偽物で、身体泥棒なのです。私が本物のマテオ・ヴェレスです。私は彼が何なのかを知れませんが、人間ではない、それを保証します。
そいつは私の所に来て、私の心にそいつ自身が押し入ってきたのです。
私を上書きか、削除かなにかをしようとしていましたが、成功しませんでした。
完全ではないのです。このろくでなしが私の愛する人を私の手で殺すのを、自分の目で見ざるを得ませんでした。
でも、彼が私の娘に手をかけた時、私は彼を許せないと理解しました。
私は何とかこの手を制御する脳の部分の制御を取り返すことに成功し、彼を止めるために動かしました。
それ以来ずっと粘っています。できれば助けてください。
自分が衰えていくのを感じていて、どれくらい我慢出来るか分かりません。
この偽物を取り除くのを手伝ってください。
あなた方は私の脳から彼の意識を消し去り、私の身体の支配を取り戻さなければなりません。
お願いだ助けてくれ。
助けて。
( ´・д・)ン?
左腕が乗っ取られたと思っていたら
実は左腕以外が乗っ取られていた…だと?
これまでの前提を一気に覆す新情報の登場に
何とも頭が混乱してしまいますが、
よく考えればそれ以前にこの左腕の主張が
嘘ではないという保証だってどこにもありません。
現に財団も事の真偽を見極めかねているらしく、
このアノマリーに対する処遇は最後まではっきりしないまま、
今後も研究が続けられるとのみ記して報告書は閉じられています。
後書: 前回のメッセージが伝えられた後、影響を受けた腕は休眠状態になりました。以前よりも大幅に大人しくなり、時々身体に危害を加えようとするのみです。メッセージの内容を考慮し、容器を毎週3回取り外し、アノマリーの正確な性質を判断するために腕との連絡は維持されます。SCP-5535はこの啓発に対して異議を声高に申し立て、その別の意識が嘘をついていると主張しています。研究は続けられます。
左腕"以外"の主張が正しいのか、
それとも左腕の主張が正しいのか
それを知る術は私たちにはありませんが、
少なくとも一つだけ間違いなく言えることは、
全ての真実が明らかになるまで
マテオ氏と彼の左腕が自由の身になる日は
決して訪れないということでしょうね…
SCP-5798 「排水溝蛇へのインタビュー」
ここまでちょっと怖い感じの報告書が続いたので
ここで一つ雰囲気を変えて
気さくでフレンドリーなアノマリーが登場する報告書をご紹介しましょう。
SCP-5798はフロリダのとある宿泊施設に棲みついている実体です。
報告書の記述に依れば
この実体はその細長い体で
問題の建物の配管系統全体を占拠している他、
次のような特徴も明らかになっています。
この実体は肉塊のような外見をしており、先端には触手状の付属肢が数本存在します。SCP-5798の表皮の色は完全に透明であるため、身体の一部として血管、筋組織、短い金色の体毛が観察されています。
SCP-5798は概ね不活発であり、男性用ロッカールームのシャワー区画にある小さな排水溝に短時間浮上して、格子の隙間から触手を突き出す様子のみが観察されています。SCP-5798は排水溝から最大1.2mまで延伸できます。
ここまで読んだ感じだと
いかにもB級ホラー映画に出てきそうな
ありきたりなモンスターといった印象ですが、
このアノマリーが真に特徴的なのは上記の特徴に加え、こんななりで英語による会話能力を有していることです。
SCP-5798は知性を有し、英語で首尾一貫した意思疎通を行うことが可能です。 (補遺5798.1参照)
上記の補遺5798.1には
このアノマリーの担当者だった財団のハドウ次席研究員が
SCP-5798が出現する排水溝の隣のロッカールームから
SCP-5798と会話を行った際の記録が残されています。
早速、その内容を見ていきましょう。
ハドウ研究員がシャワーの正面に座り込み、メモを取っている。排水溝から声が聞こえる。
SCP-5798: おう!
ハドウ: ん?
ハドウはメモ帳から顔を上げ、周囲を見回す。
SCP-5798: ここだよ、兄ちゃん。排水溝の下さ。
ハドウ: ああ。
SCP-5798: それだけ? “ああ”だって? 俺みたいな奴とはよく話すのか?
ハドウ: いや… 君が話せるとは知らなかった。信じてもらえないかもしれないがね、私が先週言葉を交わした存在たちに比べたら、むしろ君はごく普通だよ。
SCP-5798: マジで? お前セブンイレブンかどっかで働いてんの?
「肉塊でできた蛇のようなモンスター」という
事前情報から想定されるイメージとは
欠片も結びつかないこのフランクな話しぶり。
アノマリーの発言というよりは、
気のいい近所の兄ちゃんのセリフだと言われた方が
よっぽど信じてしまいそうですよね。
ともあれ、普通の人間と同じように
アノマリーと会話が出来るなら、
研究者にとってこれほど都合の良いことはありません。
予想外のSCP-5798のキャラクターに
最初は少々驚いていた様子のハドウ研究員も
すぐに冷静さを取り戻し、事前に決められていた
質疑応答を進めていきます。
ハドウ: あながち間違っていない。ああそうだ、君に幾つか質問しておいた方が良さそうだな。さて、それでは… 名前はあるかい?
SCP-5798: 無いと思う。
ハドウ: 君は何者だ?
SCP-5798: どうでもいいね。
ハドウ: (身振りをする) えー、君は一体どういう経緯で、その、こういう状況に陥った?
SCP-5798: 知らねぇよ。
ハドウ: このクソ - (息を吐く) すまない。ただね、私はそんな返事を上に伝えるわけにいかないんだ。上は情報を求めてる。
ぶっきらぼうではありますが、
会話のキャッチボールが成立している以上、
問答無用で危害を加えてくる
その他の大勢のアノマリーに比べれば随分ましな存在でしょう。
しかし、この直後のSCP-5798の何気ない発言から、
二人の会話は思わぬ方向へと進展していきます。
SCP-5798: おおっと、そいつは悪かったな、兄ちゃん。俺は本当に今みたいな質問には答えられないんだ。ところで“上”って何だよ?
ハドウ: 私の上司たちだ。いいかい君、適当な身の上話をでっち上げたって私には分かりっこないんだから気にしなくていいぞ。私はとにかく研究成果が要るんだ、頼む。
ハドウは左手をこめかみに当てて揉みほぐし始める。
SCP-5798: 失礼な事を言いたくて言ったんじゃねぇ。ただそういう事は普段考えないってだけさ。すまんな。
ハドウ: その… いいんだ。別にいい。
SCP-5798: 本当に大丈夫かい、兄ちゃん? もし良けりゃ、俺が相談に乗ってやんよ。
ハドウ: な — 何? それは — 畜生、排水溝の化け物に人生相談かよ。馬鹿げてる。
SCP-5798: そう僻むなって。俺だってお前と同じくらいまともに話したり考えたりできるんだぜ。それでお前が楽になるなら、喜んで耳を貸そうじゃないか。ひとまず俺はこの場に居ないと思って、自分の考えを話してみろ。遠慮は抜きだ。
言葉の端々に自分の所属している組織の
ブラックさ加減に対する不満をにじませるハドウと、
それを察して「いいから俺に話してみろよ」と親身な態度を見せるSCP-5798。
その申し出に「排水溝の化け物に人生相談かよ」と
至極真っ当なツッコミを入れるハドウでしたが、
SCP-5798の優しい言葉にほだされて
少しづつ自分の辛い身の上を吐き出していきます。
ハドウ: 私は働き過ぎだ。疲れ果てている。
孤独だ — まだ数十万ドルも負債を抱えてる。
資産1兆ドル規模の組織ならそんな借金も解決してくれると思うだろうが、そんな事は無い。もしかしたら、もしかしたら、いつの日か有給休暇を取得できるかもしれない、サイトの休憩室に表彰状でも飾ってもらえるかもしれない、そんな希望にすがりながら、日がな一日無意味な研究を続ける。
そりゃ勿論、運良く財団が手放しても惜しくない程度の役立たずだと見做されたなら、60歳で退職して、報酬として居心地の良い小さな家を貰って、そこで安らかにくたばることができるだろうさ。
その前に排水溝の蛇もどきとお喋りしたせいで死んだり、火曜日に本の読み方を間違ったせいで車椅子生活になったり、その他のふざけた事件に巻き込まれなければ。ハドウは呻き、手に顔を埋めて泣き始める。
SCP-5798: 全部吐き出しちまえ、兄ちゃん。一切合切。俺が聞いてやる。
ハドウ: 女は私を嫌っている、男も私を嫌っている、クソが、今ではもう私自身の手さえもが私を嫌っている。
私は — 私はただ — いつも山ほどの仕事に追われているのに、時間管理が苦手だから締め切りの延長を頼まなければならなかったりして — それが永遠に終わらないんだ! もう何年も4時間以上寝てない! 何年も!ハドウは泣き続ける。
うすうす感じてはいましたが、
SCP財団ってDクラス以外の職員にとっても
超ド級のブラック組織だったんですね(納得)。
そして、このあまりに切ない曝露を聞かされたSCP-5798は
ハドウに対する同情の言葉を投げかけた後に
それと比べて自分の暮らしがどれほど楽で楽しいものであるかを語り出します。
SCP-5798: おいおい… いや、酷ぇ話だ。地上の奴らがこんなに惨めな暮らしをしてるとは思わなかった。
ハドウ: (鼻をすする) これはな… ただ… 貧乏人に限った話だよ。
SCP-5798:自慢するつもりはないが、俺は一度もそんな目には遭ってない。
ハドウ: お前に何が分かる? 排水溝の蛇の分際で!
SCP-5798: おい、俺だって割と教養はあるんだぜ! こう、必要な物は下に全部あるからな。好きなだけ寝て、一日中映画を見て—
ハドウ: この— えっ、本当に?
SCP-5798: マジな話だぜ、兄ちゃん。映画、テレビ、ゲーム、YouTube、何でもござれさ。
ハドウ: 俄然興味が湧いてきたな。どうやって君はそんな事ができるんだ?
SCP-5798: さっぱり分からん。これがやりたいなってのをめちゃくちゃ本気出して考えると、できる。いつもそんな具合だ。ぶっちゃけ暇な時間はずっとネットしてる。 (笑う)
ハドウ: ということは… 君はインターネットができて、好きなだけ眠れて… ええと、他には何をやってる? 丸一日どうやって暇を潰しているんだ?
SCP-5798: さっきも言ったけど、ポッドキャスト聞いたり、掲示板にカキコしたり、あとウォークラフトとか。あーそうそう、8時にレイドがあるんだっけ。もしお前さえ良けりゃちょっと引っ込んでいいかな。
ハドウ: いやぁ、下の居心地は素晴らしいんだろうね。
SCP-5798: 暮らしは良くなるばかりさ。お前もきっと気に入るよ — お前はあまり社交的なタイプじゃないだろうが、唯一欠点があるとすれば、下での生活はちょっぴり寂しいね。
ハドウ: インターネットを介して人と話せるんだろう?
SCP-5798: ああ。でも直接話すのと同じじゃない。どうしてお前と会話し始めたと思ってるんだ?
SCP-5798: 近頃は執筆活動を始めたんだ。自分を振り返るのに役立つ。
ハドウ: …執筆?
SCP-5798: いつでも好きな時に、好きなだけ長く。
ハドウ: 私はまさにそういう事を昔からやりたかった!
SCP-5798: 下では一日中でも執筆できるぞ!
SCP-5798が語る優雅な地下生活の様子に
任務も半ば忘れて夢中になっていくハドウ。
その心の高まりが頂点に達した時、
SCP-5798は彼にある「提案」をします。
SCP-5798: おうとも、その意気だぜ! どうだい兄ちゃん、下に降りて来いよ。満足すること請け合いだ。俺には友達ができる、お前はお望み通りの生活を手に入れる — 万事上手くいく!
ハドウ: 下に降りる?
SCP-5798: ああ、俺が引き下ろしてやれる。クールだろ?
ハドウ: いや、しかし—
自分と一緒に「地下」に降りてきて、
「友達」になってくれないかと…
この申し出に、さしものハドウも一瞬ためらいを見せますが、
しかしアノマリー相手に心の内をさらけ出してしまうほど
現在の労働環境に追い詰められていた彼にとって
この申し出はあまりにも魅力的過ぎました。
SCP-5798: お前次第だ、好きにすればいいよ。ただ、お前はそこに留まってたら後悔するんじゃないかって予感がある。
ハドウ: そうだろうな、君の言う通りだ! やってられるか!
ハドウはメモ帳とペンを足元に投げ捨て、積み重なった地中撮像機器を突き倒す。
ハドウ: くたばれ、財団! 私は自分の人生を生きるぞ!
SCP-5798: おうおう、その通りだ! さて、あー、お前にプレッシャーをかけるのは本意じゃない。シャワー室に入ったらすぐさま下に降ろしてやるから、心構えが—
ハドウがシャワー室に飛び込む。
ハドウ: できた! 準備できた! 遂に自由の身だ!
かくしてハドウはSCP-5798によって地下へと迎えられ、
長年彼の心を苦しめていた責務からようやく解放されたのでした。
めでたしめでたし。
…え?
あまりにも話が上手すぎる、ですって?
…
…
そうやって人とアノマリーの美しい友情を疑うなら、
最初に記載した本家記事ページへのリンクから
報告書の内容をご自身の目で確認してみればいいのではないでしょうか!?(半ギレ)
ただし、少々刺激的な描写がありますので
心の準備だけは十分にしてからになさいますように…
SCP-5510 「全世界共通リモコン」
さて、本日最後にご紹介するのは
主観的な時間を操作する不思議な能力を有した
リモコン(SCP-5510)についての報告書です。
この報告書についてはごく短い内容ですので、
最後まで読まれている前提で話を進めます。
報告書中ではまず最初にこのリモコンの異常性の概要と
4つのボタンが付いていることが説明され、
最後に各ボタンを押したときの結果が記載されていました。
ボタン | 結果 |
---|---|
早送り | SCP-5510に作用する時間は半分に減速します。 |
巻き戻し | SCP-5510に作用する時間は2倍に加速します。 |
再生 | 既知の影響はありません。 |
一時停止 | I |
最初の3つの結果は良いとして、
問題は最後の一時停止ボタンの結果が
"I"1文字だけになっている事です。
その理由は、「全世界共通リモコン」というメタタイトルと
このアノマリーが「主観的な時間を操作する」異常性を有していること、
そして先の3つの実験結果を併せて考えると自ずと見えてきます。
そう、一時停止ボタンを押した瞬間に、
リモコン以外の全世界の時間が停止してしまったんですね。
つまり、結果のIは担当者が文字を入力している最中に時間が止まってしまい、
それ以上何も入力できなかった結果としてそうなった、ということ。
オブジェクトクラスがSafeで、誰が見ても無害そうなリモコンが
立ったボタン一つ押しただけで世界を終わらせる危険物だったという
なんとも背筋がぞっとするオチでした。
ちなみに、この後財団が停止した時間から脱出(?)できたかについては
本報告書には一切記されていませんが、
あらゆる改変の影響を受けない除外サイト-01なんてのもあるくらいだし、
多分何とかはなったんじゃないでしょうかね(適当)
おわりに
オチが怖すぎるSCP報告書特集、お楽しみいただけましたでしょうか。
なんだかんだいってもこういうタイプのお話こそが
SCPの原点というか、スタンダードな気がしますね。
今後も面白い報告書を見つけたら
バンバンご紹介していきたいと思います。
それでは!