SCP-2128 「嘘のゆりかご」が地味にヤバすぎた件

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SCP-2128ってどんなSCP?

SCP-2128 - SCP財団

SCP-2128はアーチ型の石炉です。

"真鍮の心"というスペインの過激派カルトによって
9世紀末に拷問および処刑目的に作られ、
"嘘吐きの揺り籠"という名で呼ばれていました。

この石炉の中に入った人間が嘘をつくと
その人間の体が未知の方法で焼き尽くされる
という異常性を有しています。

なぜ嘘が分かるのか?

このようになんとも恐ろしい
性質を持つこのオブジェクトですが、
概要を読んで特に気になるのが
このオブジェクトがどうやって
発言者の嘘を見抜いているのだろうかという点です。

この疑問に対する最も分かりやすい答えは
「SCP-2128」には人の心を読む力がある
というものですが、報告書中の
財団の実験ログの内容を見てみると、
どうやら事態はそれほど単純ではないようです。

Dクラスは犠牲になったのだ…実験の犠牲にな

最初の実験ログの内容は次のようなものでした。

EP 37-スパラフチーレ-22 "Keter照合" 記録 14/10/1

[使者: D-6238]

人類は現在、滅亡の危機にある。 - 真
その危険は、財団が保有しているあるアイテムによって齎される。 - 真
問題の危険なアイテムは、北米のサイトに存在する。 - 偽

[D-6238が焼却される。新しい使者: D-6239]

問題の危険なアイテムは、欧州のサイトに存在する。 - 偽

[D-6239が焼却される。新しい使者: D-6240]

[簡潔にするため編集済]

[使者: D-6253]

SCP-████は来月までに収容違反する。 - 真
SCP-████は来週までに収容違反する。 - 真
SCP-████は明日、収容違反する。 - 偽

[D-6253が焼却される。新しい使者: D-6254]

SCP-████は今日、収容違反する。 - 真

[機動部隊ニュー-7に緊急出動命令が下る。サイト-██封鎖。収容違反は阻止され、SK-クラス支配シフトシナリオは未然に防がれた。]

このログを見て分かるように、
SCP-2128は発言者が知らない※ことや
未来のことについても真偽の判定を返します。
(※実験の被験者は全てDクラス職員であり、
他のオブジェクトについての知識は無いと考えるのが自然。
ちなみに彼らは偽の判定が出るたびに焼却処分され、
その度に新しい人員が補充されています。倫理委員会仕事しろ)

つまり、SCP-2128の能力は読心術というよりも
未来予知に近い性質があるということですね。

そしてこの予知の精度は確かなようで、
最後の質問の後に財団が急遽対応を行ったことで
SCP-████の収容違反は未然に防がれ、
それによって本来起こるはずだった
SK-クラス支配シフトシナリオも未然に防がれています。

ここまで読んだ限りでは、
Dクラスの犠牲に目をつぶれば
SCP-2128は人類のリスクを未然に防ぐことのできる
便利な予言装置となり得るようにも思えますね…

抽象的な質問にも答えてくれるらしい

EP 37-スパラフチーレ-24 "日曜学校の歌" 記録 14/10/6

[使者: D-7891]

イエス様は世界中の全ての幼子を愛しておられる。 - [データ削除]

続いての実験ログでは
「イエス様は世界中の全ての幼子を愛しておられる」
という曖昧で人によって解釈が分かれる性質の問いかけがなされています。

残念ながらその結果はデータ削除されており、
私たちにはその内容を知る術がありませんが、
わざわざ削除されていると言うことは
何か財団側にとって何か
都合の悪い反応があったものと思われます。

恐らくはSCP-2128の返答の中に
財団の機密情報でも含まれていたものと思われますが、
他にもSCP-2128がこの問いに「偽」と答えたために
信仰心の強い財団職員の誰かが
実験結果を削除してしまった可能性もあり得そうですね。
(財団職員の中に特定の宗教を信仰している人員が含まれていることはSCP-1643などから読み取れます。)

尤もどちらも真実が明らかでない以上
推測の域を出ない仮説に過ぎないわけですが、
こういう隠された部分をあれこれ
妄想するだけでも楽しいのがSCPの良いところですね。

SCP-2128にパラドックス不可避の質問をしたらどうなる?

財団が行なったSCP-2128に対する実験の中には、
他にもいくつも興味深いものがあります。

そのひとつが
「SCP-2128にどう答えても
矛盾する発言をしたらどうなるか?」

という試みです。

つまりSCP-2128を
論理パラドクスに陥れて
その反応を伺おうと言うわけですね。

果たしてその結果やいかに…

EP 37-スパラフチーレ-25 "ピノッキオ・パラドックス" 記録 14/10/10

[使者: D-8232]

“嘘吐きの揺り籠”にパラドックスを話すことは、財団職員にとって危険である。 偽

[D-8232が焼却される。新しい使者: D-8233]

“嘘吐きの揺り籠”は今、私を殺すつもりである。 偽

[D-8233は部分的により低温で焼却され、結果的に容姿が永久的に損なわれた。新しい使者: D-8234]

“嘘吐きの揺り籠”は今、私を焼くつもりである。 偽

[焼却事象無しに10秒が経過。D-8234が引き出される。D-8234は、SCP-2128の中にあった岩の欠片で腕に小さな切り傷が出来たと訴えた。D-8234は急速かつ以前に確認例のない壊疽を発症し、1分以内に死亡した。新しい使者: D-8235]

“嘘吐きの揺り籠”は今、私に身体的な危害を加えるつもりである。 偽

[焼却事象無しに10秒が経過。D-8235が引き出される。D-8235は抑え切れずに啜り泣きを始め、直後に「さよなら」と叫んで保安職員の拳銃を奪い、自己終了した。D-8235はこれ以前に精神的問題や自殺念慮の傾向を見せてはいなかった。]

さて、ここで行われた3つの質問については、
その全てで異なる結果が生じました。

唯一全ての場合に共通しているのは
被験者のDクラスが必ず
悲惨な目にあっていることくらいでしょうか。

その残酷な対応はまるで
自分を試そうとした人間に
SCP-2128が怒って
罰を与えたようにも見えます。

ここにきてSCP-2128が
ただ機械的に物事の真偽を判断するわけでは無く、
もしかすると一種の自我のようなものすら
備えている可能性が出てきました。

この結果を受け財団側も俄然興味が湧いたのか
この後さらに立て続けに実験を行うこととなります。

怒涛の質問責めとSCP-2128のガチギレ

最後のログはちょっと長いですが
一気に見ていきましょう。

EP 37-スパラフチーレ-26 "客観的意見" 記録 14/10/10
[使者: D-9224]
ゴールデンレトリバーは可愛い。 偽
[D-9224が焼却される。新しい使者: D-9225]

ゴールデンレトリバーは醜い。 偽
[D-9225が焼却される。新しい使者: D-9226]

ゴールデンレトリバーは美味しい。 真
[D-9226がプロトコルに違反し、私語を発する] 待て、何だって? マジキメぇ。 偽
[D-9226が焼却される。新しい使者: D-9227]

私は善人である。 真(D-9227は人肉食によって有罪判決を受けた死刑囚である。)
[D-9227がプロトコルに違反し、私語を発する] なかなか冗談の分かる奴じゃねぇかよ ― さしずめ俺はマザー・テレサってか! 偽
[D-9227が焼却される。新しい使者: D-9228]

“嘘吐きの揺り籠”は時々不正確である。 偽
[D-9228が焼却される。新しい使者: D-9229.]

“嘘吐きの揺り籠”は絶対確実かつ立証可能な真実のみを語る。 真
“嘘吐きの揺り籠”は空腹である。 真“
嘘吐きの揺り籠”の飢えは、どれほど満たされようとも決して治まることは無い。 真
“嘘吐きの揺り籠”は今すぐにでも私を焼却したい。 真
“嘘吐きの揺り籠”は苛立ち始めている。 真
“嘘吐きの揺り籠”は、目の前の皿に乗っている美味しくて暖かい肉を是非とも食べたい。 真
“嘘吐きの揺り籠”は、その肉を何度も繰り返し取り上げられることに怒っている。真人間の肉は美味しい。 真
私は美味しい。 真
私の肉は暖かい。 真
沸騰する脂肪の滴と急速に焼灼される肉の上でパチパチと爆ぜる炎の音は、“嘘吐きの揺り籠”にとっての歓びである。 真
[D-9229が引き出される。新しい使者: D-9230]

地球(Earth)は丸い。 偽
[D-9230は極めて遅く、暴力的な形式で焼却された。
サイト管理者は、これは“Earth”が漠然と“土”を指すものと解釈され得るのも一因ではあるが、主たる理由はSCP-2128が挑発行為を快く思っていなかったためだと考えている。]

結論から言うと 
SCP-2128にはほぼ確実に
自我と呼べるものが存在しており、
またあまり寛容なタイプではないようです。

それに死刑囚であるD-9227を
善人だと判定していることから、
その判断の信頼性にも幾分疑問符がつきそうですね。

ともあれ最初に予想された
未来予知マシーンとしての
有効活用の線はこれでかなり薄くなってはしまいましたが
まだこのオブジェクトには
・どういう原理で対象を焼き殺したり病死させたりしているのか
・一部未来の情報や財団の極秘情報を知っていた理由は何か
・そもそも誰がどんな技術で作ったのか
などの謎が残されているため、
SCPオブジェクトの謎の解明を使命の一つとする財団としては
今後もこのオブジェクトの実験を(多数のDクラスを犠牲にしながら)
続けていくことでしょう。

そういえば今回はいつもに増して
悲惨な役回りだったDクラス達ですが、
実験中の彼らの発言の数々
(「マジキメぇ」「さしずめ俺はマザー・テレサってか!」)
は、いくら実験の詳細を知らなかったとはいえ
あまりに緊張感がないものばかりで
読んでいて思わず頰が緩んでしまいました。

今後の実験でもきっと
こんな素敵フレーズが量産されつつ
Dクラス達が焼かれていくのでしょうね。

おわりに

そのようなわけでSCP-2128「嘘のゆりかご」の紹介でした。

残酷さと不思議さと
ちょっぴりのユーモアが絶妙にブレンドされた
秀逸な内容でしたね。

また、この報告書を読んでふと思った事なのですが、
もし嘘をついても絶対に殺されないとすれば、
あなたならSCP-2128にどんな問いかけをしてみたいでしょうか?

私なら… 

今住んでいる地域に私が生きている間に
大きな地震が来ないかどうか確かめてみたいですね(怖いので)。

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